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第一章
第1話 ヒューイ
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僕の名前はヒューイ。
チームの回復役を務めている。
今僕らは武器や防具がボロボロになってきてしまったから拠点であるキスタンの町に帰ってきた。久しぶりの町の料理を思い出してよだれが止まらない。
「おい、ヒューイ」
「え? なんですかスカイさん?」
冒険者ギルドについて開口一番、チームリーダーのスカイさんに呼ばれた。僕何かしたかな?
「お前今回で最後な」
「へ?」
「クビってことだ」
「え、ええ~!?」
ギルドに併設されてる酒場の席に着きながら告げてくるスカイさん。僕は驚いてスカイさんを見つめる。
「だってあんたいるだけじゃない。他に何もしてないし」
「荷物持ちはいらないのよね」
スカイさんは『とりあえずエール』と言って飲み始めて、チームメンバーの女性二人が抗議してくる。ルッコさんとクインさんだ。
「これからダンジョンにもいくようになるからな。役にたつ回復役が必要になるってわけだ」
「6人しか入れないって言うのにあんたが一人にカウントされたら戦力がね」
別の女性二人、ルタエさんとコエナさんが言ってくる。僕以外のみんなが同意見ってことか……。
「まあ、そういうこった。悪いなヒューイ」
「そ、そんな。じゃあ僕はどうしたら?」
「これからのお前の人生なんか知らねえよ。エール追加だ」
スカイさんのチーム、Sランクの【インヴィンシブルランス】をクビになったら僕は……。
「そんな困ります。僕がいなくなったら回復はどうするんですか?」
「ん? あ~最初は適当にポーションでも使おうと思ったんだけどな。丁度回復魔法を使える奴を見つけてな」
スカイさんが顎でクイッと示す先に司祭の服を着た女性が立っていてペコっとお辞儀をしているのが見えた。とても高価そうな司祭の服でかなりの使い手なのが分かる。
「そ、そんな……」
「まあ、そういうことだ。これから一人で頑張ることだな」
カラカラと笑って更にエールを飲んでいくスカイさん……。
「嫌ですよ。お金だって満足に貰っていなかったのに!」
「え~。この子嫌な子ね」
「何もしないくせに報酬をねだるなんて卑しい子」
僕の言葉に空気がピリッとするのを感じて後ずさる。スカイさん以外のメンバーが僕を囲んで足蹴にしてきた。
「ははは、本当に何もできないんだな」
「弱すぎだっつうの」
「やめ! やめてください!」
声をあげてもやめようとしない女性達。ギルドにいる人たちも酒の肴に僕を見てくる。
本気で蹴ってきてるのが分かって、僕はギルドの外への扉に跳躍して逃げる。
「分かりました! こんなチームやめてやる! スカイ! 覚えてろよ! お前達のチームなんてCランクのクエストで全滅しちゃえ!」
捨て台詞を吐いてギルドを飛び出した。ケラケラと笑い声がギルドの中から聞こえてくる。 たぶん、ギルドにいるみんなが僕を笑いものにしてるんだ。くそ~、回復魔法がなんだ!
僕は周りの人の怪我を治せる力を持ってるんだぞ。魔法じゃないから使用回数なんてない。一緒にいるだけで回復するんだからな!
さっき蹴られてた時も回復してたんだぞ。素手での戦闘を得意としてた人もいたからかなりのダメージだったんだ。それなのに普通に怪我なしは異常なことなんだぞ!
「は~、でも、これからどうしよう……」
このキスタンの町はダンジョンのおかげで栄えた町。町の中央にダンジョンがあってそれを囲う様に商人達が集まって作られた。
ダンジョンから漏れる水がオアシスになっていて、周りは砂漠と荒れ地だ。この町から次の町に行くには乗合馬車で行けるけど、そのお金もない……これは終わりってことかな?
