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第一章

第28話 Gを求めて

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 カタリナ様と話して次の日。僕は商人ギルドに砂糖を卸してルガさん達の住んでる布で出来た小屋に来た。路地にはゴミがたくさんある……そうおもっていたんだけど、綺麗になったままだった。

「おお、ハヤト。ルガさんは鍛冶屋だぞ」

 ルガさんに会わせてくれたおじさんが声をかけてくれる。名前が聞けないからおじさんとしか言いようがないのは困るな。

「そうなんですね。おじさん達は宿屋とかには泊まらないんですか?」

 ルガさんは職に就いてるし、別のおじさんも数人仕事に就いてる。目立ちたくないって言うのはわかるけど、ここも十分目立つと思うんだよな。

「そうだな~。路地ってやつは捨てられたものたちの楽園だろ? 楽園から出るやつはいないだろ。そんなところだ」

 おじさんはそういって空を見上げる。静かな青空が広がっていて少しだけおじさんの言っていることが分かるような気がする。
 何者にもとらわれない時間を過ごせる場所。人それぞれそんなところがある。僕にとっての部屋みたいなものだな。ただただ時計の針の動く音が聞こえて偶にお気に入りのBGMが彩ってくれるそんな場所。おじさん達にとってここはそんなところになったんだな。

「あっ、そうだ。前に路地にゴミが山になってたじゃないですか。そんなところありませんか?」

「ゴミ? ああ、最近じゃ俺達が掃除してるからな。ここいらはないかもな」

 ありゃ? おじさん達が掃除してたのか。通りで綺麗なわけだ。

「ルガさん達が働いて養ってくれちまってるから、食い物の心配もしなくてすんじまってるしな。少しでも町の為にと思って掃除することにしちまったんだ」

「そうだったんですね……ってルガさんはみんなを甘やかしてるのか。僕にはダメって言ったのに」

「ハヤトはまだまだ若いからな。まあ、俺もボチボチ職を探そうと思ってるよ。折角ハヤトに服をもらっちまったからな」

 おじさんはそういって僕の頭を撫でてきた。汚れてる手だけど、働いてきた手だ。無下には出来ないな。

「ゴミと言っちゃなんだけどよ。下水道は探したのか?」

「え?」

「いや、前にここにあったようなゴミなら下水道に正に捨てるほどあるだろ?」

「……ああ!? そうか、そういえば」

 ルガさんやニカともぐったときに確かに色んなものが落ちてた。魔物を退治出来て一石二鳥だ。

「ありがとうございます。早速ニカ達と行きます」

「お、おう。ニカとアイラちゃんにもよろしくな」

「あっ、はい」

 おじさんに別れを告げて雷の宿屋に帰る。
 ニカとアイラに事情を話すと同意してくれた。早速、冒険者ギルドにいって下水道の依頼を受けることにした。
 冒険者ギルドについてヴェインから依頼を受けているとみんなある人たちを見ていた。

「バルバトス様、あ~ん」

「あ~ん。うん! 旨い! 流石はリーサだ」

 リーサさんとバルバトスさんがイチャイチャしてる。どうやら、リーサさんの告白が成功したみたいだ。良かったんだけど、なんかギルドの雰囲気は悪いな。

「リーサちゃん結婚か……」

「俺達は誰を愛でればいいんだ」

 ある一組の冒険者が声をもらす。どうやら、リーサさんを狙っていた人もいたみたいだ。バルバトスさんも同じで狙われてたみたいでそっちの声も漏れだしてる。結構、競争率高かったんだな。
 
