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第四章 平穏
第六話 クルシュ様の心中
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「ここがその家なんだが」
「・・・ええっと、凄く大きいですね」
クルシュ様の馬車に乗って案内されたのはクルシュ様の屋敷くらい大きな屋敷だった。
「白金貨10枚の屋敷だからね」
エリントスに初めて来たときも気にはなっていたんだ。最初は領主さまの家だと思っていたんだけど、クルシュ様の屋敷は壁の外に建っている、この屋敷は誰のものだったのかな?
「この屋敷はお父様、ゼル様が住んでいた屋敷だよ」
「ええっ、お父さんの形見みたいなものじゃないですか。そんなもの買えませんよ」
「ゼル様も喜んでくれるさ。この街を救ってくれたルーク君の物になるんだからね」
「う~」
エリントスでは確かに英雄として認知されてしまった。街の中に屋敷をもっても大丈夫だと思うけど、外から来た人が見たら僕が領主みたいになっちゃうよ。
「本当に欲がないですね。この屋敷は白金貨10枚じゃ買えないはずですよ」
「安い買い物だと思うけど?」
ルビリア様とサファリア様がそう言ってくるけど値段とかの問題じゃないんだよね。
「管理も私たちがするし、どうだろうか?」
いらない屋敷を手放したかったのかな?
「旅にもでるし、そんなに来れないけど手放したいならもらいますよ」
「手放したいわけじゃないよ。形見なんだからそんなはずはないだろ」
「ああ、すいません。じゃあ、なんで僕なんかに?」
僕の言葉を不快に思ってしまったみたいでクルシュ様は声を荒らげて答えた。そんなに形見として大事なら、なんで僕なんかに?
「私は街を守れなかった最低な領主だよ。お父様なら守れていたはずだ」
天を仰いでクルシュ様がそういった。クルシュ様はあの日から今まで後悔していたのかな。そんな苦悩が見える。
でも、クルシュ様は住民の為に色々と事を動かしている。あの日のワーウルフの素材を隣町で売ってお金にして、それを元手に恵まれない人達に住居を作ったりしていたんだ。そのおかげで街は一回り大きくなって前よりも立派になっている。クルシュ様は決して最低な領主じゃあない。
「クルシュ様、そんなに自分を卑下しないでください」
「そうですよ。クルシュ様はみんなの為に頑張っています」
ルビリア様達がクルシュ様に寄り添って慰めている。
「それはワーウルフをルーク君が倒してくれたからだよ。私ではそれはできない。できなかったら街の者たちが死んでいたんだ。死んでしまったらそこで終わりなんだ。本来ならあの時、この街は全滅していた。だから、領主である私は死んだんだ。だから、ルーク君にこの屋敷を買ってもらって新しい領主に」
「ええ~、いやですよ領主なんて!」
王都から早めに退散したのもユアンが女の子だと気づいてしまった王様が僕にティリス様をあてがうんじゃないかと思ったからだ。それなのにエリントスで領主になったら意味がないよ。それに領主していたら位が上がっちゃう、ということは王族との結婚も貴族の反対が少なくて済んでしまう。どこを見てもいいことがないよ。
「断られるのはわかっている。だから、屋敷だけでももらってほしいんだ。助けてくれたお礼だと思ってくれればいい。どうだろうか?」
「よかった。領主なんて僕は絶対にしないからね」
「じゃあ」
「領主はクルシュ様がしてください。それに、クルシュ様が領主を決めるわけじゃないですしね」
「そういえばそうだね。でも、私が後任を推薦することもできるんだよ。もちろん僕は推薦したいんだけど」
「結構です!間にあってます」
「ははは、でも、よかったよ。家っていうのはやっぱり人が住んでいて初めて息をするんだ。掃除をして綺麗にしているようでも屋敷は昔のように明るくはならなかった。ルーク君が住んでくれればこの屋敷も息を吹き返すだろ」
クルシュ様に少し元気が戻って僕を揶揄い始める。領主に推薦なんてされたら避けようがないからね。危ない危ない。
「じゃあ、ここにサインとお金はさっきの渡したお金から、ルーク君が居ない時はプラム達、メイドが掃除をするから安心してくれ」
僕はクルシュ様の出した羊皮紙にサインしてお金を渡した。
「色々見られているとやりにくそうだから私たちは帰るよ」
「あ、気を利かせてもらっちゃいましたね」
「ははは、いいんだよ。私と君の仲じゃないか、じゃあまた来るよ。屋敷がどうなるのか期待しているよ」
クルシュ様は笑いながら馬車に入っていった。ルビリア様達も一緒に馬車にはいって僕らに手を振って帰っていった。
「今から屋敷を見て回るの?」
「うん、折角だからね」
「兄さん、僕たちも見ていい?」
「別に許可はいらないでしょ」
「邪魔じゃないかなって思って」
ルナさんは街を見て回っているのでモナーナとユアンと一緒に屋敷へ入っていく。
「・・・ええっと、凄く大きいですね」
クルシュ様の馬車に乗って案内されたのはクルシュ様の屋敷くらい大きな屋敷だった。
「白金貨10枚の屋敷だからね」
エリントスに初めて来たときも気にはなっていたんだ。最初は領主さまの家だと思っていたんだけど、クルシュ様の屋敷は壁の外に建っている、この屋敷は誰のものだったのかな?
