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第二章

第34話 教会

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「回復魔法を独占しているらしいな!」

「教会への冒涜だ!」

 司祭の格好をした人たちが声をあげる。
 勝手なことを口走って受付を破壊、これは見過ごせないな。

「お前が回復魔法を使えるものか」

「はい!」

「!? なんでそんな元気いっぱい。普通は隠すところだぞ」

 司祭の男達がリファに向かって声をかける。リファは隠しもせずに元気に返事を返す。
 彼女からしたらいいことをしてるだけだから隠す必要はないって感じだろうな。

「ではこっちにこい。教会に仕えるのだ」

「嫌です!」

「何!」

「怪我や病気になった人を自由に治せないところにはいきません!」

 リファがハッキリと断る。司祭たちはワナワナと手を振るわせて憤りを露わにした。そして、リファに向かって手をかざし始める。

「来ないのならば死ね! 我が敵を撃て【ホーリーバレット】」

 数人の司祭から放たれる光の弾。リファに向かって飛んでいく。爆発が起こって何も見えなくなる。
 
「ふん。素直に応じればよかったものを」

 そんな声が聞こえる。まったく、殺そうとしてるくせに呑気だな~。だけど、ここがどこか知らないのかな?

「ふふ、皆さん助けてくれなくて大丈夫なのに」

「リファを守るのは僕の役目だからね」

「ははは、僕が来るまでもなかったか」

「まさかフェリアン様まで来てくれるとは思いませんでした」

『!?』

 リファがクスクスと笑って、ルファーと僕とフェリアン様が爆発の煙の中で談笑。まさか、フェリアン様もリファを守るために前に出てくれるとは思わなかった。
 煙が治まってくると司祭たちが冒険者達に囲まれているのが見えてきた。

「お前達。ここがどこかわかってるのか?」

「ただじゃ帰さねえぞ」

 マスターのギレンさんとファバルさんが指をポキポキと鳴らしながら威圧する。司祭たちはそれでも魔法を使おうとしてくる。そのため冒険者達にタコ殴りにされ始める。
 ボッコボコで流石に可哀そうに思える。肉体派の冒険者ギルドに近接で挑んじゃダメだよな~。

「こ、こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」

「それはこっちのセリフだよ」

 フェリアン様がため息をついて縛り上げられて何か言ってる司祭に詰め寄る。

「この場にいるすべてのものを断罪してやる」

「それは凄い。教会には王族よりも力を持っているものがいるのか?」

「何をいって……。ってあなた様はまさか……」

「ほ~、私の顔を見たことがあるのか?」

 司祭はフェリアン様に悪態をつこうと顔を向けた。だけど、彼の言葉を聞いて顔を歪めていく。

「フェリアン様!?」

「ふぇ、フェリアン様!?」

 一人の司祭が気が付くとみんな顔を青ざめさせる。

「さて、誰を断罪するんだったか?」

「あ、いえそんなことは誰も」

「それなら不敬罪で死刑でいいかな?」

 フェリアン様の言葉に更に顔を青くさせる。

「それは流石にやりすぎです」

「そ、そうかい?」

「はい! この人達も上の人達に言われてきただけだと思います。きっといい人なんですよ」

 フェリアン様に詰め寄るリファ。冗談のつもりだったフェリアン様はリファの言葉にタジタジになっていく。

「早く皆さんも解いてあげてください」

「せ、聖女様だ……」

「みんなを回復させますね」

 リファはみんなに縄を解かせてニッコリと笑う。司祭たちは口々に聖女と呟いてギルドを後にした。
 回復魔法も使ってあげるなんて本当に聖女なんじゃないかな?

「リファはほんとにいい子だね」

「ううん。私は本当にみんなを治してあげたいだけなの。だって、私も病弱で体が痛いときの苦しみを知ってる。そんな思いを誰かにして欲しくないもの」

 ルリがリファの頭を撫でて褒めるとリファは顔を赤くして話した。その言葉を聞いてみんな頬を緩ませる。
 いい子ってなんでこんなにほっこりするんだろうか。

「彼女も守らなくても強い子だったか」

「はい。強いですよ。たぶんあなたよりも」

「そうか……。さて、僕はそろそろ帰るよ。教会の連中がまた何かやってきたら言ってくれよ。それと、彼女も僕の部下だからね。頼ってくれ」

「彼女?」

 フェリアン様はそういってギルドを後にした。
 彼女と言った時に視線を移した先に外套を目深にかぶった女性が立っていた。その人は前にアライア男爵のことを教えてくれた人だ。ウインクして反応する彼女。うむ、あの時から目はつけられてたってことかな?

「さて、僕らも孤児院にもどろうか?」

「うん!」

「ルファー、リファ。帰る時間くらいになったら迎えに来るね」

「「はい」」

 ルリと一緒に孤児院へ帰る。
 まだまだ仕事のある二人にはここにいてもらうわけだけど、心配だから迎えにこよう。また何かしてきたら、二人が傷つくことがあったら。手加減はしない。

「フィル? 大丈夫?」

「ん、何が?」

「怖い顔になってたから」

 二人が傷ついた想像をしてしまって顔が怖くなっちゃってたみたいだ。ルリに心配させてしまった。
 ルリの頭を撫でる。

「ごめんねルリ」

「なんで謝るの」

「いや、うん、そうだよね。なんでだろう」

 これからするかもしれないことを思ってついつい謝罪を告げてしまった。
 ルリやルファーとリファ、それに子供達。そのすべてが僕の守るものになった。
 その一つでも、何かあったら僕は……あの時みたいに。

「フィル、今度は私が守る。フィルよりも早くみんなをね」

「ルリ?」

「だから悲しい顔しないで」

 ルリがガッツポーズをして励ましてくれる。
 彼女なら確かにそれができる。僕の次にレベルが高いからね。
 
「ルリは読み書きを頑張ろうね」

「フィル! 私は真面目に」

「はは、わかってるよ。ありがとうルリ」

「本当に分かってるの?」

 照れ隠しで冗談を言うとルリがムキになってしまった。頬を膨らませて怒るルリ。頭を撫でてお礼を言うと顔を真っ赤にしてしまう。
 
「フィルは分かってないと思うから言うけどね」

「ん?」

「みんなも私と同じ気持ちだよ。フィルを守りたいの」

 ルリは少し早足になって呟く。

「ルファーもリファも……ベルルさん達も」

「僕は強いよ?」

「強さとか関係ないよ。ただ守りたいだけ……み、みんなフィルが好きだから」

 みんなそう思ってくれてるのかな? ルリがそう思っているだけじゃないのかな。でも、彼女の言っていることが本当なら嬉しいな。

「わ、私が一番好きだけどね……」

「ん? 何か言った?」

「な、何でもない! 早く帰ろ」

「う、うん」

 ルリが何かつぶやいたと思ったんだけどな。勘違いだったみたいだ。
 それにしてもルリは毎回顔が真っ赤になるな~。今なんてトマトよりも赤い気がするよ。
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