上 下
124 / 165
第三章 王都リナージュ

第二十話 端仕事

しおりを挟む
 アズが衛兵にチンピラ達を届けに行って、僕はただいま最後の掃除を終わらした。

「ふう、綺麗になったと」

 僕は一息ついて樽に腰かけた。まだまだ冒険者ギルドには端仕事がびっしりある。素材もどっさりと手に入ったしうまうまだね~。

「おいおい、なんだこりゃ。路地が綺麗になってやがる」

 樽に座っていると黒髪で黒ひげのおじさんが驚いていました。そりゃ、真っ黒だった地面が真っ白な大理石のような床になっていたら驚くよね。

「これじゃ、堅気のやつらが来ちまうじゃねえか。・・・ここを掃除したのはてめえか?」
「はいそうですけど」

 おじさんは僕をにらみつけた。あれ?掃除しちゃダメだったかな?

「なんでこんなことしやがる」
「冒険者ギルドで依頼が貼ってあったから・・・」

 おじさんが理由を聞いてきたので答えると頭を抑えてため息をつくおじさん。

「あのな~ありゃ端仕事だぞ。そんな依頼やる冒険者がいるかよ」
「ええっ」

 どうやら、王都での端仕事とは誰もやらないものらしいです。驚愕です。じゃあ、だれが街を掃除するの?

「街は定期的に清掃業の奴らが掃除するんだよ、そいつらの仕事を奪っちまうじゃねえか。それに路地は汚くしなくちゃいけねえんだよ」
「ええ~何でですか、ここだって街の一部でしょ。綺麗にしなくちゃ」
「は~、お前、田舎者か。王都の路地っていうのはそういうやつのたまり場なんだよ。掃きだめを作っとかないと外で知らないやつが絡まれちまう。まあ、絡まれるのは田舎者だけだけどな」

 は~そういうことか、掃きだめを作って普通の人がそこに行かなければ被害が減るってことか。それなら、全部掃きだめ綺麗にしてその人たちも綺麗にしちゃえばいいんじゃないのかな?

「そういう考えもあるんですね。わかりました」
「そうかそうか、じゃあ」
「じゃあ、全部綺麗にしちゃいます」
「分かってねえじゃねえか!」

 僕の言葉に憤りを表したおじさん。そういえばこの人は何なんだろうか?街に詳しいみたいだけど。

「掃除をやめろって言ってんだよ」
「やめませんよ。依頼されているんですからやります」
「やめねえって言うのか。そうか、お前、名前は」
「僕ですか?」
「お前しかいねえだろ」
「ルークです」
「ルークか、覚えておくぜ。だが肝に銘じろ、俺はバイスだ。俺に逆らったことを後悔させてやるよ」

 おじさんはそんな捨て台詞をはいて路地から出て行ってしまいました。バイスさんか、だれだかよくわからないけど、路地を綺麗にしてほしくないみたいだね。ってことは闇の仕事で暮らしているのかな?それだとやだな~。でも。目を付けられちゃったみたいなので妨害されたら綺麗にしてあげよう。

「ルーク、戻りました。何かあった?」
「う~ん、ちょっとね。路地を掃除しているのを注意されちゃって」
「ええ、そんなことってあるの?だって依頼だよね」
「う~ん、端仕事は普通、冒険者はやらないんだってさ。だからあえて出していたみたいなこと言っていたよ」

 アズがチンピラを衛兵に渡して戻ってきた。僕はアズにバイスという人と話した内容を話すと驚いていた。やっぱり、普通におかしなことだよね。

「端仕事として出しておくことで掃除しようとしているんですよって意志を示しているから掃除の人が来ないとか?」
 
 アズの解釈をきいて僕は納得して頷いた。ああ、そういうことね。それでわざわざ冒険者ギルドに依頼をだしていたんだね。

「そのバイスって人もこんなに綺麗にしてしまうとも思っていなかっただろうし、びっくりしてたでしょ?」
「うん、これじゃ普通の人がここを通ってしまうだってさ」
「ははは、確かにこの路地も凄く綺麗になっちゃったね」

 壁も地面もピッカピカで毎日歩きたいほど綺麗になりました。これならチンピラじゃなくて女の人とかも井戸端会議できるんじゃないかな。

「まだまだ、時間があるからもっと掃除するぞ~」
「ええ、忠告は守らないの?」
「街は綺麗な方がいいに決まってるよ。絡まれたらその人も綺麗にしてあげよう」
「綺麗にって衛兵に渡して罰を受けるってこと?」
「そうだね。反省させて綺麗にね」

 ということで僕はユアンが城を調べている間、街を綺麗にしていきます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

平山和人
ファンタジー
事故で死んだはずの俺は、生前やりこんでいたゲーム『エリシオンサーガ』の世界に転生していた。 しかし、転生先は不細工、クズ、無能、と負の三拍子が揃った悪役貴族、ゲルドフ・インペラートルであり、このままでは破滅は避けられない。 だが、前世の記憶とゲームの知識を活かせば、俺は『エリシオンサーガ』の世界で成り上がることができる! そう考えた俺は早速行動を開始する。 まずは強くなるために魔物を倒しまくってレベルを上げまくる。そうしていたら痩せたイケメンになり、なぜか美少女からモテまくることに。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...