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第一章
第18話
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「なんだい? あんたがスカイって言うのかい? うちのヒューイをいじめてたんだってね」
「は、はい……」
たまたまあった次の日。早速、スカイがレバナさんの診療所へとやってきた。
出ていけと言われたけど、ダンジョンに行かない日は通わせてもらえるようにしてもらった。
僕の力が特別って言うのは分かったからね。目立ちたくはないけど、助けられる人がいるなら助けていきたいから。
「まったく、この子もお人好しに超がつく子だね。でもまあ、助けられるってんならそうする子だとは思っていたけどね」
レバナさんはそういって僕の頭を撫でてくれる。まったく、身長差があるんだから無理しないでほしいんだよな。まあ僕も撫でやすいように屈んでるんだよね。結局撫でてほしかったりする。
おばあちゃんが居たらこんな感じなのかな。
「すみません……」
「あんたはいいんだよ。何度も謝ったんだろ? その子達だよ」
「「「「……」」」」
レバナさんの言葉に怪我が治ったルッコ達が申し訳なさそうにしてる。
「態度は謝ってるんだろうけどね。まったく、この子達は」
「みんな! 申し訳ないヒューイ」
「いいんだよスカイ。受け入れられないのはわかるからさ」
ルッコ達は頑なに口から謝罪の言葉を言ってくれなかった。それでも申し訳なさそうにしてるから、それを僕は汲むよ。もう、スカイを許しちゃってるしね。
「ほら! 治ったんなら帰りな」
「はい、すみませんでした。ヒューイもごめんな」
「ははは……」
レバナさんは腕を組んでみんなを見送る。ルッコ達は何度か振り返って僕を見ていたけど、口は開けなかったみたいだ。
今まで僕のことを下だと思ってたから仕方ないのかな。
「ヒューイ」
「あれ? リーシャ?」
スカイ達を見送りし終わると外にリーシャが待っていた。心配そうに声をかけてくる彼女。
そういえば、告白の途中だったのを思い出した。あの後は、結局家帰ってすぐに夕食を食べて寝ちゃったからな。まともにリーシャのことが見れない。
「どうしたのヒューイ?」
「あっ、いや、何でもない」
「?」
何とも思ってないリーシャは顔が熱くなってる僕を見て首を傾げてる。
僕だけ意識してるみたいで恥ずかしいな。
「さあさあ、あんたらも帰りな。いつまでも非正規の労働者を働かせるなんてしたくないからね」
「レバナさん……」
「お金もいっぱい入ったんだろ。町でリーシャと遊んできな。いつまでも婆と一緒に居たら歳食っちまうよ」
背中を押してくるレバナさん。
ディアボロスを倒した褒賞金はかなり高かったからな。
ダンジョンのボスにはそれぞれ褒賞金がかかってる。
本来のボスは素材を落とすからそれを納品して更に褒賞金が上がる。それがなくてもディアボロスの報奨金がはるかに上回ってた。
白金貨一枚の褒賞金、白金貨は豪邸が二棟買えてしまう。スカイ達が持っていたのは見ていたけど、自分で持ったのは初めてで嬉しかったな。
「リンゴか。珍しいな」
「美味しそうだね」
「じゃあ、みんなの分も買っていこうか」
「うん、みんな喜ぶね」
砂漠の中にある町のキスタン。果実が届くことは珍しい。届いても痩せてるものが多くて食べられたもんじゃない。
銀貨を五枚渡してかごいっぱいの赤いリンゴを買う。
出店の店主は凄い喜んでたな。
リンゴは珍しいから高かったから買い手がつかなかったんだろうな。
別の町ではリンゴは珍しいものじゃない。銅貨一枚で一個と言った感じだ。かごのリンゴはせいぜい二十個。
