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第2章 天界と魔界
第60話 ありがとう
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「白い空間……。本当にこのまま帰れるんだ」
みんなを置いて地球への橋を渡っていく。後ろの風景がどんどん離れていく。
『アキラ!』
エミの声が聞こえてくる。涙を流しながら見送ってくれた彼女の声。隣にいるレッグスも声を出さずに涙してる。
僕は、二人の声でここまでこれた。二人が僕に勇気をくれた。そんな二人を僕は……。
『アキラがいてくれたらな』
「……お母さん?」
エミの声に答えて戻ろうと思った時、地球からの声が聞こえてきた。僕がもういない世界の声。お母さんだよね。
『ううん。弱気になっちゃダメよね。大丈夫、私は大丈夫よ……』
更に声が聞こえてきて、僕は地球に足が向く。お母さんは今、一人なんだ。だから、僕が行かないと。
『アキラ、お前はここに残りなさい』
「え? この声はお父さん?」
一歩前へ進もうと思ったらシュンお父さんの声が聞こえてくる。テセラさんから受け取った魔石を手に持つと緑色に輝きだす。輝きが人の形に変わっていく。
「フミコは俺が助ける」
輝きがおさまるとお父さんが姿を現した。白い空間だと実体化できるのかな。でも、お父さんの体はもうなくなってる。お父さんじゃ……。
「で、でも。お父さんの体はもう」
「ああ、昔の体はな。でも、俺にも転生がある。そうだろ女神オルトロス」
僕の指摘を聞くとお父さんは大きな声で話し出す。彼の声が白い空間に響くと黒髪の女性が姿を現す。妖艶に微笑む彼女は女神というより……。
「俺をこの世界に呼んで天使を倒そうとした。天界への扉を開いたんだ。お礼くらいよこしてもいいんじゃないか?」
『そうね。あなたの願い通り、転生をしてあげる。元の世界におかえり』
お父さんの声に頷いて答えるオルトロス。彼女は手を彼にかざすと光が彼を包む。
「言っておくが息子に手を出すんじゃねえぞ。また死んでくるぞ」
『それなら手をだしてもいいかもね』
「てめぇ!」
お父さんが憤りを露わにすると光が彼を地球へと運んでいく。
『さて、聞いていたわよね。私はあなたに手を出さないわ』
オルトロスはそう言ってその場に黒い椅子を作り出して座る。机も作り出すと紅茶の匂いが漂ってくる。気が付くと彼女は紅茶を飲んでいた。
「あなたが戦いをやめてくれれば」
『ふふ、私が魔物を送らなくなったら”帰る理由”がなくなるわね』
「……」
僕の言葉を聞いて子供のように笑うオルトロス。そうだよ……異世界に帰る理由がなくなる。だから、僕は地球に帰れる。そのはずなのになんでかな、僕は”帰りたくない”と思ってる。
「あなたはなんで魔物を?」
『求められているから』
「求められてる?」
オルトロスは僕の質問に答えながらクッキーをこぎみいい音を立てて食べ始める。彼女の答えにふざけていると思って顔をゆがめる。
『人は刺激を求める。それが魔物だっていう世界なのよ。あなたの世界でもそうでしょ? 毎日同じことの繰り返すよりもハプニングがあった方が面白い。大きな事故が起こって悲しんでいるのは事故の関係者とごく一部の人々だけ。ただそれだけのことよ』
オルトロスはそう言ってため息をつく。
そんなことない。誰もが人が傷つくことを楽しんでいるわけがない。違うよ、そんなの。
『悲しいけれど、それが現実なのよ。あなたが認めなくてもそうなってしまっているの。諦めなさい』
ただただオルトロスの声を聞いていることしかできない。神がそう言っているならそうなんだろう。だけど……
「それならやめてください。そんな僕以外の人の話なんて知らない! 僕はみんなが傷つくことが楽しいなんて思ったことない!」
