23 / 165
第一章 始まり

第二十二話 クルシュ様のメイドさん

しおりを挟む
 今日は製作をしていこう、という事で宿屋の部屋に籠ろうと思ったんだけどスリンさんに追い出されました。

「製作ならモナーナの所でやっておくれ。一度は顔を出さないと私が承知しないよ」

 という事らしいです。確かに一日に一回は会わないとダメかなとパーティメンバーとして思ってはいたけど何だか気恥ずかしい。あんなこともあったしね。

 僕は小鳥のさえずり亭を出てモナーナ魔道具店へと歩いて行く。その少しの間にあの時の事を考える。

「僕は凄いか~」

 本当は反則のような能力なんだけどな、と自己嫌悪に陥る。少しずつでも周りに還元していかないとね。
 考えながら歩いて行くとモナーナ魔道具店の前にメイドさんとモナーナが立っていた。

「どうしたんですか?」
「あ、ルーク」
「あなたがルークさん?」

 隣のおばさん、プラレさんに聞いた通りクルシュ様のメイドさんのようです。この地域では珍しい黒髪で長髪のメイドさんは黒ぶち眼鏡をクイッとさせて僕を見つめてきた。

「私はプラムと申します。あなたがこの首飾りと指輪を?」
「はい」
「そうですか、では一緒にクルシュ様に会っていただけますか?」
「え?僕がですか?」

 驚いて僕が聞き返すとプラムさんは頷いた。

 有名にならないようにしてきた手前あんまり貴族の人とは会いたくないんだけど、と困った顔でモナーナを見ると目をキラキラさせて肯定の意を示している。元々モナーナは僕の凄さを知らしめたいわけだからそりゃそうだよね。

「今からですか?」
「はい。クルシュ様の要請ですので従わない場合は・・・」
「あ~、なるほど」

 プラムさんの言葉に僕はうなだれる。貴族の命令を守らないと不敬罪とか言われて衛兵さん達から追われる身になってしまう、この場合は軽い罪だけど目立ちたくないよね。

「わかりました。モナーナも一緒で大丈夫ですか?」
「え?私もですか?」

 フフフ、僕だけこんなめんどくさい事になるのは嫌だからね。

「良いんですか?私も一緒にいって」

 僕に顔を近づけてすっごい喜んでる。僕のようにめんどくさいと思っていなかったようで結果的に喜ばせることになってしまった。まあ、いいんだけどさ、なんだか僕が小さい男みたいじゃんってその通りだけど。

「では馬車にお乗りください」

 僕らはプラムさんに促されて馬車に乗って行く。服装は屋敷に着いてから用意してくれるらしい、それだけ僕と早く会いたいみたい。

「クルシュ様に会えるなんて光栄です」
「クルシュ様はとても人の好いお方ですからね。皆さんに愛されています」
「・・そうなんですね」

 それにしては結構強引に僕を連れて行こうとしていますよねプラムさん、僕はため息をつきながら馬車に揺られている。

 クルシュ様の屋敷は城壁の外にある。街を一望できる丘に建てられている屋敷だ。本来城壁内になくてはならないのだがクルシュ様は外に作った。貴族が同じ街にいたら色々と面倒だろうと言って外に作ったらしい。この時点でクルシュ様は民衆を一番に考えている事が伺えるがクルシュ様を狙ってくる夜盗もいるだろうと思うのだがそれも無駄な心配のようです。

「クルシュ様はAランク冒険者に匹敵する方です。夜盗などいかほどの恐怖にもなりません。それに騎士も駐在していますからね」

 だそうです。騎士達も重装備でしっかりと訓練された人達らしく、更にBランク以上の人で構成されている。人数は30と少ないものの精鋭として有名で、それだけで盗賊達はしり込みしているというわけ。屋敷というより要塞なんじゃないかな?

「着きましたよ」

 雑談をしていると馬車は屋敷に着いた。馬車の外には屋敷を囲う壁の内側が見える。

「キレ~」

 モナーナが歓喜の声をあげる。屋敷の庭は噴水を囲うようにピンクの花が咲いていた。左右対称を意識しているような庭はとても綺麗だ。僕も思わず目を奪われる。

「ふふ、お二人共、こちらですよ」

 プラムさんは嬉しそうに笑い僕らに手招きをしている。屋敷も左右対称の建物、玄関に入ると二階の部屋に通された。

「衣装を持ってきますのでお待ちください」

 普通の寝室のような部屋で僕らは待たされるみたいベッドがとても豪華で天幕みたいなものがついてる。窓から見える庭がとても綺麗でモナーナが身を乗り出して見惚れてる。

「こんなお屋敷に住みたいです、ね!ルーク」
「え?・・そうだね。ほんとに綺麗だね」

 窓の外の景色を背景にモナーナが際立って見えて僕はモナーナに見惚れて誤魔化すように庭を見下ろした。

「ふふ、それではお二人共。こちらに着替えていただけますか?」
「「あっはい!」」

 二人で外を見ているとプラムさんから声がかかって振り向いた。プラムさんは愛おしい物でも見るように僕らを見つめている。何だか僕とモナーナは恥ずかしくなり俯いて服を手に取った。

