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第一章 

第5話 見学?

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「はい、どうぞ~」

 案内されて二階の一室に通される。ギルドにはグランドマスターのための部屋が一室設けられるらしい。
 通常は倉庫として使う様に言われているらしい。グランドマスターはラフィーリアさんしかいないので彼女の意向が反映されているらしいよ。
 本当に彼女は優しいというかなんというか。出来る女性って感じだな~。

「いい匂いがする」

 部屋の中に入るとバラのような匂いが鼻腔をくすぐる。思わず口に出してしまうとオリーブさんにクスッと笑われてルリにはジトーっと睨まれた。

「昨日までラフィーリアさんが使っていましたからね。この中にあるものは何でも使っていいそうなので自由に使用してくださいね」

「え!?」

「あなたがどんな子なのか。私達はまだ半信半疑だけど、ラフィーリアさんは信頼してる。彼女が信じるあなたを私達ギルド職員は信頼してるってこと。決して裏切らないでね」

 そういうとオリーブさんは僕らを置いて部屋の外へと出ていった。
 この部屋の中の物を何でも使える……。壁に飾ってある剣とか盾とか弓も?

「フィル。いいのかな?」

「う、ん~。出来るだけこの部屋のものは使わないようにしていこう。これも僕らを試しているのかもしれない」

「た、試す?」

「うん」

 なんでも使っていいなんて流石におかしい。ギルド職員たちは内心僕らを疑っているはずだ。オリーブさんを疑うのは心苦しいけど、警戒して損はない。なるべく使わないようにしていこう。
 最初から部屋だって宿屋を借りようと思っていたくらいだからそれだけでお金が浮いてありがたいんだから、我慢できる。

「広い部屋だね~……、あれ? お手紙があるよフィル」

「手紙?」

 ルリが部屋を回っていると机の上にある手紙に気が付いて声をあげる。
 机を見ると手紙と革の袋が置いてあった。

「革の袋かな?」

「うん~。とりあえず手紙を読んでみるかな」

 手紙を開いて中身を見ると、差出人が分かった。

「やっぱりラフィーリアさんだ」

 思った通り、手紙は彼女からだった。
 
『この手紙を読んでいるってことはちゃんとギルドに来たってことね。オリーブにはよくするように言ってあるから彼女のおかげかしら?』

 楽しそうに手紙をかくラフィーリアさんの姿が目に浮かぶ。僕がここに来ることを予想していたってことかな。

『あなたのような綺麗な心の持ち主を探して私はいろんな町のギルドを回ってる。あなたのような子を支援して同じような子がみんなを率いてくれたらいいなって思っているの。そうすれば綺麗な世界になれるから』

 彼女は凄い重いものを背負ってる。世界を綺麗にしたいっていう一人じゃ背負えない使命だ。

『部屋のものはなんでも自由に使っていいわ。あなたなら使わないなんて言うだろうけどね』

「ふふ、フィルのことよくわかってるね」

「ははは……」

 今さっきルリと話していたことが書いてある。なんだか行動を読まれているようで恥ずかしいな。

『使う使わないは自由だけど、これだけは受け取ってほしいわ。手紙の横にあった革の袋よ。それはマジックバッグと言ってどんな大きなものでも自由に出し入れできるの。袋の縁に触れさせるだけで勝手に中に入るわ』

「マジックバッグ……」

 前世のゲームやアニメなんかで見たアイテム、マジックバッグ。それも無限に入るマジックバッグっぽいぞ。

「ルリ。試してみて」

「う、うん……。!?」

 ルリがマジックバッグで向かい合わせに配置されていたソファーに触れる。ソファーが吸い込まれるようにしてマジックバッグに入って行った。
 驚いたルリと顔を見合う。

「凄いよフィル!」

「これがあれば掃除も楽にできるしゆくゆくは外で狩りをするからその時も魔物を入れられる」

 ラフィーリアさんはなんてものを置いていってくれたんだろう。だけど、それだけ僕に期待してくれているってことだよな。頑張らないと。

「ルリ! これから頑張っていこう!」

「うん!」

 とりあえず、時間もあるし再度依頼を受けていこうかな。
 そう思って外に出ようとすると外が騒がしくなっていることに気づいた。
 扉を開くとがやがやと冒険者達が騒ぎ出してる。何かあったんだろうか?

「魔物の群れだぞ! 稼ぎ時だ~!」

「パーティー組める奴はいねえか? 十人一組で行こうぜ」

「早いもん勝ちだ」

 群れ? もしかしてスタンピードってやつかな?
 多くなりすぎた魔物が群れとなって町なんかを襲うやつだ。

「オリーブさん」

「あら、フィル君」

 忙しそうに手続きをしているオリーブさんに声をかける。するとオリーブさんが数枚の銅貨を手渡してくる。

「さっき渡すのを忘れていたわ。城門前の掃除の依頼の報奨金よ」

「ありがとうございます」

 お礼を言うとニコッと微笑んでくれるオリーブさん。

「これはなんの騒ぎなんですか?」

 ある程度声でわかっていたけど改めてオリーブさんに質問した。

「魔物の群れが発生したみたいなのよ」

 思っていた通り魔物が街に押し寄せてきたみたい。

「あなた達にはまだ関係ないものよ。魔物のランクが低いから一種のお祭りみたいな感じになってるわ」

 オリーブさんがクスっと笑って話す。結構軽い感じなんだな~。

「そうなんですね。じゃあ、見学みたいなのは出来ないでしょうか?」

「見学?」

「はい」

 魔物と戦うなんて急には出来ない。できればみておきたい。

「ん~。やっぱりラフィーリアさんの見る目は違うみたいね」

「え?」

「そんなことをいう冒険者なんてみたことないもの。子供とは思えない発想が凄いわ」

「は、はぁ?」

 前世の世界じゃ魔物狩りなんてやったことないから見学がしたいと思っただけなんだけど凄い褒められた。
 頭を撫でてくるオリーブさんがすっごい満面の笑みだ。

「そうよね。見学をすれば初めての依頼で命を落とす冒険者も少なくなるわよね。これは少し上と話したほうがいいかもしれないわ」

 オリーブさんは一人でぶつぶつと呟きだした。

「あの、それで見学は?」

「あっ、ごめんなさいね。いいわよ。信頼してる冒険者にお願いして聞いてみるわ」

「お願いします」

 ルリと一緒にお辞儀をしてお願いする。オリーブさんは微笑んで一組のパーティーを指さした。

「あのパーティーは評判がいいわ。ちょっと聞いて見ましょ」

 青い短髪の男性がリーダーっぽいパーティー、一目見てわかるほどの雰囲気の良さ。あの人たちなら安心できそうだ。

「ちょっといいかしらジムさん」

「はい? オリーブさん? 何か御用ですか?」

 優しそうな青年、ジムさんはオリーブさんに声をかけられて首を傾げた。

「ちょっと新しい取り組みをしようと思っているんだけど、もちろん褒賞金もギルドが出すわ」

「えっ! 本当ですか? でも、僕らで大丈夫なんでしょうか?」

「Cランクのあなた達なら大丈夫よ。どう?」

 オリーブさんの言葉にジムさんはパーティーメンバーと顔を見合って頷いた。

「やってみます」

「ふふ、そんなに力まなくて大丈夫よ。ただの見学者を同行してほしいってことだけだから」

「え?」

 ジムさん達はオリーブさんの後ろに立っていた僕らを見て体を硬直させた。
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