上 下
88 / 165
第二章 黒煙

第四十四話 解体中に

しおりを挟む
 休憩で眠くなってしまったのですぐに解体に戻った。二階は終わったので一階部分をコネコネしていきます。一階の玄関以外をやり終わって一息つくとある物に気が付いた。
 玄関の二階に上がる階段の下に扉が付いていて物置のようになっていた。僕はその物置の床が隠し扉だと気づいたんだ。

「物置の下に何を入れているんだろう?」

 興味本位で隠し扉の中へ入っていく、扉の先にははしごがある、下っていくと洞窟のようなジメジメした空間が。はしごを降りて通路を直進していくと更に下る階段があった。

「どこまで続いているんだろ?」

 とりあえず調べておかないと危険かもしれないので進んでいく。

「・・・」
「君達は・・」

 通路を歩いて行くと広間が現れて鉄の檻の中に小さな子供達が入っていた。
    孤児院とは違って色々な種族の子供達、これはどういう事?まさか、子供達を売っていたのか、領主と言う隠れ蓑を使って子供を売っていたっていう事みたい。
    これはダリルさんに伝えてルザーの刑を重くするようにしてもらわないとダメだね。

「僕はルザー達の仲間じゃないよ」
「・・・」

 ルザー達に怯えていると思って僕はそう言ったんだけど子供達はみんな怯えて縮こまっている。もしかしてこの子達は言葉が話せないんじゃ?

 奴隷としてこういった子供達を買う者達は喋れない方が都合がいいのだ。この世界の悲しき現実にルークは悔しさを滲ませた。

「こんなに近くにいたのに気付いてあげられなくてごめんね。怪我している子もいるみたいだからみんなに魔法を使うけど怯えないでね」

 子供達の中には足や手がない子や種族の特徴ともいえる耳などの欠損が見受けられた。なので僕は広間いっぱいに回復魔法を使った。
    みるみる子供達の欠損は回復していく。だけど子供達は俯いたり横たわったまま動けないでいた。
    僕は首を傾げていると体の欠損がなくなった事で子供達のお腹から鳴き声が聞こえてきた。ああ、そうか、

「お腹空いていたんだね。気付けなくてごめんね」

 僕はアイテムバッグから料理を取り出した。ダリルさんに作ってもらっていたパンとかの残り物だけどアイテムバッグに入っているので暖かいまんまなのだ。
    残り物もちゃんともっていられるって最強だね、こんなに美味しい物を捨てるなんてもったいないからね。

「食べ?」
「いいよいいよ。どんどん食べて」

 この中で一番年上かなって思う位の子がカタコトで僕に食べていいのか聞いてきた。
    僕は身振り手振りを加えて勧めると花が咲いたように笑顔を見せてパンにかぶりついた。
    ざっと見ても30人はいるこの子達をどうしたものか。孤児院を作ったのは良いけど流石に30人を加えるほどはでかく作ってません。これは更に拡張する必要があるね。

「君は少し言葉が分かるのかな?」
「すこ    し」

 パンを食べながら少年は僕に答えた。少しでもわかるんだったら助かるけどこの子以外はみんな話せないみたい。

「あ の お兄さ ん 友 回復 させ て くれ て ありがと」
「ううん、僕は当たり前のことをしただけだよ。でもごめんね」

 僕は涙目で少年の頭を撫でる。少年は頬を赤く染めてされるがままになってる。
    この子はエルフと言われている子なのかな、エリシーナちゃんみたいに耳が長くて尖っている。こんな小さな子供にこんな仕打ちをするなんてほんとに腹が立つ。

「みんなついて来てね」

 檻には鍵がかかっていたので鉄格子を捻じ曲げて子供達を出しました。
    子供達は目を大きく開けて驚いていました。もっと魔法なんかで助けた方がかっこよかったかなと反省、今後に生かします。
    二列で手をつないでもらって、僕を先頭に通路を歩いて行く。お腹もいっぱいになって元気になった子供達はとても元気に笑いながらついて来ている。
    最初あった時は絶望を表情に出していたけど、今は幸せいっぱいといった表情になってる。

「ルーク、大丈夫?」
「その子たちはどうしたんだにゃ?」

 僕の姿が見えなくなって心配したモナーナ達が隠し扉をみつけて降りてきたみたい。子供達を見て驚愕しています。人数も凄いからそりゃ驚くよね。

「ルク さん この人 達は?」
「ああ、僕の仲間のモナーナとニャムさん、あと弟のユアンだよ」

 僕の後ろにいたエルフの子が心配そうに聞いてきて、僕はモナーナ達の紹介をすると安心したようで微笑んでいました。

「アウアウ」
「だ め このひと たちは おかあさん じゃ ない」
「どうしたの?」
「この子 が ニャムさ みて おかあさん だって」

 猫の獣人の子供が言葉にならない声をだしていたのでエルフの子に通訳してもらうとニャムさんをお母さんだと思ってしまったようです。この子達は親を知らない子供達のようで何だか悲しい。

「お母さんじゃないけどにゃ、今日からみんな友達にゃ」

 ニャムさんはそう言って子供達と手をつないでいく。子供達も嬉しそうにニャムさんの手を取りあって笑顔になっていく。
    ユアンとモナーナも子供達と手をつないで洞窟の通路を歩いて行く、梯子まで着くと子供達を一人一人昇らせていった、上にはユアンが先に上がっているので安心してください。

 子供達を全員、嗜む子牛亭の方へ案内してダリルさんに報告すると頭を抱えていました。
    お金関係の話は大丈夫なんだけどラザラさん一人じゃ孤児院を維持できないと悩んでいます。あのチンピラ達じゃあんまり期待できないしな~。
しおりを挟む
感想 293

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...