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第14話 外は……
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「ウウゥゥ~……」
「……やっぱり寝てる人はゾンビか」
マンションから出て病院へと向かう。道に横たわる人はやっぱりゾンビになっていた。横たわっていたのは足に怪我をしていて立てないみたいだ。僕に気が付くとほふく前進で近づいてくる。
ほふく前進だから逃げるのは容易、走って曲がり角を曲がったところで待ち伏せをされない限りは大丈夫だろう。
「道を通らなければいいだけだしな」
そう言って僕は住宅の屋根へと飛び乗る。一階建ての住宅がまだまだ多い地域だ。簡単に屋根づたいに進める。ゾンビ達が上ってこれるわけもない。少し走れる奴もいるから道は気を付けた方がいいけどね。
「さすがにまだ見えないな」
一人になったせいか、独り言が多くなる。寂しいとやっぱり自分の声でも聞きたくなってしまうんだろうな。
病院の方向を見て呟くと寂しさが一層心に響く。今まで友達なんかいなかったっていうのにこんなことを思ってしまってる。こんな世界でもみんなと楽して暮らしていたいよな。
「そのためにもスキルを強化しないとな。楽して暮らすためのスキルは栽培スキルしかないけど」
身体能力を強化するもの以外はものを作る物と栽培だけ。ゲームだと魔法とかあるのに変わったスキルツリーだ。この仕組みを作ったの人のこだわりみたいなものか。
「はは、実は平和主義者かも。緑を増やそう、みたいな感じか」
思わず笑ってしまう。こんなゾンビを作り出した存在が緑を、なんておかしな想像だよな。
「……そうだよな。僕のこの能力は確実にゾンビと関係してるんだよな」
元からこの能力が僕にあったならゾンビと関係ないだろう。だけど違う、僕にこんな能力はなかった。異変が始まって気が付くと能力が付いていた。そう、僕は一度気を失っているんだ。
気を失う前、僕が何をしたかというと……。ゾンビに怪我を、傷をつけられた。今考えるとこれが原因だろうと思う。いつしか僕は我を忘れてみんなを……。ってそんなこと考えてる場合じゃないか。
「キャ~~~~!」
「ん?」
考え事をしながら屋根を歩いていると悲鳴が上がる。声の方向を見るとマンションの屋上に人影が見える。僕らのマンションより少し小さいマンションだ。屋上の端まで逃げてるように見える。
「マンションの中に入られたのか。見捨てるのも精神衛生じょうわるいな」
僕は急いでマンションに走る。非常階段か、いや玄関から入られてるな。
玄関をくぐりエレベーターは避けて階段を駆け上がる。間に合うか……。
「へへへ、おとなしくしろよ。このマンションの生き残り同士仲良くしようぜ?」
「いやよ! わ、私には夫が」
「はん! こんな世界になっちまったんだ。死んでるさ」
「そんなわけない! あの人は! ジュンヤさんは死んでない!」
……あと数歩で屋上、声が聞こえてくる。男性の声と女性の声。僕らと違って仲良くやれていなかったマンションの末路か。
「はぁ~。まったく、聞き分けのない奴にはしつけをしてやるよ!」
「こ、こないで! それ以上近づいたらここから!」
男性の声に女性が虚勢を張って屋上の端から足を浮かせる。ゾンビに追われてると思ったらこんな状況とは。今の状況がわかってないのかね。この男は……。
「ちぃ、じゃあいいよ。死んじゃえ」
「君がね」
「え? な!?」
ナイフを構えた男に対して一声かけると担ぎ上げてマンションの屋上から放り投げる。エンドウ ショウジ、奴と同じようにこいつもゾンビだ。話す価値もない。悲壮な表情で落ちていく男を見送って、すぐに屋上を後にする。
「ま、待ってください!」
階段を下っていると女性から声がかけられる。
「このマンションは安全ですか? 玄関は普通に入れてましたけど?」
