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第三章 王都リナージュ

第十一話 狼の獣人

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 冒険者ギルドの地下訓練場にはあまりいい思い出もないので行きたくないのだけど、僕らはシルフィさんとダネンさんに連れられて地下訓練場へ。

「大丈夫なの?ルーク」
「う~ん、あんな事されたから理由は知りたいよね」

 心配そうに尋ねてくるモナーナに僕は答えた。
 今後もこう言ったことがあるかもしれないから知っておきたいんだけど、なんで訓練所かってことのほうが気になるよね。

 僕たちは訓練場の中央に案内されてそこで地面に座って話すことになった。観覧席でも良かったんだけど、それじゃほかの人にも聞かれてしまうとの事です。

「いやいや、さっきはいきなり攻撃してすまなかったね」
「ほんとにびっくりしましたよ」

 ダネンさんは改めて僕らに謝ってきた。僕は許してあげようとしているんだけどルナさんは少しムスッとしたままです。

「ルークさんは人が良いですからね。私は許していませんよ」
「ははは、上でも凄い殺気だったしね。わかっているよ」

 ルナさんがダネンさんに許していないことを話すと彼女は無邪気な笑顔でそれを察した。

「それでどうしてこんなことに?」
「それは私が答えるよ」

 僕の問いにシルフィさんが話し出した。彼女の眼は僕を捉えて離さないでいる。怖いよシルフィさん。

「私たち獣人種にはいろいろな種族がいる。それは知っているか?」
「はい、猫とか犬とか」
「そう。私は見ての通り狼、その中でも特別な種族なんだ」

 話すとシルフィさんは俯いて頬を染めている。

「その特性で、その・・・強い者の匂いがわかるのだが。それであなた達が引っかかって特にルークさんの匂いがその・・・」
「ええっ僕ってそんなに臭いの?」
「ルークは臭くないよ」
「そうだよね?」

 シルフィさんの言葉に僕は自分の匂いを嗅いでみんなに聞くとモナーナが激しく否定してくれた。

「だから、強いものの匂いといっているだろ。フェロモンというんだが、それを感じてしまったのだ。私の故郷のものにしかわからん匂いだ」
「そうなんですね。よかった」

 シルフィさんの言葉に僕は安心して声をもらした。獣人の人にしかわからない臭さがあるのかと思って心配してしまいました。

「それでなんだが・・・私たち、ハイウルフの獣人は強き者の子を欲してしまうのだ。それでその・・・襲ってしまったというわけだ」

 シルフィさんは話しながら段々と顔を赤くして最後には俯いてしまった。
 ということは僕に欲情してしまったってことかな?おへそを舐める行為はやっぱりそういう意味ってことだったんだね。

「一時の気の迷いとも思ったのだが今もまだ君から眼を離せないでいる。これは私の血が君を求めているということ。どうか君の子を」
「ちょっと待った~。シルフィ落ち着け、みんな固まっているぞ」

 シルフィさんが僕に近づこうとしてきたのでみんな後ずさり、ダネンさんがシルフィさんを落ち着かせるために抱き留めている。凄い力なのかズルズルと押されています。

「ルーク帰ろう」
「そうだね。近づくからこうなるんだし」
「ああっ、そっちも待った!訓練場に来たのはもう一つ用事があったんだよ」

 目がハートマークになっているシルフィさんを抑えながらダネンさんが僕らを引き留める。

「私と戦ってほしいんだよ」
「・・・」
「タダとは言わないよ。私はドワーフだ。色々、金属には詳しいよ。お前も結構いじっているだろ?ドワーフもそういった匂いに敏感でね」

 ダネンさんは戦う報酬としてドワーフの知識を提示してきた。確かにドワーフさんと関わりをもっておいて損はないか。でも、僕が武器を持って戦うとこの訓練場が壊れかねないんだけど。

「ルークが戦ってしまうと被害が出てしまいます。だから、私が代わりに」
「確かにあんたからも強さを感じるが、そんなに強いのかい?」
「はい」

 モナーナが代わりに戦ってくれるというとダネンさんが首をかしげた。それに即答するモナーナを見て彼女は微笑んだ。

「こりゃシルフィだけじゃなくて私も欲しいもんだね」
「・・・」

 ダネンさんの言葉に僕は固まってしまいます。彼女たちって種族の特徴なのか露出の高い服なんだよね。それで、そんな求められてしまうと恥ずかしい。

「ルーク、顔がにやけてる」
「えっそう?」
「もう、ニャムとユアンに言いつけるから」
「なんでそこでユアンが出るの」

 僕の顔はにやけていたようです。ものすごくモナーナが嫌そうな顔していました。モナーナは怪訝な顔でニャムさんとユアンに言いつけるって言ってきたんだけど、なんでユアンが出てくるのか首をかしげてしまう。

「ユアン?あんたらユアンの知り合いなのかい?」
「ルークはユアンのお兄ちゃんだよ」
「なっ、ユアンが大好きなお兄さんか・・・なるほど、ネネの妄想とは少し違うようだけど、ある意味、萌えるね」

 ユアンの兄だとわかるとダネンさんは僕を隅々まで見回した。シルフィさんを抑えながらよくできるな。

「ユアンのお兄さん、申し訳ないけどそろそろ腕が疲れたよ。また唾液を入れた水をくれないかい?」
「ああっ、そう言うことですか。それで上でもそうしたんですね」

 コップに唾液を入れた行為が謎だったけど欲情を抑制するための行為だったようです。モナーナがすぐに水を取り出してくれて、僕はコップに唾液を入れた。水に僕の唾液が浸透するのを見てシルフィさんに飲ませると元の冷静そうな彼女に戻っていった。

「少し油断すると持っていかれる。君のフェロモンが強力すぎるんだ」
「はあ・・・」

 シルフィさんがため息交じりに言ってきました。そんなこと言われても、僕は何もしていません。
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