上 下
158 / 165
その後

お父さん達の世界へ

しおりを挟む
 大きな魔石にゲートを作った僕たちはお父さん達の世界に降り立った。

「何あれ?映画の撮影?」
「さあ?」

 ゲートから出ると黒い服にスカートの女性が呟いていた。でも、僕は構わずにお父さんの所に向かう。

「ルーク、怪しまれてるよ」
「変な機械でパシャパシャうるさいにゃ」

 モナーナとニャムが周りの行動に困惑している。僕も気になるけど今はお父さんだよね。

「兄さんのお父さんどんな顔するかな?」
「喜んでくれるよ。ユアンのお父さんも泣いて喜ぶんじゃないかな?」

 歩きながら期待を胸にユアンと話す。何だかドキドキしてきた。

「お父さん!」

 お父さんが見えて僕は大きな声で叫んじゃった。周りの人達も反応してしまうほどで何だか恥ずかしいけどそれだけうれしいから仕方ないよね。

「えっ・・・」

 お父さんはあまりにも急なことで驚いている。僕はお父さんの胸に飛び込んだ。

「あなた、まさか、ルークなの?」

 お父さんの横にいた綺麗な女性、あのメモでも見た僕のお母さんだ。僕に気づいて目に涙を浮かべている。

「ルーク!ルークなのか?でも、俺達がこの世界に帰ってきてまだ三年だぞ」
「え?お父さん、僕はもう17歳だよ。お父さん達がいなくなって16年は経っているよ」
「「えっ!」」

 僕の成長を見てお父さん達は驚いている。僕も驚いたよ、だってお父さん達はメモの姿のまま何だもん。

「本当にルークなのか。大きくなって」
「そうだよ!」
「それにあの子たちはお前の良い子達か?凄いな。流石俺の子供だ」

 お父さんは僕を持ち上げて高い高いをしてくれた。僕は成長したとはいえ大人としては小さいからね。お父さんはユアンよりも大きいから軽々僕を持ち上げてる。かっこいいなお父さん。

「ちょっとカイト、ここじゃ」
「ん?ああ、人目がありすぎるな」

 僕らの周りには人だかりができていた。僕らの涙につられて泣いてくれている人までいる。この世界はとても平和みたいだね。

「じゃあ俺んちに行くか。母さんたちにも孫を見せられるしな」
「そうだね。お義母さんも喜んでくれるね」

 という事で僕らはお父さんの家に向かうみたい。おばあちゃんもいるんだね。僕らの世界じゃ、そんなに長生きできないからこの世界がどれだけ長い時間平和なのかが伺える。

「と、その前にみんな・・・服を買おう」
「そうね。とっても綺麗で似合っているんだけど、この世界じゃ目立ってしまうから」

 お父さんとお母さんはそう言って、大きな建物へと入っていった。何か読めない文字が書いてあるけど服屋さんみたいだね。服がいっぱい飾ってある。

「みんな、好きな服を選んでいいわよ」

 お母さんはそう言ってくれているけどお金とか大丈夫なのかな?

「お父さん、お金大丈夫なの?」
「ん?おいおい、子供が親の財布を気にするなよ・・・正直言ってそんなに持っていないぞ」

 やっぱり無理しているんだね。こんなにいい布を使っている服屋さんだもん、高いに決まってるよ。

「お母さん大丈夫だよ。僕らの服は特別だから・・・ほら」
「「ええ!」」

 着替えたい服に触りながら僕は目を閉じて服に命じた。するとみるみる服の形状が変化して半そでの白い服に変わっていく。モナーナのローブを量産したんだよね。僕の関係者は大体こんな服を持ってるよ。汚れもすぐに綺麗になるから助かるって孤児院で働く人達も喜んでたよ。

「非常識なスキルだな、俺よりもはるかにすげえ」
「ルークは苦労せずに暮らせたのね。よかった」

 お父さんはびっくりして、お母さんは涙をぬぐっている。

「でも、あまり人のいる前ではやるなよ・・・この世界には魔法はないからな」

 お父さんが小声で言ってきた。周りにいた人が驚いていたのであまり使わない方がいいみたいだね。僕らの世界でもこれをやると驚かれたから、魔法のない世界だとさらに驚くことなんだろうね。そう言えば魔法がないってことはマナがない事と関係しているのかな?

「全員服を変えれるのか・・・じゃあ、買わなくて大丈夫そうだな」

 モナーナ達も全員、好きな服に着替えていた。フリフリの付いたスカートとかでとても可愛い。ユアンもこういった服に抵抗がなくなったから普通に着てるね。

「早くここから去った方がいいわね」
「そうだな」

 お父さんとお母さんはそう言って足早に建物から出ていく。僕らも置いてかれないようについて歩いた。







 お父さんの家の前につく、とても大きくといくつも扉が外から見える。お父さんはお金を持っていないって言っていたけど、とてもお金持ちなのかも。

「着いたぞ」
「お父さんはお金持ちだったんだね」
「何言ってんだよルーク。ああ、そうか。これ全部が俺のだと思ってるのか」

 お父さんは頭を抑えて話した。この建物はお父さんの物じゃないみたい。でも、ここがお父さんの家なんだよね?

