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第二章 悪しき影

第六十七話 優しき子供達

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「さ~、次は料理が出来たよ~」

 ひと騒動あってすぐに料理を作り始めた。料理人の指当てをはめた僕らの料理は時短時短の超速料理でした。焼きたい焼き色まで一瞬で焼けて、中までしっかりと焼けていく。一分もしない間に焼き目がつくので野営でやった時よりも早く調理ができました。全員分のオークシチューが出来上がるとみんなが生唾を飲み込んでいる音が聞こえてくる。焼き目をつけておいたオークの肉から旨味成分がシチューに染み出ていい味になるんだってさ。これはラナさんから聞いた料理方法、どうりで美味しいわけだね。

「食べないなら俺が全部食べちますぞ」

「!? 食べる! 取らないで!」

 再度、獣人の子供達が止まっていると人族の子が声をあげた。ウサギ耳の子がシチューの入った皿を抱えて遠ざけているよ。

「ビナン意地悪! 嫌い!」

 ウサギ耳の子が男の子に言い放つ。それを聞いて男の子は一瞬泣きそうな顔になってすぐにニヤついていく。

「へんっ、食べないのが悪いんだよ。食べていいって言ってんだからみんな食べろよ」

 人族の子はそういってシチューをスプーンですくって食べていく。でも、獣人の子供達は涎を垂らしながら待っているね。ミルクは飲んでくれたんだけどな。

「食べたら蹴られるもん」

 ウサギ耳の子が呟いた。そんな事はしないのにな。

「じゃあ、やっぱり俺が全部食ってやるよ」

 泣きそうになっているウサギ耳の子のお皿にスプーンを伸ばす。

「この野郎やめろ!」

「何だよ!」

 我慢ならなかったのか獣人の子のギナって呼ばれた男の子がビナンにつかみかかった。

「はいはい。二人とも温かいうちに食べようね~」

「「うわっ!?」」

 僕は喧嘩している二人を持ち上げる。二人は驚いて僕を見ているよ。

「お兄ちゃん達は強いの?」

「アレクはね~。すっごく強いんだよ~」

 ウサギ耳の子がその様子を見て聞いてくるとシーナが答えていた。

「じゃあ落ち着いたところで自己紹介をしようか。僕はアレク」

「私はシーナだよ。よろしくね」

 喧嘩を仲裁して椅子に座らせると僕らは自己紹介を始めた。僕らの事を知らないから怖がるんだと思うんだ。とにかく、知ってもらおう。

「ビャナはビャナ・・」

「ファーナ・・」

 熊耳の女の子とウサギ耳の女の子が順番に自己紹介をした。二人とも警戒している感じだ、ウサギ耳の子は一番年下かな?

「僕はギナ」

「俺はウタン」

 次に犬耳の男の子と熊耳の男の子が名乗った。

「俺はビナンだよ」

 人族の子が最後に名乗ると子供達は睨みつけてる。嫌われているけど気にしていない様子だ。

「よし、じゃあ食べようか。一緒に食べれば食べれるでしょ?」

 向かい合って僕らも食べることにした。それでもあんまり手は動いていないね。

「・・・あ~美味しかった~。他には何かないの? サラダとかも食べたいな~」

 人族のビナンが両手を頭で組んで呟いた。その言葉にウサギ耳の子のファーナが耳をピコピコさせてる。そうか、ウサギさんだから。

「それもあるよ。食べるかい?」

「やった~」

 すぐにサラダになるトマトやレタスを取り出すとファーナの視線が強くなった。

「う~ん。美味しいな~なんでみんな食べないんだよ~」

 ビナンは遠慮なく食べ物を食べていく。あれだけの量を食べたらお腹壊すんじゃないかな?

「ビャナ~・・」

「う~」

 サラダをみんなの間に出すとファーナの耳がせわしなくピコピコし始めた。

「食べてくれないんじゃしょうがないな~。捨てちゃおう」

「食べる~!」

 捨ててしまおうと手を伸ばすとファーナちゃんが我慢できずにサラダに手を伸ばしてそのままレタスを口に運んだ。ムシャムシャと食べる姿はウサギさんみたいでとても可愛らしい。

「おいしい~」

 ファーナちゃんの目が輝いて次々とサラダを口に放り込んでいく。頬一杯に頬張った姿はリスみたいだ。

「ビャナ、俺達も・・」

「この人達は殴らないみたい。食べよう」

 ファーナとビナンの様子を見て、ビャナがみんなに頷いてる。それからすぐにシチューやサラダを食べ始めたよ。

「は~、お腹いっぱい。トイレは?」

「こっちにあるよ」

 ビナンがお腹をポンポンして、トイレを探したので僕は案内してあげた。

「アレク様、これはみんなには言わないで」

「えっ?」

 ビナンはそう言ってトイレに入っていく。すぐにビナンが吐く声が聞こえてきた。やっぱり無理していたんだね。弱々しくみんなには言わないでと言ってきたビナン。彼は強がっていたんだ、みんなに食べていいと伝えるために生意気な口調で僕らが何かをして来たら先に殴られるように目立つような行動をとっていたんだ。でも、それじゃ、ビナンが子供達の中で孤立しちゃうよ。これは教育が必要だな。
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