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第一章

第41話 頼もしい人たち

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「あら? こんな人形ありましたっけ?」

 入ってきたのはカタリナ様達だった。魔道兵に気が付いて首を傾げてる。

「ハヤトさんよかった、まだ出かけていませんでしたね」

「カタリナ様。それに皆さん、どうしたんですか?」

 カタリナ様とセレスさんは分かるんだけど、イクシオンさんやバルバトスさん、それにエラさんがいる。この街の偉い人が勢ぞろいって感じだな。

「立ち話もなんだ。まあ、座ろうぜ」

 バルバトスさんに促されてみんな食堂で席に着く。ベロニカさんは少し困ってるな。急にこんなに人が来ると怖いよな。
 アイラとニカが彼女の横で慰めることにしたみたいだ。

「それでどうしてみなさん?」

「アキムという奴隷商をご存じですよね」

 早速訪問の理由を聞くとカタリナ様からアキムの名がかたられる。
 僕は頷いて答えると一枚の破れた書類を差し出してきた。

「国外追放?」

 紙にはアキムへの国外追放の要求が書かれている。罪状は罪のない人への暴行や脅迫と掻かれている。

「アキムの行いは許せないものでした。ハヤトさんやベロニカさんにはとてもご迷惑をおかけしたようで申し訳ございません」

 セレスさんと共に深く謝ってくる。この間みたいにセレスさんがカタリナ様を止めることもない。

「頭をあげてください。カタリナ様が謝ることじゃないでしょ。アキムがいけないんだから」

「いいえ。あのような男にしたのは我々国のせい。今後はあのような男を作らないように勤めていきたいと思います」

 カタリナ様に声をかけると悲しそうに語る。セレスさんも胸を痛めているみたいでグッと拳を作ってるな。

「我々商人ギルドも反省しています。今後はあのような男との取引はやめるように管理いたします。どうかお許しください」

 カタリナ様がやっと顔をあげてくれたと思ったら次はエラさんが頭を下げだした。思わずエナさんを見るとびっくりして目を真ん丸にしてる。
 エラさんは商人ギルドの管理者、マスターだもんな。そんな人が僕に頭を下げるなんて驚くだろうな。

「エラさんもやめてください。僕が取引をやめることはありませんよ」

「ありがとうございます」

 は~、エラさんもやっと頭をあげてくれた。
 ってこの流れだとバルバトスさんやイクシオンさんも?

「私達の番だな」

「ああ、本当にすまないハヤト」

 嫌な予感がして二人を見るとやっぱり頭を下げてきた。また~と思っていたら二人はニコッと笑って、

「嘘だ嘘。俺達は何にも謝ることはない。感謝はしてるけどな」

「ああ、ハヤト君のお友達をカタリナ様の護衛に雇ったんだ。詮索はしないという条件だが、とても有能で重宝しているよ」

 いたずらが成功して嬉しそうな二人。僕は思わずため息をついてしまう。って僕の知り合いって誰だ?

「知り合いっていうのは気になりますけど、とにかくアキムの件は終わったんですね?」

 胸を撫でおろしてベロニカさんやアイラ達へと視線を向ける。みんなもホッとしているみたいで小さく拍手してる。

「それがまだなのです」

 喜んでいる僕らにセレスさんが声をあげた。

「第一騎士団団長エクリプスをご存じですか?」

「あ~、盗賊の残党を倒してどやってたやつの名前だ~」

 セレスさんの言葉にルビアさんが声をあげた。アイラにゾッコンの騎士団長だ。
 僕とアイラがいい仲だと思って怒ってたやつだな。それがどうしたんだろう?

「アキムの弟だということが判明しました。そして、こちらに向かっているのも」

「ええ!?」

 あのアキムと兄弟……そういえば、似ているようなないような?
 アイラに視線を送ると首を横に振って答えてくれた。彼女も知らないみたいだな。

「その為、国外追放だと合流される恐れがあったので牢獄に監禁しています」

「そ、そうだったんですね。合流した場合、どうなるんですか?」

 セレスさんの話を聞いて気になったので聞いてみるとみんな顔が険しくなる。

「エクリプス侯爵の素行はあまりよろしくない。アキムと同じと考えると闘いになる可能性があります」

 セレスさんが答えてくれた。

「下手をすると王都との戦争になるかもしれないね」

「ええ!? そんな大事に?」

 イクシオンさんが頭を抱えて話す。流石の状況に僕は驚いてしまう。

「そんなに脅かすなよイクシオン。流石に王様が黙っていないだろ」

「バル、そうはいっても第一騎士団の団長といざこざを起こすんだ。なくはないだろう」

 バルバトスさんとイクシオンさんが言い合いになる。そんな簡単に戦争されたら国民が困るだけだもんな。僕的にはバルバトスさんに賛同だな。

「どうするんですか? 僕にできることはありますか?」

「ハヤトさんにはエクリプス侯爵と接触しないようにしていただきたいんです。バルバトスさんの話では少し目をつけられているとか」

 僕の質問にカタリナ様が答えてくれた。要は目立たないようにすればいいんだな。僕の得意分野だな。

「お兄ちゃん目立つからな~」

「マスターは黙ってても目立っちゃうにゃ」

 ニカとルキナちゃんが笑顔でとんでもないことを言ってる。僕が目立ったことなんてないでしょ……ないよな?

「まあ、とりあえず普通に町の外の依頼をこなしていただいて、アキムはいない状況で素通りしてもらうのがいいのですが」

「エクリプス侯爵の目的はたぶんアキムとアイラ氏のはずですから」

 カタリナ様が話すと推測をセレスさんが語る。やっぱり、エクリプス侯爵はアイラを諦めていないのか。

「ああ、あの後も凄い剣幕だったからな。『必ずアイラを私のものにする』ってな」

「私はバルが彼を殺してしまうんじゃないかとハラハラしていたよ」

「イクシオンが止めなかったら一撫でしてやっただろうな。ハヤト達は俺とリーサの恩人だ。どんな結果になろうと傷つけるやつがいたら痛い目にあわせてやる」

 バルバトスさんはそんなに僕らのことを思ってくれてたのか。本当にいい人だな。
 思ってみれば、ルガさんと冒険者ギルドに来た時から目をつけてくれてたって言ってたっけ。ルガさんと同じくらい、僕にとっては恩人だったんだよな。

「分かりました。とりあえず、大人しく外の依頼を済ませたりしてますね」

「お願いします。アキムがいないだけという状況を作って話をつけます。うまく行かなかった時もこちらで対処します。決してハヤトさん達には迷惑の掛からないように」

 了承するとカタリナ様は再度深くお辞儀をしてきた。そうはいっても降りかかる火の粉は払わないとな。それなりの準備をしておこう。
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