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第二章 黒煙
第十五話 懐かしの匂い
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バッツの話を聞いて感慨深く頷いていたユアンはスリンに宿の鍵をもらい部屋に案内される。ルークの泊った部屋に入ると大きく息を吸い込んだ。
「兄さんの匂いがする」
「・・・」
「ルークお兄ちゃんはいないよ」
その様子を見てスリンは唖然としてルンは何を言っているのかわからない様子だった。
「取り乱しました。ご飯は上で?」
「ああ、そうだよ。今ちょうど出してるから来るといいよ」
ユアンは装備を外し軽装になり部屋に荷物を置くと上に上がって食事をした。
その際にバッツと意気投合して一緒に食事をすることになった。
「それでクランの指示を無視してきたんですか。凄いな~」
「いえいえ、僕はただ黒煙龍の動向がきになっただけですよ」
ユアンがクランの指示を無視してきた事でバッツは憧れの声を上げる。クランに反した行為は褒められた事じゃないが黒煙龍という脅威を見逃せないという正義をもってしているとバッツは思っているのだ。本来のバッツならば規律を重んじるがこういった正義には同意なようだ。
「それでバッツさん、バッツさんの鎧はだれが作ったんですか?」
「君のお兄さんのルーク君だよ。こんなに凄い防具を作れる何て凄いよね」
「兄さんが・・」
ユアンが驚きを隠せずに顔を歪める。ルークの能力を把握していなかった為に驚いているのだがもう一つの事でも驚いているのだ。それは、
「兄さんは僕が幸せに・・・」
自分が幸せにすると思っていたユアンはルークが認められてしまっている事に困惑している。
「ルーク君は凄いよ。こんな防具も作れて更に魔法も使えるなんて、やっぱりユアンさんのお兄さんなんですね」
「あ、はい」
「ちょっとバッツ、ユアンさんが困ってるでしょ。この弓もルーク君が作ってくれたんだよ。ワインプールにいっちゃうからってくれたんだ~」
「こっちはまさか、弓まで作ってるとは思わなかったよ。大金貨4枚で譲ってくれたんだ」
キャシーは得意気に弓を見せた。まるで三日月から生まれたような輝きを放つそれはユアンの目をくぎ付けにした。この月光の弓はごく少量の魔力を矢に変えるので矢はいらない、それだけで白金貨級の装備である。
「兄さんが・・」
「リバーハブ村では才能を開花できなかったと聞いていたがやはりユアンさんは知らなかったのだな」
バッツのパーティーメンバーのダンクが声をもらした。その言葉通りの反応をするユアンにバッツ達は心配そうに見つめる。
「兄さんはとても優しくて、強くて、でもレベルが1から上がらなかったんです。だからみんなからいじめられて・・・でも私は信じてました、ダメでも僕が養おうって思っててびっくりしちゃって」
ユアンは心情を語った。ルークの本当の実力を知って驚き、自然と涙がでてくる。
「ユアンさん、涙が出てますよ」
「あ、すいません。ありがとうございます」
フィオナがユアンにハンカチを渡した。ユアンは涙を拭っている。
「ルーク君は紛れもなく君のお兄さんだよ。ユアンさんはお兄さんの為に泣ける人、ルーク君も困っている人を見捨てられない優しい人だった。この街には彼に助けてもらった人しかいないんだ。みんな感謝しているんだよ」
エリントスに多大な貢献をしたルークの話をしていく、ユアンはとめどなく流れる涙を拭いながら話を聞いていた。心配そうに見つめるバッツのパーティーメンバー。
「ユアン君にこれをあげるよ。ルーク君の作った指輪だよ」
「これを兄さんが」
キャシーが持っていた弓と同じように白く輝く指輪を見てユアンは呟いた。明らかに普通の指輪ではないそれはユアンの手を引き寄せた。
「綺麗・・・」
「初めて見る人はみんな驚くよ。それをみて僕らは笑うんだけどね」
バッツ達はユアンを見て笑った。ルークのアイテムを見せると大体の人はこういうリアクションをする。緘口令が敷かれているのだがモナーナ魔道具店が開店しているのでその驚いている人を見るという楽しみができたそうだ。
バッツ達と食事を済ませたユアンはルークの泊った部屋で横になり指輪を見つめた。
「なんて綺麗なんだろう」
ユアンは仰向けに寝っ転がり指輪を見つめた。目はウットリと乙女になっている。
「お兄ちゃん・・・・」
ユアンはルークを思って指輪をはめる、左手の薬指にはめられた指輪はひと際輝きを増した。
「お兄ちゃんの匂いがするベッドで寝れるなんていつぶりだろう、やっぱりクランの指示を無視してきてよかった」
久しぶりのルークの匂いにユアンは感激して呟く。更にクランでは女でいる事を隠していた。サラシのような布をはぎ取るのは久しぶりで解放された気分のユアンは更に高揚していく。
「胸が少し苦しくなってきたな」
