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第一章
第1話 フィル、運命の出会い
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「お腹空いた……」
孤児として生まれた僕の名はフィル、7歳。
毎日王都ゲルグガルドの路地でゴミとして捨てられている食べ物を見つけて生き抜いてる。
今日は運が悪くて食べ物が落ちていない。このままじゃ死んじゃう。
「前世の世界が懐かしいな~……」
ゴミ箱を漁りながら思い出す。は~発酵と腐敗は人間に害があるかないかって聞いたけど、食べられれば発酵ですよね?
腐りかけの肉やカビの生えたパンを毎日食べているけど生きているから発酵だよね、だよね~。
とそんな現実逃避をしていても仕方ない、食べ物を探さないと。
「今日は本当に何もない……市場のある方に行かないとダメかな」
店がまばらにある大通りの路地だけど、店の休みが重なるとゴミが出ない。そうなると毎日店を出してる市場の方に行かないといけない。
いくのはそれほど大変じゃないんだけど、市場の人達は気性が荒くて。
「ちぃ! ネズミ共が!」
「痛い! やめて!」
僕ら孤児のことをネズミって言って蔑み、暴力を振るってくる。
孤児の中には盗みをする人がいるから嫌うのは仕方ないけど、みんながみんな盗みをしているわけじゃない。今木の棒で叩かれている女の子もやっていない子だ。ゴミとして捨ててあるものを漁っていた時に襲われたみたいだ。見ていられない。
「えい!」
「クソガキ!」
「逃げて」
「!?」
太ったおじさんに体当たりをして女の子を逃がす。女の子は僕の事を気にして振り返っていたけど何とか逃げてくれた。
「この野郎!」
「か、か弱い子供にあんなに暴力振るうのはどうかと思うよ」
「ね、ネズミのくせに!」
「!?」
おじさんは木の棒を振り上げた。振り下ろされてくる木の棒、僕は怖くて目を瞑ってしまう。何度か叩かれたことがあるけど、すっごくいたいんだ。怖いに決まってる。
「おじさん」
「!? なにしやが……る」
振り下ろされていた木の棒が鞘に収まった剣で止められた。
剣の持ち主を見ると赤い長い髪の女性が立っていた。
「なんだおめえ?」
「私は冒険者のラフィーリア。孤児は好きで孤児になったわけじゃないわ。盗みはダメだけどこの子はしていないだろ? 殴ってはいけない。盗まれたものは私が金を出す。それでいいだろ?」
「!? ま、まあ、俺は金さえ入れば」
ラフィーリアさんは腰の袋から金貨を一枚出しておじさんに握らせる。おじさんは相手が美人でもありお金も入るからニンマリして店に戻っていった。
「……」
ラフィーリアさんは僕に近づいてきて剣を振り上げてきた。
僕は殴られるとおもって目を瞑る。
ポフンと頭に当たった剣。風を纏っていて全然痛くなかった。
「この世界は厳しい。だけど君のような無鉄砲な子がいる限りは綺麗でいられる。あの子の為に前に出た君はとても綺麗だったよありがとう」
ラフィーリアさんがそういって視線を路地に向けた。路地からこわごわ顔だけを出している女の子が見えた。心配してみていてくれたみたい。よかった無事で。
「ふふ、本当に綺麗な子だねあなたは。私には一時的な支援しかできないけれど、これをあなたにあげるわ」
一枚の金貨を僕に握らせる。あんな剣を持っているのにとても柔らかい手。この世界に生まれてから初めて感じた優しい人。
「も、もらえません」
「そう? じゃあ捨てちゃおうかしら?」
「ダメ!」
「じゃあ。もらってね」
いたずらっ子がいたずらが成功した時のようにニコッと笑うラフィーリアさん。こんなに金貨をポンポン渡せるということはお金持ちなんだろうな。
綺麗な赤い鎧を着てるからわかっていたけどね。
「冒険者ギルドで孤児にも仕事を斡旋してるわ。働かざる者食うべからず。今度からは働いて食べていきなさい」
「は、はい」
「よろしい! じゃあ拳出して」
「え?」
ラフィーリアさんが拳を握って前に出した。言われた通り彼女と同じポーズをとる。
「ごつん。はい! これで私とあなたは同じパーティー、仲間よ。何かやられたらギルドで私の名を出しなさい。すぐに受付の子が駆け付けるから」
拳を当ててきてにっこりと微笑む。子供っぽい表情のラフィーリアさん。思わず僕は見入ってしまった。
「じゃあ。私は依頼に外へ行くから。頑張るのよ」
「あ、ありがとうございました……」
長い髪をなびかせて外壁の門へと歩いていく。とても綺麗で出店のおじさんたちが思わず目で追ってしまってる。
「そうか……冒険者ギルドがあるのか~」
この世界が中世ヨーロッパで異世界だということを忘れていた。ラフィーリアさんが僕を剣で叩いた時に感じた風は魔法だったんだよな。それからわかるようにこの世界では魔法が存在する。孤児にはエルフや獣人もいるから異世界だとは思っていたけど本当に魔法もあるとは。
「だ、大丈夫?」
ラフィーリアさんを目で追っていると助けた女の子が声をかけてきた。
見た感じ同い年っぽいけど、よく見ると耳が長い。エルフの子だったみたいだ。
髪を切ることもできないからボサ髪が伸びっぱなしで耳がよく見えなかったな。
「うん。何とかね。一緒に服とか買おう。髪も綺麗にしないとね」
「い、いいの?」
「うん。ラフィーリアさんからもらったこれは僕と君のためのものだから」
ニッコリと微笑んで言うともじもじと手遊びして顔を赤くする女の子。
「わ、私ルリ。あなたは?」
「ああ、僕の名前はフィルだよ」
名を名乗ってルリの手を取り歩き出す。
孤児として生まれた僕の名はフィル、7歳。
毎日王都ゲルグガルドの路地でゴミとして捨てられている食べ物を見つけて生き抜いてる。
今日は運が悪くて食べ物が落ちていない。このままじゃ死んじゃう。
「前世の世界が懐かしいな~……」
ゴミ箱を漁りながら思い出す。は~発酵と腐敗は人間に害があるかないかって聞いたけど、食べられれば発酵ですよね?