「え? いえ、ゾンビが徘徊してます。あの人が言っていたのは4階までゾンビが来てるとか言ってました」
あの男は管理できてたってことか。ゾンビを倒すまでは行かなかったから、あきらめてこの人に手を出したって感じか。
「あ、あの。ありがとうございました」
「え? ああ、声が聞こえたので。まにあってよかったですけど、躊躇なくやってしまってすみません」
女性のお礼の言葉に小さくお辞儀をして答える。あの手の男と話をしたくなくて一瞬で終わらせてしまった。ミカンちゃんとカズキ君のことを思い出してしまったんだよな。
この女性のこと、この後のことを考えると助けてもね。
「じゃあ、僕はこれで」
「え!? そ、外にはゾンビが」
「知ってますよ。屋根づたいに進めば安全ですから」
僕の言葉を聞いて驚く女性。答えを聞くと女性は大きく頷く。
「そうか……あの人の。ジュンヤさんの病院に行けるかも」
「病院って藤堂病院?」
「あ、はい。最後に連絡が来たのが病院からで。救急医の仕事をしていて」
救急医って救急車に乗ってる人か? それなら希望があるけれど。スマートフォンは普通に通じてるはずだ。ニュースサイトとかは全て更新されていないけど、電気もまだまだ通じてる。それなのに連絡がない。スマートフォンから離れてるか、壊れているか、それとも……。
「ついてこられても助けられませんよ」
「だ、大丈夫です。おいていってください!」
「はぁ~、ミサトちゃんに怒られそうだ」
嬉しくない同行者が生まれてしまった。屋根に上りなおして病院の方角に進む。
なぜかついてくる女性。名前を【阿久井 舞 アクイ マイ】というらしい。その人が息を切らせながらついてくることになってしまった。彼女はミサトちゃんよりも頑なでゾンビに襲われそうになりながら屋根に上ってついてくる。
まだミサトちゃんの方がよかった。こんな姿を見られたら【私も行ってもよかったじゃないですか!】とか行ってきそうだ。
しかし、遅くなりそうだな。僕は息を切らせるアクイさんにため息をついて項垂れる。
「……やっぱり寝てる人はゾンビか」
マンションから出て病院へと向かう。道に横たわる人はやっぱりゾンビになっていた。横たわっていたのは足に怪我をしていて立てないみたいだ。僕に気が付くとほふく前進で近づいてくる。
ほふく前進だから逃げるのは容易、走って曲がり角を曲がったところで待ち伏せをされない限りは大丈夫だろう。
「道を通らなければいいだけだしな」
そう言って僕は住宅の屋根へと飛び乗る。一階建ての住宅がまだまだ多い地域だ。簡単に屋根づたいに進める。ゾンビ達が上ってこれるわけもない。少し走れる奴もいるから道は気を付けた方がいいけどね。
「さすがにまだ見えないな」
一人になったせいか、独り言が多くなる。寂しいとやっぱり自分の声でも聞きたくなってしまうんだろうな。
病院の方向を見て呟くと寂しさが一層心に響く。今まで友達なんかいなかったっていうのにこんなことを思ってしまってる。こんな世界でもみんなと楽して暮らしていたいよな。
「そのためにもスキルを強化しないとな。楽して暮らすためのスキルは栽培スキルしかないけど」
身体能力を強化するもの以外はものを作る物と栽培だけ。ゲームだと魔法とかあるのに変わったスキルツリーだ。この仕組みを作ったの人のこだわりみたいなものか。
「はは、実は平和主義者かも。緑を増やそう、みたいな感じか」
思わず笑ってしまう。こんなゾンビを作り出した存在が緑を、なんておかしな想像だよな。
「……そうだよな。僕のこの能力は確実にゾンビと関係してるんだよな」
元からこの能力が僕にあったならゾンビと関係ないだろう。だけど違う、僕にこんな能力はなかった。異変が始まって気が付くと能力が付いていた。そう、僕は一度気を失っているんだ。
