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第一章
第54話 変わってしまった景色
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「ヒューイ!」
「ヒュ~イ!」
キスタンに帰ってきて一年がたった。
リーシャとミーシャの声で朝を迎える。
「やあ二人ともおはよう」
「「おはよう」」
ニッコリと微笑んで二人に挨拶を交わす。
「明日は45階だよね」
「ああ、とうとうここまで来た」
部屋を出て下の階に下りながらリーシャと会話を交わす。サファイアとアルテミス様の力を借りて何とかここまで来た。
「50階も余裕だよ。ダンジョンに入ったら達成したも同然だね」
ミーシャが抱き着いて話す。
やっとここまで来た……今回で絶対にルラナを元に戻す。
「でも、そうなるとアルテミス様とはお別れだね」
感慨深くリーシャが呟く。確かに一年も一緒に居たアルテミス様との別れも悲しいな。
「皆さんおはようございます」
「おはようアルテミス~」
「「おはよう」」
一階に下りるとアルテミス様が食事を机に並べていた。キスタンに帰ってきた時から彼女が食事を管理すると言ってやってくれるようになった。彼女の料理は栄養面を考えた料理、もちろん、美味しくて毎日お代わりをしてしまうほどだ。
「アルテミスの料理は美味しいからな~。流石私の嫁」
ミーシャが馬鹿なことを話してる。アルテミス様も呆れて苦笑いしてるよ。
「ふむ、アルテミス殿の料理は確かに美味しいです。ぜひ、私の飯の管理もして欲しいところです」
サファイアが料理を口に運んで呟いてる。丁寧な口調のサファイアは人間の食べ物が大好きになったんだよな。前は魔物をそのまま食べるとかそういう食生活だったみたいだけど。
「「パ~パ! おはよう~」」
「おはよう、アース、シー」
ステインとエラの子供も一歳になって普通に歩けるようになった。僕の事をパパと呼んじゃダメって言っても呼んでくるんだよな~。
名前は男の子がアースで女の子がシー。名前を考えるのは凄く苦労したよ。その子の一生を左右するものだからね。
「はぁ~……。パパはやめてくれよアース、シー」
「ふふ、もう諦めたらステイン。いいじゃないヒューイはパパで」
「まあ、命の恩人だしな~」
半分諦めでステインがエラに説得される。子供がそうしたいんだから仕方ないしね。
「おお、みんな集まっておったか。武器は整えておいたぞ」
ワジソンが地下から上ってきて武器をカウンターに置く。ピッカピカなミスリルの武器たち。
「おう、ありがとうワジソン。よし、みんな集まったな」
ワジソンにお礼を言って机を勢い良く叩くステイン。僕らはみんな席についた。
「知っての通り、俺達は45階までのぼった。とうとうルラナを取り戻せるところまで来たわけだ」
感慨深くステインが話す。やっとここまで来た。オルソナルから僕らを守ってくれたルラナを取り戻せる。
「50階のボスはなんだろう?」
「45階のボスも大変だったもんね」
「クリスタルドラゴン。あれは強者であったな」
ミーシャが首を傾げるとリーシャとサファイアが話した。
クリスタルドラゴンはクリスタルを生み出して自在に操るドラゴンだった。縦横無尽に飛び交うクリスタルを回避して戦うのは難しかったな。
サファイアがドラゴンに戻って取っ組み合いをしてくれなかったらやられてたのは僕らの方だっただろう。
「ボスの報酬のおかげで私も強くなれた。50階ではもっともっと役に立つぞ」
クリスタルドラゴンの報酬はクリスタルアーマーという装備。サイズが自動調整されるアーマーでドラゴンに戻ったサファイアでもそのまま着用できるものだった。
元々サファイアは人の姿になっても服も再現できたから大丈夫だけどね。
「アルテミス様はなにかわからないんですか?」
「50階からは王の魔物が現れるはずです」
僕の質問にアルテミス様が答えてくれる。
「……。まだ様をつけるんですね」
「すみません」
「いえ、いいんです」
