上 下
43 / 55
第二章

第43話 ヒーロー

しおりを挟む
「おお~こりゃいいや!」

「ああ、一回攻撃したら周りの石がけん制してくれる」

 ゴブリン達との戦争が始まって冒険者達が有利に戦闘を開始している。ゴブリン達の攻撃は弾かれて、こちらの攻撃は三倍以上の攻撃になってる。僕のパーティーになっていなくても今回の闘いは多くのみんなに貢献できそうだ。

「うっしゃ~。ジェネラル討伐だ!」

「俺が倒したのに……」

「おいおいジム、小さなこと言ってんなよ。イレレイに嫌われるぞ」

 ファバルさんが前に出て声をあげた。ジムさんの横なぎの一撃でジェネラルゴブリンっていう上位の魔物を倒した。ジムさんがファバルさんに呟くとファバルさんがジムさんの肩に手を回して声をかけた。なんでここでイレレイさんが出るのかわからないな~。
 
「ファ、ファバル何を言って!」

「二人とも! 他のが来てるよ! じゃれてないで早く!」

「イレレイ! あ、ああすぐに行くよ」

 顔が赤くなるジムさんにイレレイさんが注意するとそそくさと戦闘へと戻っていった。

「ん、イレレイは見て見ぬふり?」

「……何のこと?」

「ん、イレレイがそれでいいならいいんだけどね」

「だからなんのこと?」

「ん、何でもないよ。フィル、行こ」

 ベルルさんがイレレイさんに詰め寄って声をかける。ジムさんがイレレイさんに気があるのはうすうす勘づいてたけど、みんなも分かってたのかな。みるみるイレレイさんの顔が赤くなってく。
 ベルルさんは優しいからこれ以上は問い詰めないで僕の手を引っ張ってジムさん達を追いかける。
 
「次の団体さんが来たぞ。気張れよ~!」

『おう!』

 見えていたゴブリンの軍団を一掃して一息ついているとすぐに次の隊列がこっちに向かってくる。見えてきた軍団を見るとトロールと言われる身長が5メートルはある魔物が数体見える。冒険者達は焦りで顔を引きつらせていたけど、すぐに表情が緩む。

「はっ! はっ!」

 一瞬で二体のトロールの額に矢が刺さる。ゴブリンの軍団に倒れこむ二体のトロール。ゴブリンを下敷きにしてピクリとも動かなくなった、たぶん死んだんだろうね。

「流石イレレイ」

「うん。ありがとジム」

 トロールを一瞬で仕留めた矢はイレレイさんのだった、彼女の弓は今や世界一かもしれないな。ジムさんに褒められて再度顔を赤くするイレレイさん。

「はいはい、イチャイチャしない。次が来るぞ」

「い、イチャイチャしてるわけじゃ」

「さ~続くんだな!」

 ファバルさんにからかわれるジムさん。そんな中、ワッタさんが先頭へと走っていく。

「ふふっ」

「ルリどうしたの?」

 そんな楽しそうに戦うみんなを見てルリが笑い出す。

「なんか戦ってる感じしなくて面白くて」

「はは、そうだね」

 思わず僕も笑ってしまった。これも怪我人が出ないおかげだ。今のところ僕らの回復魔法を使う必要はなさそう。

「ん、二人とも私達も行こ」

「「はい!」」

 ベルルさんに引っ張られてみんなに続く。
 ゴブリン達との戦いは一日続いた。数が多くて厄介だったけど、とうとうキングを倒すことが出来たみたいだ。またもやグレイドルさんが仕留めたみたいで勝どきが上がった。

「さ~帰るぞ野郎ども」

 グレイドルさんの声でみんな帰り支度を始めた。僕らも街へと振り返る。
 その時、ゴブリン達がやってきた方角に雷が落ちた。

「な、なんだ?」

「雲なんかねえのに雷か?」

 冒険者達からそんな声が上がる。そして、雷がドンドンドン! と足踏みのようにこっちに向かってくる。

「!? 全員散らばれ!」

 グレイドルさんの言葉で唖然としていた冒険者達が散らばる。
 さっきまでみんながいた場所まで雷が続いてひと際大きな音を立てて落ちると僕と同じくらいの大きさのゴブリンが佇んでいた。

「ち、小さい?」

 そんな小さなゴブリンが現れたことで呟きがもれる。僕も思わずつぶやいてしまった。

「ゴブリンヒーロー……」

「ヒーロー!?」

 グレイドルさんの言葉が聞こえてくる。ヒーローって英雄? 勇者みたいなものかな?

「戦闘態勢!」

 彼の号令で冒険者が剣を構えだす。僕らも構えるとゴブリンヒーローの周囲に雷が嵐のように降り注ぐ。数人が雷に打たれて体を焼かれていく。

「ルリ! すぐにみんなを回復させて!」

「わかった。大精霊アテナ、みんなを回復させて!【エリアハイヒール】」

 ルリに指示を出すとすぐに回復魔法がみんなを回復させる。焦げて口から煙を出していた人も一瞬で回復していく。死んでいなければ僕らの魔法で何とかなるはず。

「!? ルリを守れ!」

「やらせないんだな!」

「ギギ!!」

 一瞬でルリへと迫ってきたゴブリンヒーロー。それを読んでいたワッタさんが盾で力比べ。

「はっ!」

「ギャ!」

 動きが止まったゴブリンに僕の炎の剣が当たって腕を焼き切る。ゴブリンはすぐに後ろに飛んで雷を周りに降らせ始める。

「逃がさないぜ~!」

「ジム! 援護するよ」

「ああ!」

 ファバルさんとジムさんが特攻をかける。イレレイさんの矢が雷をかいくぐってゴブリンの足を捉え、二人の剣と短剣がやつの首を切り離す。

「うおっしゃ~!!」

 ファバルさんの勝どきが上がる。どうやら、今度こそゴブリンとの戦争が終わったようだ。
 まさか、ゴブリンヒーローと遭遇するとは思わなかった。
 それにしてもみんなすっごい強いな~。経験もさることながら勘もいいし、心強いパーティーだこと。

『ゴブリンヒーローを倒しました。実績が解除されます』

「へ?」

 みんなの強さに感心していると声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

処理中です...