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第一章
第27話 出立
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「アルテナ様。準備は済んでいますか?」
「いつでも大丈夫。すぐにでも出れる」
「そうは思えませんが……」
買い物を済ませて帰ってくるとルレインさんがアルテナ様と話して、頭を抱えている。一人では何もできないお姫様って感じだな。
「食べ物も準備してもらった。お洋服も用意してる。他に何が必要だと?」
「そうですね。アルテナ様はそれで充分ですね」
アルテナ様は得意げにエラから受け取ったお弁当を手に持ってる。ルレインさんが頭を抱えたまま褒めると彼女はむふっと胸を張る。
今日出発じゃないからな。お弁当を持っても仕方ないんだけどね。
「ルレインさん。荷物は僕に教えてください。しまいますから」
「しまう? マジックバッグのようなアイテムをお持ち何ですか?」
僕の言葉に首を傾げて聞いてくるルレインさん。ディアボロスに闇の収納を開かせると驚いてディアボロスを二度見してきた。
「か、刀というやつですか? な、なんで魔法を?」
驚いて聞いてくるルレインさん。
「ははは、おかしな刀なんです」
「ふんっ。おかしいのはこのお前だ」
ディアボロスをポンポン叩いて話すとディアボロスが不機嫌に声をあげた。刀が喋ったことでルレインさんが驚愕してる。
「か、刀がしゃべ、しゃべった!?」
「面白い!?」
ルレインさんと共にアルテナ様が声をあげる。アルテナ様は刀に触れてなでなでし始める。
「気持ちい?」
「気持ちよくなどない。痛覚はないのだ」
アルテナ様が撫でながら聞くとディアボロスが答えた。痛覚ないのか。通りで魔物を切っても何も言わないわけだ。
「ルレイン! これ欲しい」
「ダメですよアルテナ様。それはヒューイさんのものですからね」
アルテナ様が欲しそうに指を咥えてルレインさんにおねだりし始めた。いさめるルレインさんは申し訳なさそうに僕にお辞儀をしてる。
ははは、お姫様の子守は大変だな。っていうかアルテナ様最初あった時と性格がだいぶ違うような気がするな。気のせいかな?
ドンドンドン!
ルレインさんの大変な様子を見ているとカウンターの奥の部屋から大きな音がなる。
「あの少女か……」
「そうよ」
魔道具で襲ってきた少女が暴れてるようだ。呟くとエラが答えてくれた。
自害するための薬も奪って猿ぐつわもしてるからな。暴れてどうにかしようとしてるんだろう。
「ステインとワジソンが見てくれてるんだっけ」
「うん。二人とお姉ちゃんが」
「あ~。そういえば、ミーシャを見ないと思った」
大体、リーシャと買い物してるとミーシャがどこからともなく現れて邪魔してくるんだよな。まあ、二人に腕を取られるのは男みょうりに尽きると言った感じだったが。
「ヒューイ。ちょっと来て」
しょうもないことを考えていると音のした部屋の扉が開いてミーシャが顔を覗かせた。呼ばれたから部屋に入ると頭から血を流す少女が椅子に括り付けられていた。
「まったく、足だけ自由にしたら暴れて頭を打ちやがった」
「ここまで自害を考えるとは……洗脳のようなことになっているのかもしれんな。それか魔法か」
ステインとワジソンが僕の顔を見るなり説明してきた。別に二人が傷つけたとは思ってないんだけど、そう思われないように言ったっぽい。疑ってないぞ。
「だから僕を呼んだわけね」
ミーシャを見て呟く。大きく頷いて手を引っ張るミーシャ。少女の横に着くと彼女に強化を施していく。
「う、ううん……」
目を覚ますとキョロキョロ周りを伺う少女。なぜか驚いた様子だ。危険だけど、猿ぐつわも外してあげるか。舌を噛んでも回復させるしね。
「こ、ここはどこ……」
少女の言葉に僕らは首を傾げた。何を言ってるんだ?
