上 下
56 / 60
第2章 天界と魔界

第56話 共闘

しおりを挟む
「よく来た。歓迎する」

 魔国サダラーンにつき、魔王城の内壁に馬車が着くとサターンが出迎えてくれる。
 レッグスは彼を見ると警戒して構える。
 その姿を見てサターンは笑みをこぼす。

「剣は握らないのだな。優しい男だ」

 小声で確かにそういったサターン。その目はとても優しかった。
 前にあった彼じゃなくなってる。何があったのかわからないけど、メイデスさんを見ると嬉しそうに彼を見つめてる。
 彼らにとっていいことに気が付いたのかな。
 城の中に案内されて玉座の間へと入る。
 サターンは玉座には座らずに赤い絨毯に胡坐をかいて座る。

「対等の立場だ。座ってくれ」

 僕らが唖然として見ているとそう言ってくるサターン。キョトンとしながらもみんなで座る。

「私の過去を話そう」

 そう言ってサターンは過去を話し始める。異世界から来た少年が異世界に帰ろうとした話。とても悲惨な最期を迎えた話。

「天界への扉を開くと奴らが来る。私は恐怖で動けなくなってしまう。どうか助けてくれ。異世界人の力を貸してくれ」

 サターンはそう言って祈るように目を瞑る。僕へと祈りを捧げてくる。

「お、おい。なんだか話が見えないんだが」

「な、なんでアキラにそんな話をするの? まるで異世界から来た子みたいに……」

 レッグスとエミがサターンの話を聞いて僕を見つめる。二人は信じたくないといった様子で悲しそうにしてる。

「サターン様。アキラはまだ両親にそのことを話してないんだよ」

「なに!? す、すまなかった。話していないとは思わなかった」

 グダスが焦りながらサターンに声をあげる。二人は僕に謝ってくれる。

「な、なあアキラ。違うよな? 異世界からきたわけじゃないよな?」

「ごめんなさい。今まで言えなくて……」

「「……」」

 僕の両肩を掴んでゆすってくるレッグス。悲しそうに問いかけてくる彼に僕は正直に答えた。悲しませると分かっていても伝えないといけない。いつかは言わないと行けなかったことだ。少し早くなっただけ。

「僕は地球という世界から転生してきた。僕は病弱で3歳から10歳まで病院で暮らしてた。白い一室が僕の世界だったんだ。TVっていう絵本を沢山つめたような機械、この世界だと道具かな。それで僕の世界を広げてた」

 僕の言葉にみんな頷いて相槌を打ってくれる。僕は続けて話し出す。

「最後に地球でのお母さんに感謝を告げられなかった。僕はそれを言いたくて、お母さんの顔が見たくて帰りたいんだ。我儘な子供でごめんなさい。二人のことも考えずに……」

 二人の顔が見れない。僕は俯いて呟く。
 少しすると二人が僕を抱きしめてくれる。顔をあげると二人とも涙を流してた。

「親孝行な息子をもったってことだよな」

「そうね。その親は私達ではなかったみたいだけど」

 二人は無邪気に笑ってくれる。二人は許してくれたのかな。

「あちらに行ってから帰ってこれるのか。そもそも、帰ってきてくれるのか?」

「……魔法のない世界だから難しいと思う。帰ってきたいと思ってはいるけど」

「そうか……」

 レッグスの質問に正直に答える。二人は再度悲しい表情になる。
 帰ってきたいけど、魔法のない世界じゃ召喚なんてできない。天界や魔界なんていうのも存在しないだろうし。天国と地獄は話で聞いたことはあったけどね。

「……それでも、息子がやりたい、帰りたいって言うなら叶えてやるのが親ってもんだよな」

「レッグス……。私は嫌よ」

「エミ……」

 レッグスは笑顔で僕の頭を撫でてくれる。だけど、エミは首を大きく横に振る。頭を撫でられている僕を引き離す様に抱き寄せる。

「親孝行ないい子と思ったけど。最愛の息子を『はい、そうですか』って譲れない! 私だってアキラに魔法を教えたり色々お世話してた。10年一緒だった別のお母さんに勝てないかもしれないけど、私だってアキラを愛してる。帰ってこれないかもしれないなんて聞いて行かせられない!」

 エミは泣き出しながら引き留めてくれる。泣きすぎて鼻水まで豪快に出してる。流石に見ていられない。

「お母さん、鼻水が凄いよ」

「うえ? ん、ありがと」

 鼻水を拭ってあげるとエミは無遠慮に鼻をかむ。今まで黙っていたサターン達はその姿で笑みがこぼれる。

「感動の家族愛を見せてもらっている所悪いのだが、帰ってくることは出来るぞ」

「勇者召喚ですね」

 サターンが口角をあげて声をあげるとメイデスさんが推測する。彼女の言葉に彼は大きく頷いて見せる。

「アキラの唾液でも血でもを持っていれば指定して呼ぶことが出来る。本来は無差別に呼ぶ召喚魔法だが、それらがあれば指定できる」

 長く生きているだけあって色々知ってるな。サターンの声に感心してしまった。

「アキラが帰ってきたいというならそちらの準備もする。しかし、それをする前に天使との戦いが待って居る。それは忘れないように」

 サターンは話を本題に戻す。天使との戦いか。その為に戦力を整えないとな。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...