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第一章
第38話 ルビアさんとエナさん
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◇
「カタリナ様!」
「どうしたのですかセレス!?」
書類をまとめているとセレスが勢いよく自室に入ってきた。息を切らせながら一枚の書類を差し出してくる。
「奴隷商のアキムが宿屋の権利書を要求してきました」
「奴隷商が? 宿屋を? それがどうしたの」
セレスがなんで焦っているのかわからずに首を傾げる。するとセレスはもう一枚の書類を出してきた。
「砂糖の取引書? ハヤトさんのよね?」
「そうです」
「でもなんでいま……まさか、ハヤトさんの泊まっている雷の?」
セレスは私の問いに大きく頷いた。
奴隷商アキム。奴隷を物のように使うとあまり評判のいい男ではない。そんなやつにあの宿屋が狙われている? どういうことなの?
「どうやら、ハヤトさんが保護した奴隷の元持ち主のようで。宿屋に現れたアキムが店主のベロニカ氏とアイラ氏、ニカ君に目をつけたようです」
「……噂通りの自分勝手な男のようね。少し調子に乗っているのかしら?」
セレスの話を聞いて、私は思わずペンを折ってしまう。こんな自分勝手な行動を許していては領主とはいえないわね。
「その要求は許されないわ。宿屋だけじゃなくてベロニカさん達もねらわれるでしょ」
「そうですね。既に雷の宿屋へ行くアキムの奴隷戦士が目撃されています」
「なんですって!?」
すでにアキムは動き出していた。欲に忠実な男なだけあって行動が早い。ハヤトさん達は無事なの?
「ハヤトさん達は? 無事なの?」
「カタリナ様、落ち着いてください。ハヤトさん達は無事です。アキム達の奴隷戦士はそそくさと帰っていく姿が目撃されています。武器がなくなっていたのを見ると撃退されたと思われます」
「そ、そうなのね。よかったわ。でも、許せないわね。罪のない人を奴隷に落とそうとするなんて」
とりあえず、ハヤトさん達が無事でよかったわ。ハヤトさんにこれ以上迷惑をかけるわけには行かないわ。すぐにアキムと話しをしなくちゃ。
「アキムをよんで頂戴」
「はい!」
私が叫ぶとセレスがすぐに走り出した。時間も遅い、今日中とは行かないかもしれないわね。
この後思った通り、アキムからの返事は後日と言う話だった。ハヤトさん達には冒険者ギルドから護衛を派遣するしかないわね。
◇
「やっほ~、ハヤトっち~」
「……おはよ」
「ルビアさんとエナさん? おはようございます。どうしたんですか?」
アキムのだと思われる襲撃を受けて次の日。なぜかルビアさんとエナさんが雷の宿屋にやってきた。朝食を食べていたから二人も一緒に食べることになった。
「うん! 美味しい! ベロニカさんの料理最高ですね!」
「……おいし」
ルビアさんとエナさんもベロニカさんの料理に舌鼓。狼のすじ肉を三時間煮込んだシチューと白パン。毎日美味しいごはんが食べられて僕は幸せだ。
「それでどうしてここに?」
「ん? あ~アイラさんと話して料理のこと聞いたから来てみたんだよ~。偶然偶然~」
「ん……」
僕の疑問にルビアさんが答えるとエナさんも小さく頷いた。
「アイラ?」
「た、確かに一緒に居た時にベロニカの料理を褒めたけれど……」
アイラに確認を取ると話したのは確かなようだ。
「マスター。今日はどこ行くにゃ?」
「そうだな~。東側の下水道もあらかた綺麗にしちゃったからな~」
ルキナちゃんの問いかけに考え込む。時計回りに回ってるから南側かな~。
「ハヤトっちは掃除して回ってるんだよね。みんな噂してるよ」
「……不思議」
考え込んでるとルビアさんとエナさんが声をあげる。
噂になってるのは初めて知ったな。依頼を受けてやってることじゃないから大丈夫かなと思ったけど、見られてたんだな。少し恥ずかしいな。
「ということでね。私達もそんなハヤトっちの掃除を一緒にしようかなっと思って」
「え!?」
ルビアさんが提案してくる。思わず声をあげると二人は顔を見合ってる。
「ダメなの?」
「いや、ダメと言うかなんというか」
疑問を投げかけてくるルビアさん。ニカ達には僕のスキルの話はしているけど、普通の人にとってあり得ないスキルだということが分かった。
買い物できるスキルなんておかしいもんな。それもゴミを換金することが出来るなんてわかったら更におかしな話になっちゃうもんな。
「お兄ちゃんのパーティーメンバーは僕らだけでいっぱいだよ、お姉ちゃん達」
「そうだな。これ以上いても仕方ない」
ニカとアイラが困っている僕を見て声をあげてくれる。そんな二人の話を聞いてルビアさん達は。
「……ついていく」
「そうだね。見るだけならいいでしょ? パーティーメンバーじゃないよ」
エナさんが僕を見つめて話してくるとルビアさんが話す。く、食い下がるな~。これは不味いですよ。
「マスター。今日はお外に行くにゃ。掃除はまた今度にするにゃ」
ルキナちゃんが提案してくる。話してる内容を推測して提案してくれてるみたいだ。ルキナちゃんは言葉を学ぶのも早かったけど、こんなことも提案できるなんて天才かな?
