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その後
平和な世界にもいました
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お父さん達と一緒に骨組みだけの建物の頂上からの景色を見て、すぐにお父さん達は仕事に入っていく。春の気候ので涼しい風が吹いていたけどお父さん達はいっぱいの汗をかいて建物をもっと大きくしていく、大きなクレーンっていう機械も使っていたんだけど、これも作れないかな~。車もそうだけど、ああいった物って何だかほしくなっちゃうんだよね。
「お~お~、やっとるかね?」
お父さん達が働いている中、扇子で仰ぎながら恰幅の良いおじさんがエレベーターから降りてきた。
「あ~ヤマダさん、今日おこしになる日でしたっけ?」
「ん~来ちゃ悪いのかね?」
「いえ!滅相もない」
アダチさんがおじさんの相手をする為に駆け足でおじさんの前までやってきた。話を聞く限り、あんまりいい人じゃないのかもしれない。
「自分のビルが建つのを見て何が悪いんだね?」
「そんな事言ってないですよ。ただここに来るには安全基準の装備が必要なんですよ」
「あ~この鉄の輪っかの事か。大丈夫だよ。ここは私のビルなのだから」
何が大丈夫なのかわからないけど、大丈夫みたい。この人は魔法が使えて落ちても浮けるのかもね。
「それよりもどうなんだ?少しは早く建てることができるのか?」
「今の所天気もいいですし、予定よりも二日程早くできると思います」
「二日?何を言っているんだ。一か月は早くしてもらわないと困るよ、君」
「一か月ですか?」
「そうだよ!」
アダチさんに言葉に憤慨したヤマダさんは持っていた扇子を畳んでアダチさんのおでこを叩いた。アダチさんは慣れている様子で目を見開いたまま聞き返している。
アダチさんは二日しか早くできないって言っているのに一か月早くすることなんかできないよね。
「無理ですよそんなの」
「じゃあ、施工料は割引だな」
「えっ」
「えっ、じゃないよ。雇い主の言う通りにできないのだから、そうなるだろ」
「ですが、これ以上労働時間を増やすと労働基準に」
「それはそちらの都合だろ。私は貴方達の会社の者ではないんですから」
アダチさんとヤマダさんの話は白熱していく、それに伴って聞いていたお父さん達の同僚が苛立ちを募らせる。
「あのデブまたアダチさんに突っかかってやがる」
「あいつが来なければ少しは早くできるんだけどな」
「あいつが今の仕事の進み具合を見て何がわかるってんだ」
「現場も知らない重役しかやったことないくせによ」
口々にそんな声が聞こえてきた。ヤマダさんには聞こえないほどの声だけど、僕は魔法を使って聞いた。ヤマダさんは最初から偉い人だったみたい、僕たちの世界でいう所の貴族の息子みたいな感じかな?自分の建物を作ってくれている人に向かって威圧しかかけられないダメな人、ちょっとお仕置きが必要かな。
「なんだ、地震か?」
地面が揺れて建物が揺れだした。
「凄い揺れだ!」
「私を守れ!」
みんな、安全対策で鉄の輪っかを自分のズボンと周囲の手すりに取り付けていたので揺れるだけだけどヤマダさんはフラフラしていて今にもまだ作られていない床に落ちてしまいそうになっている。
「プッ、だからちゃんと安全対策を」
「うるさい、いいから助けろ」
まだ、懲りてないみたい。もうちょっといじめてあげようかな。
「うわ!今度は風が!」
「突風注意の警報は出てなかったぞ!」
地震の次は風、ヤマダさんは今にも落ちてしまいそうになって顔が青ざめていく。
「ぎゃ~助けてくれ~」
床の網目状になっていた鉄格子を掴んで体が浮いている。ヤマダさんの所だけ下から上に風が吹いている、ヤマダさん専用浮遊風です。
「ルーク、そろそろやめてやれ」