ユアンも成長しているのか体の変化を口にした。ない寄りの胸とはいえ女の子であるユアンは少しずつ成長している。いつかは周囲にバレてしまうだろう。しかし、ユアンは指輪を見つめてそんな不安も感じずに眠りについた。ユアンはこれからワインプールへと向かうことになるだろう。
「兄さんの匂いがする」
「・・・」
「ルークお兄ちゃんはいないよ」
その様子を見てスリンは唖然としてルンは何を言っているのかわからない様子だった。
「取り乱しました。ご飯は上で?」
「ああ、そうだよ。今ちょうど出してるから来るといいよ」
ユアンは装備を外し軽装になり部屋に荷物を置くと上に上がって食事をした。
その際にバッツと意気投合して一緒に食事をすることになった。
「それでクランの指示を無視してきたんですか。凄いな~」
「いえいえ、僕はただ黒煙龍の動向がきになっただけですよ」
ユアンがクランの指示を無視してきた事でバッツは憧れの声を上げる。クランに反した行為は褒められた事じゃないが黒煙龍という脅威を見逃せないという正義をもってしているとバッツは思っているのだ。本来のバッツならば規律を重んじるがこういった正義には同意なようだ。
「それでバッツさん、バッツさんの鎧はだれが作ったんですか?」
「君のお兄さんのルーク君だよ。こんなに凄い防具を作れる何て凄いよね」
「兄さんが・・」
ユアンが驚きを隠せずに顔を歪める。ルークの能力を把握していなかった為に驚いているのだがもう一つの事でも驚いているのだ。それは、
「兄さんは僕が幸せに・・・」
自分が幸せにすると思っていたユアンはルークが認められてしまっている事に困惑している。
「ルーク君は凄いよ。こんな防具も作れて更に魔法も使えるなんて、やっぱりユアンさんのお兄さんなんですね」
「あ、はい」
「ちょっとバッツ、ユアンさんが困ってるでしょ。この弓もルーク君が作ってくれたんだよ。ワインプールにいっちゃうからってくれたんだ~」
「こっちはまさか、弓まで作ってるとは思わなかったよ。大金貨4枚で譲ってくれたんだ」
キャシーは得意気に弓を見せた。まるで三日月から生まれたような輝きを放つそれはユアンの目をくぎ付けにした。この月光の弓はごく少量の魔力を矢に変えるので矢はいらない、それだけで白金貨級の装備である。
「兄さんが・・」
「リバーハブ村では才能を開花できなかったと聞いていたがやはりユアンさんは知らなかったのだな」
バッツのパーティーメンバーのダンクが声をもらした。その言葉通りの反応をするユアンにバッツ達は心配そうに見つめる。
「兄さんはとても優しくて、強くて、でもレベルが1から上がらなかったんです。だからみんなからいじめられて・・・でも私は信じてました、ダメでも僕が養おうって思っててびっくりしちゃって」
ユアンは心情を語った。ルークの本当の実力を知って驚き、自然と涙がでてくる。
「ユアンさん、涙が出てますよ」
「あ、すいません。ありがとうございます」
フィオナがユアンにハンカチを渡した。ユアンは涙を拭っている。
「ルーク君は紛れもなく君のお兄さんだよ。ユアンさんはお兄さんの為に泣ける人、ルーク君も困っている人を見捨てられない優しい人だった。この街には彼に助けてもらった人しかいないんだ。みんな感謝しているんだよ」
エリントスに多大な貢献をしたルークの話をしていく、ユアンはとめどなく流れる涙を拭いながら話を聞いていた。心配そうに見つめるバッツのパーティーメンバー。
「ユアン君にこれをあげるよ。ルーク君の作った指輪だよ」
「これを兄さんが」
キャシーが持っていた弓と同じように白く輝く指輪を見てユアンは呟いた。明らかに普通の指輪ではないそれはユアンの手を引き寄せた。
「綺麗・・・」
「初めて見る人はみんな驚くよ。それをみて僕らは笑うんだけどね」
バッツ達はユアンを見て笑った。ルークのアイテムを見せると大体の人はこういうリアクションをする。緘口令が敷かれているのだがモナーナ魔道具店が開店しているのでその驚いている人を見るという楽しみができたそうだ。
バッツ達と食事を済ませたユアンはルークの泊った部屋で横になり指輪を見つめた。
「なんて綺麗なんだろう」
ユアンは仰向けに寝っ転がり指輪を見つめた。目はウットリと乙女になっている。
「お兄ちゃん・・・・」
ユアンはルークを思って指輪をはめる、左手の薬指にはめられた指輪はひと際輝きを増した。
「お兄ちゃんの匂いがするベッドで寝れるなんていつぶりだろう、やっぱりクランの指示を無視してきてよかった」
久しぶりのルークの匂いにユアンは感激して呟く。更にクランでは女でいる事を隠していた。サラシのような布をはぎ取るのは久しぶりで解放された気分のユアンは更に高揚していく。
「胸が少し苦しくなってきたな」
ユアンも成長しているのか体の変化を口にした。ない寄りの胸とはいえ女の子であるユアンは少しずつ成長している。いつかは周囲にバレてしまうだろう。しかし、ユアンは指輪を見つめてそんな不安も感じずに眠りについた。ユアンはこれからワインプールへと向かうことになるだろう。
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