「この子なんて?」
「ははは、今日はお掃除しないんですよ~。お外に行こうと思ってたので」
ルビアさんがルキナちゃんの話を聞いてくる。それを無視して僕が話す。これで諦めてくれる、そう思った僕は甘かった。
「外いいね」
「ん……守りやすい」
「え? 守りやすい?」
「あ~、違うよ。ま~森安いだよ。矢の素材で木って安価だからエナは素材が取れるって言ったの~」
ルビアさんが声をあげるとエナさんが聞き取りづらい小さな声を出す。僕がオウム返しするとなぜかルビアさんが声を張り上げて説明してくれた。
なるほどね。森に行けば矢を安く補充できるってことか。エナさんは仲間思いだな~。
「じゃあ、早速いこ~」
「あっ、ちょっと……」
やる気に満ちたルビアさんが僕の腕を引っ張ってきた。ベロニカさんを置いていくのは少し心配だけど、魔道兵を置いていくから大丈夫だろう。
彼女に視線を向けるとうなづいて手を振ってくれた。彼女なりに強くなろうとしてるのかもな。
「カタリナ様!」
「どうしたのですかセレス!?」
書類をまとめているとセレスが勢いよく自室に入ってきた。息を切らせながら一枚の書類を差し出してくる。
「奴隷商のアキムが宿屋の権利書を要求してきました」
「奴隷商が? 宿屋を? それがどうしたの」
セレスがなんで焦っているのかわからずに首を傾げる。するとセレスはもう一枚の書類を出してきた。
「砂糖の取引書? ハヤトさんのよね?」
「そうです」
「でもなんでいま……まさか、ハヤトさんの泊まっている雷の?」
セレスは私の問いに大きく頷いた。
奴隷商アキム。奴隷を物のように使うとあまり評判のいい男ではない。そんなやつにあの宿屋が狙われている? どういうことなの?
「どうやら、ハヤトさんが保護した奴隷の元持ち主のようで。宿屋に現れたアキムが店主のベロニカ氏とアイラ氏、ニカ君に目をつけたようです」
「……噂通りの自分勝手な男のようね。少し調子に乗っているのかしら?」
セレスの話を聞いて、私は思わずペンを折ってしまう。こんな自分勝手な行動を許していては領主とはいえないわね。
「その要求は許されないわ。宿屋だけじゃなくてベロニカさん達もねらわれるでしょ」
「そうですね。既に雷の宿屋へ行くアキムの奴隷戦士が目撃されています」
「なんですって!?」
すでにアキムは動き出していた。欲に忠実な男なだけあって行動が早い。ハヤトさん達は無事なの?
