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第二章 悪しき影
第五十四話 ゼットトゥース
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「ごはっ・・・、今の雷は何だったんだ」
「クードがいたよ~」
「まだ意識があるの? 凄いな~」
[荒れ狂う暴雷]の着弾地点に来てみた。雷を落とした雲はすぐに何処かへ飛んでいった。
シーナが下半身が焼け焦げて欠損しているクードを見つける。僕も駆け寄るとクードが力なく僕を睨みつけてきたよ。そんなに恨まれることしたかな?
「やはりここにいたか、殺してやるぞ。ゴホッゴホッ」
「まだ話せるの?」
人って下半身無くなっても話せるんだな~。
「アレク、おかしいよ。他の人達は死んでるのに」
「そうだよね。やっぱりおかしいよね?」
クードの兵隊達はみんな[荒れ狂う暴雷]で所々欠損して絶命してる。中には肩から先がなくなっているだけで死んでいる人がいるのにクードは腰から下だ、普通は即死だよね。
「私が死ぬという事がどういう事か。ゴホッ、お前たちは恐怖で知ることになるだろう」
「クードの様子が変だよ」
疑問に思っているとシーナが声をあげた。クードの体がボコボコと脈を打ち始めてる。何が始まるんだろう?
「魔物か何かかな? [ファイアボール]」
数十個の炎の球が重なり大きな球になっていきクードの死体を襲った。焼け焦げた地面を残してクードは跡形もなくなっていった。
「何だったんだろう?」
「さあ? とりあえず、帰ろうか」
「うん」
クード達を葬り去って、僕らは早々と村に帰還。しかし、あのクードは何だったんだろう?
「ん?」
「どうしました? ゼット様」
「いや・・・」
私は東の大陸を統治する魔王、ゼットトゥース。今、円卓を挟んで四天王たちと会議をしているのだが・・・
「ゼット様どうされました?」
「私の触媒が死んだ」
「死んだ?」
「ゼット様の触媒と言ったらBランク以上の者のはず?」
私の触媒はすべての大陸に存在する。今死んだのは人族の国にいる者だ。四天王にもそれは言わない方がいいだろう。何故かと言うと私の触媒はかなりの強さを持っているし、更に武器も持たせていた。それを倒す事が出来る者は限られるのだ。四天王はもちろんだが、その側近ならば可能だろう。敵は外にしかいないというわけではないからな。
「しかし、おかしいですよ。ゼット様の触媒が死ぬとゼット様の魔法が発動してAランクの魔物の軍隊が召喚されて触媒を倒したものを葬り去るはず」
四天王の一人、知将ゾライスが眼鏡をクイッとあげて発言している。
そう、私の触媒には恐ろしい罠が仕掛けてあったのだ。私でもただでは済まない魔物の軍隊が召喚され、陸や空から集中砲火されるのだ。魔法による攻撃が飛び交う中、骨の兵士による近接、絶対に触媒を倒した者を殺すための罠なのだ。
「発動を確認したがすぐに消えてしまった。魔法陣を構築する前に死体のマナが全損したようだ」
「罠に気付いて体を壊したという事ですか?」
「それか、時間差で魔法を当てられたかだな」
「複数という事か」
四天王は考え込んでいる。この様子からは今回の事には関与していないようにも思える。
「疑いたくないが、今回の事に関与している者がいるのであれば今すぐに申せ」
「ゼット様何を!」
四天王全員の眼前に黒き剣を召喚する。剣先が四天王に向けられるとゾライスが声をあげた。
「私の座を狙うのは魔族としての常識、それは認める。しかし、それは正式に決闘を申し込み、お互いの兵をぶつけあって初めて得られる名誉。私の触媒を壊すという事は奇襲と同じこと、そんな卑怯者は私の部下に必要ないからな。さあ、誰がやった?」
