最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
上 下
51 / 60
第2章 天界と魔界

第51話 海龍

しおりを挟む
 目の前に現れた塔は海から出てきたみたいだ。水を滝のように流し、僕らを見下ろしてくる。

「人間ども、何をしている。なぜやられてる?」

 塔はにらみを利かせてきて声を上げる。
 水が落ち切ってきて姿が見えてきた。塔は鱗が輝いて綺麗に日の光を反射してる。

「か、海龍!?」

 ロドリックが震えながら声を上げた。どうやら、この龍が海龍みたいだ。龍というだけあって大きい。大きいというより、長いと言った方がいいかな。うねうねと僕らの船の周りをとぐろを巻くように体がある。僕らを狙ってるようだ。

「サターンからの命令だろう。破ればどうなるか分かっているだろ?」

 海龍はそう言って睨みを利かせてくる。ライドの説明通り、サターンの命令であの陸地を守っていたみたいだな。そして、それを破ると海龍に殺されるってところか。

「海龍さん。話をしたいんだけど」

「ん? 人の子よ。質問があるのか?」

 僕は思わず声をあげる。知りたいことが多すぎる。少しでも聞けるようなら聞いておきたい。

「はい、海龍さんに質問です。人族と魔族が交わうと何かあるの?」

 なんでサターンは人族と魔族の交流をなくそうとしているのか。とても気になる。

「ふむ、サターンが言うには人族と魔族が交わると特別な種族が生まれてしまうらしい。サターン自身がそうらしいのだが、強いものが出来上がりやすい」

 海龍さんはそう言ってニッコリと口角をあげる。結構親しみやすい海龍さんだな。話もしっかりと聞いてくれるし。
 そうか、サターンも人族と魔族のハーフってことか。自分以外に強い人が生まれることを嫌ってやっているってことか。それが天界と関係してる。
 なるほど、天界への扉を開けさせないように強いものが生まれないように人族と魔族を遠ざけたってところかな。

「ではそろそろ時間だ。残念だが、子供であるお前もここで死んでもらう」

 海龍さんはそう言って息を吸い込んでいく。体を膨らませていく海龍さんは今にも僕らに何かを吹きかけてきそうだ。

「ダメだよ海龍さん」

 僕は海龍さんの顔へ飛び上がって蹴り上げる。蹴り上げるのと同時に彼の口から大量の水が吐き出された。水が雨の様に降りてくると虹が綺麗に出来上がる。

「な!? なんだこの子供は!? ま、まさか。お前も人族と魔族の交わりし子供?」

 海龍さんは口から血を出しながら驚愕する。僕の親はレッグスとエミだ。二人はどう見ても人族。ハーフではない。

「違うよ。僕は正真正銘人族の子供。レッグスとエミの子だ」

 驚く海龍さんに答える。すると彼は唖然として僕を見下ろす。

「私の体を跳ね上げられるものなどいない。サターンでも不可能なことだ。なぜお前のような子供が」

「まだやるというのか? マスターが手を出すまでもない。このウルドがお前を葬り去る」

 海龍さんが狼狽えながらも再度攻撃をしようとしてくる。体を大きく動かし、海を荒れさせていく。船が大きく揺れはじめたからやめさせようと僕が力むとウルドが動き出す。声をあげて海龍さんの顔に飛んでいくと掴みあげていく。
 海龍さんを持ち上げて空へと上がっていく。米粒程まで小さくなっていく海龍さん、しばらくすると激しい打撃音が聞こえてくる。そして、ウルドと一緒に降りてくる海龍さん。見るも無残な蝶々結びにされてる。

「や、やめてくれ!」

「魔石にされなかっただけマスターに感謝するんだな」

 涙を流して声をあげる海龍さん。許しを請う彼に無慈悲に答えるウルド。流石にやり過ぎだよ。まあ、僕らを殺そうとしてきたんだから仕方ないけれど。

「これからここら辺はマスターの物だ! わかったか!」

「わ、わかりました。私が責任をもってお守りいたします。ですから命ばかりは!」

 ウルドの睨みに海龍さんは涙を流しながら答える。どうやら、僕の物になるみたい。サターンが黙ってないんじゃないのかな?

「サターンも私には勝てません。何か言ってきたら私が奴を懲らしめて見せます!」

 海龍さんは続けて声をあげる。彼はサターンよりも強い自信があるみたいだな。戦ったことがあるのかな?

「ふぅ。死ぬかと思ったが結果良ければすべてよしだ。俺達の勝ちだ。勝鬨をあげろ!」

『応っ!』

 海龍さんの降伏の声にロドリックさんが声をあげる。船乗りの勝鬨の声が僕らの勝ちを彩る。
 
「よし! 俺達はこのまま人族の町に繰り出そう」

「え? すぐにいけるんですか?」

「ああ、お前達は急いでるんだろ? 恩人に時間を使わせるのは申し訳ないからな」

 ロドリックは気を取り直して船の舵を取る。海龍さんを懲らしめたから海をそのままいけるようになったからすぐにでも人族の港に着ける。
 レッグスもエミも心配しているだろうし、早く帰らないとな。

「そうだ。この海峡と海賊の土地の利益はちゃんと分配するからな。人族の港に届ける。誰か引き取る相手を作っておいてくれ」

 ロドリックは機嫌よく煙草に火をつけてそう言ってくる。どうやら、かなりの儲けが生まれるみたいだ。レッグスも貴族になったからレッグスの名義にしておけばいいかな?

「レッグス準子爵の名前で倉庫にでも入れておいてよ。あるでしょ? 倉庫?」

「まあ、港ならあるわな。じゃあ、そうしておくぞ。一応言っておくがかなりの儲けになる。一か月も放置したらかなり貯まるからな。ちゃんと倉庫の管理をしてくれよ」

「え? そんなに」

「俺も素人じゃねえからな。期待しててくれ」

 首を傾げて倉庫のことを聞くとロドリックは少し考えて答えてくれる。人族の町には言った事はあるみたいだから大丈夫だろう。
 人族も魔族だからってむやみに攻撃をしてくることはないだろうしね。
 思わぬ収穫を得て、僕らはエレービア王国の港町にたどり着いた。地図を港町で手に入れるとすぐにルインズの村へと帰還した。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...