「こんな高価な物、いいんですか?」
「大丈夫ですよ。それはお二人に差し上げる物ですから」
「「ええ!」」

 細やかな装飾がされている洋服を見つめて声を上げた。なんと僕らにこの服をくれるらしいです、怖い怖いよ。

「貰えませんよ!」
「そうです。こんな高価な物もらえません」

 僕とモナーナはそう言って服を手放す。プラムさんはその様子を見て笑い出した。

「お二人は本当に面白いですね。あのような高価な物を安価で売っておいて、この金貨2枚の服を高価だというのですから」

 笑顔で話すプラムさん、ちょっと怒っているようにも聞こえて怖いです。モナーナも怖いのか僕の腕に捕まってる。ああ、お胸が。

「その方々がプラムの持ってきた装飾品の職人さん?」
「ルビリア様」

 僕らが恐怖していると部屋に真っ赤な髪の女性が入ってきた。プラムさんは少し困った顔である。

「その服では嫌だったかしら?」
「えっと、嫌というよりタダで貰うわけには行かなくて」
「あら、そうなのね。じゃあ私に何か珍しい物をいただけないかしら?」

 ルビリアさんはそう言って手を差し出した。手をグーパーしてくるので急かしているのだろう。

 珍しい物って何だろうと思っているとモナーナが腕を引っ張ってきた。

「モナーナどうしたの?」
「ルビリア様だよ」
「ん?そうだね。ルビリア様って言ってるね」

 モナーナが恐縮している、という事はとても偉い人だというのが分かる。

「ちょっと二人でヒソヒソと話さない!早く何か見せてよ」

 ルビリア様は怒った顔で言ってきた。仕方なく僕は最近作り始めた金の指輪をだした。これは側溝の掃除をした時に得た金で作ったもので結構いい出来だと思う。

「あら?金の指輪ね、何だか普通ね。・・・え?」

 ルビリア様は指輪を手渡されるとまじまじと見渡した、指輪の内側を見たルビリア様は驚いて目を見開く。

「まさか、付与されているの?」

 あの金の指輪は回復の魔法が付与されている、単純な回復魔法が使えるようになっているんだけど作った時にモナーナに怒られました。スキルをアイテムに付与するって凄い事らしいです、田舎者なので僕は知りませんでした。ただ売れればいいなくらいの気持ちでしたすいません。

「あの骨細工を見た時から思っていたけどこれほどとはね。これはもらっておくわね」

 ルビリア様はそう言って大事そうに指輪を持っていってしまった。お店で銀貨8枚くらいで売ろうと思ってたんだけど金貨2枚の服に化けてしまいました。それも二着、何だか悪い事した気分。

「では、お二人共、服を着替えてください」

 ベッドの天幕を下ろして目隠しにして僕とモナーナは着替え始めた。

「・・・あの着替えたいんですが」
「お構いなく」

 僕も着替えようとしているのにプラムさんが出ていってくれない。僕が戸惑っているとプラムさんが近づいてきてズボンを下ろそうとしてきた。

「お着替えを手伝いますよ」
「ええ!ちょっと、自分で出来ますよ」
「え?ルーク大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ!」

 プラムさんと小競り合いをしているとモナーナが心配して声をあげる。

「冗談ですよ。では外で待っていますね」
「目が本気でしたよ」

 プラムさんが部屋から出ていってやっと僕も着替えようと上着を脱ぐと目の前に可愛らしい青いドレスを着たモナーナが立っていた。

「どうですかルーク。似合ってますか?」
「凄く綺麗だよ」

 上半身裸で褒めるとモナーナは俯いて照れた。

「着替えていい?」
「あ、ごめんなさい」

 モナーナは気が付いたみたい。僕の上半身を見てベッドの天幕に隠れてしまった。
 
 僕はモナーナの姿に頬を染めて着替えていく。

しおりを挟む
感想 296

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...