銅貨が百枚で銀貨に変わるわけだから、普通の町じゃ五百個買える値段。それが二十個しか買えないわけだ。かなり高いのがわかる。
リンゴを買って闇の収納へと入れ込む。やっぱり便利ディアボロス。どんなに荷物を持っていても大丈夫だな。
「ヒュ、ヒューイ」
「え? ルッコ?」
リンゴを一足先にかじっているとスカイの仲間のルッコが声をかけてきた。
ルッコを見てリーシャが僕の前に出てくれる。そんなに警戒しなくていいと思うけどな。
「一人?」
「あ、ああ……その、ヒューイ」
質問するともじもじと手遊びをはじめて小さな声をあげる。聞こえづらいな。
「ありがとう! それにごめんなさい!」
「え?」
お礼と謝罪の言葉を置いて、そそくさと遠くへと走っていくルッコ。
お礼と謝罪を言うのが恥ずかしくてもじもじしてたのか。
「もう! なんなのあのひと!」
「はは、彼女なりに悪いと思ってくれたってことだよ。それかスカイに言われたかだね」
「それにしても欠損を治してくれた人にちゃんとお礼も言えないなんて!」
「まあまあ、それでも前よりはましだよ。許してあげよ」
「ひゅ、ヒューイが許すなら私は何も言わないけど、お姉ちゃんは許してないみたいだけどね」
リーシャが僕の代わりに怒ってくれたから頭を撫でると顔を赤くして視線をルッコが走っていったほうへと移す。そこにはミーシャがいて、建物の影からルッコが走っていったほうを見てた。顔は見えないけど、黒いもやが見える、殺気のような気がするけど、僕の気のせいならいいな。
それから帰路にたって家に向かっている間にスカイの仲間の残りのメンバーがそれぞれ一人でやってきて。クイン、ルタエ、コエナがそれぞれ恥ずかしそうにお礼と謝罪を行ってきて、ルッコと同じように言葉だけを置いて逃げるように去っていった。素直じゃないというかなんというか……。
とりあえず、元気そうで何よりだ。
レバナさんの診療所で治したときは目が腫れていたりもしたからね。少なくともスカイの役に立てなくなった時に絶望を感じてたはずだからな。毎日泣いていたんだろう。
まあ、それはスカイも同じ感じだっただろうけどさ。
「似たもの同士のチームなんだね」
「うん、そうだね」
ニッコリと微笑むリーシャが声をあげた。
それに同意して微笑むとリーシャが僕の手を取る。
「「……」」
顔を合わせずに無言になる僕ら、それを他所にミーシャが後ろから抱き着いてきた。肩車の状態になると二カッとリーシャを見下ろした。
「お姉ちゃん!」
「あっれ~。奇遇だねお二人さん。今から帰るのかな~?」
白々しく声をあげるミーシャ。
まったく……、不意にディアボロスの闇の収納からリンゴを一つ取り出してミーシャの口に押し込む。
僕の頭の上でシャリシャリと音を立てて食べ始めた。リーシャと違って落ち着きのない姉だな。
リーシャと手を繋いでミーシャを肩車しながら帰路にたつ。すると見知った少年が本を片手に同じ方向へと歩いてるのが見えた。
「ヒューイ~」
「ルラナ」
僕らに気づいて後ろを向くルラナ。本を小脇に抱えて、僕の開いてる手を取った。
なんだか子だくさんのお父さんみたいな状態だな。
リーシャもルラナも嬉しそうに手をブンブン揺らす。頭の上ではリンゴをシャリシャリさせているし、何とも穏やかな光景だろうか。
「ん? 地震?」
みんなの笑顔を見ながら歩いてると急に地震が起こる。辺りを見回すと建物から出てきてあたふたする人たちが見える。
地震なんて起こったなんていまだかつてないからな。驚くのも無理はない。
「ダ! ダンジョンから魔物が出るぞ~! 非戦闘員は町の外へ出ろ~!」
な!? まさか、ダンジョンが魔物を放出した!?
冒険者が脱出の扉をくぐって閉じるのに失敗した?
