上 下
126 / 165
第三章 王都リナージュ

第二十二話 異変

しおりを挟む
「それでバイスはどんなことをしている人なんですか?」

 僕らはお頭と言われていた男にバイスの事を聞くため話すことになった。木箱にお頭が座るのを確認して僕らも木箱や樽に座った。

「まず、俺の名はバックルだ。もう、この街には近寄らない予定だから話すが盗賊団の頭をやってる」
「盗賊団?」
「おいおい、ちょっと待てよ。俺たちはいわゆる義賊ってやつだぜ。困っている村々に金を落としてふっくらと太った貴族や司祭から金を奪ってるんだ。まあ、騎士とかが護衛にいる時は多少は人を殺める時はあるが、普通の盗賊よりは人を殺しちゃいねえよ」

 盗賊団の頭と聞いて僕は怪訝な顔で見つめるとバックルは両手を顔の前でブンブン振って悪い盗賊ではないとアピールしてきました。本当にそうなのかわからなかったのでルナさんを見ると頷いているので大丈夫なのがわかりました。それにしても初めて夢見のスキルを僕に使った時とは大きく違うよね。あんなに顔を近づける必要はないんじゃないのかな。ちょっと、ルナさんそこんところ聞きたいな。

「俺の事なんてどうでもいいだろ。それよりもバイスだろ?あいつ最近金払いがいいんだよ。それでおかしいと思って俺は部下に調べさせたんだ。そうしたらどうなったと思う?」
「・・・」
「俺もびっくりなんだがよ、なんと城に入っていったんだよ」
「お城に?」
「ああ」

 裏で働いている人がお城に入っていった。そして、金払いが良くなったということは。

「どうやら、王族にコネができたみたいでよ。それで金が多く入ったってわけよ。コネまではたどり着けなかったがそういうわけで俺は王都を離れたいと思っていたってわけだ」
「それが離れる理由だったの?」
「それだけじゃねえけど、主にそれが理由だがな。王族とライバルが仲良くなっちまったらあとはわかるだろ?」

 バックルの言葉に僕らは頷いた。裏で働く人達にとって表で働いている人は敵ではないにしろ障害ではある。それがライバルに手を貸すことになるって事。今は大丈夫だけどいつかはバックルを捕まえるために情報提供されてしまう。ようは売られるってことだね。
 でも、バックルはそれ以外の理由で王都を離れたいと思っていたらしい。その理由はなんなんだろう?

「前々から引っ越しを検討していたの?」
「ああ、あのオークの群れは知ってるだろ?それが理由さ」

 僕らは頷いて答えた。バックルはそれを見て話し出した。

「いろんなところで魔物が群れを成している。それは冒険者なら知っているだろ。だが、王都はそれ以上におかしなことになってる。それが、周囲から魔物がいなくなってる事だ。傍目から見れば魔物がいなくてよかったね、で終わりだ。しかし、違うんだよ」

 バックルは再度煙草を取り出して吸いだした。モナーナがすっごい顔で見ているけど続けさせます。

「魔物ってどうやって生まれるか知ってるか?」
「その土地のマナが集まって虫やそれよりも小さな生命に溜まると生まれるんでしたっけ?」
「流石エルフだな。俺たち人族では虫と言われているがそれ以外があったんだな。まあ、そういうことよ。魔物がいないって事はマナがないんだ。マナがないと作物も育ちにくい。作物がないと食べ物がなくなっていくから人はいなくなる。これから王都は大変なことになるってこった」
「マナがない?それはおかしいですよ。マナは多いんです。王都の周り、正確に言うと城を中心にですね」

 バックルの話を聞いてルナさんがおかしいと指摘してきた。王都の周りにはマナがあってその外には全然ない?どういうことだろう?

「エルフならマナが少しは見えるか。しかし、おかしいぞ。王都には他にもエルフはいる。なんで騒がないんだ?」
「たぶん、この状況に慣れてしまったのでしょう。寝ている間にこうなっていたのなら気付かないかもしれません。それか、群れに夢中だったのかも」

 バックルの疑問にルナさんが答えた。確かにそれなら気付かなくてもおかしくないかな。でも、そうなるとルナさんは王都に来た時に気付いていたって事だよね。

「実は来た時におかしいと思ったのですがそれはノーブルローズのせいだと思っていたのです。ノーブルローズをアルテナから引き剥がして終わりだと思っていたのですが、別にもいるということを聞いて納得していたんです。更に今回のバックルの話で納得しました」

 ルナさんは僕に耳打ちで話した。ルナさんはどうやら、気付いていたみたいだけど、アルテナ様のせいだと思っていたようです。だけど、違うことに気付いて疑問を口にしたみたい。

「そう言うことか、しかしおかしいな。それじゃあまるで、王都にマナが吸われてるみたいじゃねえか」

 考え込んでいたバックルが口を開いた。確かに、そう思うよね。たぶん、その推測はあたりだと思う。

「こりゃ、引っ越ししている場合じゃねえかもな」

 バックルは煙草を踏み消して立ち上がった。モナーナが嫌そうな顔だ。

「俺も周辺で色々調べてみる。お前たちも何か調べているんだろ。何かわかったら俺にも教えてくれ。じゃあな。って連絡手段がないよな。・・・そうだ。冒険者ギルドのルワースって知ってるか?」
「[金色の旗]の?」
「おお、流石ルワースだな。そうそのルワースだよ。そいつに連絡してくれ。秘密裏に俺たちをサポートしてくれてたんだが、これはそういう小さな話じゃねえ。王国の存続に関わる話だ。もちろん、ルワースにも伝えておくからよ。じゃあ、そう言うことでまた会おうぜ」

 どうやらルワースさんの知り合いだったみたい。義賊って言うのは本当の事のようだ。あのルワースさんがサポートしていたのだから信じられるでしょ?
しおりを挟む
感想 293

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

処理中です...