気を失う前、僕が何をしたかというと……。ゾンビに怪我を、傷をつけられた。今考えるとこれが原因だろうと思う。いつしか僕は我を忘れてみんなを……。ってそんなこと考えてる場合じゃないか。
「キャ~~~~!」
「ん?」
考え事をしながら屋根を歩いていると悲鳴が上がる。声の方向を見るとマンションの屋上に人影が見える。僕らのマンションより少し小さいマンションだ。屋上の端まで逃げてるように見える。
「マンションの中に入られたのか。見捨てるのも精神衛生じょうわるいな」
僕は急いでマンションに走る。非常階段か、いや玄関から入られてるな。
玄関をくぐりエレベーターは避けて階段を駆け上がる。間に合うか……。
「へへへ、おとなしくしろよ。このマンションの生き残り同士仲良くしようぜ?」
「いやよ! わ、私には夫が」
「はん! こんな世界になっちまったんだ。死んでるさ」
「そんなわけない! あの人は! ジュンヤさんは死んでない!」
……あと数歩で屋上、声が聞こえてくる。男性の声と女性の声。僕らと違って仲良くやれていなかったマンションの末路か。
「はぁ~。まったく、聞き分けのない奴にはしつけをしてやるよ!」
「こ、こないで! それ以上近づいたらここから!」
男性の声に女性が虚勢を張って屋上の端から足を浮かせる。ゾンビに追われてると思ったらこんな状況とは。今の状況がわかってないのかね。この男は……。
「ちぃ、じゃあいいよ。死んじゃえ」
「君がね」
「え? な!?」
ナイフを構えた男に対して一声かけると担ぎ上げてマンションの屋上から放り投げる。エンドウ ショウジ、奴と同じようにこいつもゾンビだ。話す価値もない。悲壮な表情で落ちていく男を見送って、すぐに屋上を後にする。
「ま、待ってください!」
階段を下っていると女性から声がかけられる。
「このマンションは安全ですか? 玄関は普通に入れてましたけど?」
「え? いえ、ゾンビが徘徊してます。あの人が言っていたのは4階までゾンビが来てるとか言ってました」
あの男は管理できてたってことか。ゾンビを倒すまでは行かなかったから、あきらめてこの人に手を出したって感じか。
「あ、あの。ありがとうございました」
「え? ああ、声が聞こえたので。まにあってよかったですけど、躊躇なくやってしまってすみません」
女性のお礼の言葉に小さくお辞儀をして答える。あの手の男と話をしたくなくて一瞬で終わらせてしまった。ミカンちゃんとカズキ君のことを思い出してしまったんだよな。
この女性のこと、この後のことを考えると助けてもね。
「じゃあ、僕はこれで」
「え!? そ、外にはゾンビが」
「知ってますよ。屋根づたいに進めば安全ですから」
僕の言葉を聞いて驚く女性。答えを聞くと女性は大きく頷く。
「そうか……あの人の。ジュンヤさんの病院に行けるかも」
「病院って藤堂病院?」
「あ、はい。最後に連絡が来たのが病院からで。救急医の仕事をしていて」
救急医って救急車に乗ってる人か? それなら希望があるけれど。スマートフォンは普通に通じてるはずだ。ニュースサイトとかは全て更新されていないけど、電気もまだまだ通じてる。それなのに連絡がない。スマートフォンから離れてるか、壊れているか、それとも……。
「ついてこられても助けられませんよ」
「だ、大丈夫です。おいていってください!」
「はぁ~、ミサトちゃんに怒られそうだ」
嬉しくない同行者が生まれてしまった。屋根に上りなおして病院の方角に進む。
なぜかついてくる女性。名前を【阿久井 舞 アクイ マイ】というらしい。その人が息を切らせながらついてくることになってしまった。彼女はミサトちゃんよりも頑なでゾンビに襲われそうになりながら屋根に上ってついてくる。
まだミサトちゃんの方がよかった。こんな姿を見られたら【私も行ってもよかったじゃないですか!】とか行ってきそうだ。
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