悲しい表情のアルテミス様。姿はルラナのまま……。彼女をアルテミスなんて呼び捨てにしたらルラナを忘れているようでいたたまれなくなるんだ。彼女には悪いけど一生呼び捨てなんてできない。
「王か~。まさかゴブリンキングなわけないしな」
「最低でもクリスタルドラゴンよりも上の魔物ですから」
「あれよりも上? ゾッとするね」
「ああ、オルソナル並かもな」
「やめてよあんな奴の名前を出すの。魔族領に帰ったんだよねあいつ」
ステインが話すとアルテミス様が答えてミーシャとリーシャが怪訝な表情で話した。
オルソナルは魔族領に帰ったという知らせがルレインさんとアルテナ様から届いた。
テスラ帝国やオルダイナ王国は和平へと動いて、今のところは平和になった。
今まで奪われた命を考えると平和はそう簡単なことじゃない。テスラ王とオルダイナ王が頑張っているけれど、内戦になるかもしれないと知らされている。その時は僕らはルレインさんやアルテナ様を助けに動くだろう。
「あんな奴の話はやめよう。とにかくだ。明日俺達はダンジョンに潜る。そして、帰ってきた時、伝説になる」
「ふふふ、すでに伝説だけどね」
ステインが頭を掻いて話を切るとミーシャがピースしてうかれてる。
すでに僕らはキスタンで伝説のチームになっている。Sランクのダンジョン攻略チームとして世界に轟いているらしい。
アルテナ様とルレインさんの知らせで初めて知って驚いたんだよな。
でも、僕らにはそんな話どうでもよかった。50階をクリアして早くルラナを元に戻す。それだけでよかったから。
「今日は各々過ごしてくれよ」
ステインはそういうと子供達を抱き上げて外へと歩いていく。エラもそれに続いていくのを見るとたぶんレバナさんのところに行くのかもな。
「じゃあ、今日は私達と過ごそうねヒューイ」
「え?」
「ちょっとお姉ちゃん」
ミーシャが抱き着いてきて声をあげるとリーシャが頬を膨らませて声をあげた。どうやら、姉妹との買い物に駆り出されるようだ。
予定はなかったからいいけど、なんで僕を誘ってくれるのかな。
ということでひとしきり姉妹との買い物を終えて夜になった。いつも通り、夕食を食べ終わるとアルテミス様に呼ばれて拠点の屋根へと案内された。
「ヒューイさん急な呼び出しすみません」
「いえ……」
アルテミス様の顔を見ずに返事をする。二人っきりで面と向かって会話をしたことがない。ルラナを思い出してしまうからあんまり顔を見ずに会話することが多くなってしまった。アルテミス様には悪いけどね。
「今度のダンジョンで私は神界に帰ることになるでしょう。ありがとうございました」
「……こちらこそ、ルラナの体を保ってくれてありがとうございました」
お辞儀をしてお礼を言ってくるアルテミス様。感慨深く答えると彼女の目から涙が零れ落ちた。
「あれ? なんででしょう涙が……」
訳が分からない様子のアルテミス様。流れてくる涙を掬いながら驚いてる。
「は、ははは。ごめんなさいねヒューイさん」
「いえ……。神様も悲しいって思うんですね」
「……そう、みたいですね」
恥ずかしそうに笑うアルテミス様。神様も僕らと一緒なのか。
「座りませんか?」
アルテミス様がそういって屋根の出っ張りに座る。丁度二人分の出っ張り、座るとアルテミス様が僕の手を握った。
「アルテミス様?」
「ルラナさんの心に触れることが何度かあるんです。そのたびにあなたが彼女の中で大きくなるのを感じました」
「……」
アルテミス様はそういって強く手を握ってきた。
「彼女の感情に触れて私もあなたが気になる存在になったのを感じてしまい、いたたまれなくなった。何度も自分を納得させましたが次が最後だと思うとどうしても伝えておきたいことがあって……」
みるみる顔を赤くさせるアルテミス様。握る手から水気を感じて緊張が伝わってくる。
「私はこの世界にいることはできない。ルラナさんのおかげでとても楽しい経験をさせてもらえた。それがあなた達でよかった。近くにいたのがあなたでよかった」
微笑むアルテミス様。高揚させる頬が艶めいて見える。
「僕らもあなたと知り合えてよかったです」
