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第2章 国

第22話 争い

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『では、早速。上位の人から発表しま~す』

【一位】

 金田一 一

【二位】

 綾崎 姫子

【三位】

 金山 金治


 ホッと胸をなで下ろす。ハジメは死んでいなかった、それだけ確認できれば十分だ。どうせ、俺は最下位なのだから。
 そう思いながらも目が離せなかった。なんせ、元クラスメイトが三人死んでいると思われるからだ。あまり、コミュニケーションを取っていた訳ではないが知っている人が死んだと言われたらそれなりに寂しい気持ちになる。一体だれが死んでしまったんだ?

 最下位 海城 一二三


【終】
 
 相沢 加奈子

 臼井 元気

 鬼舞 瑠衣華


 名前を聞いても顔を思い出せない。名前から察するに女が二人に男が一人か? やはり、異世界は厳しいって事だな。俺も製作スキルの有用性に気付けなかったらスライムで死んでいただろうからな。

『三人のクラスメイトが死んでしまいました。これからも報告するので期待しろよ~。では、引き続き領民確保に勤しんでくれよな~』

 テセリウスの陽気な声を聞いて苛立たしさが込みあがる。クラスメイトが死んだのはテセリウスのせいだ。顔もおぼえていないようなクラスメイトだけど、悔しさのような怒りが込みあがる。

「現状何もできないんだけどな」

 仲間の仇を取りたくても何もできない。ハジメの無事を確認できただけでも良しとしておくかな。

「ヒフミ様。また人が訪ねてきていますけど」

「盗賊?」

「いえ、ドワーフのようです」

 ドワーフ? ドワーフの知り合いはいないんだけどな。

「あんたがあの人形のマスターか?」

 外壁の上から顔をのぞかせてドワーフを見るとドワーフが見上げてそういってきた。そういえば、木のマネキンに人里を探させた時にドワーフの集落をみつけたんだったな。

「少し相談したいことがあるんだが、話せないか?」

「困りごとか?」

「ああ、そうなんだ」

 どうやら、ドワーフは困っている様子。一応、隣人だし、ドワーフと言ったら鍛冶の達人だからな。助けておいて損はないだろう。

「じゃあ、入ってくれ」

「いいのか?」

「話は聞くよ」

 どんな内容かは分からない。相談に乗るか断るかはそのあとだ。

 城門から街に入ってもらって大きな家、俺の家に入ってもらう。リビングのソファーに座ってもらって、向かい合わせで俺も座った。

「簡単に人を中に入れるんだな」

「ああ、襲われたら返り討ちにできるからね」

 隙を見せて襲ってきたら装備している短剣達や、そのら辺に置いてある剣達が襲い掛かる。最強の護衛たちだよ。ドワーフにはまだ言わないでおこう、まだ信頼していないからな。

「俺は見ての通り、ドワーフ、名はガーツだ」

 ガーツが自己紹介をしたので、俺も自己紹介をした。ガーツはそれを聞いて、相談内容を話し始めた。

「俺の村を人間どもが襲ってきたんだ。何とか追い払ったがこちらもかなりやられた。盗賊達は去り際に「覚えてやがれ、ドワーフ共。次は根絶やしだ」って言っていきやがった」

 ドワーフ達も襲撃を受けたみたいだな。ここら辺は盗賊が多いのかもしれないな。

「それで人形のことを思い出して、助けを得られないかやってきたんだ。タダとはいわねえ。どうか、助けてくれ」

 盗賊達の言葉から察するに次があるってことだよな。それも、今度は本気で来るってことだ。ドワーフの次は俺たちの街にも来そうだし、早めに始末しておくか。

「分かった。助けるよ」

「本当か?」

「ああ、それで? ガーツ達は何を出せる?」

「俺達は鍛冶が得意だ。見たところ採掘もしているようだし、それも手伝える。あとはエルフとの懸け橋にもなれるぞ。あいつらは魔石の加工が得意だから重宝するはずだ」

 ほ~、ファンタジーの住人なだけあってエルフとも仲がいいのか。
 ん? まてよ。

「エルフに助けを求めなかったのか?」

「!? ……」

 ……なるほどなるほど。

「あいつら、俺たちを見捨てたんだ。勘違いしないでくれよ。俺たちは何もしてない。ただ、エルフ達は争いが嫌いだからな。それで手を貸してくれないんだ。争いが収まるまでは出てこないだろうしな」

「究極の平和主義者か……」

 この世界のエルフは仲間意識みたいなものはないみたいだな。隣人だからって助けませんってことだろう。自分に降りかかる火の粉すら払わずに逃げていきそうだな。

「エルフ抜きで助けるよ。そんなのとは付き合いたくないしな」

「ありがとう恩に着る」

 ドワーフと仲良くなるだけでこちらとしては万々歳だ。エルフも見てみたい気はするが、話を聞く限りではあまりいい奴らじゃないだろう。付き合う価値がないと判断する。

 すぐにでもガーツの村に向かう。盗賊の言う、次っていうのが今日かもしれないからな。

「マイル。少し出かけてくる」

「どちらに?」

「こちらのガーツさんの村だ。俺達と同じように盗賊に襲われたんだそうだ」

 マイルに出かけることを伝える。ガーツの村が襲われたことを言うと悲しそうな顔でうつむいた。

「死者は出たのですか?」

「いや、怪我人だけだ。俺たちは屈強だからな」

「そうですか! よかった」

 マイルはガーツの返答で笑顔になった。輝かんばかりの笑顔で俺も何だかうれしいな。

「ははは、ありがとう、心配してくれて。ヒフミの嫁はいい子だな~」

「痛っ。嫁?」

 ガーツが勘違いをして、背中をたたいてきた。マイルは嫁じゃないんだけどな。
 当の本人は顔を真っ赤にしている。わざわざ否定しなくてもすぐにわかることなので頬を掻いて誤魔化しておく。

「じゃあ、行ってきます」

「私も行きます」

「いやいや、アイリと離れちゃ駄目だよ」

「アイリも一緒です。魔法を覚えたのでお役に立ちます!」

 マイルが顔を近づけて言ってきた。二人は魔法を勉強していたんだったな。精霊達もいるから大丈夫だろうけど、万一っていうのがあるからな~。

「ヒフミさん、連れて行ってあげな。俺も守るしよ」

「ですが……」

「守ってもらう立場で言うのもなんだけどよ。嫁とは離れない方がいい」

 だから、嫁じゃないんだけどな。まあ、いいか……。

「分かったよ。すぐに向かうから準備をして」

「ありがとうございます! すぐに準備します!」

「いい子じゃないか」

 ガーツが肩に手を乗せて言ってきた。マイルは必死に尽くそうとしてくれる。恩なんて気にせずにアイリと暮らしてほしいもんだけどな。
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