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第二章
第50話 三度目の潜入
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「お願い答えて。【アテナ】」
「優しきマスター。お呼びいただいてありがとうございます」
祈るようにアテナの名を呼んだルリ。屋敷に入って地下の広場に来てすぐに召喚してみたんだ。すると素直にアテナはやってきてくれた。それでも最初の僕の召喚のように光が人の形を作ってるだけで人の姿には程遠い感じだ。
「私がまだまだ弱いから。ごめんなさいアテナさん」
「いいえ、大丈夫ですよマスター。フィル様がおかしいだけですから」
「ん、やっぱりフィルは精霊界でもおかしな存在?」
「はい! おかしいなんてものじゃないですよ。はい」
ルリが謝るとアテナが頭を撫でながら慰める。ベルルさんが質問すると僕に視線を移して盛り上がってるよ。そんなにおかしいのかな?
確かにステータス十倍なんておかしなのついちゃったけど、僕は僕だぞ。何もおかしくないぞ。
「フィル! フィルのおかげで召喚できた。ありがとね」
「ううん。違うよ。ルリの頑張りだよ。本当に凄いや」
ルリが僕の前までやってきてお礼を言って来た。彼女の頭を撫でて褒めると嬉しそうに顔を真っ赤にさせる。本当にルリはすぐに顔が赤くなるな~。
「さて、それじゃ。みんなで唐揚げを楽しも~」
すでに出来上がった唐揚げをみんなで楽しむ。もちろん、ノームやシルフ、ウンディーネも呼んである。後は氷と闇の精霊さんか。イフリートに聞いたけど、二人はその時が来るまで我慢すると言っていたらしい。精霊から指名するなんてそんな非常識なことはしたくないって言っていたらしい。やっぱり非常識なのか。イフリート達は完全に常識から外れちゃったみたいだ。
「さて、僕は少し出てくるよ。ウンディーネ、ついてきてくれる?」
「はい」
みんなに告げるとウンディーネに声をかけた。
「潜入するの?」
「うん。ルリが言っていたことをしに行くんだ」
王様の病を治す。そうすれば、こんなバカみたいなことは終わりに向かう。宰相のガイアンのおしまいで終わりだ。
「じゃあ、すぐに終わるね。でも、無理はしないでね」
「はは、わかってるよ。やばかったら逃げてくる。その時は僕の事を守ってねルリ」
「うん。みんなもフィルも私が守るよ」
手を握り合って約束を交わす。もしも、僕が失敗したら、いや、そんなことはないか。それでも保険をかけておくことは大事だよな。
「イフリートたちはそのまま出ていられる?」
「ああ、長い間ここに存在できるぞ」
「まっかせてよ」
「うん!」
彼らにここを守ってもらう。もちろん、ルリが頼りないわけじゃない。彼女も僕の守るものの一つだからね。守りたいんだ。
「じゃあ、行ってきます」
「うん。いってらっしゃいフィル」
『行ってらっしゃい』
みんなが元気よく僕を見送ってくれる。とても暖かい僕の帰る場所。絶対に誰にも穢させない。
「城か……王様の寝室はどこだろう?」
城の見取り図なんて持ってない。正面から入るわけにもいかないよね。
「やっぱりテラスとかベランダが一番入りやすいかな」
ということで城のベランダに飛び乗る。城壁外からひとっ飛び。
ベランダについて中を見るとキングサイズのベッドが見える。誰かの寝室なのかな。
「誰もいないかな?」
部屋の中に入ってあたりを見渡す。絵画が四面の壁に一枚ずつ。そのすべてに白いおひげのおじいさんが王冠を被っているのが見える。このおじいさんが王様のジェラルド様かな?