「何言ってんのよ。ここはあんたが襲撃したキスタンの私達の拠点よ」
「キスタン? それってダンジョンの、砂漠の?」
ミーシャが教えると少女が首を何度も傾げて声をもらした。嘘を言っている感じじゃないな。
「とぼけやがって。お前はな」
「ちょっと待ってステイン」
少女にづかづかと近づいて声をかけるステインを制する。僕は微笑んで少女の目線に合わせて腰を落とした。
「改めて、僕はヒューイ。こっちがミーシャでこの子がリーシャ。怖いおじさんとドワーフさんはステインとワジソン。他にはルラナって言う精霊の子とステインの奥さんのエラがいるんだ」
「……」
僕の紹介に怪訝な表情の少女。僕らを知らない様子だ。嘘って感じじゃないな。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
「……ブルーム」
「ブルームちゃんか。いい名前だね」
彼女が気が付いて起きても無口だったから名前すら知らなかった。名前を教えてくれたのは大きいな。
「ブルームちゃんはどこに住んでたかわかる?」
「……孤児院です。なんで縛られてるの?」
「あっ。ごめんね。すぐに外すよ。孤児院って国の名前とかわかる?」
ブルームちゃんは僕の問いに答えながら首を傾げてる。自分の今の状態が分からないのかもな。
「オルダイナ王国」
「そうか。じゃあ、帰りたいよね」
「……別に帰りたくない」
「なんで? 孤児院には友達もいるでしょ?」
ブルームちゃんはしっかりと答えてくれた。故郷には帰りたくないみたいだ。再度質問すると俯いて口を開く。
「もう痛いのはいや……」
「……そうか、そうだよね」
泣きそうになりながら語られる言葉。こんな少女がこんな顔をしてしまうほどの訓練か……、あまりいいものじゃないだろうな。
「ふむ、ヒューイの力で洗脳か、魔法が解けて記憶が戻ったのかの?」
「うん。そうみたい。たぶんこの魔法だよ」
ワジソンが憶測を話すとルラナが部屋に入ってきて本を広げて見せてくる。中には洗脳魔法の記述がかかれている。
「記憶を操ったり、人格も作り出すことが出来る」
「人格を作る?」
「多重人格って知ってるかな? 一つの体に複数の意識があることを意味するんだけど」
意識が複数ある? 意味が分からないな。
「ん~。例えば、この子の体に成人の女性の意識が入って知識も記憶も豊富になったり、男性の記憶が入って女の子に目の色変えちゃったりするの」
「ええ! そんなことになっちゃうの?」
「うん。少し大げさに言ったけど、そんな感じだよ」
ルラナが説明してくれるとみんなキョトンとしてた。ブルームちゃんもキョトンとしてる。
「じゃあよ。意識が戻って急に襲ってくるかもしれないのか?」
「ううん。それはないと思う。ヒューイの力で回復しちゃったみたいだから。消えてるよ」
ステインの言葉にルラナが首を横に振って答えた。怪我を治そうとしたら魔法を解いちゃったのか。っていうか僕のスキルはそんなことも出来るのか。魔法の解除はスカイ達と依頼をこなしていた時はやらなかったから知らなかったな。って勝手に僕がそう思っているだけで治していたのかもしれないな。
「ははは、でもよかった。こんな少女が人殺しなんてしちゃいけないもんな」
ブルームちゃんの頭を撫でながら話す。彼女は頬を赤くして俯いてしまった。昨日見た時とは大きく違う様子。これが本来の彼女なんだろうな。
「いつでも大丈夫。すぐにでも出れる」
「そうは思えませんが……」
買い物を済ませて帰ってくるとルレインさんがアルテナ様と話して、頭を抱えている。一人では何もできないお姫様って感じだな。
「食べ物も準備してもらった。お洋服も用意してる。他に何が必要だと?」
「そうですね。アルテナ様はそれで充分ですね」
アルテナ様は得意げにエラから受け取ったお弁当を手に持ってる。ルレインさんが頭を抱えたまま褒めると彼女はむふっと胸を張る。
今日出発じゃないからな。お弁当を持っても仕方ないんだけどね。
「ルレインさん。荷物は僕に教えてください。しまいますから」
「しまう? マジックバッグのようなアイテムをお持ち何ですか?」
僕の言葉に首を傾げて聞いてくるルレインさん。ディアボロスに闇の収納を開かせると驚いてディアボロスを二度見してきた。
「か、刀というやつですか? な、なんで魔法を?」
驚いて聞いてくるルレインさん。
「ははは、おかしな刀なんです」
「ふんっ。おかしいのはこのお前だ」
ディアボロスをポンポン叩いて話すとディアボロスが不機嫌に声をあげた。刀が喋ったことでルレインさんが驚愕してる。
「か、刀がしゃべ、しゃべった!?」
「面白い!?」
ルレインさんと共にアルテナ様が声をあげる。アルテナ様は刀に触れてなでなでし始める。
「気持ちい?」
「気持ちよくなどない。痛覚はないのだ」
アルテナ様が撫でながら聞くとディアボロスが答えた。痛覚ないのか。通りで魔物を切っても何も言わないわけだ。
「ルレイン! これ欲しい」
「ダメですよアルテナ様。それはヒューイさんのものですからね」
アルテナ様が欲しそうに指を咥えてルレインさんにおねだりし始めた。いさめるルレインさんは申し訳なさそうに僕にお辞儀をしてる。
ははは、お姫様の子守は大変だな。っていうかアルテナ様最初あった時と性格がだいぶ違うような気がするな。気のせいかな?
ドンドンドン!