「おう! ハヤト。よくやってくれたな」

「ん? なんだ、ダンか」

「なんだとはなんだ……ってまた下水道の依頼か? 女子供を連れて行くようなとこじゃねえだろ」

 ダンが僕の肩に手を乗せてきて声をかけてきた。あんまり好きじゃないやつに馴れ馴れしくされたくないから怪訝な表情になってしまう。

「女子供と侮るのか? 一度訓練場でやるか?」

「どわ!? すまんすまん。そういう意味じゃなかったんだ。ただな、お前達なら森でいくらでも稼げるだろ。わざわざ下水道で稼がなくてもいいだろって意味だよ」

 アイラに睨まれるとダンがたじろいで降参と手をあげる。彼は彼なりに心配してくれてるってことか。

「ダンおじさん。余計な心配ありがとね」

「ありがとにゃ~」

「……辛らつだな」

 ニカとルキナちゃんにまでジト目で見られるダン。流石の状況に彼もタジタジだな。

「とにかく、ハヤトありがとな。バルバトスさんのこと。幸せそうなあの人がまた見れてよかった。じゃあな」

 みんなに睨まれる状況から逃げるようにダンはそそくさと自分の仲間の元へと去っていった。あれは逃げたな。
 しかし、嫌っていたやつにお礼を言われるのはなんだか恥ずかしいな。まあ、思ったよりも悪い奴じゃなさそうでよかったけどね。

「ハヤトさん!」

「ハヤト!」

 ダンを目で追っているとバルバトスさん達が僕らに気づいて声をあげる。リーサさんを抱き上げて駆けてくるバルバトスさん。すっごい嬉しそうだ。

「ありがとうございます。ハヤトさん! バルバトスさんと結婚することとなりました」

「ありがとなハヤト。気づかせてくれて!」

 二人は輝く瞳を向けてきてお礼を言ってくる。

「いえいえ、僕なんかいなくても二人ならすぐに結婚になってましたよ」

「いや、ハヤトたちがいなかったら難しかった。俺はリーサのことを娘としか見てなかったからな」

 僕の言葉にリーサさんを見るバルバトスさん。

「私もそれに気づいていて怖くて言えなかったのです。皆さんのおかげで言う勇気をいただきました。本当にありがとうございます」

 リーサさんはそういって涙を浮かべる。バルバトスさんに涙を拭われると見つめ合ってる。恥ずかしくなってくるな。

「じゃ、じゃあ。僕らは下水道の依頼に」

「お! 依頼か! 俺達も一緒に行くぞ」

「ええ!? でも、下水道ですよ」

 早速、依頼に行こうと思ったらなぜかバルバトスさんも一緒に行くと言って来た。流石にと思ってヴェインやみんなの顔を見ると顔を引きつらせて目を逸らされた。

「私もハヤトさん達の手伝いがしたいです。ダメですか?」

「……ダメと言うかなんというか~。ねえ? みんな?」

 リーサさんまで懇願してくる。再度みんなを見回すと目を逸らされた。視線を外さないでくれるのはルキナちゃんだけだ。うん、いい子だな~。

「決まりだ! リーサは気配察知のスキルを持ってるからな。役に立つぞ」

「それを言うならバルバトスさんだって、前衛最強じゃないですか」

「ガハハ、そうだったそうだった」

 隙を見せるとすぐにイチャイチャする二人。何も食べてないのに口があまくなってくるな~。
 ということで予定よりも大所帯で下水道へとやってきた。ゴミを片っ端から異世界商店へと入れていく。その傍ら、みんなはそれぞれ魔物を狩っていく。

「ルキナちゃん、ネズミ!」

「にゃ!」

 ニカとルキナちゃんは二人でネズミを狩っていく。レベルを上げておいて損はないということでルキナちゃんも連れてきたけど、正解だったな。ただ、ここに入る時は大変だった。
 獣人のルキナちゃんは鼻がいいからね。匂いに敏感だから、ここの匂いはきついらしい。
 それでも我慢してついてきてくれるんだから本当にいい子だ。

「スライムが3匹天井です」

「了解。ThreeMagic Firebolt」

 リーサさんとバルバトスさんの声が聞こえてくる。部屋のような空間に行ったみたいで魔法を使って倒してるみたいだ。ここら一帯の魔物が全滅しちゃいそうだな。

「私の出番はなさそうだ」

「僕もそんな感じっぽいね」
 
 アイラと顔を見合って苦笑い。僕はゴミ集めに勤しむかな。
 みんなのおかげで魔石の収入も多く得られた。もちろん、ゴミを異世界商店に入れたことで30万G稼ぐことが出来た。
 エンプレスの町の北側だけなのにこれだけのお金が手に入った。東や南、西の下水道にいけばさらに多くのゴミが手に入るだろう。路地にもあるだろうから町を探索してもいいかもな。
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