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第一章
第8話 ルガさん
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「お見送りなんていらんのに」
「そんなこと言わないで。僕の恩人なんだから」
「いやいや、おめえも恩人だろ」
ルガさんは恥ずかしそうに話してくる。それに答えると更に顔を真っ赤にして言って来た。
まあ、確かにそうかもしれないな。でも、それならこれで五分五分だ。
布で出来た小屋に着くと他のおじさん達もいて、ルガさんもそうだけど、置いておいた服を着ている様子はない。
「……ハヤトが置いていった服は着ないって決めてたんだがよ。おめえのその様子から俺達を笑っていたんじゃないって分かったよ」
布で出来た小屋に入りながらそういうルガさん。しばらくすると綺麗な服を着て出てくる。
「し、仕方ねえからもらっておく。それに酒もな」
「はは、ありがとうございます」
「バカ野郎。れ、礼は俺達が言うことだ。なあ?」
ルガさんが恥ずかしそうに声をあげるとお礼を伝えた。するとおじさん達はみんなガハハと笑い出す。
「何か困ったことがあったら何でも言ってくださいね」
「そんな頻繁に困ったことになってたら今まで生きてきてねえよ。気にしないでハヤトはハヤトの人生を生きろ。こういっちゃなんだが、俺達は終わった人生だ。お荷物になりたくねえんだよ」
「ルガさん……」
「そんな悲しい顔すんな。まあ、偶に酒でも恵んでくれればいい」
恩人であるルガさんやおじさん達にお礼がしたいと思ったけど、ルガさん達には迷惑なのかな。なんて思っていたけど、慰めるようにルガさんは優しく声をかけてくれた。お言葉に甘えて偶にお酒を渡しにこよう。今回のポーションでも分かったけど、異世界商店の商品は色んな事ができそうだからな。今度ちゃんと商品を見てみよう。傷を治すポーションのほかにも色んなものがあったから。
「じゃあ、また明日」
「おい! そんな毎日」
「冗談ですよ」
「な……ガハハ一本取られたな」
別れの挨拶をすると豪快に笑うルガさん達。薄っすらと涙を浮かべてる人もいてなんか嬉しそうだな。偶に人に相手にされると感慨深くなるからそれだろうか?
「兄ちゃんって人気者だね」
「え? そうかな?」
「うん。カッコいい」
「……そんなこと言われたことないな」
ニカが抱き着いてきて褒めてくれる。男の子にモテてしまってもな~。まあ、いいか。
とにかく、ベロニカさんに宿代を払って余ったお金で異世界商店に入れて何かできないか考えよう。
異世界物の小説でよくあるのは調味料を売るってやつだった気がするな。といっても、この世界の商品が並んでいるからな。綺麗な胡椒とかは期待できないだろうな。でも、商品を覗くのは楽しみだ。
そんな考えを巡らせてニカに抱き着かれながら歩いていると、
「痛っ!?」
「!? どこみてやが……てめ~!」
昨日もぶつかった犬の獣人達が現れた。腕は折れているのでみんな布で片腕をぶら下げている。
「覚えてんだろうな?」
「えっと、覚えていません」
「覚えてんじゃねえか! ふざけた野郎だ! やっちまえ!」
犬の獣人達と睨み合いに発展してしまった。ニカに離れてもらって素手での戦闘。流石にスキルの影響を受けられないので危ないと思っていたんだけど。
『格闘術を習得しました』
一発右拳を男達がぶら下げている腕に当てるとそんな声が聞こえてきた。それからは一方的な展開。傷ついた腕を集中的に狙って泣くまで繰り返すだけ、路地で複数人に絡まれても数の有利を使えない。
「ハヤト兄ちゃん。強い!」
「ははは、たまたまだよ。でも、これに懲りたら構ってこないでよ?」
「は、はい! 二度としませんから許して」
ニカに褒められて謙遜すると犬の獣人達を睨みつける。
彼らは泣きすぎて鼻水が凄いことになってる。まあ、これで僕の事は忘れてくれるだろう。
