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第三章 王都リナージュ

第六話 騎士

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「皆さんには迷惑をおかけしました」
「私からも謝るわ」
「いえいえ、実害はルナさんが叩かれた程度ですから」
「ちょっとルークさん。私、結構、ダメージあったんですけど」

 アルテナ様を助けて一息つくと下の部屋で今回の事を話してもらうことになった。なんで世界樹がアルテナ様の手元にあったのかを聞いておいた方がよさそうだから。
 アルテナ様とティリス様が謝ってきたんだけど僕とモナーナは実害がなかったのでルナさんを見て話したんだ。するとルナさんは叩かれたわき腹を抑えて怒っています。確かに普通なら手すりを越えて塔から放り出されてもおかしくない勢いだったね。流石、ルナさん、伊達に狩人をしていない。

「本当にすいません」
「私でしたから大丈夫でしたが普通の人だったら大変なことになっていましたよ」

 王族であるアルテナ様にづけづけと意見を言っているルナさん、何とも豪胆だろうか。ああ言うのは結構憧れるな~。

「それでどうしてノーブルローズを手に入れることが出来たんですか?」

 僕はアルテナ様に手に入れるに至った経緯を聞いていく。

「実は半年ほど前、旅芸人がやってきたのです。とても多彩な芸をする人達で私とバルト様も凄く楽しんでいたの。その旅芸人達を束ねていた団長と言われる人が私に変わった種があると言ってきてそれを育てたのです。すると、驚くことにその種から育ったそれは花となり私に直接話しかけてくるようになったのです」
「それでお母さまは共感してしまったのね」
「そう、だってこの王都でさえも路頭に迷っている人たちがいる。子供も孤児院には入れても満足に生活できていない。実りがあればみんなで分け合って満足に食べられない人がいなくなると思ったの。私の体を使って少しづつでも実りのいい果物や野菜が育てばと思って」

 アルテナ様はとても強い正義感で動いていた。それが全てダメとは言わないけど、自分を犠牲にしすぎだよね。バルト様に相談すれば色々解決できると思うけど。それにしてもノーブルローズは助けを求めていたようなことをレインは言っていたけど、話が違うな~。

「お父様にそういった相談はしなかったの?」
「バルト様には言えないわ。路頭に迷っている人に恵みを与えるなんて言ったら貴族のあたりが強くなるもの。これは私だけでなんとかしないといけないと思っていたのよ」

 う~ん、なんで自分で背負いすぎるかな。何事もなくてよかったけどさ。貴族と王族はそれ程仲はよくないのかな。

「今度はちゃんと相談してくださいね。それじゃ僕たちは宿屋を探さないといけないので」

 ノーブルローズも回収できたし、目を付けられる前に城を出ないと。

「待ってください。助けてもらっただけで何もしないのでは私の気がすみません」
「いえいえ、お気になさらずに」
「では、お金だけでも」
「お金もいりません。そのお金で出来ることを」
「あなたはまるで英雄のようですね。神に感謝しなくては」

 何もいらないといった僕を拝み始めてしまったアルテナ様。お願いだからやめてください恥ずかしいです。

 僕らは螺旋階段を下って、塔を出ると僕らは面食らう状況になっていました。

「ルークとはお前か?」

 騎士団が30人ほどで塔を包囲していて、リーダーっぽい人が僕へと話しかけてきた。なんだか嫌な予感。

「ティリス様の従者になりたいと聞いたのだが本当か?」

 強面の騎士が僕へとそういってきた。この人はこの騎士団のリーダーなのかな。

「ルークは私の従者になる予定よ」

 騎士と話しているとティリス様が後ろからわって出てきて声を張り上げて言ってきた。その言葉に騎士の男が怪訝な顔で僕を見てきた。

「ルーク、ルークというとエリントスの英雄か!1レベルでワーウルフを1000は殺したという。そんなデマで王族の従者など片腹痛い!」

 騎士は憤りを表して地団駄を踏んだ。怪訝な顔で騎士は手袋を外して僕へと投げつけてきた。

「決闘だ!」
「ええ!!」

 どうやら、僕はこの人と決闘をしないといけないようです。モナーナがすっごい顔で騎士を睨んでいる。僕はため息をついてうなだれた。
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