「は~、能力のおかげで死ぬことはないけど、生き地獄だな……」
僕の回復魔法の代わりになる【スキル】は飲み食いにも適応される。これは常時ではなくて、意識すれば出来るもの。
【インヴィンシブルランス】にいた時は戦闘が二日とか続いた時もあってよく使っていたっけ、【スキル】って本当に不思議な力だよな~……ってもうあんなチームのことを思い出すのはやめよう。
改めて僕の力、【強化スキル】のことを考える。
この世界の強さを示すレベル。それぞれ【体力】【魔力】【筋力】【生命力】【命中性】【敏捷性】【知力】【精神力】にレベルが割り振られている。
例えば、僕のステータス、ステータスと声に出してもいいし、出さずに考えるだけでも目の前に触れないボードが現れる。他人に見えるようにも出来るけど、今は必要ないので自分にしか見えないように表示しよう。
ヒューイ
【体力】LV 5
【魔力】LV 3
【筋力】LV 6
【生命力】LV 4
【命中性】LV 4
【敏捷性】LV 7
【知力】LV 3
【精神力】LV 3
最高レベルが99と言われていて、僕はまだまだ若輩者。だけど、Sランクの冒険者チームに所属していた。僕の【強化スキル】はそれに見合う能力なんだ。
「強化」
口に出さなくてもいいスキルをわざとらしく口に出す。すると。
ヒューイ
【体力】LV 55
【魔力】LV 53
【筋力】LV 56
【生命力】LV 54
【命中性】LV 54
【敏捷性】LV 57
【知力】LV 53
【精神力】LV 53
すべて50もレベルをあげることが出来る。体力が上がることでどんな怪我も回復してしまうってわけだ。こんな僕をクビにしたことを後悔してくれればいいんだけどな。
そんなことを考えていると日が傾いてきた。夜になっていく。
一枚岩を削ったような家々に影がかかっていく。
「宿屋のお金はあるか……とりあえず、今日の宿を」
「だ、誰か!」
「へ?」
宿屋を探してキョロキョロしてると女性の声が聞こえてきた。怪我をしてる人に肩を貸して歩いてる人たちが見える。ダンジョンの方向から来たってことは冒険者のチームなのかな?
「どうしたんですか?」
「おぬし! 回復魔法は使えないか?」
「あ!? 怪我してたんですね。あ~このくらいなら後5秒で動けるようになりますよ」
「は~? おまえ何を言ってんだ! 冷やかしならどっか行け! みんな冒険者ギルドに行くぞ」
ドワーフのおじさんの質問に答えて怪我をしてる女性を見る。このくらいの怪我なら僕といればすぐに治るんだけど、信じてもらえなくて僕をどけて冒険者ギルドの方へと歩いていく。
僕はため息をついて少し後ろを歩いて回復範囲に怪我をしてる女性を入れる。
「おい! おまえ!」
「ちょ、暴力反対!」
怒鳴ってきた男の人がついてくる僕に怒りをあらわにして殴りかかってきた。拳が眼前に迫ると『待って』と大きな声が聞こえてきた。
「待ってよステイン!」
「エラ!? だ、大丈夫なのか? リザードマンの槍がお前……腹に……確かに風穴が……」
声の主の女性が男の人、ステインさんに抱き着いて止めてくれる。僕を離したステインさんはエラさんを抱きしめて涙しながら戸惑ってる。
「ほらね。じゃあ、僕はこれで」
「ちょ、ちょ~っと待って。せ、説明してよ!」
ステインさんのチームメンバーが面食らって僕を見つめる。そういえば、ダンジョンに行っていたと思うんだけど5人しかいないな。
ってそうじゃない軽装の声をあげた女の子は僕に抱き着いて止めてきてる。少し大きめのお胸が押し付けられて幸せな感触が……。
「ぼ、僕の【スキル】なんですよ」
「【スキル】? ってよくみたらおぬし【インヴィンシブルランス】の?」
「は、はい……先ほどクビになりましたけどね」
ドワーフのおじさんに気づかれた。俯いて女性の手を振りほどくと宿屋探しに戻る。そう思った時、再度幸せな感触が腕に、
「宿屋を探してるの?」
さっき抱き着いてきた女の子が僕の腕を抱きしめながら首を傾げる。思わずドキッとしてしまったけど、頷いて答える。
「じゃあ、うちに来なよ! チームで住んでるんだけど、元宿屋の物件だから大きいんだ!」
「え? でも……」
「いいからいいから!」
ぐいぐいと引っ張られて引きずられる。大剣を背に持ってると思ったら結構力持ちみたい。
「うむ、傷が治っておる」
「ああ、俺も……言ってることは本当のことのようだ。何よりエラがな」
「ええ……もう痛くない」
女の子に引きずられてると後ろで話してる。ちゃんと説明を聞いてくれたら喜んでくれるものなんだよな。それなのに【インヴィンシブルランス】の人達は……戻ってきてくれって言っても聞かないぞ。
チームの回復役を務めている。
今僕らは武器や防具がボロボロになってきてしまったから拠点であるキスタンの町に帰ってきた。久しぶりの町の料理を思い出してよだれが止まらない。
「おい、ヒューイ」
「え? なんですかスカイさん?」
冒険者ギルドについて開口一番、チームリーダーのスカイさんに呼ばれた。僕何かしたかな?
