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第2章 国

第46話 とにかくダンジョン

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「ん? ああ、寝ちゃってたか……」

 泣いてしまうのを誤魔化す為に寝たふりをしていたら本当に眠ってしまったようだ。

「みんなはまだ寝てるか」

 体に違和感を感じて周りを見ると、アイリとリックが抱き着いてきていた。二人とも同じ方向にいたはずなんだけど、俺を挟む形になっているよ。

「ん、ん……、おはようございますヒフミ様」

「あ、ああおはよう……」

 マイルが起きて少し体を起こして挨拶した。
 服が少し着崩れしているので少し目が泳ぐ。

「ふふ、アイリもリックもヒフミ様が大好きなんですね」

「ははは、何だか気恥ずかしいな」

 抱き着かれている様子を見てマイルがクスクスと笑って話した。
 恥ずかしくなって頭を掻く。童貞で父親になってしまった気分だ。

「いいな……」

「ん? 今何か言いました?」

「いえ、何でもないです」

「そう?」

 何か言ったように聞こえたんだけどな。

「アイリ~、リック~起きて」

「「むにゃ……おはようございます」」

「「おはよ~」」

 眠そうに目をこする二人。二人を見ていると時間がゆっくりと進んでいるような感覚になる。幸せってこんな感じなのかな?

「食事に行きましょうか」

「ああ」

 身支度をして、一階の食堂に向かう。
 一階に降りると宿屋のリヴェさんとワースさんはせかせかと働いている。宿屋の朝は早いんだな

『おはようございます』

「「おはようございます」」

 みんなで挨拶をすると元気に返してくれた。忙しいのに笑顔で返してくれてるよ。

「皆さんもお食事ですか?」

「はい、お願いします」

「分かりました。では空いている席にどうぞ」

 別の宿泊客も多く食堂にいた。空いている席に座って待っていると料理が運ばれてきた。食べるものは選べないみたいで日替わりの朝食が置かれていく。

「今日は羊の肉が手に入ったので薄く切って焼いてみました。パンに挟んで食べてください。フルーツもありますけど、どうされますか?」

「じゃあ、それも」

「はい」

 焼かれた羊の肉が食欲をそそる。結構、朝からヘビーは香りだけど、嫌いじゃないんだよな。マイル達もこういった重めの食事が好きで俺達の街でも朝から肉を食べていた。まあ、フルーツはまだまだ育てられてないからないんだけどね。

「ブドウ美味しい~」

「こっちのリンゴもおいし~」

 リックとアイリがフルーツを先につまんでる。本当は肉よりもフルーツの方が好きなのかな?

「みんなは肉よりもフルーツの方がいい?」

「ううん。お肉の方が好き~」

「僕も肉ですね」

 そうか、よかった。フルーツの方が好きで今まで我慢してると思った。

「マイルは?」

「私はどっちも好きですけど、お肉の方がいいです」

 マイルもお肉好きか。よかったよかった。

 心配事もすんで食事を済ませていく。熱い肉ばっかり食べて来たけど、ハムのような薄い肉をおいしいな。パンも白いパンだから、柔らかいし、うまいうまい。

「今日はどうするんです?」

「帰るの?」

「う~ん」

 マイルとアイリがこの後の話を聞いてきた。

 ボスのアイテムもそれほどほしいものでもなかったし、冒険者っていうのもめんどくさそうだからな。早めに街に帰っておいた方がいいんだよな。

「もう一日ダンジョン行こうかな~」

 それはそれ、これはこれ。俺も男なのでダンジョンにロマンを感じてしまったんだよな~。それにゲーム好きとしてはクリアしたいんだよな。今日は朝から潜れるし、アイテムバッグもあるから昨日よりはかなり快適に行けるはず。今日中にクリアしてしまうぞ~。

「ふふ、男の子なんですね」

「はは、恥ずかしいな」

 マイルが微笑んで見つめてきた。何だかお母さんみたいな優しい笑みだ。
 考えていることが読まれたようで恥ずかしいな。

「ダンジョン! ダンジョン~」

「アイリ、恥ずかしいよ」

 食事を終えて、ダンジョンへの道を歩いているとアイリが歌いだした。音程は無茶苦茶だけど、楽しそうだ。
 リックがキョロキョロと周りを見渡している。すれ違う人がみんなアイリを見て微笑んでるのが恥ずかしいみたいだな。

「あんた!」

 ダンジョンへ歩いていると後ろから声がかけられた。振り返るとザイバツが立っていた。今日は一人なのかな?

「ヒフミ様行きましょ」

 ザイバツを見るとマイルが手を引っ張って足早で歩き出した。絡まれた事があったから守ってくれるみたいだ……俺がするべきことだよな。

「待ってくれ! 昨日はすまなかった!」

 人目もはばからずにザイバツが地面に額をつけて謝ってきた。いわゆる土下座をしているザイバツ、急な心変わりでびっくりするな。

「言い訳を聞いてくれないか?」

 とにかく、目立ちまくりなので話を聞くことにして、昨日のレストランに向かった。外で話すのも目立つしな。
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