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第三章 王都リナージュ

第二十四話 塔の王族

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 僕らは王城への門をくぐっていく、今回はユアンのお兄さんという肩書が知られているので衛兵さんは笑顔で通してくれた。あの人は操られていなさそうだね。

 城には入らずに大きく回って塔へと向かう。その間、騎士たちと交差したんだけど、気にも留められなかった。

「兄さん、どうしたの?」

 塔の頂上に着くとそこにはアルテナ様が花に水をあげていた。初めて会った時のような姿にデジャブを感じる。ユアンが僕が来たことに驚いてるけど顔はにやけているので喜んでいるんだと思う。

「お母さまに何か用なの?」
「ああ、ティリス様もいたんですね。それにそちらがアリス様ですか?」
「お初にお目にかかりますルーク様。ティリスがお世話になったようで」

 僕と同じくらいの背をした少女が僕にお辞儀をして話した。ティリス様よりも少し大人な少女、王族って感じに気品を感じる。

「アリスお姉さまにはルークのことを話しておいたわ」
「ユアン様のお兄様と聞いて驚きましたが強さは納得しましたわ」

 ティリス様はアリス様に僕のことを話してしまったようだ。このままでは有名人になってしまう。

「それで兄さん達どうしたの?」
「ちょっとここでは、ちょっとこっちきて」

 塔の頂上から一歩降りて螺旋階段の中間あたりまでユアンと降りた。そこで僕はこれまでのことを話し始めた。

「ええ、まさか、王都の周りでそんなことが?」
「そうなんだよ。それでお城の地下に集められているみたいなんだ」

 ユアンは驚きっぱなし。それからユアンは顎に手を当てて考え出した。

「ということはバルト様も怪しいね」
「そうなの?」
「うん、だってお城から一切出ないし、それに地下にしょっちゅういってるしね」

 バルト様は地下にしょっちゅういっているみたい。お城の地下に集められている時点でバルト様も怪しいとは思っていたけど、その通りだったみたい。

「ってことはバルト様にもノーブルローズが?」
「同じ世界樹が複数あるってことですか?」

 モナーナの疑問にルナさんも反応した。ノーブルローズは複数ある?確かにアルテナ様についていたノーブルローズは回収している。今も僕のアイテムバッグに入っているし、ってことは蟲の方かもしれない。

「蟲の可能性はゼロに等しいですね」
「え?」
「蟲は感情の一部を操作するのみです。騎士たちのようにプライドを強めても王様を操ることはできないでしょ」

 ルナさんの言っていることは的を得ている。騎士たちはプライドを高められたことで理性を振り切って僕を殺しにかかってきた。だけど、バルト様は違う。僕との会話でも冷静でとても威厳のある様子だった。
 
 因みに、騎士たちの蟲はユアンがとったそうです。クレイラット様にもそのことは伝えたので僕に謝るという儀式はなしにしてもらいました。よかったよかった。
 
「じゃあ、どうして?」
「ルークさんのスキルでわからないのですか?」
「う~ん、それが・・・冒険者ギルドから見た時よりもマナが濃くなっていて見れなくなっているんですよね」

 マナは刻一刻と濃さが増していっています。光も闇も入れないマナの霧で城内は覆いつくされているんだ。

「それじゃあ、中の人は?」
「魔物にはなりませんよ。人を魔物にするにはその人を殺さなくては・・・まさかそこまでするとは思えませんし」

 モナーナの心配する声にルナさんが答えた。僕たちはその答えに息をのんだ。まさか、人を殺して魔物に変えてしまうんじゃないのかって。

「まあ、そうするんでしたらとっくのとうにしているでしょう」
「ははは、そうですよね」
「だけど、念のために今日から上の三人には僕の宮殿で寝てもらうよ」

 ルナさんは僕たちの間にあった冷めるような空気を一蹴して話した。僕らは笑っているけど念の為にユアンが王族を宮殿のほうに匿うみたいです。

「宮殿ならシャラもいるし、ユアンもいる。心配無用になるね。そうとわかれば僕は宿屋で制作して」
「ルーク、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
「え~」

 最近、制作していないので素材がたんまりなんだよね。素材が加工してと囁いているんだよ。

「じゃあ、兄さん。僕はみんなを守るから兄さんは城に地下から潜入してね」
「ええ~」
「ルークが制作なんて言うからだよ。大丈夫私もいくから」
「もちろん、私も」
「・・・」

 僕らの話はある程度まとまった。バルト様を抜いた王族の人たちをユアンの宮殿に匿って、正面から城を攻めると地下の人が危ないので僕が宿屋から地下を掘り進んで城に潜入することになりました。ああ、制作できなくて素材がたまりそうです。

 確かに僕が空気を読まないで制作したいなんて言ったのは悪かったけど、まさか、ユアンが・・・いい子だったユアンがモナーナに毒され始めたのかな?兄さん悲しいな。

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