上 下
11 / 35
第一章 新しき世界

第11話 不法侵入

しおりを挟む
「さて、そろそろ。ん? 誰か来た?」

 兵士さんがいなくなるのを待っていると牢屋に誰かやってくる。大人しくしているふりをしていると、見たことある方が私の牢屋の前で止まった。

「ぐふ、ぐふふふ。お前も牢屋に入ったら大人しくなったな」

 ダラクさんです。気絶から回復して怪我もしていない様子。結構強く殴ってしまったのですが教会の方のおかげでしっかりと治ったようですね。

「これを見ろ」

 ダラクさんはひとしきり笑うと燃える松明を手に持ってゆらゆらと揺らしてきます。首を傾げていると牢屋に松明を差し込んでくる。

「これでお前を燃やしてやる。踊れ踊れ」

 なるほど、復讐がしたいようです。この方は一度死なないと更生しないようですね。自分を守る兵士も連れてきていないところを見るとしっかりと私を仕留めたいご様子。まったく救えませんね。
 ですが私に人を殺す度胸はありません。なので、

「【スリープブレス】」

「ふへ? ななんにゃ……。グーグー……ZZzz」

「もう寝た!? 凄い効果ですね」

 眠らせる白い息を龍の杖から放つとダラクはしっかりと喰らってくれて一瞬で眠りについた。一生寝ていてくれればいいんでがね。

「兵士がいなくなったのはダラクがやってくれたようですね。ありがとうございます」

 鉄格子を力で曲げて出る。ダラクにお礼を言って牢屋を出る。外にも兵士がいないということは私の断末魔を独り占めする為でしょうか? 流石にそれは考えすぎですかね。

「さて、王様は高いところがお好きですよね」

 牢屋は城とは別の建物。塔のような建物の地下にあった。城は目の前、見上げるとベランダが見えます。あそこまで飛び上がってみますか。
 って飛べるんでしょうか? ステータスが凄いあがったとはいえ、ベランダまでは30メートルはありますよ。流石に……やってみますか!

「よっ! わあ!? 飛びすぎました……」

 ベランダを飛び越えて塔のような尖塔の屋根に到着してしまいました。まだまだ力の調整がうまくいきませんね。

「ゆっくりおりましょう」

 飛びすぎたら屋根をつたって行けばいいだけ。成功の範疇ですね。

「到着」

「……あなたは天使様?」

「ええ!?」

 ベランダに着いて城に入るとすぐに見つかってしまいました。天使と聞いてくる少女。私から見たらこの少女の方が天使なのですが?

「私はマモルと申します。ユアサ マモルです。訳あって身を隠しておりますのでお静かに」

「そうなんですか? 天使様も大変ですね。私は大神官のミントと申します。天使様に名を知っていただけるのは光栄でございます」

 驚きです。私を天使だと思っているようです。更にこのお年で大神官。地位はよくわかりませんが大神官なのですから神官よりは上でしょう。もしかすると職業を得るとそれだけで地位が向上するのでしょうか? 私も早く職業を見てほしいですね。

「天使様は全ての職業に適性があるようですね。羨ましいです」

「え?」

「私は大神官です。職業を人に与えることも可能なのですが天使様にも出来るとは思いませんでした。転職なさいますか?」

 渡りに船とはこのことでしょうか? ミントちゃんは私に職業を与えてくれるようです。
 しかし、全ての職業から選べと言われますと悩みますね。

「因みに後で職を変えることは可能ですか?」

「そう言う方もいらっしゃいます。その場合は多額の寄付を求めるのが教会の習わしです」

「寄付ですか……」

 なるほど、最初はタダで気に入らなかったらお金を払うわけですね。よくできた献金システムですね。

「どの職業がいいのでしょうか?」

「半神ですね。神はすべての属性を制覇したといわれていますから全ての魔法と親和性が高くなるはずです」

「半神? それは職業なのですか?」

 ここでもゲーム的な考えが出てきましたね。職業は何ですか? と聞かれて半神ですなんて答えたら野球選手になってしまいますよ。
 しかし、半分神の半神ですか。今でも十分人間離れしているというのにこれ以上なっては。

「普通の戦士にしてもらっていいですか?」

「……半神にいたしますね」

「ええ!? ちょ」

 なぜかミントちゃんは私の言うことを無視して目を瞑り始めた。しばらくすると天から光が降り注いできて体に力がみなぎってきました。

「ミントちゃん?」

「神からのお告げを承りました。ケセルセス様という神に聞き覚えは?」

「……あります」

 どうやら、ケセルセスさんが助言をしてきたようです。素直そうなミントちゃんが私の話を無視するなんて考えられなかったのですが彼のせいのようです。
 おかげでステータスが更に鬼のように……。

 名前 ユアサ マモル
 
 レベル 30

 職業 半神

 HP 25000(60000)
 MP 30000(60000)
 
 STR 8000(31500)
 DEF 8500(31400)
 DEX 9300(31600)
 AGI 9900(31000)
 INT 15000(33000)
 MND 15000(33000)

スキル

【マジックバッグ】【剥ぎ取りの極意】【焼き上手】【秘匿【ドラゴンの魂】


 地力のステータスが100倍されていますね。秘匿出来ているのはカッコ内だけですか、見られたら大変なことになりそうなステータスですね。

「素晴らしいです。天使様」

「は、はぁ……」

 ミントちゃんが跪いて祈ってきます。よく見ると目が見えていないのでしょうか? 私と言うよりも私の頭の上を見ているような視線です。

「ミントちゃん? 目が見えないのですか?」

「え? あ、はい。生まれてからずっと目が見えなくて。その代わりに大神官の力を授かっております」

 どうやら、思った通りのようです。半神にしてもらったのですから試してみますか。半神になると言葉だけでその人の状態異常を治すことが出来る。なぜか私はハッキリとそれが分かってしまう。職業とは本当に便利ですね。

「【治れ】」

「え? ……目、目が見える」

 声をあげるとミントちゃんの周囲が光り輝く。少しすると彼女が自分の両手を見て涙を浮かべた。

「わ、私の力でも治せなかったのです。それを貴方様は一瞬で。天使様、どうかわたくしめをお使いください。私のような小さな力ではあなた様の望みは叶えられないかもしれませんが」

 跪くミントちゃんが懇願してくる。彼女は私の仲間になってくれるようです。モミジさんと会う予定の彼女と一緒に居れば安全に会えますね。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

制作スキル持ちのリビングマスター ~異世界覇者への道~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺は海城 一二三(カイジョウ ヒフミ) いつも通り、登校したらテセリウスとかいう神が現れてクラス全員を変な空間に閉じ込めてきた 俺たちを全員別世界に行くとかいう話になった。   俺と親友の金田一 一(キンダイチ ハジメ) はこういった話の小説をバイブルにしているのでそれほど困惑はしなかったがハジメが最低レアをひいてしまったんだ。  ハジメは俺と違って体育的なものは苦手、生き残る能力は皆無だろう。仕方なくハジメと条件を交換した。ハジメが生きられるならそれでいいかと軽い気持ちだったんだが。    どうやら、最低レアというのは現状の話でスキルは最高のスキルがついていたようだ。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...