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第2章 国

第23話 ドワーフの集落

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 ガーツの村へと向かうため、道なき道を行く。
 普通の人じゃ、この先にはいかないであろう獣道。草も背が高くなってきて俺たちの身長を超えているし、木も生えてきて視界が悪すぎる。
 馬車で向かおうとも思ったんだが、ガーツに止められた。馬車では入れない道だということだったがこういうことだったんだな。これが終わったらここら辺も伐採して、道を作っていこう。そうだ、ドワーフ達には道路を作ってもらおう。陶器とかもできそうだし、タイルっていうのを教えれば出来そうだ、うんそうしよう。

 ドワーフ達への要求をウキウキしながら考えていると遠くの方から音が聞こえてきた。

「敵が来たぞ~」

「剣君たちは先行してくれ。盾君危ない人を守れ」

『御意!』

 声を聞いてすぐに行動に出る。俺のリビングアイテム達も十分魔物っぽいから間違われて危ないかもしれないけどな。

「すまんヒフミ」

「ん?」

「皆を守ってくれて」

「いやいや、まだお礼を言われる段階じゃないだろ」

「儂も生きていられるかわからんからな」

 まるで死地に向かうかのようなことを言ってくるガーツ。死なせないから心配するなって。

「ヒフミ様、私達も行きます!」

「マイル達は俺から見える位置で行動してくれ」

「え!?」

「君達に何かあったら大変だ」

「え、あ、その……分かりました」

 マイル達に何かあったら大変だ。みんなに顔向けできない。

 マイルは顔を真っ赤にして頷いてくれた。アイリはニヤニヤして見てきているが何かあったのか?

「大丈夫か~」

「おお、ガーツ帰ってきたか。あのリビングウェポンたちはそちらの?」

 ガーツがのそのそと歩み寄ったのがこの集落の長、ダーツという三つ編み髭のドワーフ。自分よりも大きな斧を担いでいて明らかに武闘派って感じだな。

「助かった、あの盾は良いものだな。俺はダーツだ」

「ああ、ヒフミです。こっちはマイルにアイリです」

 お礼を言われたので軽くお辞儀をして、自己紹介をすると頷いて答えた。

「敵の戦力は?」

「ジャイアントボアを先頭に魔法兵と弓兵、本陣には赤い木の旗が見えた。あの盗賊達は兵士だったようだな」

「赤い木の旗?」

「たぶん、レギントス帝国の旗だろう。赤い木の旗は侵略を意味してるんだとよ」

 侵略を御旗に持つ国か……ろくでもないな。

「数はそれほどいないがジャイアントボアでの戦線の押上げを受けたらこんな集落一瞬で終わっちまう。さっきも、あんたんところの剣やら盾やらがいなかったら終わっていたよ。相手はそれにビビッて撤退したようだ。判断は早いな」

 剣君たちはかなり役に立ったみたいだな。

「こちらの戦力は?」

「俺たちゃ鍛冶が本業、戦闘は儂を合わせても片手ほどだ」

 ダーツが片手を前に出して答えた。
 片手って五人って事か? ダメじゃん。

「次に攻めてくるのは夜かもな。剣たちにひるんだって事は警戒しているはずだからな」

「ほ~、そういうもんなのか?」

 朝方か夜ってアニメとか小説で読んだことあるんだよな。今は昼くらいだから夜は警戒しておきたい。

「とにかく、うちの剣君達を配置しておくよ」

「ありがたい! この恩はどうすればいい?」

「その話なんだけど……」

 見返りなしでなんて言っていた手前、恥ずかしいんだけどな。
 ドワーフ達にやってほしいことを話すと二つ返事で肯定してくれた。

「道路を作るんじゃな。ヒフミの町との貿易はこっちに得しかないと思うがいいのか?」

「俺にもできることが限られているんだよ。できればそういうこともやってくれるとありがたい」

「おう、任せろ」

 でっかい剣とか作ってもらって精霊化とか面白そうだな。盗賊達の短剣で俺の作ったもの以外でも出来るということは実証しているからな。そういう物も作ってもらおっと。

 しばらくドワーフの集落を見学させてもらった。
 どうやら、この世界のドワーフは男も女も一緒のずんぐりむっくり。可愛いドワーフはいないみたいだ、褐色美人ドワーフはいないようです、がっかり。

 村の所々にミスリルの道具が放置されていたり、武器屋ではないのに大きな剣が置いてあったりしていて、本当に鍛冶が好きなんだと感じたよ。レギントス帝国の狙いも鍛冶なんだろうな。ということはドワーフ達を無傷で手に入れたいのかもしれないな。

「ヒフミ~。お前の所の剣がジャイアントボアを一匹仕留めたようだ~。歓迎会をするぞ~」

「おいおい、攻められてるのにそんな悠長な」

「あ~? だからこそだろ~。死んでもいいように楽しんでおくんだ。ほれ、嫁さんと娘さんも~」

「あ、はい」「かんげいか~い」

 ガーツが歓迎会をするって言ってきた。さっきまで死地に行くようなことを言っていた人とは思えないな。

 マイルとアイリが引っ張られていったから仕方なく参加することになった。敵がいつ攻めてきてもおかしくないのに、陽気な種族だな。まあ、攻めてきても剣君と今は鉄騎士も配置しているから無理だろうけどな。

 この日の夜、帝国は攻めてこなかった……というよりも攻められていたというのが真相だった。誰に攻められたのかは朝になって分かったよ。
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