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その後

僕らの世界

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 お父さんの仕事場を見学して次の日、僕は僕の世界に戻っていた。なんで戻っているかと言うとお父さん達の世界との距離が関係している。

「お父さん達が元の世界に帰った時は5年が2年だった。だけど、僕らが行ったときは15年が3年になってた。これから大体想像はついていたんだけどね・・」

 僕より大きなダイヤの原石に魔力を常時補充して何とか保てているけど無理が生じてくる。お父さん達の世界と僕らの世界は刻一刻と離れて行ってるんだ。空間を無理やりつなげているから時間は同じになったけど、いつまでもつかわからない。

「嗜む子牛亭の横に作った木がマナを放ち始めたのとレインのマナを借りて何とかなっているけど・・・」

 作物達がみんなでマナを放つようになってそれも活用しているんだけど、流石に世界と世界を繋ぐには膨大なマナが必要みたい。学のない僕ではわからないけど、このままじゃ、いつか本当にお父さん達に会えなくなっちゃうかも。

「兄さん、僕たちと父さん達では住む世界が違かったんだよ」
「でも・・」
「ルークには私たちがいるにゃ。寂しくなんてさせないにゃ~」

 悩んでいるとユアンとニャムが僕の手を取って不安を拭った。

「そうだよルーク。私たちが家族なんだから。それに私たちのお腹には新しい命が宿っているんだからね」
「そうにゃ!ルークはお父さんになったにゃ。御父様のように立派な子供を育むにゃ」

 お父さんの世界に行く前からモナーナ達のお腹に子を授かっていた。その報告もしたくて無理をしたんだけど、その判断は正解だったかもね。あの時以上に離れていたらもっと時間が離れていたかもしれないから。

「きっと兄さんの子供は僕たちを驚かせるよ。御父さん達が驚いたように僕らも驚くのが楽しみだな~」

 ユアンは未来を夢見て天井を見上げた。こんな能力の僕の子供が生まれてしまうのか、何だか不安しかないけどな~。

「ルーク、なんで青ざめているのよ」
「ルークの事だからにゃ~、不安でいっぱいなんじゃないかにゃ?」

 青ざめて俯いているとモナーナとニャムに頬をツンツンされてしまった。孤児院の子供達のように元気ならいいんだけど、僕の子だから、もっと卑屈だと思うんだよね。自分で言うのもなんだけど卑屈な子に自分の強さを知らせるのって大変そうだよ。自分の事を棚に上げて言うけどさ。

「子供達が生まれてきておばあちゃんやお父さん達に子供を見せないと。まだまだ、このゲートには働いてもらわないと困る」
「確かにそれは言えるにゃ」
「ひ孫を見せてあげないといけないね」

 その間だけでもゲートは維持していかないといけない。だけど、このままじゃ一か月も持たない。少なくとも十か月は維持しないとダメだ。

「魔石を増設するとか?」
「そうすると地下をもっと深くしないとダメだね」

 ダイヤの宝石でできた魔石なんだけど、今の大きさは2メートル50センチほど。これ以上でかくするには上か下に伸ばさないとダメっぽいんだよな~。

「横向きにしたらダメなのかにゃ?」
「魔石ってマナを入れると浮力が付くんだけどどうしても縦に浮いちゃうんだ。だから、横向きにはできないんだよね~」

 最初はニャムの言っている横向きにしてみようとしたんだけど、固定しても横向きに留まらないんだよね。固定したら固定していた鉄の板がひん曲がったんだ。魔法以上の何か、不思議な力で縦になるようになっているみたい。学がないから僕には理由はわからないけど、摂理みたいなものかもしれないね。

「家の魔石も増設しないといけなくなりそうだな~」
「あっちの魔石のマナも使っているんでしょ?」
「そうそう、お父さんの世界につなげるには瞬発力も必要だから一つの魔石じゃ足りないんだよね」

 一個のマナ供給源じゃゲートを作るマナは構成できなくてエリントスの魔石の力も使ってる。でもそのおかげでエリントスとワインプールには一瞬で移動できるようになってるんだ。ゲートの力でそう言うこともできちゃう。バルト様達には内緒だけどね。

「ダイヤは長年の煙突掃除とかで溜まってるから大丈夫だけどマナの補充がな~」

 スキルのおかげでマナの消費がない僕でも入れるのには時間がかかる。時を止めて毎回やっているから一秒もかからない、僕らがあっちの世界に行っている間は減り続けるからそれが心配なんだよね。少しずつ距離は離れているから消費も増えて行っているはずなんだ。気づいたら帰れませんでしたってなったら困るからね。

「お父さん、その心配はいらないよ。私の兄弟たちがいるんだから」

 心配しているとレイン”達”が腰に手を当てて現れた。

「私たちがお父さん達を守る」
「神のできなかったことをしたお父さんを失うなんてありえない」
「命に代えても道は繋ぎます」
「代わりに死ぬ・・・」
「あはは~、私は寝る~」

 レインの主な姉妹たち。上からレイン、ツイン、サイン、フイン、ラインという名前だ。他にも色々付けたけど全員は覚えられなかった。生命を作ることをやめるように言ったけど結局僕の為に作らせてしまった。ダメなお父さんだな。
 レイン達は活発で個性が爆発しているからすっごい疲れるけど、基本みんないい子なので甘やかしてしまう。モナーナ達の子供達もこうやって甘やかしてしまいそうだ。

「ミスリーの兄妹たちもいるから大丈夫だよお父さん」
「にゃ~」

 レインがミスリーを抱きかかえて話した。ミスリーは気だるそうにされるがままになっている。レインの姉妹に撫でまわされ過ぎて疲れているんだろう。ミスリーは家でのんびりするようになって一番触りやすいからな。
 ミスリーの兄妹達はエリントスとワインプールを守る守護獣として門に居たり、街を囲う壁の上で見張ったりしている。基本可愛い猫・・じゃなかった虎だけど、敵が来ると凄い勢いで飛び出して得物を狩ってくる。最近、群れが発生する頻度は低くなったけど、たまにあるらしいから警戒はしているんだ。
 名前はそれぞれ体の色で名付けた。ミスリーはミスリルだったからそうなったけど、兄弟は色んな素材で作ってるけどダブリが多いからね。それに作る時に色が変わって個性もそれぞれ違った。名づけには困らなくてよかったけど不思議だよね。因みにここワインプールは紫のミスリーが門を守っている。衛兵の人達に可愛がられているらしい。ミスリーとは違ってなつっこいのかな?

「ミスリー達は気をつけないといけないよ。マナで構成されているんだから使いすぎるとただの素材になってしまうんだから」

 普通の魔法を使うのとはわけが違う。ミスリー達は莫大なマナで理性を持っているけどマナがなくなると理性がなくなって素材に戻るか暴れるかしちゃうと思う。憶測だけどみんなには人を傷つけるなんてトラウマを持ってほしくないから。無理な時は諦めてほしい、僕が何とかするからさ。

「にゃ~!」
「ミスリー先輩は諦めないと言ってますです」
「一緒に死ぬ・・・」

 レインとフインがミスリーの言葉を翻訳している。フインは暗い子だな。死ぬ死ぬ言いすぎだよ。死ぬんだったらやめてほしい。

「じゃあ、その時が来ないように魔石を大きくしておくよ」

 レイン達に死なれたんじゃ死んでも死にきれない。もっともっと大きなダイヤの魔石にしてゲートを強固なものにするんだ。
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