「ゼット様、この中にそんな卑怯者はいません!」
「そうです。断じてそのような者は」
四天王達はみんなゾライスと同じ気持ちだった。冷や汗をかきながら首を垂れていく。
「・・すまなかった。お前達を侮っていた」
「分かってくれましたかゼット様」
みなの行動を見て恥ずかしくなる。自分の部下が私を裏切るような事をするはずがない。しかし、そうなると人族にやられたという事になる。クードという男は強化している為、人族で勝てるはずがないのだ。死体が死ぬとマナによって体が守られるようになっている魔法陣を発動する前に壊すことなど人族でも数えられる程度だ。勇者、賢者、剣聖、この三人ならば一人でも可能だろう。
「ゼット様の懸念も致し方なし。我々の部下ではないと言う事は人族や獣人族に触媒を粉砕するほどの力を持ったものがいるという事。それはかなり限られるであろう」
腕を組んで冷静に声をあげたグーラス。四天王の中でも腕力に定評のある男だ。ミノタウロスと鬼族との間に生まれた赤き男、力だけならば我を凌ぐだろう。
「グーラスの言う通りじゃの。これは調べる必要があるようですじゃ」
妖狼族の長老ゲンジュウロウが長いひげを擦りながら話す。
四天王の中でも一番の年長者であるゲンジュウロウの言葉は重いな。
「あら~、じゃあ私が行こうかしら。偶には人族を食べたいと思っていたのよね~」
ラミアであるミスラがベロを出し入れしながら発言している。ミスラは攻撃的だ、あまり人族との摩擦になるのは許容できないが。
「ミスラ、あまり人族を殺してはなりません。奴らは数が多いのです。いざ、戦うとなると我々魔族の数では勝てないでしょう」
「あら~、それは知将らしからぬ言葉ね~。やってみなくちゃわからないじゃないの」
「やってみなくちゃわからない事をやらずに判断するのが私の仕事なのですよミスラ」
ミスラとゾライスが睨みあって言いあう。
「ふ~ん、言うわね~。じゃあ、私の部下に頭がいい子がいるのよ~。その子なら大丈夫だと思うわ~」
「ミスラの副官ですか。彼女ならば大丈夫でしょう」
ミスラの副官か、ゾライスも信用しているあ奴ならば、安心して任せられるな。
「では、本日の議題、獣人族との国境について話たいと思います」
我の事柄を終えて、会議は綽綽と進んでいく。話し合いは退屈だ、我の触媒を倒した者を見に行きたいものだな。
「クードがいたよ~」
「まだ意識があるの? 凄いな~」
[荒れ狂う暴雷]の着弾地点に来てみた。雷を落とした雲はすぐに何処かへ飛んでいった。
シーナが下半身が焼け焦げて欠損しているクードを見つける。僕も駆け寄るとクードが力なく僕を睨みつけてきたよ。そんなに恨まれることしたかな?
「やはりここにいたか、殺してやるぞ。ゴホッゴホッ」
「まだ話せるの?」
人って下半身無くなっても話せるんだな~。
「アレク、おかしいよ。他の人達は死んでるのに」
「そうだよね。やっぱりおかしいよね?」
クードの兵隊達はみんな[荒れ狂う暴雷]で所々欠損して絶命してる。中には肩から先がなくなっているだけで死んでいる人がいるのにクードは腰から下だ、普通は即死だよね。
「私が死ぬという事がどういう事か。ゴホッ、お前たちは恐怖で知ることになるだろう」
「クードの様子が変だよ」
疑問に思っているとシーナが声をあげた。クードの体がボコボコと脈を打ち始めてる。何が始まるんだろう?
「魔物か何かかな? [ファイアボール]」
数十個の炎の球が重なり大きな球になっていきクードの死体を襲った。焼け焦げた地面を残してクードは跡形もなくなっていった。
「何だったんだろう?」
「さあ? とりあえず、帰ろうか」
「うん」
クード達を葬り去って、僕らは早々と村に帰還。しかし、あのクードは何だったんだろう?
