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第二章 黒煙

第三十二話 人として暮らす理由

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「ルーク、朝だよ~」
「むにゃ、モナーナ?」

 僕はモナーナに起こされて体を起こした。眠気眼でベッドを見るとユアンもまだ眠っていた。

「ユアン、朝だよ~」
「・・・兄さん、おはよう」

 白いシャツに短パンのユアンは気だるそうに挨拶をして胡座をかいた。モナーナにもお辞儀で答えていた。しかし、あの服装は女の子にとって目に毒になりそうだな。あんなイケメンがあんな姿じゃね。
 
 ユアンの容姿は美男子、引く手あまたのイケメン。そんな者があのような無防備な格好をしていたら女の子はたまったものではない。そうルークは思っていたのだが、

「ユアンさんって結構抜けているんだね」
「え?」

 モナーナはユアンへと憧れの視線を送らなかった。リバーハブ村ではあの姿を女の子に見せるとそう言った視線を送る物だった。ルークは女の子という物はユアンに恋するものなんだと思っていたのでモナーナの言葉に首を傾げた。

「ルークもご飯食べよ」
「あ、うん」

 モナーナは僕の腕を掴んで上への階段を登った。

 机に着くとニャムさんももうすでに起きてきていて白いパンにハムを挟んで食べていた。ダリルさんはパンも手作りするので白いパンが食べられます。
 
 ニャムさんは僕に気付くと手を振って喜んでいた。

「昨日はそんなにお話しできなかったから今日はお話ししたいにゃ」
「僕もエリントスの話をまだまだ聞きたかったんだ」

 朝ごはんを食べながらエリントスの話を聞く、そんなに経っていないのにまるで5年以上も経ったかのよう気持ちです。これがいわゆるホームシックってやつかな。

 エリントスではポーション自販機もあってかなり人の出入りが多くなったらしい、エイベルさん達、衛兵さんもとても大変なことになってるんだってさ。エリントスの門は一つだからね。
 クルシュ様は早急に衛兵を増やす方針を固めた、出入りのチェックの手を抜くわけには行かないからね。あのポーションの値段も街を出る時に関税として徴収している、それは僕がエリントスを出る前に話はついていた。
 やっぱり、エリクサーをタダ同然で売るのはよくないもんね。その徴収した額の一部は僕の物になってしまうみたいです。今度帰ってきたら全額渡すと言われていたんだけど、額を聞くのが怖かったので聞けていません、どうしよう。
 ちなみにポーション一本分の関税の額は聞いていません。エリクサーとして売っているのでたぶん金貨5枚位だと思うけど、本当はレジェンドハイエリクサーなので金貨5枚でもかなり安いんだけどね。
 僕がいなくなってからもニック達新人冒険者が端仕事をしてくれているらしい。エリントスの英雄である僕を見本にしてそういう流れが生まれたとか・・・何だか恥ずかしい。1レベルの僕を見本にしていいのだろうか?

「ニック君やベイツさんもルークに会いたいって言ってたにゃ、ベイツさんも歳だからあまりエリントスを離れないらしいけどニックはいつかルークみたいに世界を旅してルークみたいに人の手助けをしたいって言ってたにゃ」
「・・・そんなに憧れられても僕には荷が重いな~」
「そんなことないよ。ルークはカッコいいんだから」 
「そ、そうかな~・・」

 ニャムさんの話ではニック以外の冒険者も僕への憧れを語っていたらしい、僕は恥ずかしくなっているとモナーナが僕のカッコよさを語った。僕はモナーナに褒められて照れてしまう。1レベルだからそんなに凄くないんだけどな~。

「ほんとに、兄さんならクレイラット候も舌を巻くんじゃないかな」
「剣聖クレイラット候ですにゃ」

 ユアンの言葉にニャムさんが頷きながら同意した。クレイラット候って確か、神に一番近いって言われている人だよね。そんな人と比べられるなんてたまったものじゃないよ。その人に会わないようにしないとね、だってそれ以上だって事になったら僕の楽生活が英雄見削り生活になってしまう。

「・・・僕はそろそろワティスさんの所に行ってくるね」

 話の流れが嫌な方向へ行き始めた。
 ユアンが僕の強さを知ってそう言う流れになると思ってはいたけど。という事で何か嫌な予感が走ったので僕は理由を作ってその場から離れることにした。三人は来たそうにしたけど僕は速足で退散しました。



「あ、ルークお兄」
「やあ、やってるね。ワティスさんに用があるんだけどいるかな?」

 子供達が外で荷積みの作業をしていたので声をかけた。ワティスさんはクコと一緒に家にいるみたい。昨日クコが変身を解くときに見られていたと思うんだけどどうなったのかな?

「ワティスさん、おはようございます」
「おはようございます。子供達はよくやってくれてますよ。どうぞ中へ」

 扉をノックするとワティスさんが扉を開けてくれて中へと促してくれた。いつも通り、ソファーに座るように促されて座るとクコがチョコンとワティスさんの横にすわった。

「黒煙龍についてクコに聞きました」
「え?」
「やはり見られちゃった、てへ」

 ワティスさんは真剣な表情で話し出した。僕は驚いてクコを見るとクコはお茶目に舌を出して首を傾げた。どれだけやばい話なのか分かってるのかな?

「クコが黒煙龍だとバレると私は罰せられてしまいます。なので私は正式にクコを嫁にしようと思うのです」
「・・・ええ」

 ワティスさんはクコを嫁にするようです。どういう事?と思ってクコを見ると顔を赤くして照れています。

「驚くのも無理はありません。ですが、私はクコを・・・愛しています」
「はい?」
「クコと離れるなんて私は考えられないのです」

 僕は唖然とした。黒煙龍だと分かってもワティスさんはクコを好きなようです。クコを見ると顔を赤くして照れているのでクコもまんざらでもないらしい。

「ワティスはわらわを一目見た時に惚れてしまったようなんじゃ。わらわも、その、ワティスを好いていたのでな」
「二人がそれでいいのならいいんですけど傍目からはどうなの?」

 クコは顔を真っ赤にしながら話していたんだけど限界だったのか俯いてしまった。ワティスさんを脅していないんだったら別にいいんだけどさ。でも、昨日の騒動でクコに気付いた人は他にもいるかもしれないんだよね。

「ワティスさん、クコに気付いた人は他にいないんですか?」
「それなんですが。あの時、クコが変身を解いた時、人影を見たんです」

 という事はその人が密告すると大変なことになるね。

「メイさんに頼んで調べてもらいましょう。あと、あちらが動いた時の対応を話し合いましょうか」
「ありがとうございます」
「ありがとうなのじゃ」

 クコがワティスさんの腕を取ると見つめあった。傍から見ると危ない絵です。犯罪です。結婚式はしないみたいだけど、どうなのだろうか?
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