「ハヤトさん達は? 無事なの?」
「カタリナ様、落ち着いてください。ハヤトさん達は無事です。アキム達の奴隷戦士はそそくさと帰っていく姿が目撃されています。武器がなくなっていたのを見ると撃退されたと思われます」
「そ、そうなのね。よかったわ。でも、許せないわね。罪のない人を奴隷に落とそうとするなんて」
とりあえず、ハヤトさん達が無事でよかったわ。ハヤトさんにこれ以上迷惑をかけるわけには行かないわ。すぐにアキムと話しをしなくちゃ。
「アキムをよんで頂戴」
「はい!」
私が叫ぶとセレスがすぐに走り出した。時間も遅い、今日中とは行かないかもしれないわね。
この後思った通り、アキムからの返事は後日と言う話だった。ハヤトさん達には冒険者ギルドから護衛を派遣するしかないわね。
◇
「やっほ~、ハヤトっち~」
「……おはよ」
「ルビアさんとエナさん? おはようございます。どうしたんですか?」
アキムのだと思われる襲撃を受けて次の日。なぜかルビアさんとエナさんが雷の宿屋にやってきた。朝食を食べていたから二人も一緒に食べることになった。
「うん! 美味しい! ベロニカさんの料理最高ですね!」
「……おいし」
ルビアさんとエナさんもベロニカさんの料理に舌鼓。狼のすじ肉を三時間煮込んだシチューと白パン。毎日美味しいごはんが食べられて僕は幸せだ。
「それでどうしてここに?」
「ん? あ~アイラさんと話して料理のこと聞いたから来てみたんだよ~。偶然偶然~」
「ん……」
僕の疑問にルビアさんが答えるとエナさんも小さく頷いた。
「アイラ?」
「た、確かに一緒に居た時にベロニカの料理を褒めたけれど……」
アイラに確認を取ると話したのは確かなようだ。
「マスター。今日はどこ行くにゃ?」
「そうだな~。東側の下水道もあらかた綺麗にしちゃったからな~」
ルキナちゃんの問いかけに考え込む。時計回りに回ってるから南側かな~。
「ハヤトっちは掃除して回ってるんだよね。みんな噂してるよ」
「……不思議」
考え込んでるとルビアさんとエナさんが声をあげる。
噂になってるのは初めて知ったな。依頼を受けてやってることじゃないから大丈夫かなと思ったけど、見られてたんだな。少し恥ずかしいな。
「ということでね。私達もそんなハヤトっちの掃除を一緒にしようかなっと思って」
「え!?」
ルビアさんが提案してくる。思わず声をあげると二人は顔を見合ってる。
「ダメなの?」
「いや、ダメと言うかなんというか」
疑問を投げかけてくるルビアさん。ニカ達には僕のスキルの話はしているけど、普通の人にとってあり得ないスキルだということが分かった。
買い物できるスキルなんておかしいもんな。それもゴミを換金することが出来るなんてわかったら更におかしな話になっちゃうもんな。
「お兄ちゃんのパーティーメンバーは僕らだけでいっぱいだよ、お姉ちゃん達」
「そうだな。これ以上いても仕方ない」
ニカとアイラが困っている僕を見て声をあげてくれる。そんな二人の話を聞いてルビアさん達は。
「……ついていく」
「そうだね。見るだけならいいでしょ? パーティーメンバーじゃないよ」
エナさんが僕を見つめて話してくるとルビアさんが話す。く、食い下がるな~。これは不味いですよ。
「マスター。今日はお外に行くにゃ。掃除はまた今度にするにゃ」
ルキナちゃんが提案してくる。話してる内容を推測して提案してくれてるみたいだ。ルキナちゃんは言葉を学ぶのも早かったけど、こんなことも提案できるなんて天才かな?
「この子なんて?」
「ははは、今日はお掃除しないんですよ~。お外に行こうと思ってたので」
ルビアさんがルキナちゃんの話を聞いてくる。それを無視して僕が話す。これで諦めてくれる、そう思った僕は甘かった。
「外いいね」
「ん……守りやすい」
「え? 守りやすい?」
「あ~、違うよ。ま~森安いだよ。矢の素材で木って安価だからエナは素材が取れるって言ったの~」
ルビアさんが声をあげるとエナさんが聞き取りづらい小さな声を出す。僕がオウム返しするとなぜかルビアさんが声を張り上げて説明してくれた。
なるほどね。森に行けば矢を安く補充できるってことか。エナさんは仲間思いだな~。
「じゃあ、早速いこ~」
「あっ、ちょっと……」
やる気に満ちたルビアさんが僕の腕を引っ張ってきた。ベロニカさんを置いていくのは少し心配だけど、魔道兵を置いていくから大丈夫だろう。
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