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第一章 始まり
第二十六話 守護者
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「ちきしょう!なんだってんだ!」
ルークが去った後、ジグとザグはうなだれる。レベル1のルークにやられたと言うのは二人にとってとても耐えがたい物なのだ。
「おい!起きろ!」
「使えねえ奴らだ!」
眠っている仲間を蹴り飛ばして話すジグとザグ。ルークの状態異常ポーションはかなりの効能で蹴り飛ばされても起きなかった。麻痺をくらったジグとザグはそれほど深く影響を受けなかった。ジグとザグの場合膝下ほどの水から麻痺毒が入ったのだが仲間達は頭から全身に回っていた、その為かなりの影響を受けてしまったのだ。
仲間を蹴り起こそうとしていた時、二人に静かに近づく者がいた。
「動くな!」
「な!」
「誰だ」
ジグとザグの背後から二つの短剣を突きつけた、その者は静かに二人に忠告する。
「あの二人に手を出すな。もし、だした時お前達は人知れずこの世から去ることになるだろう」
その声を聞いて青ざめた二人は共に見合い頷いた。
「この街から去れ、今度この街で会ったら命はない」
脅迫の言葉を残してその者は風と共に消えていった。ジグとザグはしばらく動けずにいた、恐怖と言う名の呪縛によって動けなかったのだ。二人はこの日をもってエリントスから去ることになった。
その後、エリントスから一週間ほどいった土地で二人の遺体が見つかった。ルーク以外の人からも恨みを多く買っていたジグとザグ、リバーハブ村から出てきたのもその事が一番の要因だった。彼らは復讐者に追われて逃げてきていた、そして、この日の夜、街を出る時、復讐者に見つかっていたことを知らずに街を出ていったのだった。
「ルーク、もう大丈夫だよ」
「もうちょっといようかな・・なんて」
僕はモナーナを店まで抱いてベッドに寝かせた。しばらくして宿屋に帰ろうと思ったんだけど、何だか心配で宿屋に戻れないでいるとモナーナが大丈夫って微笑んでくれた。
心配で心配で仕方なくて僕は離れることは出来ない。
そうだ、あのローブを渡さないと、
「モナーナ、これをあげる」
「これは?」
「今回のような時に君を守ってくれるローブだよ」
「綺麗・・」
全身を覆う真紅のローブ、綺麗な桃色の髪が隠れるのは勿体ないと思うんだけど命には代えられないからしょうがない。
「街中じゃ目立つから必要ない時は普通の服に見せる事ができるから安心だよ」
「・・またそんな凄い物作ったんだね」
宿屋の時のような呆れた顔じゃなくて笑顔でモナーナは僕にいった。
真紅のローブはいつものモナーナの服に変わる。モナーナの服も十分目立つけどこの街ではモナーナの私服として知られてるから大丈夫、他の街に行く時にはちゃんとそう言った普通の服になるようにしよう。
「じゃあ、僕はもう行くよ」
「・・一緒にいて」
モナーナは僕の腕を掴んでそう言った。モナーナの瞳は月の光を波打たせている。その瞳にルークは目を奪われてベッドの横に椅子を持ってきてモナーナの手を取り握り合った。
静かな二人だけの魔法店、緩やかに時間は過ぎていった。見つめあった二人はいつの間にか夢の世界に入っていく。
「ニャ~オ~」
静かな魔法店の屋根に守護猫のミスリーは祝福の鳴き声を上げた。
「お~よしよし」
「ゴロゴロ」
屋根にはもう一人の守護者がいた。ジグとザグを脅迫した者と同じ人物であるこの全身黒づくめの女はミスリーの警戒を解き一瞬で仲良くなっている。ミスリーは顎や尻尾の付け根を撫でられて目を細める、この女は猫の扱いも知っているようだ。
「私の護衛対象は優しい人だな」
「ニャ~」
黒ずくめの女はそう言って優しくミスリーを撫でた。
この女はクルシュの言っていた護衛である、一足早く来てみればあんな状況に出くわしたのだった。
ルークがジグとザグの息の根を止めずに去ったのを見ていた女はこの世の悪を知っている。あんな状況になろうともジグとザグは必ずルークに仕返しをすると思って脅迫して釘をさしておいたのだった。
「お前のご主人に護衛が必要だと思う?」
「ニャ~ア~」
女の疑問にミスリーは疑問の声を上げた。
水を操り毒を操る彼を最初から見ていた女は疑問に思った。不意打ちならば勝てるかもしれない、だけど不意打ちをするにはこのミスリーを避けなくちゃいけない。実の所ミスリーはまだ警戒を解いていない、いつでも女を撃退できる体制を取っているのだ。撫でられて目を細めるがその薄っすらと開いている瞳はまっすぐに女を捉えている。ミスリーは油断せずに警戒できる優秀な魔道具なのだ。
「クルシュ様が守りたいといった意味はわかるけど、だってあのローブ、英雄でも持ってないかもしれない代物だものね。あんなものをポンポン作っちゃうなんて、クルシュ様以外の貴族が抱えたら人同士の戦争が起きてしまうわ」
女は想像する、ルークの魔道具を身に着けた部隊が戦争をしている様子を。そうならないようにするにはいっその事、
「ファー!」
「あ~ごめんごめんなさい」
いっその事始末してしまおうと一瞬思った女のもれた殺気にミスリーは一瞬で反応した。毛を逆立てて今にも襲い掛かりそうなミスリーに弁明する女はしり込みしている。
「やっぱり、護衛は必要ないようですよクルシュ様」
女の呟きは夜空に消えた。
