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第一章 神様からの贈り物

第三十九話 赤き月夜

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「おい! みんな分かってるだろうな? アレクさんは町を救った英雄なんだからな。黙っていろよ!」

 俺はザクロだ。
 今、俺はアレクさん達を見送って、ギルドで演説してる。アレクさんは目立ちたくないと言っていたがある程度の奴らには言い聞かせた方がいいんだ。ドランの案でもあるが、俺も納得してる。ギルドと言う組織を使ってある程度の緘口令みたいなものをさせている感じだな。

「領主様に知れたら、国に所属することになっちまう。そうするとアレクさん達は拘束されちまうんだ。さっきの奴らみたいな輩がいたらすぐに俺に言ってくれ。始末してアレクさん達に迷惑がいかないようにする」

 俺的にはそれが一番いいと思ってる。俺は裏でアレクさん達を守る。国に属しても戦争に駆り出されるだけだ。王族ってやつらはみんな優位な力が手に入ると分かるとすぐに使いたがる。オービス様の話でもそれは知られているんだ。オービス様は王を切って捨てて王座を勝ち取ったがアレクさん達にそんな豪気な気性ではない。王族から逃げる事を選ぶだろう。
 ドランも俺達もそれは許容できない。ドランに話を聞いたがスタンピードを二人で討伐していたらしい、ドランの奴も姿を見たわけじゃないし、討伐した魔物をみたわけじゃないが本当みたいなんだ。ありえねえ、スタンピードって言ったら強弱の差は激しいが魔物が千は現れる。俺が百人いれば勝てるかもしれないもので通常、大きな町の城壁を利用して討伐するものだ。話を聞いたときは身震いしたぜ。そんな一万人に一人以上の逸材に会えたんだ、もしかしたら俺達はオービス様のような逸材と肩を並べているのかもしれないってな。

「国に知れたら、アレクさん達は戦争の道具にされちまう。それはさせたくねえ。そう思わねえか?」

「あんな、幼い子供にそんなことさせたくねえな」

「ああ、俺の子供も大きくなってきたがそんな真似させたくねえ」

 俺の言葉にギルドにいる奴らは頷いてくれた。出会いは最悪だったが、俺はアレクさん達の為に戦う。会いたくねえが、[赤き月夜]のリーダーに会わなくちゃな。セッコがいつ、暴走するかわからないしな。





「アレク~、美味しそうだよ~」

「はは、買い食い再開だね」

「うん、ベラさんのお使いも終わったし、ギルドの用事も終わったじゃん。これでクランの誘いもされない事になったから大手を振っていられるでしょ?」

「まあ、そうだね。でも、あんまり目立つと良くないよ。セッコとか言う人もまだ、動いてるみたいだし」

 ギルドの出来事がまだまだ僕らの安息を許さない。
 赤き月夜のリーダーに会えないものかな~、そうすれば、止められると思うんだけど。セッコはリーダーがいない事でザクロを苛められると言っていた。たぶん、赤き月夜のリーダーはいい人だと思うんだけどな。

「おうおう、羽振りがいいなおい。俺にも分けてくれよ」

「ん?」

 派手で大きな帽子をかぶった男が僕らに声をかけてきた。

「嬢ちゃんも可愛いじゃねえか、いいね~、金のある所には美女がってか」

「何ですかあなたは?」

 ふらふらとしている様子からお酒に酔っているのが伺える男。ふらふらとシーナに寄っていっているのが分かったので僕が間に入った。

「いいじゃねえか、ちょっとくらい」

「やめてください」

 ただの酔っ払いに暴力を振るうのは違うと思って少し離れるだけにしているけど、いい加減しつこいな。

「アレク、行こっ」

「そうだね」

「おいおい、つれないぜ~。これでも大きなクランのリーダーなんだがな~。アレク君」

「「!?」」

 僕とシーナは男の言葉を聞いて背を向けていた男に振り返る。男はにやっと笑って僕らに背を向けた。

「赤き月夜は今日の夜も輝くってか~・・・」

 男はそう言って路地に向かって歩いて行く。どうやら、僕らについてくるように言っているようだ。

「どうするのアレク?」

「いくよ、赤き月夜って言ってたからね」

 今、僕らが一番会いたい人物かもしれない。これを逃すと敵対することにしかならないと思うんだ。そうなると目立つことになっちゃうと思うんだ。今日のギルドの騒ぎもギルドにいた人たちに知られちゃったわけだしね。まあ、もういいんだ、降りかかる火の粉を払わないなんて僕らにはできないしね。

 僕らは仕方なく男が入っていった路地へと歩いて行く。
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