「元気なころは立派だったのかな?」
絵画の中の一枚に騎士団と描かれているジェラルド様のものがあった。ジェラルド様を中心に騎士たちが集まって描かれていて、みんな笑顔で集まってる。嘘でもこんなに仲がよさそうな絵はないよ。
「ん?」
絵画を眺めていると部屋の外、通路側から声が聞こえてきた。
『ジェラルド様の容態は?』
『まだ昏睡状態です』
『そうか……わかった』
声の主が誰かわからないけどジェラルド様の心配をしてるような声に感じる。フェリアン様以外にもジェラルド様のことを心配する人がいる? それならフェリアン様と一緒に指名手配になってもおかしくないと思うけどな。
「この階にジェラルド様がいるのかな? とりあえず、ウンディーネついてきてる?」
「はい」
シュルっと僕の背後から前に回ってくるウンディーネ、精霊だから小さくなることも出来るみたい、背中に張り付いてたみたいだな。
「では眠らせます?」
「うん。いっそのことこれで終わらしてもいいかもね」
「わかりました。【エターナルスリープ】」
ウンディーネが城全体に眠りの魔法を唱えた。そこそこMPがなくなるのを感じて部屋から通路へと出る。
さっき話していた一人の男が倒れているのが見える。もう一人の男の姿は見えない。
「司祭かな? ジェラルド様を回復させようとしてるってことはやっぱりフェリアン様側の人がいるのか?」
倒れていた男は司祭の服を着てる。回復魔法が出来る人っぽいからそう思ったけど、違うのかな?
「ジェラルド様の部屋を探しますか」
「それならダークを呼んでみては?」
「ダーク?」
「正確にはダークシェラウドですが」
ダークシェラウド? ウンディーネの言葉に首を傾げる。
「闇の大精霊の名ですよ」
「あ~、なるほど。ん、でも、人を探すので闇の精霊って意味あるの?」
探査の魔法は闇の魔法なのかな?
「ダークシェラウドは闇の中、影の中のものを探査することが得意です。大精霊ですから攻撃も得意ですけどね」
なるほど、建物の中が大体影の中だもんね。探査なんてわけもないってことか。
「じゃあ呼んでみようかな。実は呼ばれるのを楽しみにしてそうだしね」
「はい! 実は」
「ははは、じゃあ。【ダークシェラウド】」
手をかざして名を叫ぶ。すると僕の手から影がモクモクと出てきて人を形作っていく。
「うぬら、我で遊びすぎだぞ」
黒い髭を生やしたおじいさんが現れる。第一声が怒っている感じだった。遊びすぎてごめんなさい。
「優しきマスター。お呼びいただいてありがとうございます」
祈るようにアテナの名を呼んだルリ。屋敷に入って地下の広場に来てすぐに召喚してみたんだ。すると素直にアテナはやってきてくれた。それでも最初の僕の召喚のように光が人の形を作ってるだけで人の姿には程遠い感じだ。
「私がまだまだ弱いから。ごめんなさいアテナさん」
「いいえ、大丈夫ですよマスター。フィル様がおかしいだけですから」
「ん、やっぱりフィルは精霊界でもおかしな存在?」
「はい! おかしいなんてものじゃないですよ。はい」
ルリが謝るとアテナが頭を撫でながら慰める。ベルルさんが質問すると僕に視線を移して盛り上がってるよ。そんなにおかしいのかな?
確かにステータス十倍なんておかしなのついちゃったけど、僕は僕だぞ。何もおかしくないぞ。
「フィル! フィルのおかげで召喚できた。ありがとね」
「ううん。違うよ。ルリの頑張りだよ。本当に凄いや」
ルリが僕の前までやってきてお礼を言って来た。彼女の頭を撫でて褒めると嬉しそうに顔を真っ赤にさせる。本当にルリはすぐに顔が赤くなるな~。
「さて、それじゃ。みんなで唐揚げを楽しも~」
すでに出来上がった唐揚げをみんなで楽しむ。もちろん、ノームやシルフ、ウンディーネも呼んである。後は氷と闇の精霊さんか。イフリートに聞いたけど、二人はその時が来るまで我慢すると言っていたらしい。精霊から指名するなんてそんな非常識なことはしたくないって言っていたらしい。やっぱり非常識なのか。イフリート達は完全に常識から外れちゃったみたいだ。
「さて、僕は少し出てくるよ。ウンディーネ、ついてきてくれる?」
「はい」
みんなに告げるとウンディーネに声をかけた。