「ん?」
「どうしました? ゼット様」
「いや・・・」
私は東の大陸を統治する魔王、ゼットトゥース。今、円卓を挟んで四天王たちと会議をしているのだが・・・
「ゼット様どうされました?」
「私の触媒が死んだ」
「死んだ?」
「ゼット様の触媒と言ったらBランク以上の者のはず?」
私の触媒はすべての大陸に存在する。今死んだのは人族の国にいる者だ。四天王にもそれは言わない方がいいだろう。何故かと言うと私の触媒はかなりの強さを持っているし、更に武器も持たせていた。それを倒す事が出来る者は限られるのだ。四天王はもちろんだが、その側近ならば可能だろう。敵は外にしかいないというわけではないからな。
「しかし、おかしいですよ。ゼット様の触媒が死ぬとゼット様の魔法が発動してAランクの魔物の軍隊が召喚されて触媒を倒したものを葬り去るはず」
四天王の一人、知将ゾライスが眼鏡をクイッとあげて発言している。
そう、私の触媒には恐ろしい罠が仕掛けてあったのだ。私でもただでは済まない魔物の軍隊が召喚され、陸や空から集中砲火されるのだ。魔法による攻撃が飛び交う中、骨の兵士による近接、絶対に触媒を倒した者を殺すための罠なのだ。
「発動を確認したがすぐに消えてしまった。魔法陣を構築する前に死体のマナが全損したようだ」
「罠に気付いて体を壊したという事ですか?」
「それか、時間差で魔法を当てられたかだな」
「複数という事か」
四天王は考え込んでいる。この様子からは今回の事には関与していないようにも思える。
「疑いたくないが、今回の事に関与している者がいるのであれば今すぐに申せ」
「ゼット様何を!」
四天王全員の眼前に黒き剣を召喚する。剣先が四天王に向けられるとゾライスが声をあげた。
「私の座を狙うのは魔族としての常識、それは認める。しかし、それは正式に決闘を申し込み、お互いの兵をぶつけあって初めて得られる名誉。私の触媒を壊すという事は奇襲と同じこと、そんな卑怯者は私の部下に必要ないからな。さあ、誰がやった?」
「ゼット様、この中にそんな卑怯者はいません!」
「そうです。断じてそのような者は」
四天王達はみんなゾライスと同じ気持ちだった。冷や汗をかきながら首を垂れていく。
「・・すまなかった。お前達を侮っていた」
「分かってくれましたかゼット様」
みなの行動を見て恥ずかしくなる。自分の部下が私を裏切るような事をするはずがない。しかし、そうなると人族にやられたという事になる。クードという男は強化している為、人族で勝てるはずがないのだ。死体が死ぬとマナによって体が守られるようになっている魔法陣を発動する前に壊すことなど人族でも数えられる程度だ。勇者、賢者、剣聖、この三人ならば一人でも可能だろう。
「ゼット様の懸念も致し方なし。我々の部下ではないと言う事は人族や獣人族に触媒を粉砕するほどの力を持ったものがいるという事。それはかなり限られるであろう」
腕を組んで冷静に声をあげたグーラス。四天王の中でも腕力に定評のある男だ。ミノタウロスと鬼族との間に生まれた赤き男、力だけならば我を凌ぐだろう。
「グーラスの言う通りじゃの。これは調べる必要があるようですじゃ」
妖狼族の長老ゲンジュウロウが長いひげを擦りながら話す。
四天王の中でも一番の年長者であるゲンジュウロウの言葉は重いな。
「あら~、じゃあ私が行こうかしら。偶には人族を食べたいと思っていたのよね~」
ラミアであるミスラがベロを出し入れしながら発言している。ミスラは攻撃的だ、あまり人族との摩擦になるのは許容できないが。
「ミスラ、あまり人族を殺してはなりません。奴らは数が多いのです。いざ、戦うとなると我々魔族の数では勝てないでしょう」
「あら~、それは知将らしからぬ言葉ね~。やってみなくちゃわからないじゃないの」
「やってみなくちゃわからない事をやらずに判断するのが私の仕事なのですよミスラ」
ミスラとゾライスが睨みあって言いあう。
「ふ~ん、言うわね~。じゃあ、私の部下に頭がいい子がいるのよ~。その子なら大丈夫だと思うわ~」
「ミスラの副官ですか。彼女ならば大丈夫でしょう」
ミスラの副官か、ゾライスも信用しているあ奴ならば、安心して任せられるな。
「では、本日の議題、獣人族との国境について話たいと思います」
我の事柄を終えて、会議は綽綽と進んでいく。話し合いは退屈だ、我の触媒を倒した者を見に行きたいものだな。
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