「そういってもらえると嬉しいです。また、何かがあったら私を呼んでほしいですね」
「ははは、オルソナルみたいな相手と会うのはごめんこうむりますがね」
「大丈夫です。今度会ったらあなた達が勝ちます。神の保証付きです。でも、それじゃ、私を呼ばなくてすんじゃいますね。残念です」
アルテミス様はおちゃめに舌を出して答えてくれる。なんだか僕も悲しくなってきてしまうな。
「ヒューイさん。あなたは神に近い存在かもしれません」
「え? 急に何を?」
「あなたの力はスキルに留まるものではないのっです。しいて言えばダンジョンコアのような力と申しましょうか」
真剣な顔になったアルテミス様は急に変な話をし始める。僕の力が神? ましてやダンジョンコア? 唐突すぎてついていけない。
「ダンジョンコアは自分の魔物を強化したりすることが出来ます。意思を持っているダンジョンコアは聞いたことがありませんがもしもいるとしたらあなたのような方かもしれない。私はそう思ったのです。それはすでに神の領域の存在なんです」
顔を近づけてくるアルテミス様。僕は思わず顔を背ける。悲しそうに離れていく彼女は更に話し続ける。
「そんな話どうでもいいですよね。ルラナさんを元に戻しましょうね」
そう区切って話を終らせるアルテミス様。立ち上がって屋根から下りようと端まで行くと急に僕を振り返って抱き着いてきた。
「る、ルラナさんもこのくらいは許してくれますよね」
まるで自分に言うように声をあげるアルテミス様。彼女には感謝してる。
アルテミス様が居なかったらルラナの体は腐敗し始めてしまう。魂が回復しても肉体が腐ってしまったら元に戻れないから。
「ありがとうございましたアルテミス様」
「……いえ」
お礼を言って強く抱き返すと彼女は涙を流した。声を出さないように抑え込んだような泣き声が聞こえてくる。
声が聞こえなくなるまで抱き続けると恥ずかしそうに部屋に戻っていった。
アルテミス様も仲間になれないもんかとおもうけど、神の存在の彼女と一緒に居たいなんておこがましい。他の神に殺されても仕方ない行為だ。今の状況が異常なんだよな。
「ヒュ~イ!」
キスタンに帰ってきて一年がたった。
リーシャとミーシャの声で朝を迎える。
「やあ二人ともおはよう」
「「おはよう」」
ニッコリと微笑んで二人に挨拶を交わす。
「明日は45階だよね」
「ああ、とうとうここまで来た」
部屋を出て下の階に下りながらリーシャと会話を交わす。サファイアとアルテミス様の力を借りて何とかここまで来た。
「50階も余裕だよ。ダンジョンに入ったら達成したも同然だね」
ミーシャが抱き着いて話す。
やっとここまで来た……今回で絶対にルラナを元に戻す。
「でも、そうなるとアルテミス様とはお別れだね」
感慨深くリーシャが呟く。確かに一年も一緒に居たアルテミス様との別れも悲しいな。
「皆さんおはようございます」
「おはようアルテミス~」
「「おはよう」」
一階に下りるとアルテミス様が食事を机に並べていた。キスタンに帰ってきた時から彼女が食事を管理すると言ってやってくれるようになった。彼女の料理は栄養面を考えた料理、もちろん、美味しくて毎日お代わりをしてしまうほどだ。
「アルテミスの料理は美味しいからな~。流石私の嫁」
ミーシャが馬鹿なことを話してる。アルテミス様も呆れて苦笑いしてるよ。
「ふむ、アルテミス殿の料理は確かに美味しいです。ぜひ、私の飯の管理もして欲しいところです」
サファイアが料理を口に運んで呟いてる。丁寧な口調のサファイアは人間の食べ物が大好きになったんだよな。前は魔物をそのまま食べるとかそういう食生活だったみたいだけど。
「「パ~パ! おはよう~」」
「おはよう、アース、シー」
ステインとエラの子供も一歳になって普通に歩けるようになった。僕の事をパパと呼んじゃダメって言っても呼んでくるんだよな~。
名前は男の子がアースで女の子がシー。名前を考えるのは凄く苦労したよ。その子の一生を左右するものだからね。
「はぁ~……。パパはやめてくれよアース、シー」