無駄な争いを終えて雷の宿屋に帰ってきた。
厨房からベロニカさんが僕らに気づいて迎えてくれる。エプロンで濡れた手を拭う姿は何かお母さんって感じだな。
「母ちゃん!」
「ニカお帰り。ハヤトさんも」
「ただいま戻りました」
嬉しさのあまり抱き着きにいくニカ。抱きとめて迎えるベロニカさんは僕も迎えてくれる。
「母ちゃん凄いんだよ! ハヤト兄ちゃんと地下に行ったんだけど、魔物がいっぱいいたんだ」
「ふふ、だからこんなに汚れているのね。二人共まずは体を洗いましょ」
「は~い。ハヤト兄ちゃんの背中流すね」
ニカの報告に嬉しそうに微笑むベロニカさん。タオルとして使っている布を取り出すとベロニカさんはびっくりした目で布を見つめた。
「ハヤトさん? それ」
「ああ、体を洗う用の布ですよ。必要でしょ?」
「そ、そうだけど……綺麗ね。まるでホワイトフォックスの毛皮見たい」
驚くベロニカさんの言葉に首を傾げる。ホワイトフォックス? ただの布だと思うけどな。と異世界商店を広げる。あっ、この布ホワイトフォックスの毛を束ねたって書いてある。でも、そんな驚くものが5Gなわけないと思うけどな。
「欲しいですか? いくらでも用意できますけど」
「ええ!? いくらでも?」
「はい、とりあえず、もう一枚」
「ええ!?」
ふわっと懐から取り出す。本当は異世界商店から取り出しているんだけど、とりあえず隠しておいた方がいいだろうからな。
「ハヤト兄ちゃんってインベントリ持ちなの?」
「インベントリ?」
「知らないってことは持ってないんだね。インベントリって言うのはね。別の空間に荷物を入れられるんだ。どんなに大きくて、重いものも入れられるスキルだよ。持っているだけで国にお仕えできるスキルなんだよ~」
ふむふむ、この世界のスキルにはそんなものもあるのか。って国にお仕えって絶対にしたくないぞ。折角、異世界に来たんだ。まだ見ぬ世界を見て回りたいからな。
「あ、あの、ベロニカさん」
「分かっているわ。ニカ、ハヤトさんのことは口外しちゃダメよ。みんなに言っちゃダメ」
「え~。でも、ハヤト兄ちゃん」
「いいわね?」
「わかったよ~」
渋々といった様子でベロニカさんの忠告を聞くニカ。お礼にタオルを渡すと頬ずりしてる。
「じゃあ、お湯を用意するわね。部屋に持っていくから二人は待っていて」
「「は~い」」
ニカと一緒に僕の部屋に向かう。そうか、この世界には湯舟って言う文化はないんだな。川で体を洗うのは普通っちゃ普通だったんかな。
「は~、お洋服汚れちゃったね」
「そうだな~。これも変えるかな」
旅人の服もあんな汚いところに行ったら一回で結構汚れてしまっただろうな。ん? 汚れたと思ったけど、全然汚れてない……。
「あれ? ハヤト兄ちゃんの服綺麗だね? なんでだろう?」
ニカも気が付いて服を触る。まじまじと見て匂いまで嗅いでる。
「いい匂い~。石鹸よりもいい匂いだね」
「あっ、本当だ」
嗅覚疲労で気が付かなかったけど、異世界商店で買った服は日本の洗剤で洗ったかのように綺麗でいい匂いがする。
「いいな~。僕もほしい」
「じゃあ、初依頼のお祝いにあげるよ。どんな服がいい?」
「え!? いいの? でも、悪いよ。それに母ちゃんに怒られる」
「お祝いだから許してくれるさ。どんなのがいい?」
ニカが複雑な様子で答える。お祝いだから大丈夫だろうと声をかけると顎に手を当てて考え込む。
「剣士みたいな服が良いな~。カッコいいの!」
「了解。用意しておくよ。ベロニカさん、一人で運ぶの大変だろうから手伝ってくるな」
用意すると言って部屋をでる。買い物する姿を見られてもいいんだけど、今はまだ見せないでいよう。下手に混乱させてしまうのも悪いしね。
早速異世界商店を開く。
剣士のような服か、おっと、あったあった。スクロールしていくと剣士の服と言うものがあった。青い布地に手甲のついた服、僕的にはカッコいいと思うけどどうだろうか?
