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第一章
第20話
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「はっ! これでおしまい!」
大剣を振り下ろして一体、返す刃でもう一体の魔物を切り伏せるミーシャ。
その言葉通り、魔物の最後の一匹を屠った。
魔物は亜人種が多く入ってきていた。オークと言われる豚人の魔物や鬼と言われるオーガ、ゴブリンもそれぞれ職業もちが来ていた。
ステインが言っていたんだけど、ダンジョンの階層で表すと、15階程の強さらしい。
ダンジョンの最高到達点が20階なので上位ランカーが関わっているとおもうんだってさ。ダンジョン初心者の僕じゃわからないな。
「ヒューイのおかげで怪我人もなし」
「はは、でも、僕自身は攻撃あんまりできなかったよ」
リーシャが腕に抱き着いて褒めてくれる。
これだけの人数に強化をするには自分の強化を減らさないといけなくなる。攻撃に参加できなくなるんだよな~。ディアボロスは黙っちゃうしね。
「ヒューイは強い! それは僕達が証明するから大丈夫」
「ありがとうルラナ」
ルラナがそういってくれるので頭を撫でてお礼を言う。照れ隠しに本を読み始める彼、いい仲間達に囲まれて、僕は嬉しいよ。
「扉が閉まらないな……」
魔物が湧かなくなった扉を見ながらスカイが声をあげた。別の冒険者達も集まりだして大きな扉を見上げる。
「この扉に入ればその階層に行けるのかな?」
「うむ、確かに行けるが15階くらいじゃからな。好き好んでいくやつはおらん」
僕の疑問にワジソンが答えてくれた。
ダンジョンは低層でも十分恩恵を受けられる。わざわざ上を目指すのは昔のスカイみたいな人達しかいない。まあ、僕もだけどね。
「入ってみようかな?」
「ヒューイが言うのなら行ってもいいが。どうするみんな?」
ちょっと好奇心で呟くとワジソンがみんなに聞いてくれた。
「何階かわからないからやめたほうがいい」
「私は行ってもいいかな」
ルラナが反対というとミーシャが賛成。
「ん~。ヒューイがいたら負けることはないかな。それにボス部屋で倒さないと閉まらないってこともかもしれないし」
「なるほどな。リーシャのいうことも一理ありそうだな。誰かが行かないといけないってことは俺達が適任だろうな」
リーシャの推測にステインが賛成した。ってことは反対はルラナだけだけど、リーシャの言葉を聞いて賛成に回った。
「ヒューイ。いくなら装備を持っていってくれ」
「あたい達は今から行く予定だったから準備万端だったんだ」
スカイ達がそういってカバンを手渡してくる。厚意を無駄にするわけにもいかないので受け取ると喜んでくれた。
「でもいいのかよ。こんなチャンスそうそうないぜ」
「調子こいて上の階層に行ってあんなことになったんだ。俺らが行って勝てるほど甘くない。ヒューイが居れば別だけどな」
ステインの言葉にスカイが苦笑いで答えた。
彼は怪我して以来、ちゃんと周りが見えるようになった。自分の強さがどの程度か把握できるようになった。これからスカイは更に強くなっていくだろうな。
「じゃあ、行ってくるよ」
「ああ、行ってらっしゃい」
スカイ達に見送られて扉をくぐっていく。
くぐった瞬間、横を誰かが通ってきた。狐目の司祭?
