上 下
80 / 165
第二章 黒煙

第三十六話 愛は盲目

しおりを挟む
 嗜む子牛亭に孤児院を作る作業をして外が暗くなった。この時を待っていたと言わんばかりに僕は例のあの自販機を設置していく。

「ルークさん」
「あ、ワティスさん」

 木箱を設置しているとワティスさんに声をかけられた。横にはクコが付き添っているのでこんな外が暗くなっても安心だね。

「それがエリントスを有名にした自販機という奴か?」
「そうだよ。自動販売してくれる木箱で自動販売機だよ」

 僕は得意気に胸を張った。名前は自分で考えたわけではないので偉そうにはできないんだけどね。

「ワインプールの領主には承諾を得たんですか?」
「いえ、連絡すらしていません。ですがダリルさんが大丈夫って言っていたのでやっちゃおうと思って」

 夜中に外に出ようと思ったらダリルさんに声をかけられたんだよね。それでポーション自販機の事を聞かれて大丈夫って言われたんだ。ワティスさんの顔を見ると少し複雑な心情のようで考えこんじゃった。

「ポーションがいつでも買える木箱、こんなものを置いてしまったらポーションを売る商人は行き場を失いますよ」
「教会の回復魔法にすがるよりはいいと思うんです」
「完全に教会と敵対するという事ですか?」
「敵対するっていうと語弊があるけど、とにかくあの司祭には喧嘩を売ってます」

 僕はあの司祭には頭を下げません。司祭のくせに子供達を売り買いしたり物扱いするし。なにが司祭だって言うんだ。あんなの司祭なんて名乗らせている教会なんてなくしちゃったほうがいいんだ。

「確かに人間の世界では教会という団体は強いな。何度か大司祭とか言うのがわらわに喧嘩を売ってきた事があったがそいつらもいきがっておった。一瞬で灰になっていったが」
「・・・」

 ちょっとクコ、ワティスさんの前で何という事を言っているんだ。恋は盲目って言うけど流石にこの話は看過できないでしょ。

「流石クコ、一生愛しているよ」

 あ、盲目だったみたいです。ワティスさんは呆れていたんじゃなくて憧れていたみたい。輝く目でクコを見つめている。クコはクコでまんざらでもない様子です。

「ルーク、話は変わるのじゃが、いいか?」
「どうしたの、改まって」
「シャラの事なんじゃ」

 そういえばそんな白い龍いたね。僕らに撃退されて一目散に街から出ていった白い龍さん。クコを亡き者にして自分が頂点に立とうとした龍。全くいい迷惑だよね。

「あやつ、まだ諦めていない様なのじゃ。嫌な予感がする」
「ええ、って事はこの街の中にいるの?」
「かもしれん」

 かもか~。不確かな事を言ってみんなを心配させたくないな。とりあえずみんなには言わずにいよう。

「まあ、ポーションは銀貨一枚で買えるように変えておいたからクコもいくつか持っておいてよ」
「・・・これ全部レジェンドハイエリクサーなのか。どういう仕組み何じゃ?」

 僕のポーション自販機を見て呆れながら話すクコ、ワティスさんも目が飛び出るほど驚いてる。レジェンドハイエリクサーは生きていれば何でも治るって言う物らしいから驚くのも無理はないよね。何でも両手両足がなくなった人も一瞬で治ったらしいよ。凄いな~って僕のなんだけどね。

「は~、ここまで規格外なのに目立ちたくないとか言う、おかしなルークじゃ。そのくせ困っておる孤児院を救おうと奮闘しておる」
「微力ながら私、ワティスも協力します。教会がルークさんに敵対した時、ワティス商会は反旗を翻します」

 クコが話した後ワティスがすかさず僕への助力を申し出てくれた。僕を味方につけた方が勝算があると計算したんでしょうね。それにクコがいればいくらでも素材が手に入るしぼろもうけだもんね。
    まあ、そんな事をするとは今のワティスさんからは想像もできないけど、だってクコにぞっこんだもん。
    クコの素材は僕も持っているけど圧倒的強者感を感じる素材でメラメラと黒い炎を宿してるんだよね。ユアンの装備でも作ってあげようと思ったんだけど圧倒的悪役感が出そうで考えあぐねてます。

 着々とポーション自販機を設置していく僕はルンルン気分です。これでこの街でも死人が減っていくでしょう。それにリザードマン達の動向が怪しいって言ってたから冒険者の人達には良い物だよね。
 そういえば、白い龍の動きとこういった魔物の動きはかんけいしているのかな?こう言った事って決して偶然じゃないと思うんだよね。嫌だけど英雄の話なんかでこう言った事があったし。
 英雄が偶々立ち寄った街で龍が現れて、龍が魔物の群れを操り街を襲う話。英雄は見事に光の剣で魔物を打ち払い龍を封印したんだってさ・・・。正に、偶々立ち寄ったユアン、英雄がいましたよ。そして、龍も二匹います。さてさてどうなってしまうんでしょうか?兄さん心配です。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

異世界召喚された俺は余分な子でした

KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。 サブタイトル 〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

処理中です...