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第二章

第53話 二日天下の終わり

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 無言で頭を撫でるジェラルド様。しばらくそうしていると撫でるのをやめて語り始めた。

「彼女はとても明るく元気な女性じゃった」

 フェリアン様と同じ感想を述べる。ジェラルド様。とても楽しそうで子供みたいだった。

「儂も今よりは若かったからのなかなかにイケメンじゃった。まあ、それでも8年前ではたかがしれておるがな」

「今もかっこいいですよ」

「ふ、彼女と同じことを言うのじゃな。やはり彼女の子か」

 褒めると砕けた表情で笑うジェラルド様。でも、8年前でも貴族に好き勝手させてたはずだけど、ジェラルド様は町にために何かできなかったのかな?

「フェリアンは町に下りては施しを行っていたようじゃがな。儂は貴族の目もあってお忍びで支援をしておった。その時に彼女にあってしまったんじゃ。今思えば遠くから見ておればよかったと後悔しておるよ」

 ジェラルド様達は何とかしようとしてくれてたのか。ジェラルド様は拳を握って拳から血が滲んできてる。後悔ってそれほどのことを?

「儂は彼女を抱き、子供を身ごもらせた。それが貴族の耳に届き狙われた。フェリアンの母はフェリアンを産んで死んでしまったからな」

 悲しい表情で語っていくジェラルド様。

「彼女を逃がすために用意した兵士達は貴族に捕まり闇へと葬り去られ、彼女は行方不明。子供もどこへ行ったのかわからんかった。幽閉にも近い状態においやられた儂は手の出しようがなかった。本当にすまなかった」

 ジェラルド様はそういって謝ってくる。そうか、お母様は行方不明か……。

「彼女は儂が見つけて見せる。ともに城に帰ろう」

「ジェラルド様」

 抱きしめてくれるジェラルド様。だけど、城は僕の家じゃない。僕の家はここだ。それにギルドのラフィーリアさんの部屋、彼女が帰ってくるときに居てあげないと心配するだろうしね。

「城には行きません」

「そうか。こんな弱い父ではダメか?」

「そうじゃないです。僕は孤児として生きてきました。なので孤児の苦しみを知っています。僕はそんな思いをしないで済むように孤児を救おうとこの施設を作ったんです。僕の帰るところでもあるここが僕の家なんです」

「強く育ったのだな。儂など矮小な存在に思える」

 僕の言葉に涙するジェラルド様。
 無言で抱きしめてくれて話し続ける。

「何か困ったことがあったらいいなさい。我が息子」

「ふふ、大丈夫ですよお父様。そんなことが起こったら相手が困るだけですから」

「ガハハ、そうだな。さて、皆に知らせようか」

 笑いながら答えると涙目で笑うジェラルド様。勢いよく扉を開くとルリ達が倒れこんでくる。みんな盗み聞きしてたみたいだ。

「ガハハ。温かい家だ。心配だったのだろう」

「お父様、すみません」

 みんなを代表してフェリアン様が謝りだす。みんな申し訳なさそうに頭をペコペコさせてるよ。

「フィル! お城に行っちゃうの?」

「行かないでよ。僕らだけじゃ孤児院なんて無理だよ」

 ルリとルファーが詰め寄ってきて声をあげる。リファとレイチェルも心配そうに見つめてくる。
 僕は首を横に振って応える。

「行かないよ。僕の帰る場所はここだからね。それにこんな頼りになる兄弟を置いてなんていけないよ」

「ふぃ、フィル……」

 それぞれの頭を撫でて言うとみんな顔を赤くさせる。ルリなんて目を瞑っちゃって、本当にきもちよさそうだ。

「さて、聞いている通り、儂の息子のフィルが大変世話になっておったな。これからも仲良くしてあげてほしい」

「言われなくても仲良くするぜ王様。そんな心配よりもあんまり貴族にいいように使われるなよな」

 ジェラルド様の言葉にファバルさんがいつもの感じで声をあげた。場が一瞬で静かになってしまった。

「ガハハ。言われてしまったな。安心せい! これからは貴族に厳しく。民に優しい王になって見せる。手を貸してくれるか? フェリアン」

「はい!」

 静寂にジェラルド様の豪快な笑いが響くとフェリアン様の声が続いた。ジェラルド様は僕にウインクしてから屋敷から出ていく。フェリアン様達もいそいそとついて屋敷を出ていくと、ファバルさんをみんなで叩き始めた。

「馬鹿!」

「ファバルは大馬鹿なんだな!」

「ん、不敬罪で一発死刑」

「まさかここまで馬鹿とは」

 イレレイさんを筆頭にファバルさんを叩きながら告げるジムさん達。流石に王様にあれは怖いの一言だ。

「でも、少しスッキリしたわ」

「ああ、正直な」

 ネルナーデさんとグレイドルさんはそういってファバルさんを思いっきり叩く。流石のファバルさんもいたがってるな。

「なんだよみんなよ。いい子ちゃんぶって。思ってたことだろ」

「ん、だから褒めてあげてるでしょ。素直に喜んで!」

「いって~! 褒めてんのかよ!」

「褒めてるんだな!」

「いって~」

 再度叩かれていくファバルさん。ベルルさんとワッタさんがこんなに褒めるなんて珍しいな。と言うか本当にいたそうだけど大丈夫?

「ガイアンも捕縛して、あのゴザだっけか? あいつも捕まったわけだがしまいになるのか?」

「ああ、なるだろうね。王様も元気になったし」

「なんか呆気ねえな」

 ファバルさんが痛む背中をさすりながら呟く。ジムさんが言っているように王様が元気になったら貴族達も大人しくなるはずだから終わりだね。
 でも、本当に良かった。誰も傷つかなくて。
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