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第一章
第52話 賛辞
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「よくぞ! よくぞアルテナを守ってくれた!」
あの激しい戦いから次の日。
僕らは玉座の間でオルダイナ王からお礼を言われていた。
みんなで玉座の間に並んで王様直々のお礼に気恥ずかしさを感じていると横に並ぶ兵士達に敬礼される。
「オルソナルの洗脳に気づき、タリウス王子の手紙を利用し国外に逃がした。逃がすことしかできなかった。王ともあろうものが情けないことだ」
「そんなことはありませんお父様」
オルダイナ王が頭を抱えて苦悩する。慰めるアルテナ様……。でも、疑問が残る。
「アルテナ様。一つ疑問が」
「……。分かっています。【アル】と【テナ】のことですよね」
僕は疑問を口にする。するとアルテナ様が悲しそうに顔を俯かせて口を開いた。
「二人は私の中でマナへと変わっていきました。魂……。それを犠牲にして、私を作ったのです」
アルテナ様の言葉に僕らは悲しくなる。そうか、彼女達はもういないのか。
「アルテナ? なんの話だ?」
「お父様。この国を出る前の私を覚えていますか?」
「ああ、覚えているとも。真面目で活発な」
「……」
オルダイナ王が疑問に思って口を開くとアルテナ様が質問する。王様が答えるとアルテナ様が無言で首を横に振った。
「あの子達は孤児院によって入れられた子供の魂。入心という禁忌です」
「な、なに!? で、では。お前は?」
「私が本当のアルテナ……。と言ってもヒューイ様の力と二人の協力があって初めて生まれることが出来たのですが」
情けない様子のアルテナ様が王様の言葉に答える。
「……やはり、あの時にお前は」
「はい。幼き日に孤児院によって禁忌を使われたのです。本来は力を抑えるための物でしたがヒューイ様のおかげで回復することが出来ました。かなりの時間を要しましたが」
僕の強化スキルが役に立ったってことか。オルダイナ王は悲しい顔でアルテナ様を見つめている。昔、アルテナ様が誘拐されたって言う話は本当みたいだな。
「そうか、とにかく、アルテナが無事でよかった。騎士団長のルレインはどうした? 一緒に居たはずだが?」
「ルレインはタリウス様に嫁ぎました」
「な、なに!? ……それはよかった?」
ええ!? 嫁いだ? オルダイナ王の話になぜかミーシャが声をあげる。嫁ぐなんて話は聞いていなかったけど~?
「ガハハ」
「知らないのはアルテナ様とヒューイだけだな」
「ほんと、鈍感なんだから」
ワジソンが笑うとステインとミーシャが続いて笑った。僕ってそんなに鈍感かな?
「と、とにかく……。そうか、ではテスラ帝国とは国交を結べるか?」
「こちらから謝れば大丈夫でしょう。タリウス様もルレインも協力してくれるはずです」
オルダイナ王とアルテナ様は手を取り合う。
僕らに出来ることはこれ以上なさそうだな。
「では、僕らは帰ります」
「!? もう行ってしまうんですか?」
「はい。ここでできることはありませんので。それに」
「それに?」
僕が声をあげるとアルテナ様が驚く。
ここにいるとルラナを守れなかったことを思い出してしまうから。なんて、ルラナの姿のアルテミス様の前じゃ言えないよな。
「アルテミスお姉さま!」
玉座の間を後にしてお城を出るとアルテナ様が追いかけてきてアルテミス様に抱き着く。
『アルテナ。体を大事にね』
「はい! お姉さまも」
抱きしめ合う姉妹。ルラナの姿のアルテミス様を見るといつも泣きそうになってしまう。見ていられない。
「ではアルテナ様」
サファイアが龍の姿となって馬車を足でつかむ。背に乗るのは危ないってことで馬車に乗ったけど、これも十分危ないな。
「孤児院の残党が逃げているようです。皆さんも気をつけてください」
「シスターが見つかっていないんですよね」
「はい。我々も探しますがキスタンにもいくはずですので」
サファイアが翼を羽ばたかせる中、アルテナ様が声をあげる。僕が答えると手を振って見送ってくれた。