扉はダンジョンの中から閉めないと一定時間開きっぱなしになる。その間、魔物は出っ放しになるはずだ。知恵のない魔物なら出てくることは稀だからいいけど、頭のいい魔物の階層だったら……、考えるだけでゾッとする。
「みんな! 行くよ!」
「「「はい!」」」
三人に声をかける。それぞれ自分の武器は持っていた三人。武器を構えると僕を先頭にダンジョンへの入口へと走り出した。
「は、はい……」
たまたまあった次の日。早速、スカイがレバナさんの診療所へとやってきた。
出ていけと言われたけど、ダンジョンに行かない日は通わせてもらえるようにしてもらった。
僕の力が特別って言うのは分かったからね。目立ちたくはないけど、助けられる人がいるなら助けていきたいから。
「まったく、この子もお人好しに超がつく子だね。でもまあ、助けられるってんならそうする子だとは思っていたけどね」
レバナさんはそういって僕の頭を撫でてくれる。まったく、身長差があるんだから無理しないでほしいんだよな。まあ僕も撫でやすいように屈んでるんだよね。結局撫でてほしかったりする。
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「すみません……」
「あんたはいいんだよ。何度も謝ったんだろ? その子達だよ」
「「「「……」」」」
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「態度は謝ってるんだろうけどね。まったく、この子達は」
「みんな! 申し訳ないヒューイ」
「いいんだよスカイ。受け入れられないのはわかるからさ」
ルッコ達は頑なに口から謝罪の言葉を言ってくれなかった。それでも申し訳なさそうにしてるから、それを僕は汲むよ。もう、スカイを許しちゃってるしね。
「ほら! 治ったんなら帰りな」
「はい、すみませんでした。ヒューイもごめんな」
「ははは……」
レバナさんは腕を組んでみんなを見送る。ルッコ達は何度か振り返って僕を見ていたけど、口は開けなかったみたいだ。
今まで僕のことを下だと思ってたから仕方ないのかな。
「ヒューイ」
「あれ? リーシャ?」
スカイ達を見送りし終わると外にリーシャが待っていた。心配そうに声をかけてくる彼女。
そういえば、告白の途中だったのを思い出した。あの後は、結局家帰ってすぐに夕食を食べて寝ちゃったからな。まともにリーシャのことが見れない。
「どうしたのヒューイ?」
「あっ、いや、何でもない」
「?」
何とも思ってないリーシャは顔が熱くなってる僕を見て首を傾げてる。
僕だけ意識してるみたいで恥ずかしいな。
「さあさあ、あんたらも帰りな。いつまでも非正規の労働者を働かせるなんてしたくないからね」
「レバナさん……」
「お金もいっぱい入ったんだろ。町でリーシャと遊んできな。いつまでも婆と一緒に居たら歳食っちまうよ」
背中を押してくるレバナさん。
ディアボロスを倒した褒賞金はかなり高かったからな。
ダンジョンのボスにはそれぞれ褒賞金がかかってる。
本来のボスは素材を落とすからそれを納品して更に褒賞金が上がる。それがなくてもディアボロスの報奨金がはるかに上回ってた。
白金貨一枚の褒賞金、白金貨は豪邸が二棟買えてしまう。スカイ達が持っていたのは見ていたけど、自分で持ったのは初めてで嬉しかったな。
「リンゴか。珍しいな」
「美味しそうだね」
「じゃあ、みんなの分も買っていこうか」
「うん、みんな喜ぶね」
砂漠の中にある町のキスタン。果実が届くことは珍しい。届いても痩せてるものが多くて食べられたもんじゃない。
銀貨を五枚渡してかごいっぱいの赤いリンゴを買う。
出店の店主は凄い喜んでたな。
リンゴは珍しいから高かったから買い手がつかなかったんだろうな。
別の町ではリンゴは珍しいものじゃない。銅貨一枚で一個と言った感じだ。かごのリンゴはせいぜい二十個。
銅貨が百枚で銀貨に変わるわけだから、普通の町じゃ五百個買える値段。それが二十個しか買えないわけだ。かなり高いのがわかる。