「お前今回で最後な」
「へ?」
「クビってことだ」
「え、ええ~!?」
ギルドに併設されてる酒場の席に着きながら告げてくるスカイさん。僕は驚いてスカイさんを見つめる。
「だってあんたいるだけじゃない。他に何もしてないし」
「荷物持ちはいらないのよね」
スカイさんは『とりあえずエール』と言って飲み始めて、チームメンバーの女性二人が抗議してくる。ルッコさんとクインさんだ。
「これからダンジョンにもいくようになるからな。役にたつ回復役が必要になるってわけだ」
「6人しか入れないって言うのにあんたが一人にカウントされたら戦力がね」
別の女性二人、ルタエさんとコエナさんが言ってくる。僕以外のみんなが同意見ってことか……。
「まあ、そういうこった。悪いなヒューイ」
「そ、そんな。じゃあ僕はどうしたら?」
「これからのお前の人生なんか知らねえよ。エール追加だ」
スカイさんのチーム、Sランクの【インヴィンシブルランス】をクビになったら僕は……。
「そんな困ります。僕がいなくなったら回復はどうするんですか?」
「ん? あ~最初は適当にポーションでも使おうと思ったんだけどな。丁度回復魔法を使える奴を見つけてな」
スカイさんが顎でクイッと示す先に司祭の服を着た女性が立っていてペコっとお辞儀をしているのが見えた。とても高価そうな司祭の服でかなりの使い手なのが分かる。
「そ、そんな……」
「まあ、そういうことだ。これから一人で頑張ることだな」
カラカラと笑って更にエールを飲んでいくスカイさん……。
「嫌ですよ。お金だって満足に貰っていなかったのに!」
「え~。この子嫌な子ね」
「何もしないくせに報酬をねだるなんて卑しい子」
僕の言葉に空気がピリッとするのを感じて後ずさる。スカイさん以外のメンバーが僕を囲んで足蹴にしてきた。
「ははは、本当に何もできないんだな」
「弱すぎだっつうの」
「やめ! やめてください!」
声をあげてもやめようとしない女性達。ギルドにいる人たちも酒の肴に僕を見てくる。
本気で蹴ってきてるのが分かって、僕はギルドの外への扉に跳躍して逃げる。
「分かりました! こんなチームやめてやる! スカイ! 覚えてろよ! お前達のチームなんてCランクのクエストで全滅しちゃえ!」
捨て台詞を吐いてギルドを飛び出した。ケラケラと笑い声がギルドの中から聞こえてくる。 たぶん、ギルドにいるみんなが僕を笑いものにしてるんだ。くそ~、回復魔法がなんだ!
僕は周りの人の怪我を治せる力を持ってるんだぞ。魔法じゃないから使用回数なんてない。一緒にいるだけで回復するんだからな!
さっき蹴られてた時も回復してたんだぞ。素手での戦闘を得意としてた人もいたからかなりのダメージだったんだ。それなのに普通に怪我なしは異常なことなんだぞ!
「は~、でも、これからどうしよう……」
このキスタンの町はダンジョンのおかげで栄えた町。町の中央にダンジョンがあってそれを囲う様に商人達が集まって作られた。
ダンジョンから漏れる水がオアシスになっていて、周りは砂漠と荒れ地だ。この町から次の町に行くには乗合馬車で行けるけど、そのお金もない……これは終わりってことかな?