「ふふ、もう諦めたらステイン。いいじゃないヒューイはパパで」
「まあ、命の恩人だしな~」
半分諦めでステインがエラに説得される。子供がそうしたいんだから仕方ないしね。
「おお、みんな集まっておったか。武器は整えておいたぞ」
ワジソンが地下から上ってきて武器をカウンターに置く。ピッカピカなミスリルの武器たち。
「おう、ありがとうワジソン。よし、みんな集まったな」
ワジソンにお礼を言って机を勢い良く叩くステイン。僕らはみんな席についた。
「知っての通り、俺達は45階までのぼった。とうとうルラナを取り戻せるところまで来たわけだ」
感慨深くステインが話す。やっとここまで来た。オルソナルから僕らを守ってくれたルラナを取り戻せる。
「50階のボスはなんだろう?」
「45階のボスも大変だったもんね」
「クリスタルドラゴン。あれは強者であったな」
ミーシャが首を傾げるとリーシャとサファイアが話した。
クリスタルドラゴンはクリスタルを生み出して自在に操るドラゴンだった。縦横無尽に飛び交うクリスタルを回避して戦うのは難しかったな。
サファイアがドラゴンに戻って取っ組み合いをしてくれなかったらやられてたのは僕らの方だっただろう。
「ボスの報酬のおかげで私も強くなれた。50階ではもっともっと役に立つぞ」
クリスタルドラゴンの報酬はクリスタルアーマーという装備。サイズが自動調整されるアーマーでドラゴンに戻ったサファイアでもそのまま着用できるものだった。
元々サファイアは人の姿になっても服も再現できたから大丈夫だけどね。
「アルテミス様はなにかわからないんですか?」
「50階からは王の魔物が現れるはずです」
僕の質問にアルテミス様が答えてくれる。
「……。まだ様をつけるんですね」
「すみません」
「いえ、いいんです」
悲しい表情のアルテミス様。姿はルラナのまま……。彼女をアルテミスなんて呼び捨てにしたらルラナを忘れているようでいたたまれなくなるんだ。彼女には悪いけど一生呼び捨てなんてできない。
「王か~。まさかゴブリンキングなわけないしな」
「最低でもクリスタルドラゴンよりも上の魔物ですから」
「あれよりも上? ゾッとするね」
「ああ、オルソナル並かもな」
「やめてよあんな奴の名前を出すの。魔族領に帰ったんだよねあいつ」
ステインが話すとアルテミス様が答えてミーシャとリーシャが怪訝な表情で話した。
オルソナルは魔族領に帰ったという知らせがルレインさんとアルテナ様から届いた。
テスラ帝国やオルダイナ王国は和平へと動いて、今のところは平和になった。
今まで奪われた命を考えると平和はそう簡単なことじゃない。テスラ王とオルダイナ王が頑張っているけれど、内戦になるかもしれないと知らされている。その時は僕らはルレインさんやアルテナ様を助けに動くだろう。
「あんな奴の話はやめよう。とにかくだ。明日俺達はダンジョンに潜る。そして、帰ってきた時、伝説になる」
「ふふふ、すでに伝説だけどね」
ステインが頭を掻いて話を切るとミーシャがピースしてうかれてる。
すでに僕らはキスタンで伝説のチームになっている。Sランクのダンジョン攻略チームとして世界に轟いているらしい。
アルテナ様とルレインさんの知らせで初めて知って驚いたんだよな。
でも、僕らにはそんな話どうでもよかった。50階をクリアして早くルラナを元に戻す。それだけでよかったから。
「今日は各々過ごしてくれよ」
ステインはそういうと子供達を抱き上げて外へと歩いていく。エラもそれに続いていくのを見るとたぶんレバナさんのところに行くのかもな。
「じゃあ、今日は私達と過ごそうねヒューイ」
「え?」
「ちょっとお姉ちゃん」
ミーシャが抱き着いてきて声をあげるとリーシャが頬を膨らませて声をあげた。どうやら、姉妹との買い物に駆り出されるようだ。
予定はなかったからいいけど、なんで僕を誘ってくれるのかな。
ということでひとしきり姉妹との買い物を終えて夜になった。いつも通り、夕食を食べ終わるとアルテミス様に呼ばれて拠点の屋根へと案内された。
「ヒューイさん急な呼び出しすみません」