「潜入するの?」
「うん。ルリが言っていたことをしに行くんだ」
王様の病を治す。そうすれば、こんなバカみたいなことは終わりに向かう。宰相のガイアンのおしまいで終わりだ。
「じゃあ、すぐに終わるね。でも、無理はしないでね」
「はは、わかってるよ。やばかったら逃げてくる。その時は僕の事を守ってねルリ」
「うん。みんなもフィルも私が守るよ」
手を握り合って約束を交わす。もしも、僕が失敗したら、いや、そんなことはないか。それでも保険をかけておくことは大事だよな。
「イフリートたちはそのまま出ていられる?」
「ああ、長い間ここに存在できるぞ」
「まっかせてよ」
「うん!」
彼らにここを守ってもらう。もちろん、ルリが頼りないわけじゃない。彼女も僕の守るものの一つだからね。守りたいんだ。
「じゃあ、行ってきます」
「うん。いってらっしゃいフィル」
『行ってらっしゃい』
みんなが元気よく僕を見送ってくれる。とても暖かい僕の帰る場所。絶対に誰にも穢させない。
「城か……王様の寝室はどこだろう?」
城の見取り図なんて持ってない。正面から入るわけにもいかないよね。
「やっぱりテラスとかベランダが一番入りやすいかな」
ということで城のベランダに飛び乗る。城壁外からひとっ飛び。
ベランダについて中を見るとキングサイズのベッドが見える。誰かの寝室なのかな。
「誰もいないかな?」
部屋の中に入ってあたりを見渡す。絵画が四面の壁に一枚ずつ。そのすべてに白いおひげのおじいさんが王冠を被っているのが見える。このおじいさんが王様のジェラルド様かな?
「元気なころは立派だったのかな?」
絵画の中の一枚に騎士団と描かれているジェラルド様のものがあった。ジェラルド様を中心に騎士たちが集まって描かれていて、みんな笑顔で集まってる。嘘でもこんなに仲がよさそうな絵はないよ。
「ん?」
絵画を眺めていると部屋の外、通路側から声が聞こえてきた。
『ジェラルド様の容態は?』
『まだ昏睡状態です』
『そうか……わかった』
声の主が誰かわからないけどジェラルド様の心配をしてるような声に感じる。フェリアン様以外にもジェラルド様のことを心配する人がいる? それならフェリアン様と一緒に指名手配になってもおかしくないと思うけどな。
「この階にジェラルド様がいるのかな? とりあえず、ウンディーネついてきてる?」
「はい」
シュルっと僕の背後から前に回ってくるウンディーネ、精霊だから小さくなることも出来るみたい、背中に張り付いてたみたいだな。
「では眠らせます?」
「うん。いっそのことこれで終わらしてもいいかもね」
「わかりました。【エターナルスリープ】」
ウンディーネが城全体に眠りの魔法を唱えた。そこそこMPがなくなるのを感じて部屋から通路へと出る。
さっき話していた一人の男が倒れているのが見える。もう一人の男の姿は見えない。
「司祭かな? ジェラルド様を回復させようとしてるってことはやっぱりフェリアン様側の人がいるのか?」
倒れていた男は司祭の服を着てる。回復魔法が出来る人っぽいからそう思ったけど、違うのかな?
「ジェラルド様の部屋を探しますか」
「それならダークを呼んでみては?」
「ダーク?」
「正確にはダークシェラウドですが」
ダークシェラウド? ウンディーネの言葉に首を傾げる。
「闇の大精霊の名ですよ」
「あ~、なるほど。ん、でも、人を探すので闇の精霊って意味あるの?」
探査の魔法は闇の魔法なのかな?
「ダークシェラウドは闇の中、影の中のものを探査することが得意です。大精霊ですから攻撃も得意ですけどね」
なるほど、建物の中が大体影の中だもんね。探査なんてわけもないってことか。
「じゃあ呼んでみようかな。実は呼ばれるのを楽しみにしてそうだしね」
「はい! 実は」
「ははは、じゃあ。【ダークシェラウド】」
手をかざして名を叫ぶ。すると僕の手から影がモクモクと出てきて人を形作っていく。
「うぬら、我で遊びすぎだぞ」
黒い髭を生やしたおじいさんが現れる。第一声が怒っている感じだった。遊びすぎてごめんなさい。
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