「は~、能力のおかげで死ぬことはないけど、生き地獄だな……」
僕の回復魔法の代わりになる【スキル】は飲み食いにも適応される。これは常時ではなくて、意識すれば出来るもの。
【インヴィンシブルランス】にいた時は戦闘が二日とか続いた時もあってよく使っていたっけ、【スキル】って本当に不思議な力だよな~……ってもうあんなチームのことを思い出すのはやめよう。
改めて僕の力、【強化スキル】のことを考える。
この世界の強さを示すレベル。それぞれ【体力】【魔力】【筋力】【生命力】【命中性】【敏捷性】【知力】【精神力】にレベルが割り振られている。
例えば、僕のステータス、ステータスと声に出してもいいし、出さずに考えるだけでも目の前に触れないボードが現れる。他人に見えるようにも出来るけど、今は必要ないので自分にしか見えないように表示しよう。
ヒューイ
【体力】LV 5
【魔力】LV 3
【筋力】LV 6
【生命力】LV 4
【命中性】LV 4
【敏捷性】LV 7
【知力】LV 3
【精神力】LV 3
最高レベルが99と言われていて、僕はまだまだ若輩者。だけど、Sランクの冒険者チームに所属していた。僕の【強化スキル】はそれに見合う能力なんだ。
「強化」
口に出さなくてもいいスキルをわざとらしく口に出す。すると。
ヒューイ
【体力】LV 55
【魔力】LV 53
【筋力】LV 56
【生命力】LV 54
【命中性】LV 54
【敏捷性】LV 57
【知力】LV 53
【精神力】LV 53
すべて50もレベルをあげることが出来る。体力が上がることでどんな怪我も回復してしまうってわけだ。こんな僕をクビにしたことを後悔してくれればいいんだけどな。
そんなことを考えていると日が傾いてきた。夜になっていく。
一枚岩を削ったような家々に影がかかっていく。
「宿屋のお金はあるか……とりあえず、今日の宿を」
「だ、誰か!」
「へ?」
宿屋を探してキョロキョロしてると女性の声が聞こえてきた。怪我をしてる人に肩を貸して歩いてる人たちが見える。ダンジョンの方向から来たってことは冒険者のチームなのかな?
「どうしたんですか?」
「おぬし! 回復魔法は使えないか?」
「あ!? 怪我してたんですね。あ~このくらいなら後5秒で動けるようになりますよ」
「は~? おまえ何を言ってんだ! 冷やかしならどっか行け! みんな冒険者ギルドに行くぞ」
ドワーフのおじさんの質問に答えて怪我をしてる女性を見る。このくらいの怪我なら僕といればすぐに治るんだけど、信じてもらえなくて僕をどけて冒険者ギルドの方へと歩いていく。
僕はため息をついて少し後ろを歩いて回復範囲に怪我をしてる女性を入れる。
「おい! おまえ!」
「ちょ、暴力反対!」
怒鳴ってきた男の人がついてくる僕に怒りをあらわにして殴りかかってきた。拳が眼前に迫ると『待って』と大きな声が聞こえてきた。
「待ってよステイン!」
「エラ!? だ、大丈夫なのか? リザードマンの槍がお前……腹に……確かに風穴が……」
声の主の女性が男の人、ステインさんに抱き着いて止めてくれる。僕を離したステインさんはエラさんを抱きしめて涙しながら戸惑ってる。
「ほらね。じゃあ、僕はこれで」
「ちょ、ちょ~っと待って。せ、説明してよ!」
ステインさんのチームメンバーが面食らって僕を見つめる。そういえば、ダンジョンに行っていたと思うんだけど5人しかいないな。
ってそうじゃない軽装の声をあげた女の子は僕に抱き着いて止めてきてる。少し大きめのお胸が押し付けられて幸せな感触が……。
「ぼ、僕の【スキル】なんですよ」
「【スキル】? ってよくみたらおぬし【インヴィンシブルランス】の?」
「は、はい……先ほどクビになりましたけどね」
ドワーフのおじさんに気づかれた。俯いて女性の手を振りほどくと宿屋探しに戻る。そう思った時、再度幸せな感触が腕に、
「宿屋を探してるの?」
さっき抱き着いてきた女の子が僕の腕を抱きしめながら首を傾げる。思わずドキッとしてしまったけど、頷いて答える。
「じゃあ、うちに来なよ! チームで住んでるんだけど、元宿屋の物件だから大きいんだ!」
「え? でも……」
「いいからいいから!」
ぐいぐいと引っ張られて引きずられる。大剣を背に持ってると思ったら結構力持ちみたい。
「うむ、傷が治っておる」
「ああ、俺も……言ってることは本当のことのようだ。何よりエラがな」
「ええ……もう痛くない」
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