僕は素直に彼女に声を上げる。すると彼女は微笑んでくる。
『あなたのような子ばかりならいいんだけどね』
大きなため息をつくオルトロス。彼女は大きく手を上げて見せてくる。
『天使が言うことを聞かないものだから。彼らを追放しようと思った。だけど、あなたが彼らを従えてくれるなら、考え直してあげる』
オルトロスがそう言ってあげた手を下げる。僕は何が起きているのかわからずに首を傾げていると、彼女はクスクスと笑い出す。
『帰りなさい。今の両親の元へ。あなたは私の世界で幸せに暮らすの。元の世界は忘れて』
オルトロスは優しい表情になってそう言ってくる。
「でも、お母さんに」
『あなたのお母さんはエミさんでしょ? 地球のお母さんは今のお母さんじゃないでしょ』
オルトロスはため息にも似た声をあげる。僕に呆れてしまっているんだ。でも、忘れるなんてできない。僕はこっちの世界で反則的な力を手に入れた。これを少しでもお母さんに返したい。
『それならまたここに来ることね。天使を従えてくれたら地球に一時的に帰してあげる』
「え! ほんとですか?」
『神様は嘘つかないわ』
オルトロスはそう言って紅茶を飲み干していく。
『え? もしかしてシュン』
僕がオルトロスの声で喜ぼうと思ったら地球の方から驚きの声が聞こえてきた。お母さんの声だ。シュンって言ってるってことはお父さんが戻れたってこと? もしかして体も元に戻って?
『シュンもよくやってくれたわ。だから、体もおまけで再生させた。彼は私の世界を息子と一緒によくしてくれた。あの子がレッグスを育てて居なかったらアキラはいないんだからね』
オルトロスはそう言うとにっこりと微笑む。それが本当なら彼女のことを信じていいのかな。とにかく、今は。
「ありがとう」
涙して僕は彼女の手を握る。ただただ感謝を伝えたい気持ちでいっぱいだ。
ーーーーー
どうもカムイイムカです
何とかハッピーエンドと相成りました
ここまで読んでいただきありがとうございました
みんなを置いて地球への橋を渡っていく。後ろの風景がどんどん離れていく。
『アキラ!』
エミの声が聞こえてくる。涙を流しながら見送ってくれた彼女の声。隣にいるレッグスも声を出さずに涙してる。
僕は、二人の声でここまでこれた。二人が僕に勇気をくれた。そんな二人を僕は……。
『アキラがいてくれたらな』
「……お母さん?」
エミの声に答えて戻ろうと思った時、地球からの声が聞こえてきた。僕がもういない世界の声。お母さんだよね。
『ううん。弱気になっちゃダメよね。大丈夫、私は大丈夫よ……』
更に声が聞こえてきて、僕は地球に足が向く。お母さんは今、一人なんだ。だから、僕が行かないと。
『アキラ、お前はここに残りなさい』
「え? この声はお父さん?」
一歩前へ進もうと思ったらシュンお父さんの声が聞こえてくる。テセラさんから受け取った魔石を手に持つと緑色に輝きだす。輝きが人の形に変わっていく。
「フミコは俺が助ける」
輝きがおさまるとお父さんが姿を現した。白い空間だと実体化できるのかな。でも、お父さんの体はもうなくなってる。お父さんじゃ……。
「で、でも。お父さんの体はもう」
「ああ、昔の体はな。でも、俺にも転生がある。そうだろ女神オルトロス」
僕の指摘を聞くとお父さんは大きな声で話し出す。彼の声が白い空間に響くと黒髪の女性が姿を現す。妖艶に微笑む彼女は女神というより……。
「俺をこの世界に呼んで天使を倒そうとした。天界への扉を開いたんだ。お礼くらいよこしてもいいんじゃないか?」
『そうね。あなたの願い通り、転生をしてあげる。元の世界におかえり』
お父さんの声に頷いて答えるオルトロス。彼女は手を彼にかざすと光が彼を包む。
「言っておくが息子に手を出すんじゃねえぞ。また死んでくるぞ」
