上 下
10 / 55
第一章 

第10話 新たな仲間

しおりを挟む
「なんで僕らが?」

「わ、私は何もできないのに?」

 二人とも可愛らしく目をまんまるにして首を傾げている。急な提案で困惑してるみたいだな。

「とにかく、回復しよう。この者を癒したまえ【ヒール】」

「「!?」」

 リファに回復魔法をかける。見た目はそれほど変わらないけど、リファは顔を緩ませてルファーを見つめた。

「お兄ちゃん! 足が動く!」

「リファ! これは回復魔法? でも、教会の司祭は治らないって」

 司祭に治らないって言われた話は聞いたことがある。孤児の時にたまたま耳にしたんだけど、普通の回復魔法じゃ治らなくて、大司祭級の魔法力、INTじゃないと治らないとか。
 司祭の人の中には親切な人もいて、ルファーに教えていたんだよな。

「きみ……あなたは大司祭?」

「ううん。この間まで二人と同じ孤児だったっていったでしょ」

「で、でも、これは……」

 ルファーは回復魔法に驚きすぎて困ってる。

「もう決めたんだ。二人ならルリと同じように私利私欲には使わないと思ったんだよ」

「「使う?」

 ルリと一緒に頷いて伝える。ルファー達はまたもや首を傾げてる。

「うん。力をね」

 首を傾げていた二人に伝えると、

「孤児から君たちみたいに這い上がれる?」

 ルファーは目を輝かせて僕を見上げる。

「うん。すぐに僕らみたいな力が手に入るよ」

 僕の言葉で二人は顔を見合って笑顔になっていく。

「お兄ちゃん! 私!」

「ああ、僕も同じだよ!」

「「仲間にしてほしい!」」

 二人は前のめりになって言ってくる。僕らは大きく頷いて、手を伸ばした。

「拳を作って」

「こう?」

「うん。それで大丈夫。では~」

 二人に拳を作らせてラフィーリアさんと同じことをする。

「ごつん、ごつん。これで僕らはパーティだよ」

「「?」」

「これで強くなったんですか?」

 謎の行動にしか思えないからリファが疑問をぶつけてきた。

「少しすればたぶん、声が聞こえてくるはずだよ」

「「声?」」

 疑問に答えて、二人が顔を見合ってると声が聞こえてきた。

『レベルが上がりました』

「「わっ!」きゃ!」

「どう?」

「レベルが上がりましたって……」

「何もしてないのに……」

 レベルアップで驚く二人は顔を見合って目をまんまるにしてる。それぞれ声をあげるとステータスを見始めた。レベルアップと同時に目の前に広がるから驚くよな~。
 朝からラフィーリアさんは魔物を狩ってるみたいだ。グランドマスターって大変なんだな~。

「ほ、本当に上がってる」

「う、うん。25まで上がってるよお兄ちゃん」

 二人は驚きながらもステータスを眺めていく。ルファーはSTRが多めでリファはMNDが多めらしい。

「二人はこの後もレベルアップし続ける。もちろん僕らもね」

 ニコッと笑うと二人は顔を見合ってぎこちない笑みを浮かべた。

「体が軽い……」

「ステータスが上がったからだよ。じゃあルリ。二人を散髪屋さんと服屋さんに連れて行こう」

「うん!」

 病弱だったリファは体が軽すぎて驚いてる。
 二人を伴って出店のある市場へ。

「リファ、こっちもいいと思うよ」

「ルリはこっちがいいと思う」

 リファとルリが仲良く服を選ぶ。煤けていた白髪から綺麗な白髪になったリファと緑髪のルリがとっても可愛くなっていく。

「ルファーはいいの?」

「うん。僕はいいんだ。リファの元気な姿が見れただけでも十分さ」

 彼女達をみているとルファーが微笑んでた。服を一着買っただけでルファーは他のものを買わないみたい。勧めてみたんだけど首を横に振ってる。

「あっ」

「ん?」

 ルファーが何かに気づいて声をあげる。視線の先を見ると孤児の子供がゴミを漁っている姿が見えた。

「……フィル様が手を差し伸べてくれなかったら今頃あそこにいたのは僕だった」

「様はやめてよルファー。同い年なんだから呼び捨てでいいよ」

「君は優しいから。こうしないと勘違いしちゃう。でも君がそういうなら呼び捨てにするよ。本当にありがとう」

 僕の手を取ってお礼を言ってくるルファー。うるんだ瞳が彼をさらにイケメンにする。うらやましい。

「まだまだこれからだよ。あの路地の子供を全部救うんだ」

「全部……」

「うん」

「ど、どうやって?」

「それは二人の買い物を終えてから二人に話すよ」

「フィル~。ルファー。二人も選んで~」

「はいはい。行こうルファー」

「うん」

 ルリとリファに呼ばれて四人で服選びが始まった。女の子の買い物は長いって前世で聞いていたけど本当に長かった。
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...