リンゴを買って闇の収納へと入れ込む。やっぱり便利ディアボロス。どんなに荷物を持っていても大丈夫だな。
「ヒュ、ヒューイ」
「え? ルッコ?」
リンゴを一足先にかじっているとスカイの仲間のルッコが声をかけてきた。
ルッコを見てリーシャが僕の前に出てくれる。そんなに警戒しなくていいと思うけどな。
「一人?」
「あ、ああ……その、ヒューイ」
質問するともじもじと手遊びをはじめて小さな声をあげる。聞こえづらいな。
「ありがとう! それにごめんなさい!」
「え?」
お礼と謝罪の言葉を置いて、そそくさと遠くへと走っていくルッコ。
お礼と謝罪を言うのが恥ずかしくてもじもじしてたのか。
「もう! なんなのあのひと!」
「はは、彼女なりに悪いと思ってくれたってことだよ。それかスカイに言われたかだね」
「それにしても欠損を治してくれた人にちゃんとお礼も言えないなんて!」
「まあまあ、それでも前よりはましだよ。許してあげよ」
「ひゅ、ヒューイが許すなら私は何も言わないけど、お姉ちゃんは許してないみたいだけどね」
リーシャが僕の代わりに怒ってくれたから頭を撫でると顔を赤くして視線をルッコが走っていったほうへと移す。そこにはミーシャがいて、建物の影からルッコが走っていったほうを見てた。顔は見えないけど、黒いもやが見える、殺気のような気がするけど、僕の気のせいならいいな。
それから帰路にたって家に向かっている間にスカイの仲間の残りのメンバーがそれぞれ一人でやってきて。クイン、ルタエ、コエナがそれぞれ恥ずかしそうにお礼と謝罪を行ってきて、ルッコと同じように言葉だけを置いて逃げるように去っていった。素直じゃないというかなんというか……。
とりあえず、元気そうで何よりだ。
レバナさんの診療所で治したときは目が腫れていたりもしたからね。少なくともスカイの役に立てなくなった時に絶望を感じてたはずだからな。毎日泣いていたんだろう。
まあ、それはスカイも同じ感じだっただろうけどさ。
「似たもの同士のチームなんだね」
「うん、そうだね」
ニッコリと微笑むリーシャが声をあげた。
それに同意して微笑むとリーシャが僕の手を取る。
「「……」」
顔を合わせずに無言になる僕ら、それを他所にミーシャが後ろから抱き着いてきた。肩車の状態になると二カッとリーシャを見下ろした。
「お姉ちゃん!」
「あっれ~。奇遇だねお二人さん。今から帰るのかな~?」
白々しく声をあげるミーシャ。
まったく……、不意にディアボロスの闇の収納からリンゴを一つ取り出してミーシャの口に押し込む。
僕の頭の上でシャリシャリと音を立てて食べ始めた。リーシャと違って落ち着きのない姉だな。
リーシャと手を繋いでミーシャを肩車しながら帰路にたつ。すると見知った少年が本を片手に同じ方向へと歩いてるのが見えた。
「ヒューイ~」
「ルラナ」
僕らに気づいて後ろを向くルラナ。本を小脇に抱えて、僕の開いてる手を取った。
なんだか子だくさんのお父さんみたいな状態だな。
リーシャもルラナも嬉しそうに手をブンブン揺らす。頭の上ではリンゴをシャリシャリさせているし、何とも穏やかな光景だろうか。
「ん? 地震?」
みんなの笑顔を見ながら歩いてると急に地震が起こる。辺りを見回すと建物から出てきてあたふたする人たちが見える。
地震なんて起こったなんていまだかつてないからな。驚くのも無理はない。
「ダ! ダンジョンから魔物が出るぞ~! 非戦闘員は町の外へ出ろ~!」
な!? まさか、ダンジョンが魔物を放出した!?
冒険者が脱出の扉をくぐって閉じるのに失敗した?
扉はダンジョンの中から閉めないと一定時間開きっぱなしになる。その間、魔物は出っ放しになるはずだ。知恵のない魔物なら出てくることは稀だからいいけど、頭のいい魔物の階層だったら……、考えるだけでゾッとする。
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