ルレインさんの大変な様子を見ているとカウンターの奥の部屋から大きな音がなる。
「あの少女か……」
「そうよ」
魔道具で襲ってきた少女が暴れてるようだ。呟くとエラが答えてくれた。
自害するための薬も奪って猿ぐつわもしてるからな。暴れてどうにかしようとしてるんだろう。
「ステインとワジソンが見てくれてるんだっけ」
「うん。二人とお姉ちゃんが」
「あ~。そういえば、ミーシャを見ないと思った」
大体、リーシャと買い物してるとミーシャがどこからともなく現れて邪魔してくるんだよな。まあ、二人に腕を取られるのは男みょうりに尽きると言った感じだったが。
「ヒューイ。ちょっと来て」
しょうもないことを考えていると音のした部屋の扉が開いてミーシャが顔を覗かせた。呼ばれたから部屋に入ると頭から血を流す少女が椅子に括り付けられていた。
「まったく、足だけ自由にしたら暴れて頭を打ちやがった」
「ここまで自害を考えるとは……洗脳のようなことになっているのかもしれんな。それか魔法か」
ステインとワジソンが僕の顔を見るなり説明してきた。別に二人が傷つけたとは思ってないんだけど、そう思われないように言ったっぽい。疑ってないぞ。
「だから僕を呼んだわけね」
ミーシャを見て呟く。大きく頷いて手を引っ張るミーシャ。少女の横に着くと彼女に強化を施していく。
「う、ううん……」
目を覚ますとキョロキョロ周りを伺う少女。なぜか驚いた様子だ。危険だけど、猿ぐつわも外してあげるか。舌を噛んでも回復させるしね。
「こ、ここはどこ……」
少女の言葉に僕らは首を傾げた。何を言ってるんだ?
「何言ってんのよ。ここはあんたが襲撃したキスタンの私達の拠点よ」
「キスタン? それってダンジョンの、砂漠の?」
ミーシャが教えると少女が首を何度も傾げて声をもらした。嘘を言っている感じじゃないな。
「とぼけやがって。お前はな」
「ちょっと待ってステイン」
少女にづかづかと近づいて声をかけるステインを制する。僕は微笑んで少女の目線に合わせて腰を落とした。
「改めて、僕はヒューイ。こっちがミーシャでこの子がリーシャ。怖いおじさんとドワーフさんはステインとワジソン。他にはルラナって言う精霊の子とステインの奥さんのエラがいるんだ」
「……」
僕の紹介に怪訝な表情の少女。僕らを知らない様子だ。嘘って感じじゃないな。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
「……ブルーム」
「ブルームちゃんか。いい名前だね」
彼女が気が付いて起きても無口だったから名前すら知らなかった。名前を教えてくれたのは大きいな。
「ブルームちゃんはどこに住んでたかわかる?」
「……孤児院です。なんで縛られてるの?」
「あっ。ごめんね。すぐに外すよ。孤児院って国の名前とかわかる?」
ブルームちゃんは僕の問いに答えながら首を傾げてる。自分の今の状態が分からないのかもな。
「オルダイナ王国」
「そうか。じゃあ、帰りたいよね」
「……別に帰りたくない」
「なんで? 孤児院には友達もいるでしょ?」
ブルームちゃんはしっかりと答えてくれた。故郷には帰りたくないみたいだ。再度質問すると俯いて口を開く。
「もう痛いのはいや……」
「……そうか、そうだよね」
泣きそうになりながら語られる言葉。こんな少女がこんな顔をしてしまうほどの訓練か……、あまりいいものじゃないだろうな。
「ふむ、ヒューイの力で洗脳か、魔法が解けて記憶が戻ったのかの?」
「うん。そうみたい。たぶんこの魔法だよ」
ワジソンが憶測を話すとルラナが部屋に入ってきて本を広げて見せてくる。中には洗脳魔法の記述がかかれている。
「記憶を操ったり、人格も作り出すことが出来る」
「人格を作る?」
「多重人格って知ってるかな? 一つの体に複数の意識があることを意味するんだけど」
意識が複数ある? 意味が分からないな。
「ん~。例えば、この子の体に成人の女性の意識が入って知識も記憶も豊富になったり、男性の記憶が入って女の子に目の色変えちゃったりするの」
「ええ! そんなことになっちゃうの?」
「うん。少し大げさに言ったけど、そんな感じだよ」
ルラナが説明してくれるとみんなキョトンとしてた。ブルームちゃんもキョトンとしてる。
「じゃあよ。意識が戻って急に襲ってくるかもしれないのか?」
「ううん。それはないと思う。ヒューイの力で回復しちゃったみたいだから。消えてるよ」
ステインの言葉にルラナが首を横に振って答えた。怪我を治そうとしたら魔法を解いちゃったのか。っていうか僕のスキルはそんなことも出来るのか。魔法の解除はスカイ達と依頼をこなしていた時はやらなかったから知らなかったな。って勝手に僕がそう思っているだけで治していたのかもしれないな。
「ははは、でもよかった。こんな少女が人殺しなんてしちゃいけないもんな」
ブルームちゃんの頭を撫でながら話す。彼女は頬を赤くして俯いてしまった。昨日見た時とは大きく違う様子。これが本来の彼女なんだろうな。
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