「お父さんにはバレちゃったか」
ふっと風や地震が止んだ。お父さんは優しく僕の頭を撫でて止めた。
「ふ~ふ~・・・こんな高い所二度と上らんぞ・・」
ヤマダさんはそう言ってエレベーターに乗って降りていった。
『プッハハハハハ』
ヤマダさんが降りていくと同時にお父さんの同僚達が笑い出した。
「よ~し、みんな。鬱憤が晴れたことだし再開するぞ」
『お~』
それからお父さん達はせっせと建物を作っていった。僕みたいに一日で家を建てることはできないけど、お父さん達はヤマダさんのような人たちに耐えながらがんばっているんだな。今度あんな事しているのみたら空を飛んでもらうけどね。
「ははは、今日はルークに笑わされたな」
仕事が終わって帰りの車の中でお父さんは笑いながら話した。お父さんの同僚の人達も楽しそうに話してたな~。
「だがなルーク。あんまり魔法を使うのは良くないぞ。あの人にも守る人がいるんだから傷つけるような事はしちゃだめだ」
「うん、分かってるよ。傷はつけないで遊ぶだけにする」
「そうか。しかし、面白かったな」
僕を諭すように話したお父さんだったけど、ヤマダさんの顔を思い出して吹いてしまう。確かにあの顔は忘れられないね。
「そういえば大丈夫なのか?こっちの時間とルーク達の時間はかなりずれているのにこんなに頻繁に来て」
お父さんの心配もごもっともだよね。だけど大丈夫なんだ。
「それなんだけど大丈夫だよ。実験してみたんだ。砂時計を使って交互に実験したんだけど同じ速度で砂が落ちていたんだ。他にもいろんな実験をしたんだけど、大丈夫だった。たぶん、僕がゲートで繋げてしまったから同じ時間軸になってしまったのかも」
「そうか・・・神にバレたらやばいんじゃないか?」
「うん、たぶん、もうバレていると思う。でも、その時はその時だよ。世界が危ないんだったら僕は大人しく帰る。諦めるつもりはないけど、世界のみんなが危険だったら大人しく帰るよ」
「そうか・・・まあ、そんな事気にせずに今を楽しもうじゃないか」
お父さんは涙ぐみながらそう言った。僕の目にも涙が溢れてきたけど、会えただけでも良かったんだ。普通なら絶対にあえなかっただろうからね。
「お~お~、やっとるかね?」
お父さん達が働いている中、扇子で仰ぎながら恰幅の良いおじさんがエレベーターから降りてきた。
「あ~ヤマダさん、今日おこしになる日でしたっけ?」
「ん~来ちゃ悪いのかね?」
「いえ!滅相もない」
アダチさんがおじさんの相手をする為に駆け足でおじさんの前までやってきた。話を聞く限り、あんまりいい人じゃないのかもしれない。
「自分のビルが建つのを見て何が悪いんだね?」
「そんな事言ってないですよ。ただここに来るには安全基準の装備が必要なんですよ」
「あ~この鉄の輪っかの事か。大丈夫だよ。ここは私のビルなのだから」
何が大丈夫なのかわからないけど、大丈夫みたい。この人は魔法が使えて落ちても浮けるのかもね。
「それよりもどうなんだ?少しは早く建てることができるのか?」
「今の所天気もいいですし、予定よりも二日程早くできると思います」
「二日?何を言っているんだ。一か月は早くしてもらわないと困るよ、君」
「一か月ですか?」
「そうだよ!」
アダチさんに言葉に憤慨したヤマダさんは持っていた扇子を畳んでアダチさんのおでこを叩いた。アダチさんは慣れている様子で目を見開いたまま聞き返している。
アダチさんは二日しか早くできないって言っているのに一か月早くすることなんかできないよね。
「無理ですよそんなの」
「じゃあ、施工料は割引だな」
「えっ」
「えっ、じゃないよ。雇い主の言う通りにできないのだから、そうなるだろ」
「ですが、これ以上労働時間を増やすと労働基準に」
「それはそちらの都合だろ。私は貴方達の会社の者ではないんですから」