「あら? ハヤトさん、外でどうしたの?」
買い物して剣士の服を手に取って考え込んでいるとベロニカさんがおけをもってやってきた。
「お湯は今作ってますからね」
「ありがとうございます。手伝いますよ」
「ふふ、お客様にそんなことダメですよ。それよりもニカの相手ありがとうございます」
ベロニカさんは僕が桶を受け取るとお礼を言ってくる。とても優しい表情。
「いえ、僕も冒険者初心者だったから登録とか分かりやすくしてもらえてよかったです」
「ふふ、よかった。ニカは生まれた時から私と二人だったから男の人に憧れみたいなものがあるみたい。仲良くしてあげてくださいね」
「こちらこそって感じですよ」
笑顔で答えると微笑みながら厨房に向かうベロニカさん。このおけに入るくらいのお湯を持ってこないといけないわけだから手伝いたいんだけどな。
「そんなこと言わないで。僕の恩人なんだから」
「いやいや、おめえも恩人だろ」
ルガさんは恥ずかしそうに話してくる。それに答えると更に顔を真っ赤にして言って来た。
まあ、確かにそうかもしれないな。でも、それならこれで五分五分だ。
布で出来た小屋に着くと他のおじさん達もいて、ルガさんもそうだけど、置いておいた服を着ている様子はない。
「……ハヤトが置いていった服は着ないって決めてたんだがよ。おめえのその様子から俺達を笑っていたんじゃないって分かったよ」
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「し、仕方ねえからもらっておく。それに酒もな」
「はは、ありがとうございます」
「バカ野郎。れ、礼は俺達が言うことだ。なあ?」
ルガさんが恥ずかしそうに声をあげるとお礼を伝えた。するとおじさん達はみんなガハハと笑い出す。
「何か困ったことがあったら何でも言ってくださいね」
「そんな頻繁に困ったことになってたら今まで生きてきてねえよ。気にしないでハヤトはハヤトの人生を生きろ。こういっちゃなんだが、俺達は終わった人生だ。お荷物になりたくねえんだよ」
「ルガさん……」
「そんな悲しい顔すんな。まあ、偶に酒でも恵んでくれればいい」
恩人であるルガさんやおじさん達にお礼がしたいと思ったけど、ルガさん達には迷惑なのかな。なんて思っていたけど、慰めるようにルガさんは優しく声をかけてくれた。お言葉に甘えて偶にお酒を渡しにこよう。今回のポーションでも分かったけど、異世界商店の商品は色んな事ができそうだからな。今度ちゃんと商品を見てみよう。傷を治すポーションのほかにも色んなものがあったから。
「じゃあ、また明日」
「おい! そんな毎日」
「冗談ですよ」
「な……ガハハ一本取られたな」
別れの挨拶をすると豪快に笑うルガさん達。薄っすらと涙を浮かべてる人もいてなんか嬉しそうだな。偶に人に相手にされると感慨深くなるからそれだろうか?
「兄ちゃんって人気者だね」
「え? そうかな?」
「うん。カッコいい」
「……そんなこと言われたことないな」
ニカが抱き着いてきて褒めてくれる。男の子にモテてしまってもな~。まあ、いいか。
とにかく、ベロニカさんに宿代を払って余ったお金で異世界商店に入れて何かできないか考えよう。
異世界物の小説でよくあるのは調味料を売るってやつだった気がするな。といっても、この世界の商品が並んでいるからな。綺麗な胡椒とかは期待できないだろうな。でも、商品を覗くのは楽しみだ。
そんな考えを巡らせてニカに抱き着かれながら歩いていると、
「痛っ!?」
「!? どこみてやが……てめ~!」
昨日もぶつかった犬の獣人達が現れた。腕は折れているのでみんな布で片腕をぶら下げている。
「覚えてんだろうな?」
「えっと、覚えていません」
「覚えてんじゃねえか! ふざけた野郎だ! やっちまえ!」
犬の獣人達と睨み合いに発展してしまった。ニカに離れてもらって素手での戦闘。流石にスキルの影響を受けられないので危ないと思っていたんだけど。
『格闘術を習得しました』
一発右拳を男達がぶら下げている腕に当てるとそんな声が聞こえてきた。それからは一方的な展開。傷ついた腕を集中的に狙って泣くまで繰り返すだけ、路地で複数人に絡まれても数の有利を使えない。
「ハヤト兄ちゃん。強い!」
「ははは、たまたまだよ。でも、これに懲りたら構ってこないでよ?」
「は、はい! 二度としませんから許して」
ニカに褒められて謙遜すると犬の獣人達を睨みつける。
彼らは泣きすぎて鼻水が凄いことになってる。まあ、これで僕の事は忘れてくれるだろう。
無駄な争いを終えて雷の宿屋に帰ってきた。
厨房からベロニカさんが僕らに気づいて迎えてくれる。エプロンで濡れた手を拭う姿は何かお母さんって感じだな。
「母ちゃん!」
