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第一章 落とされたもの
第13話 戦い
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『起き……て』
「ん? ん~……むにゃむにゃ」
孤児院で子供達と眠っていると薄っすらと声が聞こえてくる。夜中なのになんだろう?
『アート様! 起きて!』
「え!? シエルさん?」
別の部屋から叫び声が聞こえてくる。シエルさんの声に聞こえるけど、どうしたんだ?
「ゴブリンです! 子供達を逃がしてください!」
「ゴブリン!? わ、分かった!」
なんでゴブリンが!? ってそんなことを考えてる場合じゃない。子供達を起こすぞ。
「みんな起きて! 逃げるよ!」
「ん? アートお兄ちゃんどうしたの?」
「ゴブリンが城壁を越えてきたみたいなんだ。シエルが抑えてくれてるみたいなんだけど、逃げないと」
眠そうな目を擦って子供達が起きる。説明してもハッキリと動けない子供達。そんなところにゴブリンが目の前に現れた。
「ギャギャギャ!」
「わっ! み、みんな僕の後ろに」
子供達をかばいながら何かないかと考える。
そうだ!
「落とし物バッグの中から剣を」
緊張してるからつい口から考えがもれる。ゴブリンはそんな僕をいい獲物と思ったみたいでニヤニヤしながらこん棒を振り上げてきた。
「わぁ!」
「ギャ?」
落とし物バッグの中から取り出した白銀に輝く剣。鋭く振り上げた剣がこん棒と一緒にゴブリンを二つに切り分けた。
「アートお兄ちゃん凄~い!」
「あ、ああ……」
息切れが激しい……。初めて魔物を倒した、こんなに怖いものなんだな。
って怖がってる場合じゃない!
「イーマちゃん! みんなと一緒にスティナさん達の居る門に行ってくれる?」
「え!? お兄ちゃんは?」
「僕はシエルさんを援護しに行くよ。彼女が時間かかってるってことは相当な数入ってきてると思うから」
バレンティのときに思ったけど彼女の身体能力は尋常じゃない、それがこんなに時間がかかるのはおかしいんだ。
イーマちゃんに子供達を託して孤児院の奥、教会の中へと駆ける。
その時、ルドガーが言っていたことをふと思い出した。
『教会の裏手の壁がもろくなってる。司祭様に言ったけど、お金がないから直せないと言われちまった。ちぃ! 俺がもっと強くなれば金なんて』
悔しそうに言い放ったルドガー。ゴブリンはその壁を破ってきたのかもしれない。門の前にいた斥候はおとりだったんだな。
「シエルさん!」
「うっ、アート様。なんでここに……」
傷だらけのシエルさん。教会のベンチを壊して作ったような木の棒で戦ってたみたいだ。そんな装備でこれだけの数のゴブリンを……。
教会の礼拝堂に数えきれないほどのゴブリンの死骸が転がってる。全部シエルさんが仕留めたのか、やっぱり彼女は強い。
「子供達はどうしたんですか?」
「イーマちゃんに任せて門へ向かうように言ったよ」
「大丈夫でしょうか?」
「……急いで片付けよう。僕も手伝うよ。はい、ポーション」
教会の窓からゴブリンが再度入ってくる。Bランクのポーションをシエルさんに渡すと一気に飲み干した。
「シエルさん、武器は何がいい?」
「私は槍が得意です」
「了解」
落とし物バッグから白銀の槍を取り出す。
落とし物バッグはすごいな。でも、剣や槍を落とすのはやめていただきたいな、危ないから。
まあ、そのおかげで僕らは助かるんだけど。
「ありがとうございます! はっ!」
シエルさんはお礼を言ってゴブリンの頭を貫いていく。高速の5連突きで5体のゴブリンが肉塊になって行く。凄い……