「この屋敷はお父様、ゼル様が住んでいた屋敷だよ」
「ええっ、お父さんの形見みたいなものじゃないですか。そんなもの買えませんよ」
「ゼル様も喜んでくれるさ。この街を救ってくれたルーク君の物になるんだからね」
「う~」
エリントスでは確かに英雄として認知されてしまった。街の中に屋敷をもっても大丈夫だと思うけど、外から来た人が見たら僕が領主みたいになっちゃうよ。
「本当に欲がないですね。この屋敷は白金貨10枚じゃ買えないはずですよ」
「安い買い物だと思うけど?」
ルビリア様とサファリア様がそう言ってくるけど値段とかの問題じゃないんだよね。
「管理も私たちがするし、どうだろうか?」
いらない屋敷を手放したかったのかな?
「旅にもでるし、そんなに来れないけど手放したいならもらいますよ」
「手放したいわけじゃないよ。形見なんだからそんなはずはないだろ」
「ああ、すいません。じゃあ、なんで僕なんかに?」
僕の言葉を不快に思ってしまったみたいでクルシュ様は声を荒らげて答えた。そんなに形見として大事なら、なんで僕なんかに?
「私は街を守れなかった最低な領主だよ。お父様なら守れていたはずだ」
天を仰いでクルシュ様がそういった。クルシュ様はあの日から今まで後悔していたのかな。そんな苦悩が見える。
でも、クルシュ様は住民の為に色々と事を動かしている。あの日のワーウルフの素材を隣町で売ってお金にして、それを元手に恵まれない人達に住居を作ったりしていたんだ。そのおかげで街は一回り大きくなって前よりも立派になっている。クルシュ様は決して最低な領主じゃあない。
「クルシュ様、そんなに自分を卑下しないでください」
「そうですよ。クルシュ様はみんなの為に頑張っています」
ルビリア様達がクルシュ様に寄り添って慰めている。
「それはワーウルフをルーク君が倒してくれたからだよ。私ではそれはできない。できなかったら街の者たちが死んでいたんだ。死んでしまったらそこで終わりなんだ。本来ならあの時、この街は全滅していた。だから、領主である私は死んだんだ。だから、ルーク君にこの屋敷を買ってもらって新しい領主に」
「ええ~、いやですよ領主なんて!」
王都から早めに退散したのもユアンが女の子だと気づいてしまった王様が僕にティリス様をあてがうんじゃないかと思ったからだ。それなのにエリントスで領主になったら意味がないよ。それに領主していたら位が上がっちゃう、ということは王族との結婚も貴族の反対が少なくて済んでしまう。どこを見てもいいことがないよ。
「断られるのはわかっている。だから、屋敷だけでももらってほしいんだ。助けてくれたお礼だと思ってくれればいい。どうだろうか?」
「よかった。領主なんて僕は絶対にしないからね」
「じゃあ」
「領主はクルシュ様がしてください。それに、クルシュ様が領主を決めるわけじゃないですしね」
「そういえばそうだね。でも、私が後任を推薦することもできるんだよ。もちろん僕は推薦したいんだけど」
「結構です!間にあってます」
「ははは、でも、よかったよ。家っていうのはやっぱり人が住んでいて初めて息をするんだ。掃除をして綺麗にしているようでも屋敷は昔のように明るくはならなかった。ルーク君が住んでくれればこの屋敷も息を吹き返すだろ」
クルシュ様に少し元気が戻って僕を揶揄い始める。領主に推薦なんてされたら避けようがないからね。危ない危ない。
「じゃあ、ここにサインとお金はさっきの渡したお金から、ルーク君が居ない時はプラム達、メイドが掃除をするから安心してくれ」
僕はクルシュ様の出した羊皮紙にサインしてお金を渡した。
「色々見られているとやりにくそうだから私たちは帰るよ」
「あ、気を利かせてもらっちゃいましたね」
「ははは、いいんだよ。私と君の仲じゃないか、じゃあまた来るよ。屋敷がどうなるのか期待しているよ」
クルシュ様は笑いながら馬車に入っていった。ルビリア様達も一緒に馬車にはいって僕らに手を振って帰っていった。
「今から屋敷を見て回るの?」
「うん、折角だからね」
「兄さん、僕たちも見ていい?」
「別に許可はいらないでしょ」
「邪魔じゃないかなって思って」
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