馬車から見えるオルダイナ王国が遠ざかっていく。いつの間にかこんな遠くに来ちゃったんだな。
「ルラナ、じゃなかった。アルテミス様」
『様はやめてください。これからは仲間じゃないですか。なんですか?』
ルラナの姿のアルテミス様に声をかけると彼女は悲しい顔で微笑んだ。
「本当にキスタンのダンジョンにルラナを元に戻せる魔石があるんですか?」
『はい、本当です』
「何階ですか?」
僕は緊張しながら疑問を投げかける。みんなもその答えに緊張してる。
キスタンのダンジョンはディアボロスがいたように不確定要素の多いダンジョンだ。噂では最高難易度と言われているらしい。
記録としては20階が最高らしいしね。
『50階のボスです』
「50!?」
50階まで潜らないとダメってことか。
「……」
みんな考え込んでしまう。馬車の外の風の音だけが聞こえる。
「……な~んだ」
「お姉ちゃん?」
風だけが聞こえていた中、ミーシャが声をあげた。
「100階って言われると思って緊張しちゃった。驚かさないでよアルテミス~」
ミーシャがそういってアルテミスの肩を叩く。
「……そうだな。50階なら一年もかからねえな」
「そうじゃな。ヒューイが居れば可能じゃろう」
「お兄ちゃんが居れば大丈夫~」
ため息をついてステインも同意して声をあげる。続いてワジソンとブルームちゃんが僕を見てくる。
「そうそう、私達にはヒューイがついてるんだから」
「そうだよね。そうだよ! ヒューイが居れば50階なんてすぐだよ」
ミーシャとリーシャも楽しそうにそういってくる。
「よーし! 希望が湧いてきた! 早く帰って祝杯だ!」
「祝杯?」
「おう! ルラナ復活のな!」
ステインが腕を掲げて話す。首を傾げると彼はアルテミス様を抱き上げて高い高いをした。
『ちょ、ステイン様~』
「はははは」
クルクルと回るステイン。困惑してるアルテミス。希望が湧いてみんなに元気が戻ってきた。
あの激しい戦いから次の日。
僕らは玉座の間でオルダイナ王からお礼を言われていた。
みんなで玉座の間に並んで王様直々のお礼に気恥ずかしさを感じていると横に並ぶ兵士達に敬礼される。
「オルソナルの洗脳に気づき、タリウス王子の手紙を利用し国外に逃がした。逃がすことしかできなかった。王ともあろうものが情けないことだ」
「そんなことはありませんお父様」
オルダイナ王が頭を抱えて苦悩する。慰めるアルテナ様……。でも、疑問が残る。
「アルテナ様。一つ疑問が」
「……。分かっています。【アル】と【テナ】のことですよね」
僕は疑問を口にする。するとアルテナ様が悲しそうに顔を俯かせて口を開いた。
「二人は私の中でマナへと変わっていきました。魂……。それを犠牲にして、私を作ったのです」
アルテナ様の言葉に僕らは悲しくなる。そうか、彼女達はもういないのか。
「アルテナ? なんの話だ?」
「お父様。この国を出る前の私を覚えていますか?」
「ああ、覚えているとも。真面目で活発な」
「……」
オルダイナ王が疑問に思って口を開くとアルテナ様が質問する。王様が答えるとアルテナ様が無言で首を横に振った。
「あの子達は孤児院によって入れられた子供の魂。入心という禁忌です」
「な、なに!? で、では。お前は?」
「私が本当のアルテナ……。と言ってもヒューイ様の力と二人の協力があって初めて生まれることが出来たのですが」
情けない様子のアルテナ様が王様の言葉に答える。
「……やはり、あの時にお前は」
「はい。幼き日に孤児院によって禁忌を使われたのです。本来は力を抑えるための物でしたがヒューイ様のおかげで回復することが出来ました。かなりの時間を要しましたが」
僕の強化スキルが役に立ったってことか。オルダイナ王は悲しい顔でアルテナ様を見つめている。昔、アルテナ様が誘拐されたって言う話は本当みたいだな。
「そうか、とにかく、アルテナが無事でよかった。騎士団長のルレインはどうした? 一緒に居たはずだが?」
「ルレインはタリウス様に嫁ぎました」
「な、なに!? ……それはよかった?」
ええ!? 嫁いだ? オルダイナ王の話になぜかミーシャが声をあげる。嫁ぐなんて話は聞いていなかったけど~?