護衛対象を守る必要があるのかと疑問に思いながらモナーナ魔道具店の屋根にて眠る女であった。
ルークが去った後、ジグとザグはうなだれる。レベル1のルークにやられたと言うのは二人にとってとても耐えがたい物なのだ。
「おい!起きろ!」
「使えねえ奴らだ!」
眠っている仲間を蹴り飛ばして話すジグとザグ。ルークの状態異常ポーションはかなりの効能で蹴り飛ばされても起きなかった。麻痺をくらったジグとザグはそれほど深く影響を受けなかった。ジグとザグの場合膝下ほどの水から麻痺毒が入ったのだが仲間達は頭から全身に回っていた、その為かなりの影響を受けてしまったのだ。
仲間を蹴り起こそうとしていた時、二人に静かに近づく者がいた。
「動くな!」
「な!」
「誰だ」
ジグとザグの背後から二つの短剣を突きつけた、その者は静かに二人に忠告する。
「あの二人に手を出すな。もし、だした時お前達は人知れずこの世から去ることになるだろう」
その声を聞いて青ざめた二人は共に見合い頷いた。
「この街から去れ、今度この街で会ったら命はない」
脅迫の言葉を残してその者は風と共に消えていった。ジグとザグはしばらく動けずにいた、恐怖と言う名の呪縛によって動けなかったのだ。二人はこの日をもってエリントスから去ることになった。
その後、エリントスから一週間ほどいった土地で二人の遺体が見つかった。ルーク以外の人からも恨みを多く買っていたジグとザグ、リバーハブ村から出てきたのもその事が一番の要因だった。彼らは復讐者に追われて逃げてきていた、そして、この日の夜、街を出る時、復讐者に見つかっていたことを知らずに街を出ていったのだった。
「ルーク、もう大丈夫だよ」
「もうちょっといようかな・・なんて」
僕はモナーナを店まで抱いてベッドに寝かせた。しばらくして宿屋に帰ろうと思ったんだけど、何だか心配で宿屋に戻れないでいるとモナーナが大丈夫って微笑んでくれた。
心配で心配で仕方なくて僕は離れることは出来ない。
そうだ、あのローブを渡さないと、
「モナーナ、これをあげる」
「これは?」
「今回のような時に君を守ってくれるローブだよ」
「綺麗・・」
全身を覆う真紅のローブ、綺麗な桃色の髪が隠れるのは勿体ないと思うんだけど命には代えられないからしょうがない。
「街中じゃ目立つから必要ない時は普通の服に見せる事ができるから安心だよ」
「・・またそんな凄い物作ったんだね」
宿屋の時のような呆れた顔じゃなくて笑顔でモナーナは僕にいった。
真紅のローブはいつものモナーナの服に変わる。モナーナの服も十分目立つけどこの街ではモナーナの私服として知られてるから大丈夫、他の街に行く時にはちゃんとそう言った普通の服になるようにしよう。
「じゃあ、僕はもう行くよ」
「・・一緒にいて」
モナーナは僕の腕を掴んでそう言った。モナーナの瞳は月の光を波打たせている。その瞳にルークは目を奪われてベッドの横に椅子を持ってきてモナーナの手を取り握り合った。
静かな二人だけの魔法店、緩やかに時間は過ぎていった。見つめあった二人はいつの間にか夢の世界に入っていく。
「ニャ~オ~」
静かな魔法店の屋根に守護猫のミスリーは祝福の鳴き声を上げた。
「お~よしよし」
「ゴロゴロ」
屋根にはもう一人の守護者がいた。ジグとザグを脅迫した者と同じ人物であるこの全身黒づくめの女はミスリーの警戒を解き一瞬で仲良くなっている。ミスリーは顎や尻尾の付け根を撫でられて目を細める、この女は猫の扱いも知っているようだ。
「私の護衛対象は優しい人だな」
「ニャ~」
黒ずくめの女はそう言って優しくミスリーを撫でた。
この女はクルシュの言っていた護衛である、一足早く来てみればあんな状況に出くわしたのだった。
ルークがジグとザグの息の根を止めずに去ったのを見ていた女はこの世の悪を知っている。あんな状況になろうともジグとザグは必ずルークに仕返しをすると思って脅迫して釘をさしておいたのだった。
「お前のご主人に護衛が必要だと思う?」
「ニャ~ア~」
女の疑問にミスリーは疑問の声を上げた。
水を操り毒を操る彼を最初から見ていた女は疑問に思った。不意打ちならば勝てるかもしれない、だけど不意打ちをするにはこのミスリーを避けなくちゃいけない。実の所ミスリーはまだ警戒を解いていない、いつでも女を撃退できる体制を取っているのだ。撫でられて目を細めるがその薄っすらと開いている瞳はまっすぐに女を捉えている。ミスリーは油断せずに警戒できる優秀な魔道具なのだ。
「クルシュ様が守りたいといった意味はわかるけど、だってあのローブ、英雄でも持ってないかもしれない代物だものね。あんなものをポンポン作っちゃうなんて、クルシュ様以外の貴族が抱えたら人同士の戦争が起きてしまうわ」
女は想像する、ルークの魔道具を身に着けた部隊が戦争をしている様子を。そうならないようにするにはいっその事、
「ファー!」
「あ~ごめんごめんなさい」
いっその事始末してしまおうと一瞬思った女のもれた殺気にミスリーは一瞬で反応した。毛を逆立てて今にも襲い掛かりそうなミスリーに弁明する女はしり込みしている。
「やっぱり、護衛は必要ないようですよクルシュ様」
女の呟きは夜空に消えた。
護衛対象を守る必要があるのかと疑問に思いながらモナーナ魔道具店の屋根にて眠る女であった。
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