上 下
76 / 165
第二章 黒煙

第三十二話 人として暮らす理由

しおりを挟む
「ルーク、朝だよ~」
「むにゃ、モナーナ?」

 僕はモナーナに起こされて体を起こした。眠気眼でベッドを見るとユアンもまだ眠っていた。

「ユアン、朝だよ~」
「・・・兄さん、おはよう」

 白いシャツに短パンのユアンは気だるそうに挨拶をして胡座をかいた。モナーナにもお辞儀で答えていた。しかし、あの服装は女の子にとって目に毒になりそうだな。あんなイケメンがあんな姿じゃね。
 
 ユアンの容姿は美男子、引く手あまたのイケメン。そんな者があのような無防備な格好をしていたら女の子はたまったものではない。そうルークは思っていたのだが、

「ユアンさんって結構抜けているんだね」
「え?」

 モナーナはユアンへと憧れの視線を送らなかった。リバーハブ村ではあの姿を女の子に見せるとそう言った視線を送る物だった。ルークは女の子という物はユアンに恋するものなんだと思っていたのでモナーナの言葉に首を傾げた。

「ルークもご飯食べよ」
「あ、うん」

 モナーナは僕の腕を掴んで上への階段を登った。

 机に着くとニャムさんももうすでに起きてきていて白いパンにハムを挟んで食べていた。ダリルさんはパンも手作りするので白いパンが食べられます。
 
 ニャムさんは僕に気付くと手を振って喜んでいた。

「昨日はそんなにお話しできなかったから今日はお話ししたいにゃ」
「僕もエリントスの話をまだまだ聞きたかったんだ」

 朝ごはんを食べながらエリントスの話を聞く、そんなに経っていないのにまるで5年以上も経ったかのよう気持ちです。これがいわゆるホームシックってやつかな。

 エリントスではポーション自販機もあってかなり人の出入りが多くなったらしい、エイベルさん達、衛兵さんもとても大変なことになってるんだってさ。エリントスの門は一つだからね。
 クルシュ様は早急に衛兵を増やす方針を固めた、出入りのチェックの手を抜くわけには行かないからね。あのポーションの値段も街を出る時に関税として徴収している、それは僕がエリントスを出る前に話はついていた。
 やっぱり、エリクサーをタダ同然で売るのはよくないもんね。その徴収した額の一部は僕の物になってしまうみたいです。今度帰ってきたら全額渡すと言われていたんだけど、額を聞くのが怖かったので聞けていません、どうしよう。
 ちなみにポーション一本分の関税の額は聞いていません。エリクサーとして売っているのでたぶん金貨5枚位だと思うけど、本当はレジェンドハイエリクサーなので金貨5枚でもかなり安いんだけどね。
 僕がいなくなってからもニック達新人冒険者が端仕事をしてくれているらしい。エリントスの英雄である僕を見本にしてそういう流れが生まれたとか・・・何だか恥ずかしい。1レベルの僕を見本にしていいのだろうか?

「ニック君やベイツさんもルークに会いたいって言ってたにゃ、ベイツさんも歳だからあまりエリントスを離れないらしいけどニックはいつかルークみたいに世界を旅してルークみたいに人の手助けをしたいって言ってたにゃ」
「・・・そんなに憧れられても僕には荷が重いな~」
「そんなことないよ。ルークはカッコいいんだから」 
「そ、そうかな~・・」

 ニャムさんの話ではニック以外の冒険者も僕への憧れを語っていたらしい、僕は恥ずかしくなっているとモナーナが僕のカッコよさを語った。僕はモナーナに褒められて照れてしまう。1レベルだからそんなに凄くないんだけどな~。

「ほんとに、兄さんならクレイラット候も舌を巻くんじゃないかな」
「剣聖クレイラット候ですにゃ」

 ユアンの言葉にニャムさんが頷きながら同意した。クレイラット候って確か、神に一番近いって言われている人だよね。そんな人と比べられるなんてたまったものじゃないよ。その人に会わないようにしないとね、だってそれ以上だって事になったら僕の楽生活が英雄見削り生活になってしまう。

「・・・僕はそろそろワティスさんの所に行ってくるね」

 話の流れが嫌な方向へ行き始めた。
 ユアンが僕の強さを知ってそう言う流れになると思ってはいたけど。という事で何か嫌な予感が走ったので僕は理由を作ってその場から離れることにした。三人は来たそうにしたけど僕は速足で退散しました。



「あ、ルークお兄」
「やあ、やってるね。ワティスさんに用があるんだけどいるかな?」

 子供達が外で荷積みの作業をしていたので声をかけた。ワティスさんはクコと一緒に家にいるみたい。昨日クコが変身を解くときに見られていたと思うんだけどどうなったのかな?

「ワティスさん、おはようございます」
「おはようございます。子供達はよくやってくれてますよ。どうぞ中へ」

 扉をノックするとワティスさんが扉を開けてくれて中へと促してくれた。いつも通り、ソファーに座るように促されて座るとクコがチョコンとワティスさんの横にすわった。

「黒煙龍についてクコに聞きました」
「え?」
「やはり見られちゃった、てへ」

 ワティスさんは真剣な表情で話し出した。僕は驚いてクコを見るとクコはお茶目に舌を出して首を傾げた。どれだけやばい話なのか分かってるのかな?

「クコが黒煙龍だとバレると私は罰せられてしまいます。なので私は正式にクコを嫁にしようと思うのです」
「・・・ええ」

 ワティスさんはクコを嫁にするようです。どういう事?と思ってクコを見ると顔を赤くして照れています。

「驚くのも無理はありません。ですが、私はクコを・・・愛しています」
「はい?」
「クコと離れるなんて私は考えられないのです」

 僕は唖然とした。黒煙龍だと分かってもワティスさんはクコを好きなようです。クコを見ると顔を赤くして照れているのでクコもまんざらでもないらしい。

「ワティスはわらわを一目見た時に惚れてしまったようなんじゃ。わらわも、その、ワティスを好いていたのでな」
「二人がそれでいいのならいいんですけど傍目からはどうなの?」

 クコは顔を真っ赤にしながら話していたんだけど限界だったのか俯いてしまった。ワティスさんを脅していないんだったら別にいいんだけどさ。でも、昨日の騒動でクコに気付いた人は他にもいるかもしれないんだよね。

「ワティスさん、クコに気付いた人は他にいないんですか?」
「それなんですが。あの時、クコが変身を解いた時、人影を見たんです」

 という事はその人が密告すると大変なことになるね。

「メイさんに頼んで調べてもらいましょう。あと、あちらが動いた時の対応を話し合いましょうか」
「ありがとうございます」
「ありがとうなのじゃ」

 クコがワティスさんの腕を取ると見つめあった。傍から見ると危ない絵です。犯罪です。結婚式はしないみたいだけど、どうなのだろうか?
しおりを挟む
感想 294

あなたにおすすめの小説

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

処理中です...