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第一章 

第14話 大精霊

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 ゴブリンに気づかれて急な戦闘に持ち込まれた。僕とルリは素手での戦闘だけど、魔法があるからある程度行ける。
 
「マナよ。我が敵を撃て【ファイアバレット】」

「マナよ。わ、我が敵を撃て【ホーリーバレット】」

 みんなの後ろからルリと一緒に魔法を放つ。
 炎と光の弾がゴブリンの胴体を貫く。初めて撃った魔法だけど、結構魔物を追尾してくれるから容易に当たった。

「お~。フィル君達は優秀だ~。じゃあ、そろそろ! ワッタ~」

「はいよ! こっちだゴブリン共!」

 イレレイさんとワッタさんが声をあげるとゴブリン達が慌ててワッタさんに視線を移して攻撃しようとし始めた。注目させたことでゴブリン達が集まってるのかな。スキルのような技があるのかもしれない。

「はい! はい! はい~っと」

 ワッタさんに群がったゴブリンにイレレイさんが矢を射る。一瞬で三体のゴブリンの額に矢が刺さって絶命してる。
 
「イレレイ調子いいな。おいらも! はっ!」

 ワッタさんに集まっていくゴブリンを横なぎに蹴散らす。大きな斧を片手で扱うあたりワッタさんが力持ちなのが分かる。

「ん、面倒。炎の精霊イフリート。矮小な私に力を貸して【ファイアウォール】」

 ベルルさんが詠唱を開始して唱え終わるとゴブリン達の足元から炎の柱が現れた。
 炎の柱がゴブリン達を燃やし尽くしてすぐに消えていく。

「ふぅ……長く魔法をだしてるとMPがすぐになくなっちゃうから」

 言い訳のように呟くベルルさん。
 なるほど、今の魔法はずっと出すことも出来るのか。とりあえず、詠唱は覚えたぞ。

「あっ。何かやばい雰囲気だよ」

「今の炎でゴブリン達が全員気づいたっぽいんだな」

 イレレイさんとワッタさんが冷や汗をかきながら声をあげた。ゴブリンの足音が強くなって少しするとゴブリンが大量にやってきた。まるでゴブリンの壁だ。

「おいらを置いて逃げて!」

「は~、何言ってるのワッタ。こんなの数だけよ。勝てるって」

「おいらは馬鹿だけどやばいのは分かるよ。気にせずに逃げて」

 ワッタさんが顔を青ざめて撤退を提示してくる。それもワッタさんを置いて逃げるという選択肢、イレレイさんは断ってゴブリンの壁に矢を射って言い放った。
 
「ん、諦めないで。もう一回ファイアウォールを使うから」

「ダメだ。ファイアウォールは三回までって言ってただろ。後で使う時がくるはず。フィル君達を失うわけにはいかない。早く逃げるんだ」

 ベルルさんの提案にワッタさんが真剣な表情で言い放つ。

「ベルルさん、ワッタさん」

「ん?」

「フィル君気にしないで今は逃げるんだ」

「違います。僕がファイアウォールを使います」

「え? 無理だよフィル」

 僕がみんなの前に立ってゴブリンに向かって手をかざす。ワッタさんが泣きそうな顔で話す。ベルルさんは無理だって言ったけど、レベルも上がっている。使えないわけがない。

「炎の精霊イフリート」

「!?」

 詠唱を開始すると僕の体から赤い炎が舞い上がる。

「僕に力を貸して!」

『強きものよ。我が名をもう一度言うがいい』

「!? い【イフリート】」

「「「「!?」」」」

 詠唱を続けていると変な声が聞こえてきた。思わず魔法名を言わずにイフリートと言うとかざしていた手から炎が人に似た形をかたちどっていく。

「ハ~ッハッハッハ。久しぶりの人間界だ。力を解放するぞ~」

 炎が人の形をかたちどってしゃべりだす。明らかに人ではないそれが僕を振り返る。

「小さきマスターよ。ゴブリン共を蹴散らせばいいかな?」

「え、えっと……」

「おっと、俺の名はイフリートだ。これでも大精霊の一柱よ! 今後ともよろしく」

「よ、よろしくお願いします」

 自己紹介をしてくれるイフリート。畏まってお辞儀をするとガハハと笑って『そんなに畏まるなマスター』と言ってゴブリンに視線を移した。

「さ~ってゴブリン共。あ~あ~、こんなに増えちまって、間引きがサボりやがったな~。まあいい、久しぶりに大暴れだ!」

 ゴゴゴゴと音を立てるイフリート。両手を天に向けて掲げると炎が集まっていって大きな球になっていく。球はかなりの大きさでゴブリン達が逃げだすくらいだ。

「ハッハッハ。今更逃げても無駄だ。この炎を見た魔物は絶対に死ぬ。そういう魔法だ」

 ジュ! そんな音を出してゴブリン達に無数の白い線が舞い降りる。
 イフリートが集めた炎から無数の線が伸びる、それが鞭のようにゴブリン達に伸びて胴体を貫いていく。
 驚きなことにすべてのゴブリンを焼け切って蹴散らしてる。

「ガハハ、これでおしまいだな。スッキリもした。では、また呼んでくれ魔力強きマスター」

「あっ、はい……」

 炎の精霊イフリートは満足げな声をあげて消えていった。魔力強きマスター? 僕の事だよね……。

「驚き……。驚きだよフィル君!」

「おいら初めて見た」

 イレレイさんとワッタさんが僕に抱き着いて来て声をあげる。僕も驚いてるからそりゃ驚くよね。

「……。フィルは大精霊に目をつけられたってことかな……。正直羨ましい」

「ベルルさん?」

「大精霊は魔力、MNDやINTの高い人を見つけると声をかけてくる。イフリートに力を借りる中魔法や大魔法なんかが使えるってこと……、おめでとうフィル」

 少し寂しそうに話すベルルさん。どうやら、大精霊達は常日頃から人間を観察してるみたいだ。
 精霊から力を借りて魔法を放つ僕ら人間は気にいられると召喚みたいに使役して戦うことが出来るみたいだ。

「でも、おかしい……レベルいくつなの?」

「……」

 ベルルさんが疑問を口にする。僕は無言で俯く。
 実はルファー達をパーティーにいれてからもレベルアップの音声が何回も流れてきてた。そのたびにステータスが上がっていたんだけど、僕のスキルだと思われるパーティーっていうシステムは、仲間が増えれば増えるほど僕の経験値が増える仕様になっていたみたいなんだ。
 なので、僕だけレベルやステータスはこんな感じになってしまった。

名前 フィル 
 
 レベル 85

 HP 2060
 MP 2000
 
 STR 220
 DEF 220
 DEX 217
 AGI 225
 INT 202
 MND 202

 パーティーリーダー  【ラフィーリア】
 メンバー       【フィル】
      【ルリ】
      【ルファー】
      【リファ】

【パーティーメンバーが五人を超えたので経験値が上がります】

 パーティーメンバーが増えると特典が増える。会員を増やしたらプレゼントがもらえる的な僕のチート。ますますラフィーリアさんに悪い気がする。
 この世界の最高レベルの人って70台って言われてるんだ。それを軽々超えて85レベル。もしかするとこの世界の最高レベルになってしまったかもしれない。元孤児の七歳が最高レベル……全世界のみなさん。すいません。
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