社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 新しき世界

第18話 障害

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「マモルさ~ん」

「はいは~い。私はここですよ~」

 死の大陸にやってきて一か月が経ちました。ソマツさん達と一緒に中央大陸への壁を見ようと海までやってきた。まさか、こんなに時間がかかるとは思いませんでした。
 ソマツさんの村は解体が簡単なので私のマジックバッグにすべて入れれば移動可能。本当にマジックバッグは便利。日本でも使いたい能力№1ですね。

「釣れそうですか?」

「ん~。まあ、根気が必要です」

 ヴィスさんが聞いてくる。
 海の安全確認もしていかないといけないので釣りをしています。どんな生物がいるかもわからないのでむやみに入るのもよくない。

「キャン!」

「またですかあなたは……」

 ベヘモスは毎度毎度お肉お肉と催促してくる。あの後もダンジョンでお肉を蓄えたので十分な備蓄はあるのですがあの巨体でずっと食べられたらすぐになくなってしまいますよ。

「でもマモルさん。本当に壁に行くつもりなんですか?」

「はい……大事な方々が待っていますから」

 ヴィスさんが心配そうに聞いてくる。グーダラ達はあのあと無事に捕まえることは出来るかもしれません。ですが、サクラさん達のその後が気になります。
 エルフの国の方が私を欲しがったように彼女達にも声をかけるはず。心配でなりません。

「……ぼ、僕も行っていいかな?」

「え? ヴィスさんも?」

「う、うん。僕も中央大陸に行ってみたくて……ダメかな?」

 まだまだ小さなヴィスさん。まだ親元を離れるような年ではないでしょう。まあ、親御さんはいなくなってしまったらしいのですが……。世知辛い大陸ですよ、死の大陸は。

「連れて行ってあげたいのですがどうやっていけばいいやら……」

 木もない死の大陸では船を作ることも出来ません。大地を作ることもできませんし……大地を作る、面白いかもしれませんね。

「……【凍ってください】」

「わっ!?」

 半神となった私は意識して声を発すると命令通りの効果を付与できる。海に向かって声を発すると凍ってくれました。釣り糸を垂らしたままでした。自信作の骨の釣り竿なので溶けるのを素直に待ちましょう。

「50メートルほど凍りましたかね」

「マモルさんは本当に凄いな~」

 遠くを見て呟くとヴィスさんが褒めてくれます。これもミントさんのおかげです。そういえば、彼女も無事でしょうか。教会の偉い方だから大丈夫だろうけれど、心配です。

「キャンキャ~ン!」

「ベヘモス! 流石にあなたがのったら割れますよ! 【凍ってください】」

 巨体のベヘモスが嬉しそうに凍った海へと駆けていく。ビキビキと音を立てる氷、心配なので更に魔法を唱えておきます。

「ベヘモスが居ても割れませんでしたねマモルさん」

「そうですね音がしていたので心配でしたが。ですが水温は高いと思うのですぐに溶けてしまいますね」

 ヴィスさんが嬉しそうにベヘモスを見て声をあげています。これだけ熱い大陸の周りの海です。水温が低いわけもない。小さな魚も見られないですし、釣りは意味なかったかもしれないです。

「ん? ま、マモルさん!? あれ!」

「え? なっ! なんですかあれは!?」

 氷の下を見ていたらヴィスさんの声があげる。彼の見ていた方向を見ると海が持ち上がってこちらに迫ってくるのが見えました。地震があったわけでもないのに何が起こってるんでしょう。とにかく、

「み、皆さん海から離れてください」

「ま、マモルさんベヘモスが」

「あ~!? べ、ベヘモス~! こっちに来てください。ほら、お肉ですよ~」

 ソマツさん達に声をかけているとヴィスさんが声をあげた。彼の言葉で気がついて凍った海の上で尻尾を振っているベヘモスに声をあげる。

「ベヘモス!」

 大きく持ちあがっていた海が津波となってベヘモスに覆いかぶさった。声をあげるのも虚しく、凍った海と共にベヘモスが消えた。

「べ、ベヘモス……」

 嘘ですよね。すぐに海から顔を覗かせてキャンって鳴くんですよね……。

「グルルル! キャン!」

「べ、ベヘモス! 今行きます!」

 出てきそうになった涙を拭い、犬かきで陸地に向かってくるベヘモスへと走り出す。

「マモルさん! ベヘモスの後ろ!」

「な! あれは?」

 ヴィスさんの声で目を凝らす。黒い影がベヘモスを追いかけているのが見える。

「シーサーペントですじゃ!」

「シーサーペント!?」

 ソマツさんの声で魔物なのが分かった。なるほど、あの津波は攻撃だったわけですね。ではこちらも容赦しませんよ!

「グルルル!」

「キュンキュ~ン!」

 怪獣大戦争と言うべきでしょうか。ベヘモスへと体を巻きつけて行くシーサーペント。海では分が悪いベヘモスは簡単にまきつかれていっています。私には好都合。

「浮いてくれているなら私にとっては陸地と同じ!」

 シーサーペントの体に乗って体を駆け上がる。蛇のように巻き付いた獲物を喰らおうと大きく首を持ち上げていたシーサーペント。顔まで近づいた私は大きく振りかぶって右拳を押し当てる。
 頭が振れたシーサーペントは大きく体のバランスを崩して締め付けが弱まった。
 
「今ですベヘモス」

「キャン!」

 私と同じようにシーサーペントの体を利用して大きく跳躍したベヘモス。陸地に着くとシーサーペントを見据えた。

「キュン~……」

「引いてくれますか。それはありがたい」

 シーサーペントは可愛らしい声をもらして海へと消えていく。また津波でも起こされたらたまったものじゃないですからね。

「あの津波も魔法のようなものでしょうか?」

「【ダイダルウェーブ】という魔法ですな。人の世界では使えるものは少ないでしょう」

 なるほど、やはり魔法でしたか。ソマツさんは物知りですね。

「しかし、壁への道が更に険しくなりましたね」

 あんな魔物が海にいる。これだけ大きな海です。あれだけなわけがありません。

「ベヘモス。あなたは危機感が足りませんよ。危なくなったらすぐに逃げてください」

「キャンキャン! ハッハッハッ!」

「あ~、舐めなくていいんですよ。まったく」

 ベヘモスを心配すると大きなベロでなめられてしまいました。涎が凄い臭いんですよね。
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