『それなら手をだしてもいいかもね』
「てめぇ!」
お父さんが憤りを露わにすると光が彼を地球へと運んでいく。
『さて、聞いていたわよね。私はあなたに手を出さないわ』
オルトロスはそう言ってその場に黒い椅子を作り出して座る。机も作り出すと紅茶の匂いが漂ってくる。気が付くと彼女は紅茶を飲んでいた。
「あなたが戦いをやめてくれれば」
『ふふ、私が魔物を送らなくなったら”帰る理由”がなくなるわね』
「……」
僕の言葉を聞いて子供のように笑うオルトロス。そうだよ……異世界に帰る理由がなくなる。だから、僕は地球に帰れる。そのはずなのになんでかな、僕は”帰りたくない”と思ってる。
「あなたはなんで魔物を?」
『求められているから』
「求められてる?」
オルトロスは僕の質問に答えながらクッキーをこぎみいい音を立てて食べ始める。彼女の答えにふざけていると思って顔をゆがめる。
『人は刺激を求める。それが魔物だっていう世界なのよ。あなたの世界でもそうでしょ? 毎日同じことの繰り返すよりもハプニングがあった方が面白い。大きな事故が起こって悲しんでいるのは事故の関係者とごく一部の人々だけ。ただそれだけのことよ』
オルトロスはそう言ってため息をつく。
そんなことない。誰もが人が傷つくことを楽しんでいるわけがない。違うよ、そんなの。
『悲しいけれど、それが現実なのよ。あなたが認めなくてもそうなってしまっているの。諦めなさい』
ただただオルトロスの声を聞いていることしかできない。神がそう言っているならそうなんだろう。だけど……
「それならやめてください。そんな僕以外の人の話なんて知らない! 僕はみんなが傷つくことが楽しいなんて思ったことない!」
僕は素直に彼女に声を上げる。すると彼女は微笑んでくる。
『あなたのような子ばかりならいいんだけどね』
大きなため息をつくオルトロス。彼女は大きく手を上げて見せてくる。
『天使が言うことを聞かないものだから。彼らを追放しようと思った。だけど、あなたが彼らを従えてくれるなら、考え直してあげる』
オルトロスがそう言ってあげた手を下げる。僕は何が起きているのかわからずに首を傾げていると、彼女はクスクスと笑い出す。
『帰りなさい。今の両親の元へ。あなたは私の世界で幸せに暮らすの。元の世界は忘れて』
オルトロスは優しい表情になってそう言ってくる。
「でも、お母さんに」
『あなたのお母さんはエミさんでしょ? 地球のお母さんは今のお母さんじゃないでしょ』
オルトロスはため息にも似た声をあげる。僕に呆れてしまっているんだ。でも、忘れるなんてできない。僕はこっちの世界で反則的な力を手に入れた。これを少しでもお母さんに返したい。
『それならまたここに来ることね。天使を従えてくれたら地球に一時的に帰してあげる』
「え! ほんとですか?」
『神様は嘘つかないわ』
オルトロスはそう言って紅茶を飲み干していく。
『え? もしかしてシュン』
僕がオルトロスの声で喜ぼうと思ったら地球の方から驚きの声が聞こえてきた。お母さんの声だ。シュンって言ってるってことはお父さんが戻れたってこと? もしかして体も元に戻って?
『シュンもよくやってくれたわ。だから、体もおまけで再生させた。彼は私の世界を息子と一緒によくしてくれた。あの子がレッグスを育てて居なかったらアキラはいないんだからね』
オルトロスはそう言うとにっこりと微笑む。それが本当なら彼女のことを信じていいのかな。とにかく、今は。
「ありがとう」
涙して僕は彼女の手を握る。ただただ感謝を伝えたい気持ちでいっぱいだ。
ーーーーー
どうもカムイイムカです
何とかハッピーエンドと相成りました
ここまで読んでいただきありがとうございました
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