「ガハハ」
「知らないのはアルテナ様とヒューイだけだな」
「ほんと、鈍感なんだから」
ワジソンが笑うとステインとミーシャが続いて笑った。僕ってそんなに鈍感かな?
「と、とにかく……。そうか、ではテスラ帝国とは国交を結べるか?」
「こちらから謝れば大丈夫でしょう。タリウス様もルレインも協力してくれるはずです」
オルダイナ王とアルテナ様は手を取り合う。
僕らに出来ることはこれ以上なさそうだな。
「では、僕らは帰ります」
「!? もう行ってしまうんですか?」
「はい。ここでできることはありませんので。それに」
「それに?」
僕が声をあげるとアルテナ様が驚く。
ここにいるとルラナを守れなかったことを思い出してしまうから。なんて、ルラナの姿のアルテミス様の前じゃ言えないよな。
「アルテミスお姉さま!」
玉座の間を後にしてお城を出るとアルテナ様が追いかけてきてアルテミス様に抱き着く。
『アルテナ。体を大事にね』
「はい! お姉さまも」
抱きしめ合う姉妹。ルラナの姿のアルテミス様を見るといつも泣きそうになってしまう。見ていられない。
「ではアルテナ様」
サファイアが龍の姿となって馬車を足でつかむ。背に乗るのは危ないってことで馬車に乗ったけど、これも十分危ないな。
「孤児院の残党が逃げているようです。皆さんも気をつけてください」
「シスターが見つかっていないんですよね」
「はい。我々も探しますがキスタンにもいくはずですので」
サファイアが翼を羽ばたかせる中、アルテナ様が声をあげる。僕が答えると手を振って見送ってくれた。
馬車から見えるオルダイナ王国が遠ざかっていく。いつの間にかこんな遠くに来ちゃったんだな。
「ルラナ、じゃなかった。アルテミス様」
『様はやめてください。これからは仲間じゃないですか。なんですか?』
ルラナの姿のアルテミス様に声をかけると彼女は悲しい顔で微笑んだ。
「本当にキスタンのダンジョンにルラナを元に戻せる魔石があるんですか?」
『はい、本当です』
「何階ですか?」
僕は緊張しながら疑問を投げかける。みんなもその答えに緊張してる。
キスタンのダンジョンはディアボロスがいたように不確定要素の多いダンジョンだ。噂では最高難易度と言われているらしい。
記録としては20階が最高らしいしね。
『50階のボスです』
「50!?」
50階まで潜らないとダメってことか。
「……」
みんな考え込んでしまう。馬車の外の風の音だけが聞こえる。
「……な~んだ」
「お姉ちゃん?」
風だけが聞こえていた中、ミーシャが声をあげた。
「100階って言われると思って緊張しちゃった。驚かさないでよアルテミス~」
ミーシャがそういってアルテミスの肩を叩く。
「……そうだな。50階なら一年もかからねえな」
「そうじゃな。ヒューイが居れば可能じゃろう」
「お兄ちゃんが居れば大丈夫~」
ため息をついてステインも同意して声をあげる。続いてワジソンとブルームちゃんが僕を見てくる。
「そうそう、私達にはヒューイがついてるんだから」
「そうだよね。そうだよ! ヒューイが居れば50階なんてすぐだよ」
ミーシャとリーシャも楽しそうにそういってくる。
「よーし! 希望が湧いてきた! 早く帰って祝杯だ!」
「祝杯?」
「おう! ルラナ復活のな!」
ステインが腕を掲げて話す。首を傾げると彼はアルテミス様を抱き上げて高い高いをした。
『ちょ、ステイン様~』
「はははは」
クルクルと回るステイン。困惑してるアルテミス。希望が湧いてみんなに元気が戻ってきた。
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