「いえ……」
アルテミス様の顔を見ずに返事をする。二人っきりで面と向かって会話をしたことがない。ルラナを思い出してしまうからあんまり顔を見ずに会話することが多くなってしまった。アルテミス様には悪いけどね。
「今度のダンジョンで私は神界に帰ることになるでしょう。ありがとうございました」
「……こちらこそ、ルラナの体を保ってくれてありがとうございました」
お辞儀をしてお礼を言ってくるアルテミス様。感慨深く答えると彼女の目から涙が零れ落ちた。
「あれ? なんででしょう涙が……」
訳が分からない様子のアルテミス様。流れてくる涙を掬いながら驚いてる。
「は、ははは。ごめんなさいねヒューイさん」
「いえ……。神様も悲しいって思うんですね」
「……そう、みたいですね」
恥ずかしそうに笑うアルテミス様。神様も僕らと一緒なのか。
「座りませんか?」
アルテミス様がそういって屋根の出っ張りに座る。丁度二人分の出っ張り、座るとアルテミス様が僕の手を握った。
「アルテミス様?」
「ルラナさんの心に触れることが何度かあるんです。そのたびにあなたが彼女の中で大きくなるのを感じました」
「……」
アルテミス様はそういって強く手を握ってきた。
「彼女の感情に触れて私もあなたが気になる存在になったのを感じてしまい、いたたまれなくなった。何度も自分を納得させましたが次が最後だと思うとどうしても伝えておきたいことがあって……」
みるみる顔を赤くさせるアルテミス様。握る手から水気を感じて緊張が伝わってくる。
「私はこの世界にいることはできない。ルラナさんのおかげでとても楽しい経験をさせてもらえた。それがあなた達でよかった。近くにいたのがあなたでよかった」
微笑むアルテミス様。高揚させる頬が艶めいて見える。
「僕らもあなたと知り合えてよかったです」
「そういってもらえると嬉しいです。また、何かがあったら私を呼んでほしいですね」
「ははは、オルソナルみたいな相手と会うのはごめんこうむりますがね」
「大丈夫です。今度会ったらあなた達が勝ちます。神の保証付きです。でも、それじゃ、私を呼ばなくてすんじゃいますね。残念です」
アルテミス様はおちゃめに舌を出して答えてくれる。なんだか僕も悲しくなってきてしまうな。
「ヒューイさん。あなたは神に近い存在かもしれません」
「え? 急に何を?」
「あなたの力はスキルに留まるものではないのっです。しいて言えばダンジョンコアのような力と申しましょうか」
真剣な顔になったアルテミス様は急に変な話をし始める。僕の力が神? ましてやダンジョンコア? 唐突すぎてついていけない。
「ダンジョンコアは自分の魔物を強化したりすることが出来ます。意思を持っているダンジョンコアは聞いたことがありませんがもしもいるとしたらあなたのような方かもしれない。私はそう思ったのです。それはすでに神の領域の存在なんです」
顔を近づけてくるアルテミス様。僕は思わず顔を背ける。悲しそうに離れていく彼女は更に話し続ける。
「そんな話どうでもいいですよね。ルラナさんを元に戻しましょうね」
そう区切って話を終らせるアルテミス様。立ち上がって屋根から下りようと端まで行くと急に僕を振り返って抱き着いてきた。
「る、ルラナさんもこのくらいは許してくれますよね」
まるで自分に言うように声をあげるアルテミス様。彼女には感謝してる。
アルテミス様が居なかったらルラナの体は腐敗し始めてしまう。魂が回復しても肉体が腐ってしまったら元に戻れないから。
「ありがとうございましたアルテミス様」
「……いえ」
お礼を言って強く抱き返すと彼女は涙を流した。声を出さないように抑え込んだような泣き声が聞こえてくる。
声が聞こえなくなるまで抱き続けると恥ずかしそうに部屋に戻っていった。
アルテミス様も仲間になれないもんかとおもうけど、神の存在の彼女と一緒に居たいなんておこがましい。他の神に殺されても仕方ない行為だ。今の状況が異常なんだよな。
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