腐りかけの肉やカビの生えたパンを毎日食べているけど生きているから発酵だよね、だよね~。
とそんな現実逃避をしていても仕方ない、食べ物を探さないと。
「今日は本当に何もない……市場のある方に行かないとダメかな」
店がまばらにある大通りの路地だけど、店の休みが重なるとゴミが出ない。そうなると毎日店を出してる市場の方に行かないといけない。
いくのはそれほど大変じゃないんだけど、市場の人達は気性が荒くて。
「ちぃ! ネズミ共が!」
「痛い! やめて!」
僕ら孤児のことをネズミって言って蔑み、暴力を振るってくる。
孤児の中には盗みをする人がいるから嫌うのは仕方ないけど、みんながみんな盗みをしているわけじゃない。今木の棒で叩かれている女の子もやっていない子だ。ゴミとして捨ててあるものを漁っていた時に襲われたみたいだ。見ていられない。
「えい!」
「クソガキ!」
「逃げて」
「!?」
太ったおじさんに体当たりをして女の子を逃がす。女の子は僕の事を気にして振り返っていたけど何とか逃げてくれた。
「この野郎!」
「か、か弱い子供にあんなに暴力振るうのはどうかと思うよ」
「ね、ネズミのくせに!」
「!?」
おじさんは木の棒を振り上げた。振り下ろされてくる木の棒、僕は怖くて目を瞑ってしまう。何度か叩かれたことがあるけど、すっごくいたいんだ。怖いに決まってる。
「おじさん」
「!? なにしやが……る」
振り下ろされていた木の棒が鞘に収まった剣で止められた。
剣の持ち主を見ると赤い長い髪の女性が立っていた。
「なんだおめえ?」
「私は冒険者のラフィーリア。孤児は好きで孤児になったわけじゃないわ。盗みはダメだけどこの子はしていないだろ? 殴ってはいけない。盗まれたものは私が金を出す。それでいいだろ?」
「!? ま、まあ、俺は金さえ入れば」
ラフィーリアさんは腰の袋から金貨を一枚出しておじさんに握らせる。おじさんは相手が美人でもありお金も入るからニンマリして店に戻っていった。
「……」
ラフィーリアさんは僕に近づいてきて剣を振り上げてきた。
僕は殴られるとおもって目を瞑る。
ポフンと頭に当たった剣。風を纏っていて全然痛くなかった。
「この世界は厳しい。だけど君のような無鉄砲な子がいる限りは綺麗でいられる。あの子の為に前に出た君はとても綺麗だったよありがとう」
ラフィーリアさんがそういって視線を路地に向けた。路地からこわごわ顔だけを出している女の子が見えた。心配してみていてくれたみたい。よかった無事で。
「ふふ、本当に綺麗な子だねあなたは。私には一時的な支援しかできないけれど、これをあなたにあげるわ」
一枚の金貨を僕に握らせる。あんな剣を持っているのにとても柔らかい手。この世界に生まれてから初めて感じた優しい人。
「も、もらえません」
「そう? じゃあ捨てちゃおうかしら?」
「ダメ!」
「じゃあ。もらってね」
いたずらっ子がいたずらが成功した時のようにニコッと笑うラフィーリアさん。こんなに金貨をポンポン渡せるということはお金持ちなんだろうな。
綺麗な赤い鎧を着てるからわかっていたけどね。
「冒険者ギルドで孤児にも仕事を斡旋してるわ。働かざる者食うべからず。今度からは働いて食べていきなさい」
「は、はい」
「よろしい! じゃあ拳出して」
「え?」
ラフィーリアさんが拳を握って前に出した。言われた通り彼女と同じポーズをとる。
「ごつん。はい! これで私とあなたは同じパーティー、仲間よ。何かやられたらギルドで私の名を出しなさい。すぐに受付の子が駆け付けるから」
拳を当ててきてにっこりと微笑む。子供っぽい表情のラフィーリアさん。思わず僕は見入ってしまった。
「じゃあ。私は依頼に外へ行くから。頑張るのよ」
「あ、ありがとうございました……」
長い髪をなびかせて外壁の門へと歩いていく。とても綺麗で出店のおじさんたちが思わず目で追ってしまってる。
「そうか……冒険者ギルドがあるのか~」
この世界が中世ヨーロッパで異世界だということを忘れていた。ラフィーリアさんが僕を剣で叩いた時に感じた風は魔法だったんだよな。それからわかるようにこの世界では魔法が存在する。孤児にはエルフや獣人もいるから異世界だとは思っていたけど本当に魔法もあるとは。
「だ、大丈夫?」
ラフィーリアさんを目で追っていると助けた女の子が声をかけてきた。
見た感じ同い年っぽいけど、よく見ると耳が長い。エルフの子だったみたいだ。
髪を切ることもできないからボサ髪が伸びっぱなしで耳がよく見えなかったな。
「うん。何とかね。一緒に服とか買おう。髪も綺麗にしないとね」
「い、いいの?」
「うん。ラフィーリアさんからもらったこれは僕と君のためのものだから」
ニッコリと微笑んで言うともじもじと手遊びして顔を赤くする女の子。
「わ、私ルリ。あなたは?」
「ああ、僕の名前はフィルだよ」
名を名乗ってルリの手を取り歩き出す。
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