終末だけど、チートで楽して生存したい

カムイイムカ(神威異夢華)

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第7話 マンション探索

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「料理もできないのか~。それは困ったな~」

「り、料理くらいできます! 馬鹿にしないでください!」

 みんなのもとに戻ってきて、柿とリンゴを大家さんの部屋にしまうと早速ミサトちゃんと話をつける。
 料理はできないようなそぶりをしてきたので煽ってみたら必死に言い返してきた。ハッキリいって彼女には何も期待してない。何もさせないことが大事だからね。

「(しっかり見てますから)」

「(お願い)」

 カズキ君が耳打ちしてくる。しっかりとお願いして僕はマンションを探索する。
 すべての部屋に生存者がいないかと、ゾンビの討伐だ。ついでに食べ物も調べないていけない。なかったらコンビニやスーパーを探索しないとな。はぁ~、入社もしていないのに仕事をしている気分だよ。
 とりあえず、三人はミサトちゃん達の部屋に戻って料理に励んでもらう。危険だから近くには置けない。

「まずは一階の3部屋」

 大家さんの部屋とは別の一階の部屋を調べていく。
 僕らがいるのに何も反応がないから生存者はいないと思っていたけど、なんと一階はすべて入居者がいないみたいだ。鍵はしっかりと閉まっていたけど、家具のない部屋が広がっていた。
 まあ、立地はそれほど良くないからな。駅まで歩きで45分は普通に苦痛だ。45分と言ったが、本当は一時間かかるしね。大家さんがいい人だったから追求しなかったけれど。

「続いて二階、ゾンビも普通にいたから入居はしていただろう」

 少し前の事だけど、恐怖を感じたのを覚えてる。簡単に倒しているけど、僕もやられたらゾンビになっちゃうから恐怖でしかないんだよな。
 二階も3部屋、一つ一つノックをするとゾンビっぽい反応が1部屋。鍵がかかっているので反応のあった部屋の鍵を開けて、扉を少し開けて距離を置く。

「来た来た……」

 少し開けた扉が開いていく。うつろな瞳で僕を見ると大きな口を開いて食らいつこうとしてくる。生前はサラリーマンか。あの日に感染してしまったんだろう。ネクタイもキッチリと閉めてる。
 いつも通り、柵を盾代わりに使って槍を突き入れる。これは攻略法ができてるかもしれないな。

「よし、じゃあ、お邪魔します」

 始末したゾンビを邪魔にならないように端に寄せて部屋に入る。
 一人暮らしだったのかな。靴箱には一つの靴だけだ。男物のスニーカー。
 パソコンに冷蔵庫に電子レンジ、僕の部屋とそん色ない電化製品の数々。……これはあれがあるな。

「あった~」

 パソコンを開くとパスワードを入れずに入れるタイプだった。そして、そこには【男の楽園】というフォルダがあった。中を見るとムフフな内容の数々のファイル。生前に会っていたら話があっただろうに。ありがたく使わせていただきます。

「……ゾンビになっちゃったみんなも埋葬してあげないとな」

 いつまでもそこらへんに置いておくのも衛生上悪いし、手にかけた身としては埋葬してあげたくなる。

「でも、よく戦えてるよな。……なんかおかしいような気がするけど、やっぱりこいつのせいか」

 あの日からできている赤い指輪を見つめる。こいつができてからゾンビをなんとも思わなくなってるような気がする。人と喧嘩だってしたことがない僕が冷静に戦えている、普通におかしい。僕もゾンビのような人間になってしまっているのかな。
 もし……もしもそんなことになりそうなら、自分で始末をつけるしかない。彼女達を危険にさらすよりはましだろう。

「まあ、僕がいなかったら、みんな生きていけないと思うけど……」

 不安が頭をよぎるとついつい声を上げてしまう。
 僕が彼女たちの最後の砦、僕が死んだらダメだ。

「先生が言ってたっけ、『立場が人を作るんだ。今はできなくてもその時になったらできるようになる』って。先生の言う通りだな」

 責任を感じて思い出す。中学校だったかの時の先生の言葉だ。彼女たちを守る立場になったんだからできるようになるんだよな。とにかく安定させていくしかないよな。
 色々と考えながら次の部屋を見る。食べ物があるだけで、人はいなかった。ゾンビもいないから外出中だったんだろう。外出中か……できればミサトちゃん達のお母さんも助けたいものだけど。路上を見るといける気がしない。

「みんな助けられるのが一番いいんだけどな」

 呟きながらもしっかりと次の部屋を見ていく。次の部屋にはハムスターが一匹いるだけ、外出中だったんだな。
 まあ、普通にあの時は出勤時間だもんな。普通の人は外にいるよな。僕みたいにサボってなかったら。

「中には僕みたいに幸運に見舞われてた人もいるかもしれないよな」

 僕のように指を切られて熱を出して、ほんとにこの指輪はなんなんだろう……。
 ゾンビだけでも不思議なことが起きているのに、ゲームみたいなステータスが付いたりめちゃくちゃだよな。
 
「あまり考えても答えはでないか、次の階に行こう」

 ため息にも似た声を呟いて階段を上がる。ハムスターはミカンちゃんが喜ぶと思ってカゴと餌と一緒に持ってきた。ミサトちゃんも喜んでくれればいいんだけど。そんな淡い期待を持って三階に上がっていると上の方から悲鳴が聞こえてくる。

「だ、だまれ! 静かにしろ!」

「や! やめて!」

 この声はミサトちゃん! なにがあったんだ!
 僕はハムスターの入ったカゴと餌をその場において階段を駆け上がる。
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