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第一章 始まり

第三十八話 モナーナ

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「お父さん・・」

 私の名前はモナーナ、お母さんが付けてくれた名前でとても大好きな名前。お母さんは私を生んですぐに死んでしまったってお父さんは言ってた。5歳まではお父さんと放浪の旅をしていたけど、ある人との出会いでエリントスにお店を持つことになったの。

「あなたの魔道具の力は街の為になります」

 クルシュ様のお父様であるゼル様その人です。ゼル様もクルシュ様のように自分を犠牲にして街を大きくしていった人でした。自分の食べる物は後にして街の人達に分け与えていたの。
 私のお父様の魔道具は珍しい物だった。雨を降らせるジョウロとか、広範囲の土を耕すクワとかとてもユニークだった。傍から見ると魔法で事足りるような物だったけどゼル様は感動していたの。

「MPを使わずにこんなことが出来るあなたのアイテムは世界に愛されるべき物だ」

 ゼル様の言葉にお父さんは感動して涙を流してた。今までそんなに認めてくれた人はいなかったからお父さんは嬉しかったんだと思う。

 お父さんはそれから色々な魔道具を作ってゼル様に使ってもらってた、もちろんお金をいただいて。ゼル様に使ってもらったものはどれもこれもお店で大人気になって私達は裕福になっていったの。お父さんはどんな魔道具だって作れた。でも、お父さんは自分の病気を治す魔道具は作れなかった。

 ゼル様が病気で倒れた知らせを聞いたお父さんはゼル様を見に行ったの、今思えばその時に止めていれば病気にかからなかったかもしれない。お父さんは涙しながらゼル様の言葉を聞いたの。

「あなたの力はとても凄いですよ。私を治せなかったからといって作るのをやめないでください」

 ゼル様は最後までお父さんの事を想った言葉を残していったの。それから少しして、お父さんはゼル様と同じ病気にかかって寝たきりになっちゃった。

 お父さんは私に申し訳ないって言ってたけど、少し嬉しそうだった。私は怒ったよ。だって私を残そうとしてるんだもん、怒るに決まってるよ。でも、私が思っていた事と違う事を思っていたみたい。お父さんはベッドに横たわって私を見ていたの、

「モナーナももう14歳か、大きくなったな」

 お父さんはそう言って笑顔だった。お父さんは私を育てる事に夢中でちゃんと私を見れていなかったんだと思う。それでそんな事を言ったんだと思う。そして、ルークと会う一年前にお父さんはなくなっちゃった。

 だからかな、私はルークがクルシュ様と肩を並べて話しているのを見て嬉しくなっちゃった。何だかお父さんが帰ってきたような気がしたんだ・・・、本当は違うのにね。私の勝手な希望をルークに押し付けちゃった。

「モナーナは偉いな~」

 お父さんは真面目に話す私の言葉にいつもそう言って返してきてた。真面目に話すのにはぐらかすように頭を撫でてきたの、困っている人に魔道具を渡すお父さんはお金を得ようとしなかったの、だから怒っているのにお父さんはいつもはぐらかしてきたの。スリンさんにもいつも怒られていたのに治そうとしなかったお父さんだったけど、大好きだった。

「ルークったら!」
「わあっモナーナどうしたの?」
「どうしたもこうしたもないでしょ、もう、こんなに部屋散らかして、あんまり見せられないものもあるんでしょ?ルークは掃除も早いんだからちょっとやれば片付くのに」

 ルークは製作に入るとそこら辺に色んなものを放置しがち、私かスリンさん、それにルンちゃんが片付けてあげるんだけど一向に治らないの。

「モナーナいつもありがと」
「え?ううん、私こそありがと」
「モナーナは偉いな~、ちゃんと片付けられるんだから、僕なんかすぐに汚しちゃうよ。掃除は得意なんだけどね」
「・・・」
「どうしたのモナーナ」
「ううん、何でもない。また来るね」
「え?うん」

 私はルークの言葉にドキッとしちゃった。まるでお父さんの様なことを言うんだもん。あの背中に飛びつきそうになる自分を何とか我慢したけど、本当にお父さんと重なったの。

「やっぱり私はルークが好き」

 ワーウルフの群れとの戦いの前日、夜も深くなっていく。モナーナの独り言は小鳥のさえずり亭の虚空に消えた。


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