ダンジョンの中に入ると岩山のような風景に切り替わる。扉が閉まって行くと僕らは首を傾げた。
「司祭のチームか?」
「ん、今噂の【インヴィンシブル】っぽかった」
「スカイのチームを受け継いだチームか」
呟くとルラナが答える。ダンジョンから帰ってきたってことはあのチームが扉を開いてたってことか。
「逃げようとして入れなかったってところか。噂程でもないな」
「ん~。それにしては怪我も何もしてなかったように見えたけど?」
ステインがため息をついて話すとミーシャがさっき見た彼らについて話す。
確かに綺麗なまんまの司祭の服だった。白が多い服だから血がついてたら目立つもんな。
「掃除する魔法でも使ったんじゃねえか? アクライ教会って言ったら元貴族も多いからな。綺麗好きなんだろ?」
「ダンジョンで綺麗好きは命知らずじゃな」
ステインが話すとワジソンが嫌みっぽく話した。ダンジョンでは匂いが命取りの時もあるからね。汚すのも手ではあるな。
「何階かわからないけど、次の階に行こうか」
リーシャの言葉にみんな賛成して歩き出す。魔物はいないみたいだから気軽ではあるな。
しばらく歩いてると扉が見えて次の階層へと足を踏み入れた。次の階層について周りを見ると城の中のような内装だった。そして、玉座の間への入口と言ったら分かりやすいだろうか、そんな扉を開くと漆黒の騎士が佇んでいた。
ーーーー
「今のは……ヒューイ」
ヒューイとすれ違いでジューダスがダンジョンから帰ってきた。横を通り過ぎていった集団の中のヒューイにいち早く反応した彼は顔を青ざめさせる。
「ヒューイが魔物の群れと対峙した!? ということか!」
顔を青ざめさせたまま、周りを確認する。
大量の魔物の死骸、無傷の冒険者達。ジューダスは頭を抱えた。
「やられた……」
ジューダスは呟いて屈みこんだ。
「ジューダス! お前達だったのか?」
「スカイ……」
スカイが屈みこんでいるジューダスに気が付いて声をかけた。心配して肩に手を添えるスカイにジューダスは顔が青いまま微笑んだ。
「恥ずかしながら命からがら帰ってきました」
「良く戻ってきた、お帰り」
「ただいま戻りました……。スカイ!? あなた、左手が!?」
ジューダスが恥ずかしくも声をもらすとスカイは満面の笑みで迎えた。ジューダスはその笑顔にホッとしながらも添えられた手に違和感を感じて驚きの声をあげた。
「ああ、ヒューイに治してもらったんだ。いいやつだよな……」
スカイは扉を見つめて呟く。すると扉が閉じていった。
「ジューダス達は何階から帰ってきたんだ?」
「あ、ああ。14階だよ」
「14階……。その魔物達はここで全滅したはず、ってことはすぐにでも15階に到着するってことか」
裏技ともいえる階層のスキップ。ヒューイたちはそんな荒業を使い上の階層へと進んでいった。
ジューダス達の踏破した14階へとヒューイたちが進んだのを確認したスカイは考え込む。
「ヒューイならクリアできると思うが、心配だな……」
呟くスカイはすぐにジューダスに肩を貸して立ち上がらせる。
「さあ、みんなに報告しよう」
「ああ、ありがとう。みんな行くよ」
スカイに連れられてギルドへと歩いていく。ジューダスのその足取りは重かった。
それもそのはず、本来は傷ついた冒険者や町の住人を治すことで信者を増やそうとしていたのだから。
思惑通りにいかなかったジューダス達。次は何を考えているのだろうか。
大剣を振り下ろして一体、返す刃でもう一体の魔物を切り伏せるミーシャ。
その言葉通り、魔物の最後の一匹を屠った。
魔物は亜人種が多く入ってきていた。オークと言われる豚人の魔物や鬼と言われるオーガ、ゴブリンもそれぞれ職業もちが来ていた。
ステインが言っていたんだけど、ダンジョンの階層で表すと、15階程の強さらしい。
ダンジョンの最高到達点が20階なので上位ランカーが関わっているとおもうんだってさ。ダンジョン初心者の僕じゃわからないな。
「ヒューイのおかげで怪我人もなし」
「はは、でも、僕自身は攻撃あんまりできなかったよ」
リーシャが腕に抱き着いて褒めてくれる。
これだけの人数に強化をするには自分の強化を減らさないといけなくなる。攻撃に参加できなくなるんだよな~。ディアボロスは黙っちゃうしね。
「ヒューイは強い! それは僕達が証明するから大丈夫」
「ありがとうルラナ」
ルラナがそういってくれるので頭を撫でてお礼を言う。照れ隠しに本を読み始める彼、いい仲間達に囲まれて、僕は嬉しいよ。
「扉が閉まらないな……」
魔物が湧かなくなった扉を見ながらスカイが声をあげた。別の冒険者達も集まりだして大きな扉を見上げる。
「この扉に入ればその階層に行けるのかな?」
「うむ、確かに行けるが15階くらいじゃからな。好き好んでいくやつはおらん」
僕の疑問にワジソンが答えてくれた。
ダンジョンは低層でも十分恩恵を受けられる。わざわざ上を目指すのは昔のスカイみたいな人達しかいない。まあ、僕もだけどね。
「入ってみようかな?」
「ヒューイが言うのなら行ってもいいが。どうするみんな?」
ちょっと好奇心で呟くとワジソンがみんなに聞いてくれた。
「何階かわからないからやめたほうがいい」
「私は行ってもいいかな」
ルラナが反対というとミーシャが賛成。
「ん~。ヒューイがいたら負けることはないかな。それにボス部屋で倒さないと閉まらないってこともかもしれないし」
「なるほどな。リーシャのいうことも一理ありそうだな。誰かが行かないといけないってことは俺達が適任だろうな」
リーシャの推測にステインが賛成した。ってことは反対はルラナだけだけど、リーシャの言葉を聞いて賛成に回った。
「ヒューイ。いくなら装備を持っていってくれ」
「あたい達は今から行く予定だったから準備万端だったんだ」
スカイ達がそういってカバンを手渡してくる。厚意を無駄にするわけにもいかないので受け取ると喜んでくれた。
「でもいいのかよ。こんなチャンスそうそうないぜ」
「調子こいて上の階層に行ってあんなことになったんだ。俺らが行って勝てるほど甘くない。ヒューイが居れば別だけどな」
ステインの言葉にスカイが苦笑いで答えた。
彼は怪我して以来、ちゃんと周りが見えるようになった。自分の強さがどの程度か把握できるようになった。これからスカイは更に強くなっていくだろうな。
「じゃあ、行ってくるよ」
「ああ、行ってらっしゃい」
スカイ達に見送られて扉をくぐっていく。
くぐった瞬間、横を誰かが通ってきた。狐目の司祭?
