終末だけど、チートで楽して生存したい

カムイイムカ(神威異夢華)

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第10話 安全確保

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「ふぅ~。ここで下の階は全部だ」

 5階の探索を終えて6階に上がってきた。手前の部屋に入ると家具のない部屋が広がっていた。入居者のいなかった部屋だ。このマンションあんまり人気なかったんだな。僕は家賃が安かったから選んだけど、みんな駅前がよかったんだろうな。

「次の部屋っと。丁度ミサトちゃん達の部屋の下だな……。もしや」

 独り言をつぶやいて部屋を開ける。もしかしてと思ってみてみたら案の定、気持ち悪い空間が広がっていた。

「ボーンコレクターか?」

 昔の映画を思い出す。ミサトちゃんの隠し撮り写真が壁一面に広がる廊下。キッチンまで広がっていて、キッチンやリビングにも写真が壁一面に広がってる。異常者の家だな……。

「なるほど、やつはここにいたのか。それなら名前とかもわかるな」

 僕の初めて殺めた相手の名前だ。知っておいてあげた方がいい。これは罪滅ぼしでもあるな。
 キッチンは後回しにして寝室に入る。するとそこにもミサトちゃんの写真が、ミカンちゃんやお母さんだと思われる女性は見切れてる。完全にミサトちゃんのファンだな。人を好きになったことのない僕としては考えられない行動だな。
 
「ナイフがたくさん入ってる。はぁ~、まったく」

 好きなはずのミサトちゃんの写真にナイフが突き刺さってる。机には別のナイフがおもちゃ箱のようにたくさん入っている。愛があふれて殺意に変わるか。どうしようもない奴だ。

「エンドウ ショウジか」

 運転免許証も置いてある。名前と顔写真で確認が取れた。あとで埋葬するときに置いておいてあげるか。ナイフはみんなで使うために何本か確保しておこう。幸か不幸か、手入れはちゃんとしてる。ティッシュもスラッと切り裂いてる。これなら包丁代わりにも使えるな。

「あとはめぼしいものはないか……。あ、パソコン」

 リビングに戻ってきて周りを見渡す。するとTVの横にパソコンデスクがあった。運のいいことに画面はついたまま。ログインしたままミサトちゃんを襲いに行ったのか。普通は自動で電源が落ちるものだけど、落ちないように設定してたみたいだな。

「……盗聴、盗撮。まったく、こいつは」

 フォルダを見るとそんな物騒な名前がついてる。周りの壁を見ると中身は見なくてもわかる。しかし、盗聴っていうのはどういうことだ? 部屋の中に盗聴器があったのか? 気になる……。

「ミサトちゃんごめん」

 天井に向かって謝ると盗聴フォルダを開く。最初の音楽ファイルを開くと声が聞こえてくる。

『ミサト、あなたも料理くらいできないとね』

『私だってできるよ~』

 日常の光景が目に浮かぶような声だ。お母さんに僕と同じようなことを言われてる。なんだかおかしいな。
 声の様子からキッチンでの会話みたいだな。ってことかキッチンのどこかか?

『できるなんて言っても一種類くらいでしょ? それじゃミカンが可哀そう。ミサト、私は当分病院に泊まることになるんだから。しっかりとね』

『わかってる。行くときは駅前に見送りに行くね』

 これはあの日の前の日か? 駅前に見送りに行くって言ってるな。そうか、お母さんを見送りに駅前に行こうとしたら火事が起きてていけなくなったのか。……いや、お母さんから連絡があったのかもな。あれだけの火事と爆発だと、お母さんも来させようとしないだろう。ってことはお母さんは病院に行ってるってことか……。

「少しミサトちゃんの話が違うような気がするな。まあ、記憶違いはあるか」

 しっかりと記憶通りの事を話せる状況じゃなかったしね。仕方ないな。

「ん!? 昨日の盗聴記録がある!」

 そうか、エンドウは昨日まで生きていたんだよな。ここでチャンスを狙って、僕がみんなと離れた隙を狙ってきた。6階から調べていたら防げたんだろうな。って情報戦で負けてるからどうせ隙を狙われたか。今の状況が一番いい状況かもしれない。俯いている場合じゃないよな。

「盗聴器、盗撮のカメラは使えそうだ。どこにあるか調べて。おっとあったあった。カメラカメラ」

 一眼レフのカメラ、興味はないけどいいカメラっぽいな。屋上に上がってまわりの情報を得るときに使えそうだ。
 パソコンは……これは使えないな。下の階で見つけたパソコンで使おう。いかがわしいフォルダは名前を変えて隠して使おう。カズキ君が見たら英才教育されてしまうからな。ミサトちゃん達に見られたら僕がポイッされてしまう。厳重にしておかなければ。

「ふぅ、一度休憩を入れるか」

 お昼に差し掛かり、おなかが鳴る。ミサトちゃん達の元に帰って、ご飯でも頂こう。

「お兄ちゃん!」

「カズキさん!」

「ええ!? ど、どうしたの二人とも!? って! 怪我は!?」

 ミサトちゃんの家の扉の前につくと、扉が勢いよく開いてミカンちゃんとカズキ君が抱き着いてきた。けがをしていてあまり動けなかったはずの二人がどうして?

「マナブさん。もらったトマトでトマト粥を作ってみたんです。二人に食べさせたらみるみる傷がなくなって」

「ええ!?」

 驚いて二人の頭をなでているとミサトちゃんが説明してくれる。
 やっぱり、スキルで得た野菜や果物は特別な物みたいだ。
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