「なんでそんなに強いのにバレンティに……」
「……イーマを人質に取られてしまって」
なるほど、これ以上は聞かないようにしよう。そんなことよりもゴブリンを片付けないと。
「壁に穴があるはずだよ。そこへ行こう」
「ほんとですか!?」
ルドガーと一緒に見た壁へと駆ける。ゴブリンと遭遇すると二人で蹴散らしていく。と言っても僕は1体だけだ。まだ手に倒した感触が残ってる。
「この槍は切れ味が凄すぎます」
「僕のもそうだよ……」
武器の感想を話すシエルさん。僕もそう思っていたけど、素人だから剣ってこんなものなんだと思っていた。シエルさんみたいな強い人もそう思うってことは本物かもしれないな。
「あった!」
城壁の脆い場所にたどり着くとゴブリンが穴を大きくしようとこん棒や石で城壁を叩いてる。
「やらせない!」
シエルさんの鋭い突きがゴブリン達を一匹残らず消し去る。これで一安心だな。
「穴を塞がないと」
「そうだね。え!?」
シエルさんの声に頷いて大きめの岩がないか周りを見渡す。すると地揺れが僕らを襲った。
「な、なんだ?」
「この間隔の地揺れ……トロールです!」
「ええ!? トロール!?」
地揺れに戸惑っているとシエルさんが声をあげる。トロールと言ったらCランクの魔物だ。
Cランクの魔物は討伐依頼で少なくとも大銀貨1枚がもらえる。それだけ危険な魔物なんだ。そんなものがゴブリンと一緒にやってきてるってこと?
「!? アート様! 危ない!」
「!?」
唖然としているとシエルさんが声を荒らげて僕を抱き上げる。教会の中へと急いで入ると大きな爆発音が聞こえてきた。瓦礫が吹き飛んできてるのが見える。シエルさんの推測が正しければ、トロールが城壁を粉砕したんだろう。
「子供達の元へ急ぎましょう」
「そ、そうだね」
城壁が壊れたとなったら僕たちだけじゃどうしようもない。急いで門のみんなと合流しないと。
そう思って教会からでると、すぐにスティナさん達と合流できた。
「イーマちゃんから聞いてきたら凄い音がしたから驚いたよ。無事でよかった」
「子供達も無事なんだね。よかった」
子供達だけで行かせたから心配だったけどよかった。スティナさん達冒険者や兵士さんはすぐにゴブリン達と対峙していく。
「ん? ん~……むにゃむにゃ」
孤児院で子供達と眠っていると薄っすらと声が聞こえてくる。夜中なのになんだろう?
『アート様! 起きて!』
「え!? シエルさん?」
別の部屋から叫び声が聞こえてくる。シエルさんの声に聞こえるけど、どうしたんだ?
「ゴブリンです! 子供達を逃がしてください!」
「ゴブリン!? わ、分かった!」
なんでゴブリンが!? ってそんなことを考えてる場合じゃない。子供達を起こすぞ。
「みんな起きて! 逃げるよ!」
「ん? アートお兄ちゃんどうしたの?」
「ゴブリンが城壁を越えてきたみたいなんだ。シエルが抑えてくれてるみたいなんだけど、逃げないと」
眠そうな目を擦って子供達が起きる。説明してもハッキリと動けない子供達。そんなところにゴブリンが目の前に現れた。
「ギャギャギャ!」
「わっ! み、みんな僕の後ろに」
子供達をかばいながら何かないかと考える。
そうだ!
「落とし物バッグの中から剣を」
緊張してるからつい口から考えがもれる。ゴブリンはそんな僕をいい獲物と思ったみたいでニヤニヤしながらこん棒を振り上げてきた。
「わぁ!」
「ギャ?」
落とし物バッグの中から取り出した白銀に輝く剣。鋭く振り上げた剣がこん棒と一緒にゴブリンを二つに切り分けた。
「アートお兄ちゃん凄~い!」
「あ、ああ……」
息切れが激しい……。初めて魔物を倒した、こんなに怖いものなんだな。
って怖がってる場合じゃない!