「この世界は人がいっぱいいるんだよ。だから、縦に家を建ててみんなで暮らしているんだ」
「ええ!じゃあ、知らない人が隣の部屋で暮らしているって事?」

 僕は驚愕した。一つ隣の部屋に知らない人が住んでいるんだよ、驚かない方がおかしいよね。

「はは、まあ、平和って事だよ。人が人を殺したり、盗んだりすることなんて稀なんだ」
「・・・何だか凄い世界なんだね」

 僕は感心しちゃった。だって凄い平和なんだもん。僕らの世界でも盗みなんてごく一部の人のやることだけど、こんなにいっぱいの部屋があるってことはいっぱいの人がいるって事だもんね。それだけそのごく一部の人がいると思う。だから、どうしても警戒してしまいがちだと思うんだけどな。

「立ち話もなんだから早く入ろう」

 お父さんがそう言って建物の中に入っていく、透明な扉を開いたその先に更に扉があってお父さんは何かボタンを押した。ボタンは光っていたけどマナの力は感じなかった。あれはどういう仕組みなのかな?分解してみたいな~。

「これはエレベーターっていうんだ。上や下に行くための箱だよ」

 お父さんはそう言ってエレベーターの中に入っていった。とても狭そうだけど移動手段みたいなものみたい。魔法のない世界で更に人は弱いのかもしれない。そんなことを考えていると僕らを乗せたエレベーターが上へと上っていく、この技術を使えば僕らの世界でもかつようできそうだな~。

「こっちだ」

 エレベーターが到着してお父さんがエレベーターからでてすぐの部屋の鍵を開けた。

「「ただいま~」」
「ああ、お帰り。早かったね」

 お父さんとお母さんが中に入ると声が聞こえてきた。たぶん、おばあちゃんだろう。何だか急に緊張してきた。

「母さん、驚くことがあったんだよ」
「びっくりしないでくださいね」

 お父さんとお母さんがそう言って僕らの手を引っ張った。僕らが部屋に入るとおばあちゃんはキョトンとしている。

「俺達の子供のルークと」
「そのお嫁さん達で~す」
「はあぁ~?」

 お父さんとお母さんが大喜びでそう言うと呆れた顔でおばあちゃんが声を漏らした。どうやら信じていないみたい。

「あんたらの子供がこんなに大きいはずがないだろ。馬鹿も休み休み言いなさい」
「母さん本当なんだって、アスミを連れてきた時もいったと思うけど、俺とアキノとアスミは別の世界に行ったって」
「ああ、聞いているさ。でもおかしいだろ。こんな大きな子供がいるなんて」
「まあ確かに」

 お父さんは真実を話しているのにおばあちゃんの話にうなずいてしまう。だけど、本当に僕はお父さん達の子供なのだ。それはただ一つの真実。

「お義母さん、カイトの話は本当です。私とカイトの子供で名前はルークっていうの」
「う~ん、アスミちゃんが言うんだったら本当なんだろうね。アスミちゃんの姿が変わって帰ってきた時も驚いたけど、今回はそれ以上に驚いたよ」

 お母さんが説得をするとすぐにおばあちゃんは納得したみたい。お父さんは腑に落ちない様子だけど、分ってくれたみたいでよかった。

「ってことは孫って事だよね。嬉しいね~こんなに大きい孫ならひ孫が見られそうだよ」

 おばあちゃんはそう言ってとてもうれしそうにしている。

「いや~嬉しいね~。ゴホッゴホッ・・ごめんね。近頃、咳が良く出ちゃうんだよ。ゴホッゴホッ」

 おばあちゃんは苦しそうに咳をし始めた。僕はすぐにヒールとキュアを唱えておばあちゃんを癒してあげた。

「あれ?咳が出なくなったね。それに何だか体が楽になったよ?」
「「ルーク!?」」
「えっと、ヒールとキュアを唱えたんだけど、ダメでした?」

 おばあちゃんは元気になったみたいだけど、お父さんとお母さんが驚いた顔で僕を見ている。やっちゃダメだったかな?

「さっきも言ったがこの世界には魔法がないんだ。それはなぜかと言うと世界樹みたいなマナを作る木がないからなんだ」
「マナを取り込んで私たちもあなたたちの世界で魔法を使えたけど、こちらの世界では使えなかった」
「え?でも今普通に使えたよ」

 お父さんとお母さんは驚きながらこの世界の話をし始めた。マナがないと人は大きな魔法は使えない。確かにそう言う話はあるけど、僕は内包しているマナが多いから使えると思うんだよね。たぶん、僕らの装備のマナも相当なものだから当分は大丈夫でしょ。

「ルークは予想以上の規格外な存在みたいだな。俺も少しだけ、戻ってきた時には使えたけどこんなに強力じゃなかったからな」
「そうだね。市役所の人に幻術を使ったっきりだね」
「あ~戸籍を手に入れる時に使ったあれな。流石に昔のアスミの戸籍を手に入れるのはできなかったけどな」
「死んじゃってたからね」

 お父さんとお母さんはこれまでの苦労を笑いながら話している。

「あの・・・」
「ユアンどうしたの?」

 ユアンは申し訳なさそうに口を開いた。

「僕のお父さんはどこに?」
「ユアンってことはアキノの・・・大きくなったな~それに偉いベッピンさんだ」
「アキノ君も喜ぶわね。すぐに連絡してみるわ」

 お父さんとお母さんはユアンを見て凄く喜んでいる。ユアンのお父さんも近くにいるみたいだ。よかった。

「すぐにくるって」
「あの置物で連絡できるの?」
「ああ、あれは電話ってやつだよ。携帯っていう電話もあるけど、家の中じゃあっちを使ってる」

 白い手のひらサイズのものと携帯といった電話をお父さんが見せてきた。どんなに離れていても電波が届けば連絡できるんだってさ。この世界は世界の果てまで離れていても届くらしい、何だかスケールが凄いな~。

「アキノが来るまでのんびりしていようか」
「そうね。ルークの今までの話を聞きたいわ」

 ユアンのお父さんが来るまで僕らはこれまでの話をお父さん達に話した。お父さん達は嬉しそうに僕らの話を聞いてくれて僕らの世界を懐かしんでいた。
しおりを挟む
感想 293

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...