アダチさんとヤマダさんの話は白熱していく、それに伴って聞いていたお父さん達の同僚が苛立ちを募らせる。
「あのデブまたアダチさんに突っかかってやがる」
「あいつが来なければ少しは早くできるんだけどな」
「あいつが今の仕事の進み具合を見て何がわかるってんだ」
「現場も知らない重役しかやったことないくせによ」
口々にそんな声が聞こえてきた。ヤマダさんには聞こえないほどの声だけど、僕は魔法を使って聞いた。ヤマダさんは最初から偉い人だったみたい、僕たちの世界でいう所の貴族の息子みたいな感じかな?自分の建物を作ってくれている人に向かって威圧しかかけられないダメな人、ちょっとお仕置きが必要かな。
「なんだ、地震か?」
地面が揺れて建物が揺れだした。
「凄い揺れだ!」
「私を守れ!」
みんな、安全対策で鉄の輪っかを自分のズボンと周囲の手すりに取り付けていたので揺れるだけだけどヤマダさんはフラフラしていて今にもまだ作られていない床に落ちてしまいそうになっている。
「プッ、だからちゃんと安全対策を」
「うるさい、いいから助けろ」
まだ、懲りてないみたい。もうちょっといじめてあげようかな。
「うわ!今度は風が!」
「突風注意の警報は出てなかったぞ!」
地震の次は風、ヤマダさんは今にも落ちてしまいそうになって顔が青ざめていく。
「ぎゃ~助けてくれ~」
床の網目状になっていた鉄格子を掴んで体が浮いている。ヤマダさんの所だけ下から上に風が吹いている、ヤマダさん専用浮遊風です。
「ルーク、そろそろやめてやれ」
「お父さんにはバレちゃったか」
ふっと風や地震が止んだ。お父さんは優しく僕の頭を撫でて止めた。
「ふ~ふ~・・・こんな高い所二度と上らんぞ・・」
ヤマダさんはそう言ってエレベーターに乗って降りていった。
『プッハハハハハ』
ヤマダさんが降りていくと同時にお父さんの同僚達が笑い出した。
「よ~し、みんな。鬱憤が晴れたことだし再開するぞ」
『お~』
それからお父さん達はせっせと建物を作っていった。僕みたいに一日で家を建てることはできないけど、お父さん達はヤマダさんのような人たちに耐えながらがんばっているんだな。今度あんな事しているのみたら空を飛んでもらうけどね。
「ははは、今日はルークに笑わされたな」
仕事が終わって帰りの車の中でお父さんは笑いながら話した。お父さんの同僚の人達も楽しそうに話してたな~。
「だがなルーク。あんまり魔法を使うのは良くないぞ。あの人にも守る人がいるんだから傷つけるような事はしちゃだめだ」
「うん、分かってるよ。傷はつけないで遊ぶだけにする」
「そうか。しかし、面白かったな」
僕を諭すように話したお父さんだったけど、ヤマダさんの顔を思い出して吹いてしまう。確かにあの顔は忘れられないね。
「そういえば大丈夫なのか?こっちの時間とルーク達の時間はかなりずれているのにこんなに頻繁に来て」
お父さんの心配もごもっともだよね。だけど大丈夫なんだ。
「それなんだけど大丈夫だよ。実験してみたんだ。砂時計を使って交互に実験したんだけど同じ速度で砂が落ちていたんだ。他にもいろんな実験をしたんだけど、大丈夫だった。たぶん、僕がゲートで繋げてしまったから同じ時間軸になってしまったのかも」
「そうか・・・神にバレたらやばいんじゃないか?」
「うん、たぶん、もうバレていると思う。でも、その時はその時だよ。世界が危ないんだったら僕は大人しく帰る。諦めるつもりはないけど、世界のみんなが危険だったら大人しく帰るよ」
「そうか・・・まあ、そんな事気にせずに今を楽しもうじゃないか」
お父さんは涙ぐみながらそう言った。僕の目にも涙が溢れてきたけど、会えただけでも良かったんだ。普通なら絶対にあえなかっただろうからね。
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