「イーマちゃん! みんなと一緒にスティナさん達の居る門に行ってくれる?」
「え!? お兄ちゃんは?」
「僕はシエルさんを援護しに行くよ。彼女が時間かかってるってことは相当な数入ってきてると思うから」
バレンティのときに思ったけど彼女の身体能力は尋常じゃない、それがこんなに時間がかかるのはおかしいんだ。
イーマちゃんに子供達を託して孤児院の奥、教会の中へと駆ける。
その時、ルドガーが言っていたことをふと思い出した。
『教会の裏手の壁がもろくなってる。司祭様に言ったけど、お金がないから直せないと言われちまった。ちぃ! 俺がもっと強くなれば金なんて』
悔しそうに言い放ったルドガー。ゴブリンはその壁を破ってきたのかもしれない。門の前にいた斥候はおとりだったんだな。
「シエルさん!」
「うっ、アート様。なんでここに……」
傷だらけのシエルさん。教会のベンチを壊して作ったような木の棒で戦ってたみたいだ。そんな装備でこれだけの数のゴブリンを……。
教会の礼拝堂に数えきれないほどのゴブリンの死骸が転がってる。全部シエルさんが仕留めたのか、やっぱり彼女は強い。
「子供達はどうしたんですか?」
「イーマちゃんに任せて門へ向かうように言ったよ」
「大丈夫でしょうか?」
「……急いで片付けよう。僕も手伝うよ。はい、ポーション」
教会の窓からゴブリンが再度入ってくる。Bランクのポーションをシエルさんに渡すと一気に飲み干した。
「シエルさん、武器は何がいい?」
「私は槍が得意です」
「了解」
落とし物バッグから白銀の槍を取り出す。
落とし物バッグはすごいな。でも、剣や槍を落とすのはやめていただきたいな、危ないから。
まあ、そのおかげで僕らは助かるんだけど。
「ありがとうございます! はっ!」
シエルさんはお礼を言ってゴブリンの頭を貫いていく。高速の5連突きで5体のゴブリンが肉塊になって行く。凄い……
「なんでそんなに強いのにバレンティに……」
「……イーマを人質に取られてしまって」
なるほど、これ以上は聞かないようにしよう。そんなことよりもゴブリンを片付けないと。
「壁に穴があるはずだよ。そこへ行こう」
「ほんとですか!?」
ルドガーと一緒に見た壁へと駆ける。ゴブリンと遭遇すると二人で蹴散らしていく。と言っても僕は1体だけだ。まだ手に倒した感触が残ってる。
「この槍は切れ味が凄すぎます」
「僕のもそうだよ……」
武器の感想を話すシエルさん。僕もそう思っていたけど、素人だから剣ってこんなものなんだと思っていた。シエルさんみたいな強い人もそう思うってことは本物かもしれないな。
「あった!」
城壁の脆い場所にたどり着くとゴブリンが穴を大きくしようとこん棒や石で城壁を叩いてる。
「やらせない!」
シエルさんの鋭い突きがゴブリン達を一匹残らず消し去る。これで一安心だな。
「穴を塞がないと」
「そうだね。え!?」
シエルさんの声に頷いて大きめの岩がないか周りを見渡す。すると地揺れが僕らを襲った。
「な、なんだ?」
「この間隔の地揺れ……トロールです!」
「ええ!? トロール!?」
地揺れに戸惑っているとシエルさんが声をあげる。トロールと言ったらCランクの魔物だ。
Cランクの魔物は討伐依頼で少なくとも大銀貨1枚がもらえる。それだけ危険な魔物なんだ。そんなものがゴブリンと一緒にやってきてるってこと?
「!? アート様! 危ない!」
「!?」
唖然としているとシエルさんが声を荒らげて僕を抱き上げる。教会の中へと急いで入ると大きな爆発音が聞こえてきた。瓦礫が吹き飛んできてるのが見える。シエルさんの推測が正しければ、トロールが城壁を粉砕したんだろう。
「子供達の元へ急ぎましょう」
「そ、そうだね」
城壁が壊れたとなったら僕たちだけじゃどうしようもない。急いで門のみんなと合流しないと。
そう思って教会からでると、すぐにスティナさん達と合流できた。
「イーマちゃんから聞いてきたら凄い音がしたから驚いたよ。無事でよかった」
「子供達も無事なんだね。よかった」
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