ダンジョンの中に入ると岩山のような風景に切り替わる。扉が閉まって行くと僕らは首を傾げた。
「司祭のチームか?」
「ん、今噂の【インヴィンシブル】っぽかった」
「スカイのチームを受け継いだチームか」
呟くとルラナが答える。ダンジョンから帰ってきたってことはあのチームが扉を開いてたってことか。
「逃げようとして入れなかったってところか。噂程でもないな」
「ん~。それにしては怪我も何もしてなかったように見えたけど?」
ステインがため息をついて話すとミーシャがさっき見た彼らについて話す。
確かに綺麗なまんまの司祭の服だった。白が多い服だから血がついてたら目立つもんな。
「掃除する魔法でも使ったんじゃねえか? アクライ教会って言ったら元貴族も多いからな。綺麗好きなんだろ?」
「ダンジョンで綺麗好きは命知らずじゃな」
ステインが話すとワジソンが嫌みっぽく話した。ダンジョンでは匂いが命取りの時もあるからね。汚すのも手ではあるな。
「何階かわからないけど、次の階に行こうか」
リーシャの言葉にみんな賛成して歩き出す。魔物はいないみたいだから気軽ではあるな。
しばらく歩いてると扉が見えて次の階層へと足を踏み入れた。次の階層について周りを見ると城の中のような内装だった。そして、玉座の間への入口と言ったら分かりやすいだろうか、そんな扉を開くと漆黒の騎士が佇んでいた。
ーーーー
「今のは……ヒューイ」
ヒューイとすれ違いでジューダスがダンジョンから帰ってきた。横を通り過ぎていった集団の中のヒューイにいち早く反応した彼は顔を青ざめさせる。
「ヒューイが魔物の群れと対峙した!? ということか!」
顔を青ざめさせたまま、周りを確認する。
大量の魔物の死骸、無傷の冒険者達。ジューダスは頭を抱えた。
「やられた……」
ジューダスは呟いて屈みこんだ。
「ジューダス! お前達だったのか?」
「スカイ……」
スカイが屈みこんでいるジューダスに気が付いて声をかけた。心配して肩に手を添えるスカイにジューダスは顔が青いまま微笑んだ。
「恥ずかしながら命からがら帰ってきました」
「良く戻ってきた、お帰り」
「ただいま戻りました……。スカイ!? あなた、左手が!?」
ジューダスが恥ずかしくも声をもらすとスカイは満面の笑みで迎えた。ジューダスはその笑顔にホッとしながらも添えられた手に違和感を感じて驚きの声をあげた。
「ああ、ヒューイに治してもらったんだ。いいやつだよな……」
スカイは扉を見つめて呟く。すると扉が閉じていった。
「ジューダス達は何階から帰ってきたんだ?」
「あ、ああ。14階だよ」
「14階……。その魔物達はここで全滅したはず、ってことはすぐにでも15階に到着するってことか」
裏技ともいえる階層のスキップ。ヒューイたちはそんな荒業を使い上の階層へと進んでいった。
ジューダス達の踏破した14階へとヒューイたちが進んだのを確認したスカイは考え込む。
「ヒューイならクリアできると思うが、心配だな……」
呟くスカイはすぐにジューダスに肩を貸して立ち上がらせる。
「さあ、みんなに報告しよう」
「ああ、ありがとう。みんな行くよ」
スカイに連れられてギルドへと歩いていく。ジューダスのその足取りは重かった。
それもそのはず、本来は傷ついた冒険者や町の住人を治すことで信者を増やそうとしていたのだから。
思惑通りにいかなかったジューダス達。次は何を考えているのだろうか。
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