上 下
66 / 165
第二章 黒煙

第二十二話 ヒマワリの種

しおりを挟む
「ルーク、帰ったのならまずわらわの所に来るのが礼儀じゃないのか?」
「どんな礼儀だよ」

 クコが僕を見つけてそう話しかけてきた。帰ったからっていちいち挨拶しに行かないといけないなんて誰が決めたんだか。

「黒煙・・・ではなくてクコちゃんはしばらく帰ってこないものだから心配していたんですよ」

 クコの後ろにいたメイさんがヤレヤレといった様子で話した。クコの動向を心配してメイさんは残ったようだけど何事もなかったみたいです。よかったよかった。

「ワティスさんからルークに用があるって帰ってきたら伝えてほしいと言われておってな。あの家畜の餌になったヒマワリとサクランボについての話だと思うのじゃが・・・やはりと言うか何というか」
「ええ、なんかなったの?」

 クコはメイさんと共にヤレヤレといって首を横に振ってる。僕の質問には答えてくれないみたいです。しょうがないので僕はワティスさんの所へ向かう事にしました。モナーナとメイさんは子供達の事を話すようで先に帰っているようです。メイさんはクコの事はある程度信頼を置けると判断したみたいです。

「ああ~ルークさん、お待ちしておりましたよ」
「え、ああ、はい・・・」

 ワティスさんは輝かん目で僕を迎えてくれた。ワティスさんがソファーに座ると僕にも座ってほしいと促すので座ると紅茶のいい匂いがしてきて、クコが紅茶を僕とワティスさんの前の机に置いた。とてもいい匂いでいい葉っぱを使っているのが伺えた。
 ワティスさんが紅茶を一口口に含むと真剣な顔になって話し出した。

「ルークさん、あなたからいただいた、あの家畜の餌であるヒマワリという物ですが、とても素晴らしい物でした。できればもう1万粒(50キロ)ほど欲しいのですが」
「そうなんですね。そんなに凄かったんですか?」
「ええ~、ええ~、それはそれは素晴らしくて。他の餌がゴミに見えてしまうほどですよ」

 ワティスさんは興奮して話し出した。
 ワティスさんが言うにはヒマワリを食べた牛の乳のでが良くなって生産性が上がったり、豚に至っても繁殖力が上がって肉の量が増えたとか。そんな短期間で変わる物なのかわからないけど・・・ただの運じゃないのかな?

「偶然ではないんですか?」
「私もそれを考えました。なので鶏にも与えてみたんです。鶏は毎日卵を産みますので結果が分かりやすいですからね。そうしたら何と驚く事に与えた日の卵の大きさが二倍ほどになって黄身も大きく濃厚な味だったんです」

 ヒマワリを与えた日に効果が出るって凄いね。まるでポーションみたい・・・。

 ルークの作物は農業スキルによって改造されている。スキルの効果でその作物の持つプラスに働く効果が約3倍されている。農業スキル1に付き0.5倍されて行くのだ。
    1レベルで0.5倍率に加算されて行くことで今回の結果が現れた。また農業スキル7に至るとその人にマイナスに働く効果、例えば糖質を取り過ぎている人にはそれが軽微になるなどの補正がかかる。これはすでに栄養士と言っても過言ではない作物達に改造されているのだった。

「という事で1万粒(50キロ)用意できますか?」
「はい大丈夫ですよ」
「それは良かった。では冷蔵部屋へ。あっと、これは前回の一万粒(100キロ)分の料金です」

 ワティスさんがソファーから立ち上がって革袋を取り出した。その中には金貨がどっさりと入っていました。あれ?これってすっごい目立ってるんじゃ?

「百粒500グラムで大銅貨2枚でしたが効果を見て私が勝手に値段を変えてみた所、それでも飛ぶように売れましてね。500グラムで銀貨3枚ですので50キロ分の金貨30枚です。最初の百粒分は私が買い取らせていただきました。これは私の商人としての目が足りなかった罰ですのでお気になさらずに」
「は、は~・・・」

 僕はため息を吐きながらワティスさんの冷蔵部屋にヒマワリをしまっていく、こんな大金に変わってしまうなんて思わなかったので少し後悔しています。やっぱり目立たずに暮らす事はできないのだろうか。
 ワティスさんの儲けは今度の50キロ分で稼ぐそうです。今回は全額僕へと流してくれたみたい。これからよろしくお願いしますって事だと思う。
 
 あ、そうだ。子供達の働き口をワティスさんに聞いてみようかな。

「ワティスさん少し商売と違う話なのですがいいですか?」
「あ、はい。なんですか?」

 僕は孤児になってしまった子供達について話した。ワティスさんは悲しい顔になって俯いてしまった。

「そんな事があったんですね。では教会の孤児院に・・・ですがあまりお勧めしませんよ」
「ギルドでもそんな事言われました。そんなにひどいんですか?」
「衛生環境などはそれほど、他の孤児院と同じくらいなのですが。司祭がお金を使ってしまって食べ物にあまり使われていないようなんですよ」

 司祭は酒浸りで碌に仕事をしない、シスターが献身的にやっているおかげで衛生面は大丈夫らしい。司祭が金を握っているので食べ物に使うお金がなく、子供達はやせ細ってしまっているようだ。ワティスさんは助けてやりたいと思っているのだけど、司祭は教会の重鎮なようであまり目をつけられると他の街などで商売がやりづらくなってしまうらしくて、手が出せないみたいです。

「孤児院に食べ物を送る事は?」
「物品の提供は許されているのですがすべてが子供達に行くことはないようです」
「それはなんで?」
「・・換金されてしまうんですよ。お金に変えて酒に変わっていきます。時には、その、女性を・・・」

 ワティスさんは口に出すのもおこがましい様子で話す。何とも腐りきっている様子です。

「ルークさんの所の子供は私の所で働いてもらっても構いませんよ」
「本当ですか?助かります」
「これから忙しくなりそうですからね」

 僕はワティスさんの家を出た。

「よし、まずはそのシスターを味方に付けようかな」

 嗜む子牛亭にいる子供達の仕事場は確保できた。だけど、孤児院の話は見過ごせないよね。少しずつ調べていって助けていこう。
しおりを挟む
感想 294

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...