「ニカお帰り。ハヤトさんも」
「ただいま戻りました」
嬉しさのあまり抱き着きにいくニカ。抱きとめて迎えるベロニカさんは僕も迎えてくれる。
「母ちゃん凄いんだよ! ハヤト兄ちゃんと地下に行ったんだけど、魔物がいっぱいいたんだ」
「ふふ、だからこんなに汚れているのね。二人共まずは体を洗いましょ」
「は~い。ハヤト兄ちゃんの背中流すね」
ニカの報告に嬉しそうに微笑むベロニカさん。タオルとして使っている布を取り出すとベロニカさんはびっくりした目で布を見つめた。
「ハヤトさん? それ」
「ああ、体を洗う用の布ですよ。必要でしょ?」
「そ、そうだけど……綺麗ね。まるでホワイトフォックスの毛皮見たい」
驚くベロニカさんの言葉に首を傾げる。ホワイトフォックス? ただの布だと思うけどな。と異世界商店を広げる。あっ、この布ホワイトフォックスの毛を束ねたって書いてある。でも、そんな驚くものが5Gなわけないと思うけどな。
「欲しいですか? いくらでも用意できますけど」
「ええ!? いくらでも?」
「はい、とりあえず、もう一枚」
「ええ!?」
ふわっと懐から取り出す。本当は異世界商店から取り出しているんだけど、とりあえず隠しておいた方がいいだろうからな。
「ハヤト兄ちゃんってインベントリ持ちなの?」
「インベントリ?」
「知らないってことは持ってないんだね。インベントリって言うのはね。別の空間に荷物を入れられるんだ。どんなに大きくて、重いものも入れられるスキルだよ。持っているだけで国にお仕えできるスキルなんだよ~」
ふむふむ、この世界のスキルにはそんなものもあるのか。って国にお仕えって絶対にしたくないぞ。折角、異世界に来たんだ。まだ見ぬ世界を見て回りたいからな。
「あ、あの、ベロニカさん」
「分かっているわ。ニカ、ハヤトさんのことは口外しちゃダメよ。みんなに言っちゃダメ」
「え~。でも、ハヤト兄ちゃん」
「いいわね?」
「わかったよ~」
渋々といった様子でベロニカさんの忠告を聞くニカ。お礼にタオルを渡すと頬ずりしてる。
「じゃあ、お湯を用意するわね。部屋に持っていくから二人は待っていて」
「「は~い」」
ニカと一緒に僕の部屋に向かう。そうか、この世界には湯舟って言う文化はないんだな。川で体を洗うのは普通っちゃ普通だったんかな。
「は~、お洋服汚れちゃったね」
「そうだな~。これも変えるかな」
旅人の服もあんな汚いところに行ったら一回で結構汚れてしまっただろうな。ん? 汚れたと思ったけど、全然汚れてない……。
「あれ? ハヤト兄ちゃんの服綺麗だね? なんでだろう?」
ニカも気が付いて服を触る。まじまじと見て匂いまで嗅いでる。
「いい匂い~。石鹸よりもいい匂いだね」
「あっ、本当だ」
嗅覚疲労で気が付かなかったけど、異世界商店で買った服は日本の洗剤で洗ったかのように綺麗でいい匂いがする。
「いいな~。僕もほしい」
「じゃあ、初依頼のお祝いにあげるよ。どんな服がいい?」
「え!? いいの? でも、悪いよ。それに母ちゃんに怒られる」
「お祝いだから許してくれるさ。どんなのがいい?」
ニカが複雑な様子で答える。お祝いだから大丈夫だろうと声をかけると顎に手を当てて考え込む。
「剣士みたいな服が良いな~。カッコいいの!」
「了解。用意しておくよ。ベロニカさん、一人で運ぶの大変だろうから手伝ってくるな」
用意すると言って部屋をでる。買い物する姿を見られてもいいんだけど、今はまだ見せないでいよう。下手に混乱させてしまうのも悪いしね。
早速異世界商店を開く。
剣士のような服か、おっと、あったあった。スクロールしていくと剣士の服と言うものがあった。青い布地に手甲のついた服、僕的にはカッコいいと思うけどどうだろうか?
「あら? ハヤトさん、外でどうしたの?」
買い物して剣士の服を手に取って考え込んでいるとベロニカさんがおけをもってやってきた。
「お湯は今作ってますからね」
「ありがとうございます。手伝いますよ」
「ふふ、お客様にそんなことダメですよ。それよりもニカの相手ありがとうございます」
ベロニカさんは僕が桶を受け取るとお礼を言ってくる。とても優しい表情。
「いえ、僕も冒険者初心者だったから登録とか分かりやすくしてもらえてよかったです」
「ふふ、よかった。ニカは生まれた時から私と二人だったから男の人に憧れみたいなものがあるみたい。仲良くしてあげてくださいね」
「こちらこそって感じですよ」
笑顔で答えると微笑みながら厨房に向かうベロニカさん。このおけに入るくらいのお湯を持ってこないといけないわけだから手伝いたいんだけどな。
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